さぽろぐ

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2010年08月28日

奥日光の巨木の森

 東京で開かれた蜘蛛学会に参加したあと、学生時代からの友人と三人で奥日光に行ってきました。奥日光といえば、学生時代の夏休みに環境庁(当時)のアルバイトをしたことがあります。湯元で自炊生活をしながら、ゴミ拾いをしたり戦場ヶ原などへ巡視に出かけたりという毎日を過ごしました。あれから38年ほど経ちますが、久々の夏の奥日光です。

 さて、今回行ったのは西ノ湖から千手ヶ浜です。以前は西ノ湖には歩いていかなければならず、暑い炎天下を延々と林道歩きをした覚えがあります。ところが、今は赤沼に立派な駐車場ができて、そこからバスが出ているのです。赤沼には自然情報センターまであります。かつては赤沼茶屋が一軒だけの閑静なところだったのですが、すっかり変わっていました。それに、西ノ湖までこんなに手軽に行けるようになるとは・・・。

 小田代ヶ原を過ぎて西ノ湖入口で下車し、ゆっくりと西ノ湖に向かいましたが、車窓からの光景は記憶の奥にあった風景とはずいぶんかけ離れたものでした。38年の歳月を経て植林したカラマツの苗が成長し、シカの食害で林床の植生がすっかり変わってしまったためでしょうか。単調なカラマツの植林地を抜けて目を見張ったのは、ミズナラの巨木の森です。かつての原生林を彷彿とさせる光景です。







 全体でどれくらいの面積なのか分かりませんが、これだけの巨木のあるミズナラ林はそう簡単にお目にかかれないのではないでしょうか。胸高直径が1.5メートルは優に超える木もあります。また、西ノ湖畔の森はヤチダモの遺伝子保存林として保護されているとのことで、ここもなかなかの森林でした。さて、学生時代にはこんな巨木の森を歩いた記憶がないのですが、当時はあまり森林の様子に関心がなかったからかも知れません。ミズナラの梢を舞うゼフィルス(ミドリシジミ)の姿に心を奪われたことは、しっかりと覚えているのですが。

 ただ、この奥日光の巨木の森も、林床の植物がすっかりシカに食べられて裸地同然になっており、日本の森とは思えない光景になっていました。かつてはこのあたりの林床はササに覆われていたそうですが、ササはまったくありません。そして、シカによる樹皮食いを防ぐために、プラスチックのネットを巻かれた樹があちこちにあります。

 それにしても、その昔はこんな巨木の点在する森が続いていたのかと思うと、人による自然破壊のすさまじさを身にしみて感じます。北海道では今はこんな森はほとんど見られませんが、かつてはこんな巨木が茂り、シマフクロウがあちこちの森に棲んでいたのでしょう。樹洞のある巨木が消え、堰やダムでサケが遡上できなくなった現在、北海道の森からシマフクロウが姿を消していくのは自然の成り行きなのでしょう。

 こういう森を見ると、これからは失われてしまった巨木の森を取り戻していかなければならないと思わずにはいられません。とはいっても、巨木の森を復元するには数百年は必要でしょうね。

     


Posted by 松田まゆみ at 20:48Comments(0)森林問題

2010年08月18日

森林生態系保護地域についての意見はどう反映されるのか

 北海道森林管理局が「森林生態系保護地域等の設定案に関する意見募集」を7月30日から行っていました。生物多様性保全の観点から、大雪山と日高の森林生態系保護地域を拡大するという案についての意見募集です。これについては、以下の記事でも触れています。

まやかしの国有林保護地域の拡大案

 今日は意見募集の締め切りの日ということで、以下の意見を送信しました。今回寄せられた意見は、9月に公表されるそうです。そして、同じく9月に「第3回大雪山・日高山脈生態系保護地域等設置委員会」が開催されるとのこと。

 果たして、今回出された意見はどの程度反映されるのでしょうか。そして、委員会の委員の方たちは、どんな意見を出されるのでしょうか。

 行政がこのような意見募集をした場合、若干の修正はするものの、基本的なところは変更しないというのが常です。でも、以下に書いたように、この保護地域の設定案というのは基本的なところで矛盾のあるものなのです。それを無視して若干の修正で確定させてしまうのであれば「聞きおくだけ」ということになります。そして、今回の保護地域の拡大案というのは、森林保全に取り組んでいるというポーズを示しただけということになるでしょう。

 出された意見に対し、どのような修正をするのか、あるいはしないのか・・・見守りたいと思います。

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森林生態系保護地域等の設定案への意見

 設定方針の1では「検討の基礎として、既存の森林現況や希少種等の生息・生育情報のみではなく、森林生態系の再評価を試み、希少種等の生息・生育が期待される潜在性(ポテンシャル)が高いと評価される区域を抽出」としています。しかし、「森林生態系保護地域において保存を図るべき生物等に関する事項」で取り上げているのは当該地で生息が確認されている種であり、保護すべき種のことではありません。希少種や絶滅危惧種など保護の対象とすべき生物の種名を決めて検討しなければ意味がありません。

 たとえば鳥類であれば、キンメフクロウ、シマフクロウ、ミユビゲラ、クマゲラ、クマタカなどが絶滅危惧種や保護を要する種として挙げられます。しかし、キンメフクロウやミユビゲラの生息地である北方針葉樹林の大半が対象外です。また、シマフクロウが繁殖するためには樹洞のできる広葉樹の大径木の存在が必要ですが、そのような樹木のある森林はほとんど含まれていません。クマタカの生息する森林帯もほとんど対象になっていません。

 ナキウサギも保護を図るべき希少な動物ですが、ナキウサギの生息地となっている然別湖周辺の森林は保護地域になっていません。大雪山の周辺には低標高の山地にもナキウサギ生息地が点在していますが、そのようなところは伐採などによってしばしば破壊されてきました。低標高地のナキウサギ生息地についてまったく配慮されていないゾーニングです。

 鳥類やほ乳類に限らず、その他の動物群や植物も含め、保護の対象とする希少種等の種名を明確にし、種ごとに生息・生育が期待される潜在性の高い区域を示して検討する必要があります。

 今回の指定地域の大半は、森林限界より上のハイマツ帯や樹木のない高山帯と、ダケカンバ帯です。高山帯は伐採の対象となる樹木がありませんし、その多くが国立公園の特別保護地区などに指定されており、森林の保護区として設定するまでもないところです。また、その下部のダケカンバ帯もこれまでほとんど伐採が行われてこなかったところです。すなわち、もともと伐採対象になっていないところ、あるいは急峻な伐採困難地を中心として設定されています。大雪山国立公園を特徴づける森林はエゾマツやアカエゾマツ、トドマツなどから構成される針葉樹林です。さらにその下部には針広混交林が広がっています。これらの森林を広く保護地域の対象にしないのであれば、森林生態系の保護にはなりません。

 「針葉樹林や広葉樹林等多様な森林生態系を包括的に保護できるように設定」と書かれていますが、針葉樹林や広葉樹林はほとんど含まれておらず、文章による説明と指定区域の実態が一致していません。このような矛盾した設定案は、基本的なところから見直す必要があります。

 保存地区は「伐採が行われた記録のない原生的な森林に設定する」、また保全利用地区は「保存地区と同質の天然林を対象に、また保存地区を取り囲むよう設定する」とのことですが、大雪山国立公園の森林の大半は過度の伐採により原生的な森林が失われてしまいました。それに伴って生物多様性も失われてしまいました。失われた生物多様性を回復させるために今後取り組まねばならないのは、過去の乱伐を反省し、かつての原生的な針葉樹林や針交混交林を甦らせることです。今回の拡大案は、そのような視点がまったくありません。

 本来、国立公園や国定公園では生態系の保全が最優先されるべきであり、伐採をすること自体が不適切です。国立公園や国定公園での伐採の是非から見直すことが必要です。
  


Posted by 松田まゆみ at 20:59Comments(0)森林問題

2010年06月27日

まやかしの国有林保護地域の拡大案

 先日、知人から十勝毎日新聞に国有林の保護地域を今までの2.5倍に拡大するというニュースが載っていたことを教えてもらいました。以下です。

大雪・日高の国有林保護地域、2.5倍の24万ヘクタールに拡大

 今回の案は、大雪山系と日高山脈に設けられている、原則として人手を加えない「保護林」と「緑の回廊」部分を今までの2.5倍に拡大するというもの。林野庁も、ようやく自分たちが破壊してきた森林生態系の保護に取り組み始めたのかと思ったのですが、この記事に掲載されていた地図をよくよく見て、なんだか国民を馬鹿にしているのではいかと気分が悪くなってきました。

 今回、拡大するという保護地域というのは、既存の保護地域をとりまく部分など、標高の高いところばかりです。ということは、針葉樹林帯上部のダケカンバを中心とした森林です。つまり、これまでもほとんど施業などしてきていない地域なのです。してきていない、というより急峻で施業が困難であったり、木材として適した樹がなく木材生産に適さないところといったほうが適切でしょう。さすが、林野庁の考える案です。

 林野庁が本気で森林の保護を考えるのであれば、これまで木材生産のためにさんざん痛めつけてボロボロにしてしまった針葉樹林帯こそ、保護林としなければなりません。大雪山系でいえば、もう原生林といえるような針葉樹林などほとんどないのですから。

 先日、札幌で行われた日本森林生態系保護ネットワークのシンポジウムでも話しましたが、北方針葉樹林を生息地とするミユビゲラやキンメフクロウ、キタグニオニグモなどは、過度の伐採による針葉樹林の衰退とともに姿を消しつつあります。ところがそのような針葉樹林帯は今回の保護林拡大地域にほとんど含まれていません。大雪山国立公園を特徴づける北方針葉樹林を保護林とせず、高山帯やその周辺部ばかりを保護しても、生物多様性の保護とはいえないでしょう。これじゃあ見せかけだけの保護林拡大です。

 この保護林拡大案は、北海道森林管理局が設置した生物多様性検討委員会の提言がきっかけとのことで、今後開かれる検討委員会にも提示されるようです。委員の皆さんは適切な案になっているのか、保護すべき森林がきちんと含まれているのか、針葉樹林帯の実態はどうなっているのか、是非とも調べたうえで意見を言っていただきたいと思います。
  


Posted by 松田まゆみ at 15:44Comments(5)森林問題

2010年06月06日

森林シンポジウムの報告

 昨日は、このブログでもお知らせしていた日本森林生態系保護ネットワーク(Confe)によるシンポジウム「森林と生物多様性」でした。実は、先週は何かと多忙だったうえに風邪をひいてしまいました。そんなこんなで体調があまりすぐれない上、私の報告用の電子紙芝居(パワーポイント)も出かける直前まで修正しているという有様でした。今日は、このシンポジウムでの話の内容をかいつまんで紹介します。

 はじめの講演は、はるばる屋久島から来ていただいた手塚賢至さんによる「世界遺産屋久島における生物多様性保全への取り組み」。私はこれまであまり意識していなかったのですが、九州の最高峰は屋久島の宮之浦岳(1936m)です。屋久島は海抜0メートルから1900メートルという標高差をもつために、亜熱帯から亜高山帯までの垂植生の直分布が見られます。亜高山帯の植生が見られるといっても、もちろん北海道とは全く違っており、針葉樹はスギやヤクタネゴヨウです。屋久島は雨量が多く、生物多様性に富む島なのです。そして屋久島の中でも原生的な自然が保全されているのは西部地域とのこと。世界遺産に登録されているところは原生的な自然が残されている場所が中心で、東部地域などではスギの人工林へと植生が変えられてきており、屋久島本来の植生への復元を目指しているとのことでした。




 二番目は、世界的な植物学者である河野昭一さん(写真)による「生物共生系の世界を探る」というタイトルでの講演。植物と昆虫の共進化について分かりやすい写真を使ってのお話でした。たとえば、花の一部で紫外線の反射率を変えて昆虫を誘引しているとか、昆虫に蜜というお駄賃をあげることで自分を守ってもらうとか、花粉を納豆のように粘らせて昆虫の体に付着させるようにしているとか、種子をアリに運んでもらうとか、とても興味深いお話でした。こうした共進化はダーウィンの自然選択説だけで説明するのは難しいのではないかとのことですが、確かにそう思います。花にそっくりの色や形をしたカマキリなど、ほんとうにどうやって進化したのかと思うと不思議でなりません。

 予定では「花に魅せられ50年」―河野昭一さすらいの半生記―という講演も入っていたのですが、こちらは時間の関係で省略。その代わり、資料集の中に波乱に富んだ植物学者の研究人生が収録されています。私は、こうした話はお酒を飲みながらの席で河野先生ご自身から何回か聞かせていただいていますが、こちらの話を聞きたかった参加者も多かったのでは・・・。

 活動報告として、私が大雪山国立公園での伐採問題について話したほか、広島の金井塚務さん(広島フィールドミュージアム主宰)から、沖縄のやんばるの森でのオキナワウラジロガシの調査報告がありました。Confeでは、何と日本の北の端と南の端で調査活動をしているのです。

 やんばるの森はイタジイを主体とする常緑広葉樹林です。イタジイなどの多くの広葉樹は伐採しても切り株から芽が出て再生します(これを萌芽更新といいます)。ところがオキナワウラジロガシは、ほとんど萌芽更新をしないのだそうです。そこでオキナワウラジロガシの分布を調べると、湿度の高い谷沿いに多く生育しており、種子(大きなどんぐり)は落果と川の流れによって散布されることがわかりました。このどんぐりは乾燥に弱いのですが、斜面の上から流れてくる土砂や落ち葉を板根(板状になった根)が受け止めることで湿度の高い土壌が形成され、そこでどんぐりが発芽できるようになっています。さらに、オキナワウラジロガシはヤンバルテナガコガネやケナガネズミなどの生息場所としても重要な存在です。ですから、沢筋の植生が破壊されてオキナワウラジロガシがなくなってしまうと生物多様性に大きな影響を与えることになります。やんばるでも北海道と同じように無残な皆伐が行われ、網の目のように林道が造られているので、そうした貴重な自然がどんどん壊されているのです。

 最後は市川守弘弁護士による、「日本の森を守るための提言(案)」の骨子について説明がありました。市川弁護士は全国各地の自然保護運動に取り組んでいますが、道南のブナ林や日高のえりも地方での伐採が止まっているなど、その成果が着実に現れています。行動していかないと、森は守れません。

 参加者はおよそ70名くらいだったでしょうか。嬉しいことがありました。私のブログにコメントを寄せてくださるBEMさんが、ブログに掲載したお知らせを見て参加してくださったのです。終わったあとで挨拶に来てくださいました。そして、さっそくご自身のブログでも報告してくださいました。ブログの内容からとてもまじめで誠実な方だと感じていましたが、実際にお会いしてよりその印象を強くしました。ありがとうございました。どこかで「鬼蜘蛛おばさん」を見かけた方は、声をかけてくださると嬉しいです。
  


Posted by 松田まゆみ at 17:03Comments(2)森林問題

2010年05月31日

森林シンポ「森林と生物多様性」のお知らせ

 しばらく調査やら何やらで多忙にしており更新が滞っていましたが、久々の更新です。

 今日は、今週の土曜日に札幌で開催される森林シンポジウムについてのお知らせです。主催は日本森林生態系保護ネットワーク主催(Confe Japan)で、テーマは「森林と生物多様性」。北海道から屋久島、沖縄の森林問題と生物多様性について、現場で調査に関わっている方たちからの報告があります。札幌近郊にお住まいで森林問題に関心をお持ちのかたは、ぜひお越しいただけたらと思います。

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森林シンポ in 札幌 「森林と生物多様性」~大雪山から沖縄・やんばるまで~

 “生物多様性の保全”が強調されていますが、多様性を支えるべき森林の現状はどうでしょうか。世界遺産・屋久島の森は? 植物と動物のたくみな共生の仕組みとは? 大雪山国立公園の森は・・・? やんばるの森は・・・?
 私たち“日本森林生態系保護ネットワーク”は、北海道から沖縄まで各地の森林を精力的に調査し保護活動を行っています。北海道では大規模林道を中止させ、道南のブナの違法伐採を摘発し天然林伐採を一切ストップさせ、大雪山国立公園の皆伐問題を摘発し、やんばるでも網の目の林道建設をストップさせています。市民のみなさまに、守の「真実」を知っていただき、森の未来のために積極的に提言していきたいと考えています。森の関心のある人、森の今を心配している方、ぜひお集まりください。

日時:2010年6月5日(土)14:00時開演(13:30開場)~17:30終了
会場:かでる2・7 8F・820研修室(札幌市中央区北2条西7丁目)
参加:無料 資料代200円

【講演】

「世界遺産屋久島における生物多様性保全への取り組み」
 手塚賢至(屋久島生物多様性保全協議会会長)

「生物共生系の世界を探る」&「花に魅せられ50年」―河野昭一、さすらいの半生記―
 河野昭一(京都大学名誉教授)

【日本森林生態系保護ネットワークの活動報告】

挨拶 寺島一男(大雪と石狩の自然を守る会代表)

①「大雪山国立公園における多様性の危機」
 松田まゆみ(十勝自然保護協会共同代表)

②「やんばるにおける多様性の危機」
 金井塚務(Confe Japan副代表)

③「森を守るための提言」
 市川守弘(Confe Japan事務局長)

   
  


Posted by 松田まゆみ at 22:57Comments(0)森林問題

2010年02月02日

実証された風倒木処理の誤り

 昨日の北海道新聞に「風倒木残せば“一石二鳥” 北大調査 植生豊か、シカ食害減も」という記事が掲載されていました。要約すると以下のような内容です。

 2008年に、北大農学部研究院の森本淳子講師らの研究グループが石狩森林管理署と協力し、2004年の台風18号で風倒被害を受けた支笏湖東側のトドマツ林に「風倒木を残した区域」「重機で地ごしらえした上で再植林した区域」「再植林してさらに下草を刈った区域」「風倒木の枝や根などを積み上げた区域」の4つの試験区域を設定し、植生の変化や食害を調べた。その結果、風倒木を残した区域ではトドマツの幼木が育ち、植物の種類も豊富で生長も早かった。また、エゾシカによる食害も風倒木を残した区域が最も少なかった。

 要するに、近年道内各地で行われてきた「風倒木を運び出して皆伐状態にし、重機で地ごしらえをして植林する」という方法は、植生回復やエゾシカの食害などの点で不適切なやり方だったといえます。

 大雪山国立公園の幌加やタウシュベツで行われた皆伐による風倒木処理がとんでもない自然破壊を招いたことについては、このブログのカテゴリー「森林問題」で何度も取り上げ、風倒木を運び出して重機で地ごしらえをやる手法を批判してきましたが、この実験でも私たちの主張が裏付けられたということです。当然といえば当然なのですが。

 林野庁の職員は、幌加やタウシュベツの皆伐について「適切だった」と繰り返していましたが、この発言は撤回しなければならないでしょう。とりわけ急斜面での重機による地ごしらえは土砂の流出や斜面の崩落などを生じさせており、取り返しのつかない事態になっています。

 私が関わっている「えりもの森裁判」の現場(道有林)でも、皆伐地のシカの食害が伐採していないところより顕著であることが分かっています。皆伐して草原状態になってしまうと、そこにシカが集中するために、植えた苗木の新芽が食べられてしまうのです。現地裁判で私がその食害を指摘したところ、道職員が霜害だと主張したのには呆れました。確かに霜害を受けた苗もありましたが、私が指差したのは明らかに食害を受けたものでしたから。林業に携わっている人が食害と霜害の区別もつかないのなら、それはそれで深刻な問題ではないかと思いますが。

 林業界では省力化、合理化によって伐採作業、風倒木の処理や地ごしらえなど、大半の作業を重機に頼るようになりましたが、森林を傷つけない手法を考えていく必要がありますし、少なくとも天然林では風倒木は基本的に放置するべきです。林野庁は過ちを認め、しっかりと反省してもらいたいものです。
  


Posted by 松田まゆみ at 16:13Comments(0)森林問題

2009年11月05日

石狩川源流部で違法伐採か?

 11月2日は、日本森林生態系保護ネットワークの主催で、石狩川の源流部で行われた伐採地の調査に出かけました。10月末までは雪がなかったのですが、あいにく直前に雪が降ってしまい、当日も雪がちらつく中での調査になりました。土場の面積を測ったり、集材路の幅を計ったり、伐根を探したり・・・。この雪では、伐根も隠れてしまったのではないかと思ったのですが、雪の中から無印の伐根がいくつも出てきました。盗伐の可能性があります。

 現場の石狩川源流部は高原温泉に近い奥山であり、大雪山国立公園の心臓部分。洞爺丸台風では大きな被害を受けているのですが、その被害が回復してきている森林で大量の伐採が行われていました。しかも、伐採のために造られた土場は、許可された大きさよりかなり大きいのです。集材路の幅もかなり広く、森林法違反の疑いがあります。

 不思議なのは、山奥につくられた幅8メートルもの作業道。こんな幅の広い作業道は見たこともなければ、必要性もありません。何のために造ったのでしょうか?

 ということで、この違法伐採疑惑についてJANJANに記事を投稿しました。詳しくは以下をお読みください。

雪の石狩川源流域、「違法伐採」疑惑の現場
  


Posted by 松田まゆみ at 13:40Comments(0)森林問題

2009年10月16日

暴れる沢と斜面崩落

 先の休日に、タウシュベツの皆伐地の調査に出かけました。前回ここを訪れたのは8月中旬ですから2ヶ月ほどしか経っていないのですが、驚くほど様子が変わっていました。

 まず、沢の様子です。今年は雨が多かったということもあるのでしょうけれど、沢の流れがガラリと変わっていました。おそらく雨のたびに、流れがあちこちに動いたのでしょう。皆伐地のあたりでは作業道上に何本もの流れができており、道そのものが川になっているところがありました。森林管理署の職員は、作業道をつける際に沢の流れは大きく変えていないとうそぶいていましたが、ちょっと雨が降っただけでこんなふうになってしまうのですから、沢を潰すようにして作業道をつくったことは明らかです。作業道が沢の流れを変えてしまったことで、沢沿いの風穴の斜面も崩落してきています。




 皆伐地の下の縁には亀裂が入り、谷側にずり落ちてきています。縁に積み上げられた枝や切り株の山は、谷側にわずかに残された森林の中に部分的に崩れ落ちています。このまま斜面がずり落ちていけば、斜面に生えている木が倒れてしまう可能性があります。斜面を撹乱した皆伐によって斜面崩落が生じているのです。




 皆伐地の入口の様子も違っていました。ここには面積、苗木の樹種や本数などが書かれた「育成天然林」の表示板があったのですが、それが奥の方に移動されていました。表示板が立っていたところが崩れてしまったのではないかと思われます。急斜面にブルドーザーを入れて岩屑をむき出しにしてしまったために、斜面崩落が進行しているのです。懸念していたことが現実になってきています。いじってはいけない沢であり、斜面だったということです。
  


Posted by 松田まゆみ at 14:55Comments(2)森林問題

2009年10月03日

貪欲なる林野庁

 先のシルバーウィークに、小夕張岳に登りました。夕張岳に登るには大夕張コースと金山コースの二つの登山ルートがあるのですが、小夕張岳は金山コースの途中にある山です。この金山コース、かなり長いうえにお花畑が少ないので登山者には人気がないようです。この日も、休日というのに誰にも会いませんでした。誰もいない山は静かで最高です。登山者名簿を見ると、9月に入ってからはなんと2パーティーの記録しかありません。もっとも登山道に新鮮なクマの糞があったり、標識がクマにかじられていたり・・・。静かな登山を楽しみたい人にはもってこいですが、クマさんの気配を気にしながら歩かねばなりません。

 さて、標高1000メートル近くまで登ったところで、ダケカンバの大きな切り株に出くわしました。この標高になると針葉樹も少なくなり(このあたりは針葉樹は多くありませんが)ダケカンバが優占してきます。針葉樹の生育が困難になってくる高標高地では、伐採などすべきではないのです。少し下にも針葉樹の朽ちた切り株がありましたので、この山はかなり前に伐採が入っているのですが、標高1000メートルもあるところに比較的新しい切り株があるのには驚きました。よくもこんなところまで伐ったものだと・・・。




 すると、そのすぐ上で古い作業道跡にぶつかりました。若いダケカンバやササに覆われているので一般の登山者は気付かない人も多いでしょう。しかし、良く見れば過去に作業道がつけられたことがわかります。写真は作業道と登山道が重なっている部分です。山の斜面はかなり急なところもあるのですが、斜めに作業道を切って、こんなところまで伐採したのです。林野庁の貪欲さには呆れ果ててしまいました。国立公園や国定公園の中でなければ、こういう作業道や伐採は問題ないという感覚なのでしょうか。もっとも、国立公園の中でも似たような伐採はやっていますが。




 ちなみに、登山口に置いてあった林野庁のパンフレットには「登山のマナー」として以下のように書かれていました。

 「高山植物等を採取するのはやめましょう。森林窃盗罪という犯罪行為になります」

 高山植物の採取をしないよう呼びかけるのはわかりますが、標高1000メートルのところにまで重機を入れて伐採する林野庁の行為は許されるのでしょうか? 作業道の開削でさまざまな植物を傷めつけたはずです。林野庁こそ、あちこちで盗伐や越境伐採などの違法行為をし、生長量を超える伐採をして天然林をボロボロにしてきた張本人です。盗人が泥棒をするなと言っているようなものです。
  


Posted by 松田まゆみ at 14:15Comments(0)森林問題

2009年09月25日

無惨な「カミポットくん」植樹地

 昨日の記事「カミネッコンへの疑問」の続きです。

 2002年のことです。上川町の浮島湿原に出かけたのですが、湿原への歩道の脇に踏みあと道があるのに気づきました。入ってみると林野庁の「パブリックの森」という看板があり、標識には「カミポットくん植樹」「北の森21運動緑の募金 記念植樹」と書かれていますので、募金を利用した植樹地のようです。「カミポットくん」というのは、「カミネッコン」と同じダンボールでつくった紙ポットです。このあたりは過去の伐採のためか樹木がなくてチシマザサが生い茂っているのですが、その一部を掻き起こして紙ポット苗による植樹をしたのです。標識によると2000年に植樹をしたようです。

 植樹地を見渡すとアカエゾマツとミズナラが植えられた紙ポットが三つ一組で置かれているのですが、かなりの苗が枯れていました。数えてみるとアカエゾマツは33本中24本、ミズナラは35本中8本が枯死しています。それに、枯死はしていないものの、死にかけているミズナラが8本。両種合わせた死亡率は48.5パーセントですから、たった2年で苗のおよそ半分が枯れてしまったのです。こんなに枯れてしまったというのは、やはり地面に紙ポットを置くという手法に問題がありそうです。この方法では根が地上に露出しやすくなりますし、開けた場所で地上に置かれただけのポットは乾燥しやすいでしょう。

 5年後の2007年に同じところに行くと、植樹地の大半はダケカンバの幼木が茂っていました。周囲の森林から飛来した種子が一斉に発芽したのです。ダケカンバに覆われていないところがわずかにありましたが、生き残っている苗の大半は元気がありません。写真はかろうじてアカエゾマツとミズナラの両方が生き残っている寄せ植えです。










 それから2年たった先日、同じところに行ってみると、ダケカンバはさらに生長して植樹地を覆っていました。ダケカンバに覆われていないところも写真のような状況です。生き残っている苗も生長の良いものはほとんどなく、なんとか生きているという状況でした。写真のミズナラの苗は、たぶん枯れてしまうでしょう。










 林野庁は紙ポット植樹によってアカエゾマツとミズナラの混交林をつくろうとしたと思われますが、多くの苗が枯死するか衰弱し、ダケカンバが生い茂ってしまったというわけです。アカエゾマツは条件の悪いところでも我慢強く耐えることができる樹種ですので、わずかに生き残ったアカエゾマツはダケカンバの下でも生きていけるかもしれませんが、長寿のダケカンバの下では旺盛な生育は望めそうにありません。ミズナラは、すでに息絶え絶えの状況ですから、生き残ることは困難でしょう。ダケカンバ林にするなら掻き起こしだけで十分であり、植樹をした意味はほとんどありません。

 もうひとつの問題は、苗木の樹種です。浮島湿原の周辺はアカエゾマツが主体ですが、この植樹が行われたあたりはエゾマツが優占する森林です。また、ここにはミズナラはほとんど生育していません。つまり、元の森林を復元することを視野に入れた植樹ではないということです。植えた苗は、どこで採った種子を用いたものなのかも不明です。エゾマツの苗木はほとんど出回っていませんから、ここにエゾマツの森を復元するのなら、周辺の森から幼木を移植するしかないでしょう。幼木を植えてもそのまま放置したのではササに覆われて枯れてしまいますから、ササ刈りなどの手入れも欠かせません。

 これは紙ポット植樹の一例ですが、「カミネッコン」「カミポットくん」の問題点が浮き彫りになった事例ではないでしょうか。植樹のための募金活動があちこちで行われているようですが、こんな状態では何のために植樹をしたのかわかりません。せっかくの募金がこのような無惨な結果にならないよう、植樹方法を改善してもらいたいものです。
  


Posted by 松田まゆみ at 15:12Comments(3)森林問題