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2017年12月16日

破局噴火と原発

 12月13日に、広島高裁は四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じる決定をした。原子力規制委員会の策定した「火山影響評価ガイド」では原発から160キロ内にある火山を対象に、火山活動の可能性や噴火規模を推定し、原発稼働時の安全性を評価するように定めている。推定できない場合は、過去最大の噴火規模に照らし火砕流などの影響を評価するように確認している。

 伊方原発は熊本県阿蘇カルデラから約130キロに位置しているので、「火山影響評価ガイド」に従って火山活動の可能性や噴火規模を推定しなければならない。高裁は、阿蘇カルデラの約9万年前の破局噴火による火砕流に言及して、立地に適さないとした。今回の決定は「画期的」「歴史的判決」などと評価されているが、火山影響評価ガイドに照らし合わせたごく当然の判断だろう。この当然の判決が「画期的」ということは、今までの原発訴訟がいかに科学をないがしろにしたものだったかを物語っている。

 川内原発の火山影響評価で九州電力および規制委が「運用期間中(核燃料が存在する期間)に、設計対応不可能な火山事象によって、本発電所の安全性に影響を及ぼす可能性について十分小さい」と判断してしまったことの方が妥当性を欠く。これは科学を無視した「再稼働ありき」の結論だ。

 今回の広島高裁の決定に対し、ツイッターなどでは、阿蘇カルデラの破局的噴火を想定するなら原発より九州が壊滅状態になることの方が重大事だという意見が散見されて驚いた。

 確かに破局噴火が起きれば、九州どころか日本が壊滅状態になりかねない。具体的にどんな状態になるのか。神戸大学海洋底探査センター巽好幸教授の記事が参考になる。

最悪の場合、日本喪失を招く巨大カルデラ噴火

 「巨大カルデラ噴火」「破局噴火」などと呼ばれる大規模噴火で直近のものは7300年前の喜界カルデラ噴火だが、この噴火は南九州の縄文人を絶滅させ、火山灰は東北地方にまで達したという。そして巨大カルデラ噴火は今後100年間に約1%の確率で発生するとされている。早い話し、いつ起きてもおかしくないということになる。2万9000年前に鹿児島湾を作った姶良カルデラ噴火を参考に、九州中部で巨大カルデラ噴火が起きたと想定するとどうなるか。

数百℃の高温の火砕流は2時間以内に九州のほぼ全域を焼き尽くし、関西では50センチメートル、首都圏は20センチメートル、そして東北地方でも10センチメートルの火山灰が降り積もる。ここで重要なことは、10センチメートル以上の降灰域では、現在のインフラシステム(電気・水道・ガス・交通など)は全てストップすることだ。つまり、この領域に暮らす1億2000万人の日常は破綻する。しかもこの状況下での救援活動は絶望的である。

 ここまでの規模にならないとしても、九州の部分的な壊滅はあり得るし、偏西風によって火山灰が四国や本州に流されることを考えれば、被害面積は相当なものになるだろう。農地は火山灰に覆われ、日照も妨げられるから食糧危機にもなる。果たして日本人がどれだけ生き残れるかという状況になるかもしれない。

 巨大カルデラ噴火そのものだけでも大変なことになるが、火砕流が原発を襲ったらどうなるのか? 「川内原発を襲う、カルデラ噴火【日本壊滅のシナリオ】」という記事ではこんなことが指摘されている。

「数百度の熱を帯びた火砕流が川内原発敷地内まで到達する可能性があります。そうなれば、原発自体が破壊されるのはもちろんのこと、原発作業員も全員火砕流でやられてしまいます。火砕流と放射能で、外部から救助にも原発の収束作業にも入れないという恐ろしい事態になってしまうのです」

「噴火に伴う原発事故の場合、火山灰に放射性物質がくっついて、風に乗って全国に降り注ぐことになります。しかもカルデラ破局噴火の場合、日本最大の地上の火山である富士山と同じくらいの体積の降下物が飛散します。それだけの降下物が放射能を伴って日本中に降り注ぐ可能性を考えないといけません」

 手のつけられなくなった原発がメルトダウンし暴走を始めるのは目に見えている。福島第一原発の事故では格納容器が破損したものの形は留めており作業員が懸命に被害の拡大を防いだ。しかし、高熱の火砕流が襲ったら格納容器も燃料プールも破壊されて大量の放射能をばら撒くだろう。そして、とめどなく放出される放射能が火山灰とともに偏西風に乗って日本中に拡散され続けるのだ。飛行機も飛べないし、なす術がない。福島の事故とは比べ物にならないような汚染が広がるだろう。

 九州には巨大カルデラが複数あり、160キロ以内に川内原発、玄海原発、伊方原発がある。これらの原発が1基メルトダウンしただけでも恐ろしいが、同時に複数の原発が破壊されることもあり得る。それだけではない。日本中に火山灰が降り注ぎインフラシステムがダウンしたら日本列島の他の原発も制御できなくなる可能性がある。考えただけでも恐ろしいが、日本列島は死の島になるだろうし世界中が深刻な放射能汚染にさらされるだろう。

 いつかは分からないが破局噴火は必ず起きる。これまでは地震や噴火の静穏期にあったが、今は活動期に入ってきていると言われている。とするなら、破局噴火の時期はそう遠くないかもしれない。そのときに原発が巻き込まれるか否かで難を逃れて生き残った人たちへの影響が大きく異なってくることは間違いない。

 利己的な人間は、しばし自分の生きている時代のことしか考えない。自分が生きているうちには破局噴火などないだろうと他人事のように考えている人が大半だと思う。だからこそ地震大国・火山大国である日本に54基もの原発建てられてきた。しかし、2011年にマグニチュード9という超巨大地震が日本を襲い、福島第一原発は3基もの原子炉がメルトダウンし、今も収束の目途は立っていない。私自身、生きている間にこんな巨大地震が日本を襲うなどとは考えたこともなかったが、それがいかに甘い考えだったかを痛感した。

 プレートの縁に位置する日本では、巨大地震や巨大津波、巨大噴火がいつ起きてもおかしくない。そして、その度に原発事故に怯えなければならない。もはや原発がなければ電気が足りないなどという主張が幻想であることははっきりしている。それにも関わらず原発にしがみつき、国土のみならず世界中を放射能汚染させてしまうのなら、あまりに利己的で無責任というほかない。

 人類はいつか必ず起きる破局噴火を防ぐことはできない。ならば、自然災害に伴って世界中に放射能をばら撒く愚かなことだけは何としてでも防がなければならない。そのためには一日でも早く原発を停止して廃炉にするしかない。あとは(破局噴火は手に負えないとしても)できる限り大噴火の予知に努め、被害を最小限に食い止める工夫と努力をするしかないだろう。 
  


Posted by 松田まゆみ at 15:02Comments(0)地学

2015年05月09日

更別村の十勝坊主とその保全

 若い頃からいわゆる観光旅行というものに興味がない私は、どこかに出かけたくなっても観光地に行くことはほとんどない。出かける先はほとんどが山野だ。

 先日は、暖かな日和に誘われて十勝坊主を見にいった。十勝坊主というのは周氷河地形の構造土の一つで、地面がこぶ状に盛り上がった地形だ。構造土は地中の水分が凍結と融解を繰り返すことで形成される。たとえば大雪山の高山帯で見られるアースハンモックや多角形土、階状土なども構造土だが、十勝坊主は平地で見られる構造土だ。

 帯広畜産大学農場にある十勝坊主は北海道の天然記念物に指定されている他、音更町にあるものは町指定文化財になっている。また更別村のイタラタラキ川流域の十勝坊主群の一部は、北海道の学術自然保護区(勢雄地区)に指定されている。他に、帯広空港の近くにも十勝坊主群がある。

 今回、見にいったのは更別村と幕別町の境界付近を流れるイタラタラキ川流域の十勝坊主群だ。左岸の一角、さけ・ますふ化場の近くに学術自然保護区があり看板が出ている。




 実際に行って驚いたのだが、ここの保護区の十勝坊主群は猫の額のように小さい。そして保護区の南のイタラタラキ排水路流域にはもっと広い十勝坊主群がある。ササに覆われているので写真だと凹凸がちょっと分かりにくいのだが、直径が1メートル前後、高さが50センチ前後くらいのこぶがポコポコと連なり、不思議な光景だ。




 しかし、なぜ広い方の十勝坊主群を保護区に指定せず、猫の額のようなところを保護区にしたのだろうか?

 実はイタラタラキ川流域に広がる十勝坊主群は、バイパス水路工事によって分断され一部が壊されてしまっている。以下参照。

2.化石構造土:北海道更別村(農林水産省)

 つまり、広大な方の十勝坊主群にはバイパス水路の計画があったため保護区指定をせず、規模のごく小さい一部の場所のみを保護区指定したということではないかと思われる。貴重な周氷河地形の保存よりバイパス水路工事を優先したがゆえに、十勝坊主群の一部が壊されてしまったと言えそうだ。

 バイパス水路の工事に当たっては十勝坊主の調査が行われているのだが、農水省は「バイパス水路整備後における十勝坊主の形態変化や周辺植生の変化は認められず、現況河川を存置した工法は、自然環境への事業の影響軽減を十分果たしていると考えられます」と記している。工事が周氷河地形に変化を与えていないので問題ない、と言いたいようだ。ただし、工事が本当に影響を与えていないかどうかはそう簡単には分からないだろう。何十年も経過してから変化が現れるかもしれないのだから。

 では、何のためにバイパス水路を造ったのだろう?

 上記サイトの空中写真を見るとよく分かるのだが、イタラタラキ川流域は十勝坊主群のある部分を除き河川の直線化工事が行われている。十勝坊主群のある区間はその保護のために直線化工事をせずに蛇行した自然の状態を残したのである。しかし、もともと森林だったところを農地開発すれば大雨のときには河川に一気に水が流出するようになる。さらに流域に湿地が広がっていた蛇行河川を直線的に改修し河岸まで農地にしたのである。流速が落ちる蛇行部周辺で水が溢れ、その周辺の農地で湛水被害や過湿被害が生じるのは当然のことだ。その解消のために十勝坊主群を壊してバイパス水路を造ったのだ。

 また、十勝坊主群の上流にはヤチカンバの保護区があるのだが、周辺の農地の過湿被害を防ぐために行われた排水工事によってヤチカンバ生育地が乾燥化し、危機的な状況になっている。ヤチカンバは湿地に生育する植物なのだが、乾燥化によって生育地にササやヤマナラシなどが侵入してしまったのだ。

 結局、十勝坊主の分布域やヤチカンバの生育地のみ手をつけなければ保全できるという訳ではないことがよく分かる。森林や湿地を農地にしたり蛇行河川を直線化するということは、これまで保たれてきた自然のバランスを崩してしまうことに他ならない。自然のバランスを崩してしまったら、真の保全にはならないのだ。

 排水事業によって農地の排水は良くなったとしても、大雨などの際に河川に一気に水が流れ込むことに繋がる。水の出方が変わってしまえば河川にさまざまな影響を与えるし洪水の原因にもなる。そのために下流では床固工やら落差工などの治水工事が行われることになる。それらの工事がさらに下流の河床低下を引き起こすことになる。こうなると永遠に公共事業にお金をかけることになり自然破壊はさらに進むという悪循環に陥る。昨今、河川管理者によって行われている河川整備事業は、まさにこの悪循環といっても過言ではない。

 開発できるところはとことん開発しようという人間の傲慢さが、取り返しのつかない自然破壊を招き、税金の無駄遣いへと繋がっているのだ。
  


Posted by 松田まゆみ at 10:03Comments(0)地学自然保護

2014年10月22日

巨大噴火の国に生きる日本人

 先の御嶽山の噴火で、火山の噴火の恐ろしさを実感した人も多いと思うが、御嶽山の噴火は規模の大きなものではない。火山が連なる日本列島では大噴火、巨大噴火が何度も発生している。

 北海道でも過去にはもちろん大きな噴火が何度もあった。大雪山国立公園の層雲峡に行ったことがある人は多いと思うが、石狩川の峡谷にそそり立つ柱状節理は大雪山の噴火で流れ出た火砕流が冷えて固まったものだ。あの景観を見ただけで、ものすごく大量の火山噴出物が堆積したことが分かる。

 新得町屈足の十勝川の河岸には火山灰の堆積した崖がある。これは十勝北部の三股盆地(カルデラ)から噴出したものだ。この噴火でも大量の噴出物が十勝地方を覆った。

 屈斜路湖は日本最大のカルデラ湖で、支笏湖は2番目に大きなカルデラ湖だ。洞爺湖もカルデラ湖。数万年前とは言え、これらの火山が大噴火を起こした時はどんな状態になったのだろう。樽前山の噴火では十勝地方にも火山灰が堆積している。大気はしばしば噴煙で覆われ、太陽はさえぎられてうす暗くなり、一面灰色の世界に変わるのだろう。考えただけでもぞっとする。

 しかし、もっと規模の大きい巨大噴火は九州の火山だ。たとえば阿蘇山は世界でも有数の大型カルデラを持つし、姶良カルデラも巨大カルデラだ。九州のカルデラが巨大噴火を起こした場合、その火山灰はなんと日本中におよび、北海道を除く地域では10センチ以上の火山灰が降り積もると言われている。以下参照。

御嶽山に続く巨大噴火はロシアンルーレットの可能性!?プチ鹿島の『余計な下世話!』vol.64  (東京BREAKING NEWS)

 南九州で巨大噴火が起きた場合、「火砕流で全て焼き尽くされる領域には1000万人以上の人口がある」という。仮に大噴火の前兆が捉えられたとしても、数千万人の住民をすみやかに避難させるというのはとても困難なことだろう。もちろん川内原発の管理などはできなくなる。

 神戸大学大学院の研究グループによると、日本で今後100年以内に火砕流が100キロ余り先まで達するような巨大噴火が起きる確率はおよそ1%だそうだ。

巨大噴火”今後100年間で確率約1%” (NHKニュース)

 九州中部で巨大噴火が起きたと仮定すると、火山灰は西日本で50センチ東日本で20センチ、北海道でも場所によって5センチ以上積もると予測されている。日本中に火山灰が降るのだから、九州ではなくても人々の生活は大変なことになる。火山灰によって交通は麻痺し、ライフラインにも支障がでるだろう。農耕地は壊滅的な被害を受けて日本中が飢饉に襲われるに違いない。

 火山灰で太陽光も遮られて寒冷化するだろうから、降灰の少ない北海道でも作物は凶作になる可能性がある。太陽光発電もできなくなる。各地で暴動や略奪が起き、サバイバルゲームのようになるだろう。こうなると国家存亡の危機になるに違いない。さらに原発のコントロールができなくなれば、日本が完全に終わるだけではなく、世界中に放射能をばら撒くことになる。

 そうした大噴火、巨大噴火はごくたまにしか起きないので、今のように人口が増え近代都市が広がってから巨大噴火による被害を受けていないにすぎない。火山噴火に関し平穏な時代に生きている私たちは巨大噴火のことなどすっかり忘れていたに等しい。しかし川内原発の再稼働の審査をめぐって、巨大噴火の危険性が火山の専門家からも指摘されているし、また御嶽山の突然の噴火によって火山噴火に対する危機意識がにわかに高まってきた。

 今は平穏であってもいつかは必ず大噴火、巨大噴火が起きることは間違いない。そして、それがいつなのかは誰にも分からないのだ。「備えあれば憂いなし」と言うが、巨大噴火に関しては多少の備えなど焼け石に水だろう。ということは、私たちは心の片隅で巨大噴火を自覚しつつ、自分の生きている時代にそれが起きないことを願うしかないのだろうか。死傷者を最小限にするために噴火予知の体制づくりをし、いざとなったら命に関わる場所に住んでいる人たちは避難する以外何もできそうにない。

 もっとも、いつ起きるか分からないことに怯えていてもストレスになるだけだから、運を天にまかせ、せめて火山の造り出す美しい景色を楽しみたいとも思う。

 ただし、巨大噴火が起きる前に日本中の原発を廃炉にしておく責任が我々の世代にある。否、巨大噴火だけではなく巨大地震や巨大津波がいつ襲うかも分からないのだから、一刻も早く原発を止めて使用済み核燃料の安全な保管を真剣に考えるべきだ。

写真は3万年前に噴火したとされる大雪山のお鉢平カルデラ。




  


Posted by 松田まゆみ at 21:28Comments(0)地学

2014年09月30日

御嶽山の噴火は予測不可で済ませるべきではない

 27日の御嶽山の噴火は、多くの登山者が亡くなるという惨事となった。火山噴火予知連の藤井会長は、今回のような水蒸気爆発は予知が困難だと言う。しかし、御嶽山が噴火する可能性が高いと指摘していた人がいた。

 「地震の目」「噴火の目」という独自理論を展開している木村政昭氏は、「富士山大噴火!」(宝島社)、や「東海地震も関東大地震も起きない!」(宝島社)で、東北地方太平洋沖地震のあとに噴火する可能性の高い火山について言及している。これらの本で木村氏は、本州で少なくとも3つの火山の噴火が予想されるとし、富士山(2011年±4年)、浅間山(2012年±4年)、御嶽山(2013年±4年)と予測している。

 木村氏の理論は具体的な発生年月を特定するようなものではないが、巨大地震と関連づけて噴火の可能性が高いことを指摘しているという意味では注目に値する。

 気象庁は「火山の状況に関する解説情報」を発表している。御嶽山の場合、噴火前の9月11日、12日、16日に火山性地震が増えており、「地震活動が活発になっていることから、火山活動の推移に注意してください」と注意喚起していた。しかし、この情報は気象庁のホームページに掲載されているだけだ。

火山の状況に関する解説情報の発表状況 御嶽山2014年(気象庁)

 読売新聞の以下の報道もある。

御嶽山での火山性地震に水蒸気爆発のシグナル(読売新聞)

 火山性の地震の増加が見られたが、気象庁は直ちに噴火につながるとは考えずに噴火警戒レベルを引き上げることはしなかった。地震が増えても噴火しない場合もあることを考えると、地震の回数だけで噴火警戒レベルを上げることにはならないというのは分からなくもない。しかし、噴火警戒レベルを上げるには至らないということと、登山者などに火山性地震が増えているという情報を知らせるかどうかは別問題だ。

 現代の科学では地震や噴火は予知できないという人は多い。たしかに具体的な日時まで予測することはできないだろう。しかし地震に関していうなら、地震の前に地震雲が出現したり、ラドン濃度や地下水位に変化が見られるということは認められている。動物の異常行動なども昔から知られている。日時の予測はできなくても、前兆といえるものがあるのは確かだと思う。

 火山の噴火においても、注意深く観察していれば、火口からの水蒸気の噴出量の変化や硫黄臭などの強さ、いつもと違う微振動などといった変化があることが多いのではなかろうか。特に、山頂近くに山小屋があり登山者も多い山では、そうした変化は把握しやすいと思われる。

 地震の増加だけでは噴火は予知できないとしても、木村氏の予測、地震の増加、その他の変化を重ね合わせることで、少なくとも警戒する状態だったと言えるのではなかろうか。「噴火は予測できない」と言って済ませてしまうのは、すんなりとは納得できない。

 確実な噴火予知はできないとしても、火山性地震の増加という事実を登山者に知らせることは難しくない。たとえば気象庁など地震情報を把握している機関と観光業者が連携し、ロープーウェイの駅や登山口に地震が増えていることを掲示するようなことは簡単にできる。昨今は山の上でも電話が使えるのだから、山小屋に同様の注意喚起する掲示を出してもらうこともできるだろう。私なら、火山性地震が増えていることを知っていたなら登らないと思う。登山者に情報提供して注意喚起することが無意味とは思えない。

 今回の噴火で、私は御嶽山の山小屋の多さを初めて知った。気象庁が火山性地震の増加だけで噴火警戒レベルを上げたり注意喚起に踏み切れない背景には、観光業者への配慮があるように思えてならない。とくに噴火警戒レベルを上げて立入規制したなら、ロープーウェイや山小屋への経済的影響は避けられない。しかし経済的損失に気をつかっているのであれば、防災の観点からすれば本末転倒だ。山小屋もロープーウェイも危険であることを知りながら営業していると考えるべきだ。

 木村政昭氏は御嶽山の他に、富士山と浅間山の噴火も予測しており、3つの火山のうち浅間山が一番大きなエネルギーを蓄積していると思われるとしている。また富士山に関しては5つの兆候を挙げて警告している。島村英紀氏も富士山は山体膨張が進んでいて2006年からは加速していると指摘しているほか、噴火前に前兆があるかどうかも分からないとしている。

「富士山噴火しない」はあり得ない 前兆なしに噴火するケースも (夕刊フジ)

 富士山も浅間山も噴火の可能性が高いという認識のもとに、十分な警戒と防災の準備が必要だと思う。

 もちろん、たとえ噴火の予知があるていど可能であるとしても、原発が巨大噴火に対処できるなどということはあり得ないだろう。降灰によって電源喪失することもあり得るだろうし、原発に保管されている核燃料を速やかに安全なところに搬出できるとも思えない。過去に巨大地震や巨大津波、巨大噴火に繰り返し襲われてきた日本において、巨大地震も巨大津波も巨大噴火も決して想定外のできごとではない。

 御嶽山の噴火は、原子力をコントロールできると思っている傲慢な人間への自然からの警告と受け止めるべきだ。

       


Posted by 松田まゆみ at 15:38Comments(0)地学

2013年04月29日

木村政昭氏が警告する富士山の噴火

 先日「木村政昭氏の予測する伊豆・小笠原海溝の巨大地震(追記あり)」という記事を書いたが、木村氏は巨大地震だけではなく火山噴火の予測もしている。そこで、「富士山大噴火! 不気味な5つの兆候」(宝島社)から、富士山噴火について紹介しておきたい。

 木村氏は、東北地方太平洋沖地震のあと、本州で少なくとも3つの火山の噴火を予測している。ひとつは富士山で、「噴火の目」理論を使って予測すると2011年±4年。2015年までには噴火するとみている。ほかに浅間山の2012年±4年と御嶽山の2013年±4年である。

 いずれもすでに予測された噴火期間に入っているのだが、広大な範囲に被害が及ぶと考えられるのはやはり富士山だろう。そして、富士山噴火の兆候はすでに現れているという。

 木村氏が挙げる「富士山噴火の5つの兆候」とは以下である。

1.伊豆諸島の噴火と静岡沖地震
 富士山と同じ、フィリピン海プレートにある伊豆諸島の火山活動が活発化してきており、2009年8月には駿河湾でM6.5の静岡沖地震が発生した。また、東北地方太平洋沖地震によって房総沖に強い圧力がかかっており、富士山の噴火に影響を与えていると考えられる。

2.2000年からの低周波地震の活発化
 噴火が近くなると、富士山付近の低周波地震が活発になるが、2000年から地震活動が活発化している。低周波地震の震源の近くにはマグマがあると考えられ、マグマだまりが上昇してきていると考えられる。

3.富士山東北東斜面からの噴気
 2003年9月に東北東斜面に陥没と噴気孔が確認された。地下のマグマ活動が活発化して地下水を温めているのが原因と思われる。

4.河口湖での発泡現象
 1987年および2006年に河口湖で発泡現象が見られた。富士山地下のマグマだまりが圧力を受けて縮まり、マグマが上昇して湖底に亀裂ができ、水中にガス成分が噴き出してきたと考えられる。また、河口湖では水位低下が見られ、湖底の亀裂から水が漏れていると考えられる。

5.静岡県東部地震
 東北地方太平洋沖地震直後から、富士山付近で通常の地震活動が活発化している。

 ほかにも、青木ヶ原の樹海にある風穴内の氷筍(氷の柱)が縮小しており、地熱が上がっていると考えられるそうだ。

 そういえば、河口湖では今年に入ってから著しい水位低下があり、六角堂が陸続きになってしまったというニュースが流れていた。

河口湖で3メートル以上の水位低下 東京直下地震 富士山噴火 前兆現象なのか(ライブドアニュース)

 富士山噴火についてはマスコミなどもしばしば取り上げているのだが、噴火した場合は富士山周辺のみならず首都圏にまで影響が及ぶことがもっとも懸念される。具体的には、以下のような被害だ。

・溶岩流による破壊
 河口から溶岩が流れ出た場合は溶岩流が通過するところは根こそぎ破壊される。溶岩流は速度が遅いために人的被害は最小限に食い止められると考えられるが、経済的な損失は大きい。

・噴石による被害
 高い熱を帯びた噴石の飛散、落下による被害が想定される。噴石による死傷者や建物などの損壊、焼失が考えられる。

・火山灰による被害
 噴煙柱が成層圏に達すると偏西風によって流れるため、首都圏にまで火山灰が降り積もる。火山灰は角が尖った細かい粒子のため、吸い込むと健康被害を生じる。また、火山灰によって水道や電気などのライフラインが停止するほか、飛行機や鉄道など交通機関がマヒし、道路も閉鎖される。交通機関のマヒは数週間続くおそれがある。コンピューター、デジカメ、携帯電話などの精密機器が故障する可能性がある。

・火砕流や土石流、山体崩壊などによる被害も考えられる。もちろん農業にも大きな被害がでる。

 さまざまな被害が想定されるのだが、溶岩流や噴石による被害などは事前の避難によって回避できるだろう。もっとも深刻なのは火山灰による首都圏の機能のマヒではなかろうか。首都圏での断水や停電は日頃から備えておくしかない。各家庭や職場で飲料水や保存のきく食品を備蓄するだけではなく、マスクやゴーグル、精密機器を保護するポリ袋、携帯ラジオや懐中電灯なども用意しておくべきだろう。また、コンタクトレンズは使えなくなる。

 木村氏は、噴火の前には気象庁からの噴火予報が出されるだろうし、ある日突然大噴火が起きるということにはならないだろうとしているが、気象庁の噴火予報が出てから準備をするのでは遅い。マスコミは市民がどのような準備をしておくべきか、火山灰が降ったらどのような対処をしたらよいのかということこそ報道すべきではなかろうか。

 富士山は781年から1083年まで302年間活動したあと、1084年から1510年まで426年間休止期に入った。そして1511年に活動を再開して1707年まで196年間活動し、それ以降はまた休止期にはいっており休止期が300年以上続いているという(木村政昭著「『地震の目』で予知する次の大地震」より)。一度噴火すると、200年とか300年もの長期間にわたって活動期に入る火山のようだ。

 しかも、富士山の活動期と巨大地震の活動期はほぼ重なっている。地球は今、地震の活動期に入っていると言われているが、そう考えると富士山の噴火はより現実味を帯びてくる。

 今のように大都市に人が密集し、高度に発達した通信網に頼った生活をしている時代に地震や噴火の活動期に入るというのは、想像を絶する被害が想定される。私たちは巨大地震と火山噴火の両方に備えていかねばならないようだ。もちろん、原発など廃炉にするしか選択肢はないだろう。

  


Posted by 松田まゆみ at 15:25Comments(0)地学

2013年04月18日

木村政昭氏の予測する伊豆・小笠原海溝の巨大地震(追記あり)

 東京に行った際、気になっていた木村政昭氏の本を3冊入手した。木村政昭氏は琉球大名誉教授で海洋地震学者だが、「地震の目」「噴火の目」という独自の理論で数多くの地震や火山噴火を予測し的中させてきた。たとえば1986年の三原山噴火、1991年の普賢岳噴火、1995年の兵庫県南部地震、2004年の新潟県中越地震、2011年の東北地方太平洋沖地震など。

 入手した3冊は、「地震の目で予知する次の大地震」(マガジンランド、2012年3月発行)、「富士山大噴火 不気味な5つの兆候」(宝島社、2011年8月発行)、「東海地震も関東大地震も起きない! 地震予知はなぜ外れるのか」(宝島社、2013年3月発行)。「東海地震も関東大地震も起きない!」には、木村氏の最新の地震予測が掲載されている。

 私は、木村氏が多くの地震や噴火を予測し当ててきたことを知って以来、「地震の目」「噴火の目」という理論に興味を抱いていたのだが、木村氏の本を読んでその概要が分かってきた。もちろん「地震の目」理論は日本だけではなく、海外の地震にも当てはめることができる。

 木村氏の「地震の目」理論はプレートテクトニクスに基づいたもので、大地震の予測法である。かいつまんで説明すると以下のようになる。

・数十年にわたって巨大地震(M6.5以上)が起きていない場所(第1種地震空白域)を探す。
・第1種地震空白域に、ここ数十年間に発生したM6以上の地震の震源地をプロットすると、震源地がドーナツ状に分布していく(地震の輪)。
・「地震の輪」の中に人の黒目のように地震が発生している場所が現れることがある(第2種地震空白域:固着域)。
・第2種地震空白域に、さらに同じ時期に起きた地震の震源を「M5以上」「M3以上」などと条件を変えてプロットすると一定の地域に黒い点が集中してくる。これを「地震の目」と呼び、大地震の震源地となる。
・「地震の目」は時間とともに一定方向に移動していくことがあり、その延長線上が本震の震源地となる。
・「地震の目」の大きさと地震の規模はほぼ比例しており、「地震の目」の長径からマグニチュードを推定することができる。
・「地震の目」では地震発生回数が3つの山をもって段階的に増えていくが、最初に地震が活発化してから30年±3年で大地震が発生すると予測される。

 火山噴火もプレートの移動によってマグマに圧力がかかることで生じるのであり、地震と噴火は同根である。興味深いのは、大地震が発生する前には、震央に近い火山から遠い火山へと、波紋のように順に噴火していく現象が見られるというのだ。地震と火山噴火は密接な関係にある。

 木村氏は噴火についても地震と同様に、大噴火の前、過去30年以上にわたり火山の地下で発生した地震を解析する手法で「噴火の目」理論を導きだした。噴火においても地震と同様に地震回数に3つのピークがあり、最初に地震が活発化してから35年±4年後で主噴火に至ると考えられるそうだ。

 地震予知などできないという地震学者は多いが、木村氏の本を読めばそれは大きな間違いであると理解できるだろう。何しろ、木村氏には予知の実績がある。「地震の目」理論でおおよその発生年を予測し、さらに宏観現象(電磁波や地磁気の異常、ラドン濃度の変化、地震雲、地下水の水位変化など)と言われる様々な地震前兆現象を組み合わせることで、地震発生時期を絞り込むことも決して実現不可能ではない。

 政府はかなり前から東海・東南海・南海地震がいつ起きてもおかしくないとして警告を発してきた。しかし、これらの地震は起きずに兵庫県南部地震や東北地方太平洋沖地震という大地震が起きて大きな被害がもたらされた。「東海地震も関東大地震も起きない!」では、なぜ国の予知が当たらないのかということにも言及しているのだが、この国では地震予知の予算の使い方を間違えているとしか思えない。

 ところで、もっとも気になるのは最新刊で木村氏の予測している今後の巨大地震だ。それによると日本近海でM8からM9クラスの「地震の目」が複数ある。

 このうちM9と予測しているのは伊豆・小笠原海溝に沿った鳥島南方沖を震央とする「地震の目」だ。発生予測年は2012年±3年。ということは、あの悪夢のような超巨大地震がいつ起きてもおかしくないことになる。気になるのはここで地震が起きた場合に破壊される断層の長さだ。M9の東北地方太平洋沖地震では、長さ500km幅200kmにわたって断層が破壊された。これと同じ規模の破壊が生じると仮定するなら、関東地方に近いところにまで達する可能性があり、首都圏もかなり揺れる可能性がある。もちろん大津波も押し寄せるだろう。関東地方は十分な警戒や備えが必要だ。

 もう一つ気になるのが、東北地方太平洋沖地震のアウターライズ地震(海溝の外側で起きる地震)の「地震の目」だ。これは2020年±3年、M8.0となっている。

 また、九州から南西諸島にかけても「地震の目」がある。ひとつは日向灘南部で、2020年±4年、M7という予測。もう一つは奄美大島東方沖の2019年±3年、M8.8。南西諸島方面も注意が必要だ。

 もちろんこれらは予測であり、巨大地震が発生することでプレートにかかる圧力が変化した場合には「地震の目」も変わることがあるだろう。

 しかし、これだけ巨大地震の「地震の目」が日本近海に現れている以上、警戒を怠ってはならない。昨日は三宅島の近海と石垣島近海で中規模地震があった。これらの地震も予測されている巨大地震と無関係ではないだろう。とりわけ伊豆・小笠原海溝には歪がたまっていると考えられ、地震だけではなく伊豆諸島や富士山の火山噴火も懸念される。

 木村さんのこれだけの実績がありながら、政府は「地震の目」理論に関心を示さないようだ。マスコミは相変わらず、東海・東南海・南海の連動地震や首都直下地震ばかりを取り上げている。しかし、木村氏は東海から南海にかけての大地震や首都直下地震はそれほど逼迫していないと言う。原発問題もそうだが、この国の地震予知や防災の姿勢には溜め息が出るばかりだ。

【4月20日追記】
 ロシアの研究者が、独自の地震予知理論により2013年から2014年にかけて日本の太平洋側でM9クラスの巨大地震が起きると予測している。木村さんが巨大地震を予測している伊豆・小笠原海溝付近に近く、超巨大地震の再来が懸念される。

ロシア人学者「一年半以内にM9が日本で発生する可能性あり」関東東部から南海トラフのエリアで前兆! (正しい情報を探すブログ)

 もし数日前に巨大地震の予知ができ、被害が想定される地域の住民を事前に避難させることができれば、人的被害を限りなくゼロに近づけることができるだろう。国はこういう研究にこそ力を入れてほしい。

  


Posted by 松田まゆみ at 21:08Comments(2)地学

2012年05月16日

変わりゆく石狩川河口の海岸線

 石狩川の河口部は左岸に砂嘴が伸びており、川が北東に大きく蛇行して石狩湾へと注いでいる。そして左岸の砂嘴の先端から1.5キロメートルほどのところに石狩燈台がある。はじめて石狩燈台を見たとき「なんでこんな中途半端なところに燈台をつくったのだろう?」という思いが頭をよぎったのだが、先日その理由が分かった。

 石狩燈台は明治25年に建てられたのだが、その時は燈台のすぐ先が石狩川の河口だったのだ。燈台が建てられてから砂嘴がどんどん延び、河口は燈台からどんどん遠ざかってしまったのである。昭和40年代になって砂嘴の伸長が止まったという。

 燈台ができてから僅か70年ほどの間に砂嘴が1.5キロメートルも延びたことになる。そこが今は海浜植物の生育地として知られる「はまなすの丘公園」になっているのである。この砂嘴にはイソスミレなどの希少な植物が生育しているほか、イソコモリグモも生息している。今はちょうどイソスミレの開花期だ。





 河口の左岸には聚富(しっぷ)地区と呼ばれるところがある。明治時代には聚富地区は海岸線のすぐ近くにあった。明治29年発行の国土地理院の地形図と昭和22年発行の地形図を比べると、昭和22年には海岸善が100メートルほど前進している。そして、昭和40年代にはさらに400メートル海岸線が前進したという。

 明治時代の半ばから大量の砂が河口に運搬され、左岸に長さ1.5キロメートル、幅数百メートルもの砂嘴をつくるとともに、右岸にも大量の土砂を堆積させたのだ。広大な砂嘴と、広々とした聚富海岸の砂浜を目の当たりにすると、堆積した土砂の量と速度に目を見張る。

 下の写真は聚富地区の番屋だ。手前が内陸側で、海に向かって撮影したものだ。以前はこの番屋のすぐ前が海だったそうだが、今はご覧の通り海岸線ははるか彼方になっている。





 聚富地区の海岸には広大な砂浜が広がり、ハマニンニクやハマヒルガオがまばらに生える砂地はイソコモリグモの好適な生息地となっている。イソコモリグモの生息地は明治時代に比べたらはるかに広くなったのだろう。





 もっともかつては石狩浜の全域にイソコモリグモの生息地が広がっていたと推測されるのだが、今は石狩湾新港の南西では確認されていない。開発行為と海岸浸食により生息地の半分以上が消失してしまった。

 海岸線は砂の堆積と浸食のバランスによって変動するのだが、石狩川河口の場合、河川によって大量の土砂が運ばれてきたために砂嘴が延び、聚富地区では海岸線が前進したのだろう。その大量の土砂は森林伐採による土砂の流出の増大と河道の直線化が関係していると思われる。明治時代には石狩川流域で大量の伐採が行われ、木材は筏を組んで流送していた。乱伐によって山から大量の土砂が流出しただろうことは想像に難くない。山に鬱蒼と茂る元手がタダの森林は「お金の山」に見えたに違いない。自然破壊がもたらす弊害など何も考えなかったのだろう。石狩川河口の砂嘴は金の亡者の欲の結果と言えるかもしれない。

 現在は砂嘴の先端部は浸食が進んでいるそうだ。ダムにより土砂の供給が減ったことが関係しているのだろう。人間の営みが海岸の形状すら大きく変えてしまうことを物語っている。それと同時に、海浜を生息地とする動植物も影響を受けることになる。

 石狩海岸には風力発電の計画があるが、残された砂丘の生態系をこれ以上壊すようなことはすべきではない。

  


Posted by 松田まゆみ at 11:57Comments(0)地学

2012年03月19日

巨大地震に警戒を!

 3月14日に三陸沖(北海道南東沖)でマグニチュード6.8の地震があった。震源地は日本海溝の外側で、ちょうど海溝がくの字型にカーブしているあたりだ。アウターライズ地震ということだろう。私の居住地でも震度は小さいながらもゆらゆらとした揺れがあり、3.11を思い起こさせるような揺れだった。それに続いて千葉の東方沖でマグニチュード6.1の地震があった。

 これらの地震については、以下の「フレッシュビーンズ」のホームページで分かりやすく説明している。

2012年3月14日発生東北アウターライズ地震について

 アウターライズ地震、つまり3.11の東北地方太平洋沖地震の震源域の海溝の外側で起きる地震については、NPO法人国際地震予知研究所が昨年から警告を発しており、マグニチュード9クラスになると予測している。3.11より震源地が遠いので地震による揺れはそれほど大きくないが、正断層の地震になるため大きな津波が押し寄せる可能性が高いという。

 3月14日の三陸沖の地震は、国際地震予知研究所が予測しているアウターライズ地震の震源域の北端にあたる。そして、千葉や茨城沖は南端にあたるのだ。3北海道の南部から関東にかけてかなりの歪がたまっていると考えられ、どこが大きく動いてもおかしくない状態なのだと思う。

 3月14日の地震を契機に、巨大地震への警告が発せられている。以下は国際地震予知研究所のメンバーである麒麟地震研究所の今日のツイッターだ。緊迫感が伝わってくる。

http://twitter.com/#!/kirinjisinken/status/181528774989451265
観測機1レンジ999 8時40分のデータです。今、余震域の強い反応が出ています。数日間は要注意です。アウターライズ地震は当観測機だけでは無く他の観測データから見ても数週間は要警戒です。 #jishin#地震 http://pic.twitter.com/WfKoFOMG

http://twitter.com/#!/kirinjisinken/status/181574139943993344
観測機1フルレンジのデータです。72000の非常に大きな強い反応が出現しています。しかも観測機2と同期しています。昨年の3月9日は58000でした。確定ではありませんが要警戒以上です。 #jishin#地震#津波 http://pic.twitter.com/D324iUfX

http://twitter.com/#!/kirinjisinken/status/181578264479928320
観測機2のフルレンジ11時43分のデータです。観測機2はまだ検証中ですが観測機1と同期しています。こちらは感度良いので130000のデータが出ています大きさより同期していること重要です。 #地震#jishin津波 http://pic.twitter.com/Z4qLm09L

 もちろん予測であり確実にもうじき巨大地震が起こるとは言えないが、いよいよ巨大地震のスタンバイに入った可能性がある。
  


Posted by 松田まゆみ at 14:12Comments(0)地学

2012年02月07日

道東沖の地震に警戒を

 このところ気にせざるを得ないのが放射能と地震だ。日本はいつどこで大きな地震が起きてもおかしくない状態のようなので、予測などをこまめにチェックするようにしている。

 とりわけ気になるのが複数の方が指摘している茨城、房総沖など関東地方の沖合の海溝型地震と、青森から道東沖の海溝で発生する地震、それと東北地方太平洋沖地震の震源の外側で起きるアウターライズ地震だ。

 そんななかで先月から北海道沿岸での地震を警告しているのが地震と火山の研究者である塩井宏幸さんだ。で、さきほど塩井さんがツイッターで再び警告を発していた。以下が塩井さんのツイッター。

https://twitter.com/#!/maguro_kumazo/status/166752883570769920
一刻を争うかもしれないので報告します。北海道太平洋側のGPS基準点座標変動をチェックしました。1月21日時点のデータで道東~道南の東方偏位は加速を増大しながら継続中です。

https://twitter.com/#!/maguro_kumazo/status/166752978164916224
1月14日時点の報告で東北地方太平洋沖地震前の変動との比較から同地震と同様の変動期間があるとして2月7日を最長と予測しましたが、最短が2月7日です。1月21日時点のデータでは無限大に発散する日時は特定できません。最も長く想定しても2月15日前後ですが、そこまで時間はないでしょう。

https://twitter.com/#!/maguro_kumazo/status/166753031831035904
変動期間の長さが地震規模と相関があると仮定すると、M9以上ということになります。東方偏位の変動量分布から予測される震源域は千島列島南部沖~根室半島沖~釧路半島沖~十勝沖~浦河沖です。

https://twitter.com/#!/maguro_kumazo/status/166753079457361921
但し、北海道内で最も東方偏位量が大きく、南北変動にも顕著な北方偏位の増大が見られるのは十勝地方の大樹です。この周辺でも大きなスベリが予測されます。

https://twitter.com/#!/maguro_kumazo/status/166753340963815424
北海道太平洋沿いの市町村役場等に知り合いのおられる方は防災担当の方に伝わるようにご連絡お願いします。マスコミ関係にもはたらきかけることができれば良いのですが・・・それに一番被害が予測される千島列島の方々になんとか通知できないでしょうか?

 塩井さんのこの予測が当たるとすれば、近いうちに道東沖でかなり大きな地震が起きるだろう。

 私の居住地は北海道十勝地方の内陸部だから、海溝型の地震があってもそれほど大きく揺れるとは思えない。とは言え、2003年のマグニチュード8の十勝沖地震では震源に近い町村で震度6弱を記録し、私の居住する町は震度5で、ガラスが割れるなどの被害が相次いだ。マグニチュード9の地震がきたなら沿岸は大変な揺れになるだろうし内陸部とて震度5では済まないかもしれない。もちろん沿岸では津波も心配だ。

 「備えあれば憂いなし」というが、とにかく警戒だけはしておいたほうがよさそうだ。予測が外れればそれに越したことはないのだから。
  


Posted by 松田まゆみ at 15:11Comments(2)地学

2012年01月26日

いよいよマスコミが大地震、大津波への警告を発しはじめた

 今日の北海道新聞朝刊のトップ記事は、「東北北部沖にも震源」とのタイトルで、北海道大学の平川一臣教授の新学説についての紹介だった。

 平川さんは、北海道と東北で津波痕跡調査を行い、過去の3500年間に7回以上の巨大津波があったことを確認した。道東沖を襲った巨大津波は17世紀、3~4世紀、2500年前、3500年前の4回で、前回の発生から400年が経過し、次の発生の切迫度は「大きくも小さくもない」という。

 東北北部沖を襲った巨大津波は12~13世紀、紀元前後、3000年前の3回で、前回の発生から800~900年が経過しており、次の発生の切迫度は「極めて高い」そうだ。

 北海道を襲う巨大津波は道東沖と東北北部沖でそれぞれおよそ千年間隔で起きていることになる。そして、どちらが震源であっても北海道の太平洋岸には大津波がくると予測されるのだ。

 東北北部沖といえば、先の3.11の地震で割れ残っているとされている場所だ。そこで近い将来大きな地震が起きる可能性がある。また、道東沖もいつ地震がくるか分からない。いずれにしても警戒が必要だ。

 「現代ビジネス」も、こんな記事を書いている。

地震予知の第一人者・長尾年恭東海大学教授「首都圏直下型M8」「東海地震M9」はまもなく来るものと覚悟してください

「アウターライズ地震」が列島を襲う 「3.11」まで2カ月を切った 官邸と文科省が隠蔽しつつ密かに恐れる「次」の悪夢

前兆現象がこんなに! M8M9大地震いよいよ本当に来そうで怖い

 これらの記事では東北地方太平洋沖地震で大地震の発生時期が早まったことと、3.11の地震で地盤が割れ残っている青森沖と房総沖の大地震を指摘しているほか、首都圏直下型地震や、3.11の震源域の海溝の外側で起きる「アウターライズ地震」、東海地震への警告を発している。

 太平洋沿岸はいつどこで巨大地震がおきてもおかしくないし、震源域が海であれば巨大津波に襲われると考えられるのだ。土佐湾で20メートル、三重県で15メートル、愛知・静岡で10メートルなどという予測もあるという。東京、大阪、名古屋などといった大都市が水浸しになる可能性がある。

 そして、驚くのが「『アウターライズ地震』が列島を襲う」という記事にある官邸に近い民主党の中堅代議士の話。一部引用しよう。

「3・11由来のアウターライズ地震については、本震から1ヵ月以内にも起こる可能性があるとして、官邸は密かに恐れ警戒していた。本震発生当日に宮城県沖の日本海溝の外側で発生した地震はアウターライズ地震だったとされているが、地震の規模がM7.5と小さく、官邸はこれを、想定される巨大アウターライズ地震の前震と捉えていた。
 地震のエネルギーは発生が延びれば延びるほど蓄積されていくため、本震から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月などの節目の時期を経て、官邸は一段と危機感を募らせています」
 この中堅代議士によれば、その一方で官邸が情報の公開を「ひた隠し」にしてきたのは、予想される被害があまりにも甚大であり、かつ、現状では打つ手がないからだという。要は、情報を公開すれば国民から必要な対策の実施を迫られ、必然的に「打つ手なし」の現状が白日の下に晒されて、大批判と大パニックに見舞われることを、官邸が警戒し思考停止に陥った結果だと言うのである。


 政府は3.11直後にアウターライズ地震を想定していながら、予想される被害があまりに甚大で打つ手がないという理由で、国民に隠し続けていたというのだ。原発事故の情報隠蔽と同じ構図がここにもある。これほどまで国民を馬鹿にした政府もなかなかないのではないか。

 また、以下のような記事もある。危険なのは太平洋側ばかりではない。日本海側の断層がずれたらやはり大きな津波に襲われるのだ。

津波:佐渡北方震源、県が予測 西ノ島・国賀港、M7.85で10.46メートル/島根(毎日新聞)

 東京大学地震研究所では、3.11の地震以降、首都圏での地震活動が活発化してきていることから、南関東のM7程度の地震の発生確率を「今後30年で98%」「今後4年で70%」とする試算を発表した。近い将来に首都圏で大地震がある可能性がかなり高いということだ。

2011年東北地方太平洋沖地震による首都圏の地震活動の変化について

 そして、沖縄を除く日本中の海岸に原発がある。これほど恐ろしいことはない。石橋克彦さんなど一部の地震学者が以前から警告してきた危機が現実のものとなりつつあるのだ。一刻も早く原発を止め、安全の確保に最大限の努力をしなければならないのに、やれストレステストだ、再稼働だなどと言っているのはもはや狂気に等しい。

 北大の森谷武男さんの地震エコーのデータは非公開になってしまった。エコーのデータが収束したという情報は入っていないので、当初の12月から1月という予測より大地震の発生は遅くなっていると思われるが、一人ひとりが迫りくる大地震への警戒と対策の強化に努めるしかない。

 3.11から10カ月余り。迫りくる地震や津波への警戒を呼び掛けるのがあまりにも遅い。
  


Posted by 松田まゆみ at 22:42Comments(0)地学