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鬼蜘蛛おばさんの疑問箱 › えりもの森裁判

2009年06月20日

えりもの森の皆伐は疑惑のデパート

 19日は「えりもの森裁判」の口頭弁論でした。前回は4月17日だったのですが、ブログ非公開事件のために報告していませんでしたので、今回まとめて報告します。

 4月の原告の準備書面では「請求の変更」と「ナキウサギ生息地の破壊」について論じましたが、今回、それに対して被告からの反論がありました。前回と今回の口頭弁論での論点は、「越境伐採問題」と「請求の変更」についてです。

 越境伐採については「越境伐採疑惑と林班図」「越境伐採の隠蔽工作?」に書きましたので、詳細はそちらを参照してください。原告は、林班図の区画を超えて伐採していることを越境伐採であり違法行為だと指摘しているのですが、被告はこれに対し「平成13年の時点で基本図が変わっていた」と反論しました。林班の基本図が変更されて区画の線引きが変わっていたという、驚くべき主張です。

 森林の区画(林班や小班)は森林管理の基本となるもので、森林の戸籍ともいえる森林簿も小班ごとに記載されています。したがって、特別な事情がない限り簡単に変更するようなものではありません。区画を変更したなら、森林簿に記載された小班の面積や蓄積量も書き換えなければならないはずです。いったいどんな理由があって、そんな面倒な変更をしなければならないのでしょうか? 皆目見当がつきません。私には、困り果てた末の言い訳としか思えません。

 さて、この「えりもの森裁判」は、たまたまえりもの道有林に調査に入っていた自然保護団体のメンバーが、天然林の皆伐と作業道によるナキウサギの生息地の破壊を発見し、それが違法であるとして住民監査請求をしたことがはじまりです。監査請求が不受理とされたために住民訴訟を起こしたのです。このときの請求では、「日高支庁長が、契約を締結した支庁長個人に損害賠償の請求をせよ」としていました。ところが、その後の原告らの調査や裁判の中で、次々と問題の詳細が明らかになってきたのです(それらについては、このブログのカテゴリー「えりもの森裁判」で報告しています)。たまたま見つけた伐採について深く追求していったら、伐採と植林がセットとなった、まるで疑惑のデパートともいえる道有林施業の実態が見えてきたのです。

 そこで原告らは、法律構成をより具体的にするために4月に「訴えの変更」をしました。当初は「契約及びその履行」に違法があったと主張していたのですが、日高森づくりセンターのセンター長への監督義務違反や履行全体(一面を伐採したこと)に対する損害賠償など、請求内容をより具体的にしたのです。ところが、被告はこの変更を認めないと主張しました。

 原告としては、違法な事実には変わりがないので、被告が変更を認めないことに正当な理由はないと考えています。被告は裁判によって次々と明らかになってきた疑惑、すなわち原告らの詳細な請求内容に反論できないために、請求の変更を認めたくないのでしょう。今回の被告の主張に対し、次回に原告が反論します。その後は、被告である北海道がこれまでの原告の主張に対して反論し、双方の主張が出揃った段階で立証に入ることになります。

 2005年の末に提訴したこの裁判も3年半が経過し、違法性の主張はほぼ終わって最後の段階に入ります。これまで道有林でどのような施行が行なわれていたかは、一般の人に知られることがなくベールに包まれていました。裁判でその実態に切り込んだことで「疑惑のデパート」が次第に明るみになってきたのです。そのような意味で、原告としては画期的な裁判だと思っているのですが・・・。

  


Posted by 松田まゆみ at 14:13Comments(2)えりもの森裁判

2009年02月15日

越境伐採の隠蔽工作?

 2月13日は「えりもの森裁判」の口頭弁論でした。この日の主張は前回もお知らせした越境伐採疑惑なのですが、さらに驚くべき新たな事実が明らかになったのです。

 この裁判で問題にしているのは152林班の43小班(10伐区、2.40ヘクタール)で行なわれた伐採です。書類上では日高森づくりセンターは、ここで376本の木の収穫調査を行い立木のまま業者に販売したということになっています。

 ところが実際には43小班(10伐区)の区画から大きくはみ出し、しかも700本を越える伐採が行なわれていたのです。その越境した面積はおよそ1ヘクタールほどもあります。こんなに越境していたなら林班図と現地を見比べてすぐに気づくはずです。ところが、私たちは現場に何回も行っているのに、10月の現地裁判のときまで越境していたことにはっきりと気づきませんでした。なぜでしょうか?

 私たち原告がここの皆伐地を発見したのは平成17年の9月のことです。この皆伐に疑問を抱いた原告は、伐採に関わる資料を情報公開で入手しました。その資料の林班図は、実際の伐採状況に近いような形になっていたのです。そして私たちはこの図が43小班(10伐区)の線引きだとずっと信じていました。

 しかし、昨年10月の現場検証のときに被告の出した図面(伐採の実態に即した図)によって越境伐採疑惑が持ち上がりました。なぜなら、その図面は上記の情報公開で入手した図とも異なっていたのです。いったいこれはどういうことなのか?

 そこで43小班(10伐区)の線引きについて再度調べ直してみたのです。すると、情報公開で入手した図はなんと北側のラインが修正液のようなもので修正されて範囲が拡大された痕跡があったのです。今回の口頭弁論でも林班図の原図を実際に見せてもらったのですが、確かに小班の線を白く消した跡がはっきりとわかりました。「なんじゃこりゃ?!」という感じです。

 つまり我々に越境伐採を見破られないように、情報公開の資料では小班の区画を勝手に修正し本来の区画より広くした図を出したと推測されるのです。これって、文書の偽造では・・・。ところが、実際にはその図面よりさらにはみ出て伐採していたのです。そこで伐採の実態に合わせて線引きした図面が現地裁判のときに出されたのです。これまでも情報開示で入手した文書と裁判で出された同じ文書の日付が異なっていたという不可解なできごとも起きており(「原告の主張を展開します」参照)、被告が文書を改ざんしている疑惑が拭えません。

 越境伐採は、日高森づくりセンターの職員が森林管理の権限を逸脱して北海道の財産を業者とともに伐採・搬出したということですから、森林法197条(保安林内の盗伐)に違反した違法行為といえます。

 被告側は越境伐採を「誤差」だというような弁解をしているのですが、1ヘクタールもの誤差など常識的に考えられず、故意によるものとしか思えないのです。どうもこの裁判では、突っ込めば突っ込むほどさまざまな疑惑がゾロゾロ出てきます。道民の財産である道有林が、道民の知らないところでいかにいい加減に扱われているかということなのです。

 裁判のあとにこの越境伐採について記者会見をしたのですが、マスコミの皆さんもかなり興味津々という感じでした。
  


Posted by 松田まゆみ at 11:01Comments(2)えりもの森裁判

2008年12月06日

越境伐採疑惑と林班図

 昨日は「えりもの森裁判」の口頭弁論でした。

 今回、裁判所に提出した準備書面は生物多様性に関する主張ですが、法廷で裁判長がこだわっていたことのひとつは、以下の記事にも書いた越境伐採疑惑に関わる林班の図面に関することです。

現地裁判報告(1)

 森林を管理するためには、森林の位置を定めて区分けし、その区分けごとに状況を詳しく記載した台帳が必要になります。

 森林の位置を定めているのが林班図です。森林は尾根や沢、林道などを利用して「林班」という区画に線引きされています。林班はさらに森林所有者、樹種、林齢、作業上の取り扱いが同一な部分などによって小班に細分されています。

 小班ごとに森林の状況を詳しく記載した台帳を森林簿といいます。森林簿には所在地や所有者、面積、林種、施業方法、樹種、林齢、平均樹高、伐採の方法、材積、成長量などさまざまな項目が記載されています。

 森林の伐採計画も当然のことながら森林簿をもとに立てられます。ですから、森林管理の土台となっている区画の線引きは、簡単に変えるようなものではありません。

 ところが大変不可解なことに、被告が現地裁判で出した図面の小班(伐区)の線引きは契約時の図面と異なっており、現地(伐採の実態)に即した線引きになっているのです。林班図が契約時とそれ以降で書き換えられている可能性があります。

 このために、原告は被告に対して「契約に添付されている林班図の原図」を見せるように要求しました。

 被告は、契約の対象となっている伐採に即した図面(伐採の実態に合った図面)が適正だと主張したいようです。でも契約より実態が適正などというのは、どう考えても変です。

 原告は、伐採の契約書に添付されている図面に基づいて伐採範囲が限定されなければならないという考えです。伐採計画は小班ごとに立てられるのですから、小班を越えて収穫調査を行うということにはなりません。小班を越えて収穫調査をし、それに基づいて伐採しているのであれば越境伐採であり、違法といえるでしょう。

 被告は次回までに林班図を出すことになっています。さて、どんな図面が出てくるのでしょうか。
  


Posted by 松田まゆみ at 14:43Comments(1)えりもの森裁判

2008年11月03日

現地裁判報告(3)

説明できない受光伐と支障木

 裁判のもっとも核心的な部分は「受光伐」を理由にした「皆伐」です。売り払い木は376本と支障木18本なのですから、それ以外の樹木は残っていなければなりません。ところが、376本のおよそ2倍もの本数の木が伐られ、皆伐状態になっているのです。

 北海道では、平成14年度から木材生産を目的とした伐採を全面的に中止し、公益的機能を重視することを打ち出しました。そして、森林内の光環境を改善するためとして「受光伐」を取り入れたのです。一部の木を伐採することによって林内に光を当て、後継樹を育成するというのです。

 北海道は、天然林で受光伐をした後の更新方法として 1.林床の稚樹の育成 2.掻き起こしによる後継樹の発芽促進 3.植え込み を行なうとしていますが、植え込みというのは優先順序の最後です。そして、最終的には連続的な複層林(針広混交林)へと誘導するというのが基本的な考え方です。

 当該地域には収穫木のほかにも木があったのですから、まずそれらを育てなければなりません。また、後継樹が少ないところでは掻き起こしをすることで発芽を促進しなければなりません。ところが、実際には皆伐してトドマツを植林したのです。

 このような施業は天然林を針葉樹の人工林に変えるものであり、拡大造林といわれています。北海道の方針とはまったく逆のことをやっているのです。

 大径木の少ないところでは、範囲を決めてその中の胸高直径34センチ以下の収穫木をすべて伐る「玉取り」という方法を採用したそうです。ところが、実際には皆伐されているために「玉取り」の場所と、それ以外の場所の区別もつきません。皆伐なのですから、「玉取り」の場所を設定する意味もわかりません。

 もうひとつのハイライトだった「支障になっていない支障木」ですが、これも被告は「支障になっている」ことについてまっとうな説明ができませんでした。

 被告の説明に裁判長が首を傾げる場面もありました。



  


Posted by 松田まゆみ at 13:45Comments(0)えりもの森裁判

2008年11月02日

現地裁判報告(2)

シカを誘引した皆伐地

 私たち自然保護団体がえりもの皆伐地を発見したのは2005年の秋です。そのときは伐根もなまなましく、地表は伐採や地ごしらえのためにブルドーザーで撹乱されていました。

 それから3年、久しぶりに現地を目の当たりにして驚いたのは、皆伐地がすっかり草原化していたことです。皆伐地の大半がスゲと思われる植物に覆われていて、それが草刈をしたようにシカに食べられています。エゾシカの格好のお食事場になっているのでしょう。そして、植栽されたトドマツや自然に芽生えたカンバの苗がことごとくシカの食害にあっていたのです。




 光があまり当たらない林床であれば、こんなにスゲが繁茂してしまうことはありません。皆伐によって直射日光がさんさんと降り注ぐようになり、スゲがどんどん広がってしまいました。それを食べにきたエゾシカが苗木まで食べてしまったのです。

 私が裁判長にこのことを指摘すると、被告側の道職員は「今の発言に間違いがある」と口を挟み、「苗がこのようになっているのはシカの食害ではなく、寒さによる霜害だ」と反論しました。唖然です。




 苗を良く見ればシカが噛み切った痕がはっきりとあるのです。ほとんどの苗がシカに食べられており、刈り込まれたようになっています。それを霜害とは… たしかに霜害も一部に見られましたが、大半の苗は食害にあったために正常に伸びることができず、盆栽のようになっているのです。

 たとえ春先に強い冷え込みがあっても、上部に樹木があれば霜も降りにくくなります。皆伐によって霜害を受けやすくなったといえるでしょう。事実、林道脇に自然に芽生えた稚樹はシカの食害にも霜害にもあっていませんでした。

 皆伐して植林したのは失敗であり、不適切な更新方法だったといえます。

 霜害と食害の区別もつかない職員が「森づくり」をしているのであれば、お粗末としかいえませんね。はからずも職員のレベルの低さが露呈される結果となりました。  


Posted by 松田まゆみ at 15:15Comments(0)えりもの森裁判

2008年11月01日

現地裁判報告(1)

浮上した越境伐採疑惑

 昨日は「えりもの森裁判」の進行協議(事実上の現場検証)がありました。待ちに待った裁判所による現場確認です。

 前日、私は現場検証に備えて資料などをチェックしていたのですが、皆伐地の衛星写真を見ていてしばし頭を抱えてしまいました。これまで情報開示で入手した伐区の図と、皆伐地の範囲が合致していないのです。伐区の図と写真をしばらく睨めっこしていましたが、どう見ても皆伐区域が伐区からはみ出しています。

 さて、現地で渡された被告(北海道)の「進行協議期日説明用資料」の地図を見て、仰天しました。その地図に書かれている伐区の形が、これまで原告が情報開示で入手していた伐区の図と異なっていて、実際に伐採が行なわれた場所を囲むように線引きが変わっているのです。伐区の境界線が部分的に隣の小班に食い込んで引かれています。

 伐採前と伐採後で伐区の線引きが変わってしまうなどということは普通ありえませんし、信じがたいことです。とすると… 森づくりセンターの職員が越境して収穫調査を行ったという疑いが浮上してきます。そして、越境伐採を隠すために後から伐区の線引きを意図的に変えたのではないかという疑惑が生じるのです。

 収穫調査をする際、職員は伐区の範囲を確認することになっています。伐区沿いに林道があって分かりやすい場所ですから、伐区の境界を誤るなどということは常識的に考えられません。

 ところで、公有林での越境伐採は過去にも明るみになっています。林野庁が上ノ国町で行なったブナ林の伐採では、自然保護団体が越境伐採を見つけました。そして自然保護団体の調査で大量の過剰伐採や違法な土場、集材路などが発覚したのです。林野庁は収穫調査の際に職員が林班の境界を誤ったと釈明していますが、林班界は尾根上にあって分かりやすく、現場に詳しい職員が誤認するとは考えられません。

 1987年には、大雪山国立公園内の然別湖北岸でも、幅200メートル、長さ1キロメートル以上にわたって越境伐採(択伐)が行なわれていたことが自然保護団体の調査で明らかになりました。清水営林署(当時)も越境択伐の事実を認めましたが、原因ははっきりしませんでした。

 公有林では以前から原因のはっきりしない越境伐採が行なわれているのです。自然保護団体などが調査しない限り、このようなことはまず発覚しないでしょう。

 今回の疑惑については、今後の裁判の中で追求していくことになります。疑惑がまたひとつ増えました。  


Posted by 松田まゆみ at 14:00Comments(0)えりもの森裁判

2008年09月20日

裁判所が現場へ!

 19日は「えりもの森裁判」の口頭弁論で札幌に行ってきました。

 今回の口頭弁論の最大の関心事は、春から要望していた現地確認のことです。被告側は現地に行くことを渋っていたのですが、前回の口頭弁論では裁判所は予定日まで決め、かなり乗気であることが感じとれました。そして、今回それが決定されたのです。

 裁判所が現地に行くというのがどういうことなのか分からない方もいると思いますので、少し説明しましょう。

 北海道ではかつて「大雪山のナキウサギ裁判」というのがありました。自然保護団体のメンバーらが、大雪山国立公園の士幌高原道路(道道)の道路建設に関する支出をしてはならないとして、1996年に当時の堀知事を提訴したのです。

 この裁判で、提訴の翌年の1997年10月9日に「山上裁判」と呼ばれた現地検証が実現しました。裁判所の職員9名、原告・弁護団・支援する自然保護団体のメンバーなど原告側が40名、被告側が5名、さらにマスコミ関係者など合わせると総勢80名以上が、道路の建設予定地周辺を見るために登山をしたのです。道路建設予定地に広がる希少な自然について、裁判長にその目で見て知ってもらうのが目的でした。

 この現地検証では、原告側が風穴、ナキウサギ、植物、クモ、地質などこの地域の特有な自然について、まさに現場で裁判長に訴えたのです。落葉と雪が横から吹き付けてくるような荒天でしたが、現場は支援者の熱気に満ちていました。

 公共事業の裁判で、着手前にこのような現地検証をするのは全国でも初めてのことで、メディアも注目しました。

 「えりもの森裁判」の場合はすでに伐採が行われてしまっているので、着手前の検証ということではありません。原告がこれまで写真や書面などで説明してきたことを、裁判所に現場で確認してもらうことになります。

 現場は皆伐状態になっていますが、受光伐として伐採された木には伐根に印がつけられ、「地ごしらえ」との名目で伐られた木には印がつけられていません。また支障木として伐られた木にもナンバーテープがつけられています。ブルドーザーで破壊されてしまったナキウサギ生息地もあります。それらを裁判所に見てもらい、原告、被告の双方が説明をすることになっています。

 その現場確認の日は10月31日です。森林伐採問題を考えていくうえでも、注目される野外裁判だと思います。  


Posted by 松田まゆみ at 15:01Comments(2)えりもの森裁判

2008年07月03日

明日は口頭弁論

 「えりもの森裁判」の口頭弁論のお知らせです。

 明日は原告の意見陳述も予定していますので、ご都合のつく方は傍聴をよろしくお願いいたします。

 裁判所にはできるだけ早いうちに現地での検証をしたいとお願いしていたのですが、北海道側が異を唱えているようで早期には実現しませんでした。今ごろ現地はハンゴンソウの草原になっているのでは・・・。ハンゴンソウはエゾシカが食べないために、開けたところに生い茂ってしまうのです。

えりもの森裁判口頭弁論
7月4日(金) 10:00~
札幌地方裁判所 8階 3号法廷
  

Posted by 松田まゆみ at 10:46Comments(2)えりもの森裁判

2008年04月22日

百聞は一見に如かず

 18日は「えりもの森裁判」の口頭弁論で、原告の4回目の主張でした。今回は北海道職員の違法な行為について主張しました。

 北海道は「北海道森林づくり条例」で道有林の管理方針を転換し、木材生産を目的とした皆伐や択伐を廃止しました。ですからこの条例に反する木材生産を目的とした皆伐も択伐もできないはずなのです。

 受光伐というのは、抜き伐りをすることで日陰になっている若木に光を当てて生長を促すことを目的とした伐採です。林床に若木がない場合は、抜き伐りして植栽するとしています。

 裁判で問題としている皆伐現場は、受光伐として376本の立木を伐採し、伐採跡地に植栽を行うという契約でした。ところが、実際には376本の立木だけではなく「地ごしらえ」との名目で大半の木を伐採して皆伐状態にし、伐採した立木を搬出してしまったのです。

 このような北海道職員による一連の行為は、森林の公益的機能を低下させたばかりではなく、材として価値のある立木が正当な対価なしに伐採されて搬出され、北海道に損害を与えました。受光伐などといっていますが、実質的には拡大造林にほかなりません。

 この一連の伐採は、故意あるいは重大な過失によって北海道森林づくり条例や生物多様性条約に違反する行為であり、不法行為法上も違法と評価されるといえます。そこで、原告らは日高支庁長に対し、この契約に関った職員に対して損害賠償請求をするように求めました。

 さて、今回は準備書面とともに検証申立書を提出しました。要するに裁判官にも現地を見て下さいということです。「百聞は一見に如かず」ですからね。現場を見れば、受光伐の名を借りた拡大造林であること、そして伐採の支障になどなっていないのに「支障木」として価値のある木が伐採されていることは一目瞭然です。

 ところで、裁判の現地検証で思い出すのは大雪山の「ナキウサギ裁判」です。士幌高原道路の予定地一帯に広がる希少な自然を裁判官に見てもらうために、裁判官を現地に案内して「山上裁判」が行われたのです。

 この日のことは忘れもしません。前日からの大嵐で雪が舞い風が吹きすさぶ中、大勢の支援者とともに裁判官や原告らが登山をして現地を視察しました。現場では動物や植物の研究者らがこの地域の自然の特異性について裁判官に説明しました。私も、この山域にはマツダタカネオニグモや風穴に生息するサラグモ類など、氷河時代の生き残りと考えられる希少なクモが生息していることについて説明させていただきました。

 強風の吹き荒れる山頂で、裁判官も大変だったと思いますが、とても熱心に聴いてくださいました。環境訴訟の場合、法廷の中だけではなかなか理解しにくいことでも現場を見れば理解できることも多いのです。

 今回の「えりもの森」の現地検証では、ハンゴンソウが茂って見通しが悪くなってしまう前に現地検証をして欲しいと要望しました。現場は皆伐して明るくしてしまったので、ハンゴンソウという大型の植物が茂ってしまったのです!

 現地検証については未定ですが、次回期日は7月4日(金)です。札幌地裁8階の3号法廷で午前10時からですので、関心のある方は是非傍聴に来てください。  


Posted by 松田まゆみ at 13:52Comments(0)えりもの森裁判

2008年02月12日

生物多様性に富むえりもの自然

 2月8日は「えりもの森裁判」の口頭弁論がありました。

 この日、裁判所のいつもの法廷に入って原告席に座った途端、目に飛び込んできたものがあります。それは、原告席と被告席の上部の壁に取り付けられた大型モニターです。原告席や被告席、裁判官などの席にもそれぞれモニターが取り付けられています。

 前回の裁判のときはなかったので最近設置されたようですが、どうやらこれから導入が予定されている裁判員制度に向けて、裁判員に映像を見てもらえる設備を準備しているようなのです。

 裁判員制度についてはいろいろな疑問が出されていますが、裁判所はこんなふうに設備投資をして着々と準備しているんですね。

 で、そのモニターを使って(もしかしたら初めての利用?)、市川弁護士が意見陳述をしました。中身は現場一帯の生物多様性に富んだ自然についてです。

 クマゲラやナキウサギ、絶滅危惧種のコウモリ類、エゾオオサクラソウなどの希少植物について、原告らの現地調査の映像を紹介しました。

 クマゲラはあちこちで食痕を確認していますが、皆伐地の近くで食痕のある木を伐採木としてナンバーテープをつけている例もありました。収穫調査を行うときに、クマゲラの採餌木の調査も行っていないということでしょう。

 また、原告らはナキウサギの貯食や雪の上に残された足跡も確認しています。近くで行った原告らのコウモリ調査では多くの絶滅危惧種を確認しました。

 植物では、皆伐地にエゾオオサクラソウやクリンソウが多数生育していることが確認されています。

 さらに、被告である北海道は、この地域一帯が希少な動植物の生息地であることを知っていたことを説明しました。というのは、この地域は緑資源公団(後の緑資源機構)によって大規模林道(緑資源幹線林道)のための環境調査が行われていたからです。

 その報告書の調査は不十分な内容なのですが、皆伐現場の一帯でシマフクロウやクマタカ、ナキウサギなどの生息が確認されていたことが記されています。それらの報告書は北海道に提出されており、道はこの地域の希少動植物について把握していたといえるのです。

 皆伐によって豊かな森林生態系が破壊され、そこに生息していた希少な動植物に影響を与えたといえます。

 さて、今までは事実を主張してきましたが、次回の口頭弁論では法的な観点からこの伐採の違法性を主張する予定です。

 次回の期日は4月18日(金)10時から、札幌地方裁判所8階3号法廷です。  


Posted by 松田まゆみ at 14:53Comments(0)えりもの森裁判