さぽろぐ

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2009年08月30日

蛇紋岩の山に生きるハヤチネウスユキソウ

 東北での蜘蛛学会大会ということで真っ先に頭に浮かんだのは、かねてから登ってみたいと思っていた早池峰山でした。早池峰山といえば、本州ではここにしか分布していないアカエゾマツと固有種のハヤチネウスユキソウが頭に浮かびます。アカエゾマツのほうは登山道沿いにはないとのことなのであきらめました。

 早池峰山とはどんな植生の山であり、固有種のハヤチネウスユキソウがどんなところに生育しているのかを見たいと思い、仙台での蜘蛛学会大会を初日の22日の途中で切り上げて早池峰山の登山口に向かいました。

 河原の坊からの登山道は、沢に沿ってブナやミズナラ、ダケカンバ、オオシラビソやコメツガなどの森林帯の中を登っていきます。やがて森林帯を抜けると岩塊が現れ、山頂まで岩の斜面が続いています。はじめに登山道沿いに出てきたのはハヤチネウスユキソウではなくミネウスユキソウでした。ヤハチネウスユキソウは何処?と足元に目を配りながら登っていくと、しばらくしてからミネウスユキソウに混じってハヤチネが姿を見せました。写真の大きい2つの花がハヤチネウスユキソウで、小さい花がミネウスユキソウです。




 たしかにヨーロッパのウスユキソウによく似ていますが、ハヤチネのほうがいくらかがっしりしているような雰囲気があります。もう8月も下旬でしたので花の最盛期は過ぎてややドライフラワー状態でしたが、それでも特有の雰囲気は十分に残っていました。ハヤチネウスユキソウは早池峰山の蛇紋岩地帯に生育しているのですが、比較的上部から山頂の岩場に分布しており、それほど多いというわけではありません。やはりとても希少な植物です。

 早池峰山は固有種が多いことで知られていますが、簡単に動くことができない植物の分布と地質の関係にはとても興味深いものがあります。
  


Posted by 松田まゆみ at 16:57Comments(2)植物

2009年05月30日

十勝海岸のガンコウラン

 ガンコウランは高山植物とされていますが、高山以外にも分布しています。たとえば、硫黄山(アトサヌプリ)ではハイマツやイソツツジとともにガンコウランの群落が見られます。というのはこれらの植物は火山地帯の酸性土壌にも適応できるからです。道南の恵山の賽の河原にはカーペット上の大群落がありますが、これも同様です。

 標高がそれほど高くない然別湖などの岩塊地にもハイマツやイソツツジ、ガンコウランがありますし、根室地方では平地にガンコウランが分布していることが知られています。他の植物が入りこめないような厳しい環境でも生育できるのでしょう。決して高山にしか生育できないというわけではありません。

 十勝地方の海岸部にもガンコウランがあるのですが、先日のイソコモリグモの調査でそのガンコウランの不思議な群落を見ることができました。はじめに見たのは、ホロカヤントウ沼の砂洲です。台地状に少し高くなっているところにありました。高波などの影響を受けないところなのでしょう。ハマナスや海浜植物と隣り合わせにガンコウランが茂っている光景は、ちょっと不思議です。ここは根室地方のガンコウラン生育地と同じような環境なのかも知れません。




 それ以上に不思議な光景は、海岸の断崖上に、芝桜のようにカーペット状に広がるガンコウランの群落です。いったいどうしてこんなところにガンコウランの群落があるのでしょうか? かつてはホロカヤントウのように湿地の近くに分布していたものが、海岸の浸食などで内陸に後退し、今では断崖上にとり残されたのでしょうか? 植物の分布には、時として頭を悩ませるものがありますが、それがまた自然の面白さです。




  


Posted by 松田まゆみ at 05:39Comments(4)植物

2009年05月09日

スズダケとウグイス

 北海道で普通に見られるササは、チシマザサ、クマイザサ、ミヤコザサの3種ですが、これらは積雪深によっておおよそ分布が決まっています。雪の多いところはチシマザサ、少ないところはミヤコザサで、その中間がクマイザサです。

 十勝地方はウグイスがとても少ないところなのですが、これは分布しているササの種類に関係しています。積雪の少ない十勝地方の平野部ではミヤコザサが普通です。ウグイスはふつう笹薮に巣をつくるのですが、ミヤコザサは茎の途中で枝分かれをしないので、ウグイスが巣をつくることができないのです。

 ところで、上記の3種のササとは別にスズダケというササがあります。竹という名がついていますが笹の仲間で、本州では俗にシノダケともよばれる丈の高いササです。北海道では本州のように丈は高くならないのですが、太平洋岸に点々と分布しており、ミヤコザサと混生していることもあります。

 先日でかけた釧路地方の太平洋沿岸にも、スズダケとミヤコザサがモザイク状に分布していました。スズダケ(写真)は真上にすっと伸び、葉の色も濃いので、遠くからでもそれとわかります。そして、スズダケのあるところには必ずといっていいくらいウグイスが鳴いているのです。ミヤコザサの群落が広がるところに行くと、ウグイスの声は聞かれません。




 北海道の積雪がそれほど多くないところでウグイスが鳴いていたなら、スズダケがあるかもしれません。ススダケがどうして太平洋側だけに点々と分布しているのかは謎ですが、雪の多いところには分布できないようです。
  


Posted by 松田まゆみ at 15:44Comments(3)植物

2008年10月16日

オオウバユリのその後

 「ちょっと不思議なオオウバユリ」で紹介した庭のオオウバユリですが、立派な実をつけました。





 この種がこぼれたら、そこいらじゅうからオオウバユリが芽生えてきそうなので、飛び散る前に処分することにしました。

 ところで、この一本に幾つくらいの種をつけるのでしょうか? 試しに実のひとつを開いてみました。裂け目から溢れるように種がこぼれてきます。





 一つの実は三つに割けるのですが、一片が2室に分かれています。そして一部屋に薄っぺらい種がぎっしりと並んで詰まっています。一室に入っている種を数えてみると、ちょうど100個ありました。つまり、ひとつの実に600個ほどの種が入っていることになります。

 実の数を数えると全部で22個でしたので、600×22で13200個。一株でこれだけの種をつけた計算になります。すごい量の種ですね!

 オオウバユリは地下に鱗茎をもっている一回繁殖型多年草です。花をつけるようになるまで何年もかかるのですが、一度花をつけると鱗茎ごと枯れてしまいます。何年もかかって栄養を貯め、大量の種をつけるという繁殖戦略なのですね。もっとも、脇に小さな鱗茎をつくって栄養繁殖もします。

 種には幕がついていて、ひらひらと舞うようにこぼれますから、風に乗ればけっこう遠くまでいけそうです。

 栄養繁殖だけでは環境が変わってしまったら生きていけません。群落ごと危機的な状況になることもあるでしょう。そういう時のために、たくさんの種をつけて別の場所に移動できるようにしているのです。でも、これだけ沢山の種をつけても大半は発芽できなかったり、発芽しても大きく育つことはないんですね。 

 一回繁殖型多年草としては、エゾニュウなどの大型のセリ科植物があります。こちらは幾つぐらい種をつけるのか数えたことはありませんが、オオウバユリより多いかもしれません。  


Posted by 松田まゆみ at 15:54Comments(0)植物

2008年07月23日

原生花園と植生

 一昨日は、十勝の海岸にイソちゃん(イソコモリグモ)の調査に行ってきました。頭の中はイソちゃんの調査のことしかなかったのですが、出かけてみるとちょうど原生花園は夏の花たちの季節だったのです。ノハナショウブ、エゾフウロ、ハマナスなどなど野の花たちが咲き競っていて、思いがけぬお花見になりました。

 今の季節はセンダイハギやハマエンドウ、ヒオウギアヤメなどの花は終っていてちょうどノハナショウブの季節。ちょっとシックな赤紫の花が草原に彩りを添えていました。

 北海道では原生花園があちこちにあります。小清水原生花園とかワッカ原生花園、サロベツ原生花園などが有名ですね。原生花園という名前からは自然のままのお花畑を連想させますが、必ずしもそうではありません。小清水原生花園では以前は牛や馬を放牧していたのです。それで家畜の食べない植物が美しい花を咲かせていました。

 しかし、放牧をやめてしまうと外来の牧草などが繁茂したり枯れ草が堆積し、きれいな花を咲かせる植物が衰退してしまうのです。小清水原生花園では原生花園らしい光景を取り戻すために放牧をしたり火入れ(野焼き)をしたりしています。これについては以下のサイトに説明されています。原生ではない原生花園なのです。

http://www.dosanko.co.jp/koshimizu/guide/digimail/symposium/document.html

 十勝でも十勝川河口の豊北原生花園のほか長節湖、湧洞沼のほとりなどに原生花園がありますが、放牧や火入れをしているという話は聞きません。道沿いには帰化植物も侵入してきていますので、植物相が少しずつ変わってきているのかも知れません。

 長節湖の原生花園は、ひょろひょろと伸びる丈の高いエゾノヨロイグサとビロードのような花をつけたノハナショウブの織りなす幻想的な光景が広がっていました。季節は違うのですが、もう30年以上も前の学生時代、夏の終わりにここを訪れたことがあります。大津からてくてくと歩いたものです。

 8月下旬のその時期には、野に咲く花々はすっかり秋の彩りになっていました。でもこのエゾノヨロイグサの茂る草原はその時の記憶とはちょっと違う印象を持ちました。さて、この光景は昔からの光景なのでしょうか? そして何年かしたら変わっていくのでしょうか?
  


Posted by 松田まゆみ at 13:52Comments(0)植物

2008年07月12日

ちょっと不思議なオオウバユリ




 我が家の庭でオオウバユリの花が咲きました。このオオウバユリ、別に観賞用に植えているわけではありません。だいぶ前のことですが、リースをつくるためにこの花の蒴果(果実)を採ってきた際、何気なく中に残っていた種を庭に捨てたのです。

 すると、しばらくしてから庭のあちこちからつやつやした葉の植物が生えてきました。はじめは何の葉かわからずにいたのですが、しばらくしてからオオウバユリの実生だということに思い当りました。そのうちの一本がだいぶ立派な株になったと思ったら、蕾がでてきて花が咲いたのです。

 オオウバユリはユリ科に属しますが、人の背丈ほどの大きさになります。森林の中や林縁で緑がかった乳白色の花をひっそり咲かせている姿は、美しいというよりちょっとドッキリとさせるものがあります。一回繁殖型多年草で、芽生えてから花が咲くまでに何年もかかりますが、花が咲くとその株は枯れてしまうのです。

 地下には鱗茎があり、アイヌの人たちの重要な食料になっていました。もちろん彼らは採りすぎて絶やしてしまうことがないように気を配っていました。狩猟採取民族のアイヌの人たちは、あくまでも持続可能な採取生活をしていたのです。

 エゾシカはユリ科の植物が大好物なのですが、このオオウバユリも例外ではありません。エゾシカの数が非常に増えたときは、大きくてつやつやした葉がずいぶん食害にあい、花をつけている株がほとんど見られなくなってしまいました。でも、エゾシカの減少とともに復活してきたようです。

 さて、このように茎の先にいくつも花をつける植物の場合、下から上に向かって順に花が咲いていくのが普通です。ところが、良く見ると一番先に咲いたのは下の蕾ではありません。下から順々に咲いていくというより、真ん中あたりから咲き始めて上下に咲きすすみ、数日中に全部開いてしまうようです。こういう咲き方をする植物はあまりないのではないでしょうか。

 花が咲く頃に葉が枯れてしまうことから「歯がない」ということ姥百合というそうですが、花の時期でも葉はまだしっかり緑色をしています。
  


Posted by 松田まゆみ at 14:36Comments(4)植物

2008年06月18日

場違いな植物販売

 先日の記事にも書いたように、イソコモリグモの調査のためにサロマ湖の東側の砂州にあるワッカ原生花園に行ってきました。原生花園といっても観光馬車があって舗装した道がつけられており、すっかり観光地化されていたのにはちょっとがっかりでした。ちょうどセンダイハギの黄色い花が盛り。

 その入口にあるのがネイチャーセンター。といっても自然についての展示はごく一部で、売店が主体の施設です。これにもちょっとがっかり。

 そのネイチャーセンターの入口で、なんと「高山植物」と書かれて花の苗が売られていたのにはびっくりしてしまいました。その苗をよくよく見ると、外来の園芸種のようでした。

 どうして海岸の原生花園でこのような苗を売らなければならないのでしょうか? あまりにも場違いではないでしょうか? 時折、山の麓などで高山植物を売っていることがあり、あれにはいつも嫌悪感を抱いてしまうのですが、それと同じようなものです。

 原生花園というのは園芸植物を集めた植物園ではないのです。自然を楽しみにくる場所での園芸種の販売はつつしんでもらいたいものです。  


Posted by 松田まゆみ at 15:26Comments(0)植物

2008年05月05日

オオバキスミレの不思議な分布



 先日は道北方面に行ってきました。ヤナギのみずみずしい新緑とイタヤカエデの黄色い花が山肌を彩っていました。キタコブシや桜も満開。いつになく早い花と緑の饗宴です。

 とある道端の林床に、黄色いスミレの群落を見つけました。オオバキスミレです。スミレといえば紫系の花が大半で、黄色い花は少数派。しかも黄色い花のスミレは高い山に分布するものが多く、標高が低いところでも見られるのはこのオオバキスミレくらいでしょうか。

 オオバキスミレは北海道では西半分に分布しているようで、道東にはほとんど分布していません。同じところに咲いていたエゾエンゴサクやカタクリ、オオバナノエンレイソウなどはもっと広く分布しているのに、西側にしか分布していないのは不思議ですね。

 オオバキスミレは多雪地方に多いといわれているようですが、雪の量が本当に分布に関係しているのかどうかはわかりません。ササでは積雪と分布の関係がはっきりしているのですが、ササの場合は芽のつく位置が積雪と密接な関係にあるからなのです。春に生長して開花する春植物の場合、雪との関連性はよくわかりません。オオバキスミレの分布を決める要因は何なのかしらと思ってしまいました。

 このスミレ、開花している期間がとても短いようなのです。偶然の出会いでしたが、ちょうど満開でしたのでとても幸運でした。  


Posted by 松田まゆみ at 13:51Comments(2)植物

2007年06月22日

うつむくオダマキ


 北海道の山野ではオダマキの花が咲く季節になりました。シックな色合いのオオヤマオダマキ(写真)、青紫と白のコントラストが美しいミヤマオダマキ。オダマキは私の好きな花のひとつです。

 このオダマキの花を見ていつも思うのですが、この花はなぜこんなにうつむいて咲くのでしょうか? 写真を撮ろうと思っても、どうしても横顔になってしまいます。

 オダマキの花弁の後部は袋状に細長く突き出して、先端は内側にくるりと曲がっています。この部分を距(きょ)というのですが、そのユニークな花の形がまた趣があります。

 この距というのは蜜を溜めるところなのです。だから、下を向いて咲くオダマキは、距の先端を曲げることで、蜜をうまく溜めることができるのでしょう。

 庭のオダマキの花をみていると、舌の長いエゾトラマルハナバチがやってきて、もぞもぞと花びらに頭を突っ込み、距の中に長い舌を差し込む様子が観察できます。うつむいて咲いていても、器用なマルハナバチにとって蜜を吸うのはなんでもありません。どうやらオダマキとエゾトラマルハナバチはよきパートナーのようです。

 距をもっている植物はほかにもいろいろあります。スミレ、エゾエンゴサク、ツリフネソウ、イカリソウ・・・ 

 そして、このような花を訪れる昆虫は、この距の先まで届くような長い舌や口吻を持っている種が多いのです。でも、舌が短い種類のマルハナバチは、距の先に舌が届かないので、外から距に穴をあけて蜜を盗んでしまうことがあります。これを盗蜜というのです。盗蜜されると植物は花粉を運んでもらえなくなります。

 庭のオダマキを見る限りでは、盗蜜されている様子はありません。うつむいて咲き、長い距をピンと上に向けていると、ハチがうまく止まれなくて盗蜜されにくいのでしょうか? そうであれば、うつむいて咲くことにもちゃんと意味があるのですね。
  

Posted by 松田まゆみ at 16:37Comments(2)植物

2007年06月02日

エゾエンゴサクの葉の形

 
先日は、エゾエンゴサクの花色の変異について書きましたが、エゾエンゴサクは葉の形もとても変異が大きいのです。

 上の写真と下の写真を比べてみてください。葉の形がまるで違います。下の写真の葉はとても細くて「ホソバエンゴサク」と呼びたくなるほどです。ほかにも、小葉に切れ込みが入っているものもあります。なんだか葉っぱだけ見たら別種みたいですよね。同じ場所にいろいろな形の葉のエゾエンゴサクが混じって生えています。こんなふうに葉の形に大きな変異がある植物も少ないのではないでしょうか。

 カタクリやエゾエンゴサクなどの「春植物」は、広葉樹が葉を広げて林床に木陰をつくるまでの短い間に花をつけて繁殖します。そして夏には地上部は枯れてしまうのです。葉の寿命が短いのなら、光合成をする葉はなるべく面積が広いほうがよさそうなものです。ところが、円い葉だけではなく細い葉の個体もけっこうあるところを見ると、葉の面積が広い方がいいというわけではなさそうです。


 生物の形態にはふつう意味があるものです。そして、不利な形態は存続することが難しくなります。エゾエンゴサクの葉にいろいろな形があり、それらが共存しているということは、特定の形だけが有利だということではないのかもしれません。でも、なぜいろいろな形があるのか、というと???です。

 なんだかエゾエンゴサクというのは謎が多い植物です。
  

Posted by 松田まゆみ at 21:00Comments(2)植物