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鬼蜘蛛の網の片隅から › 2017年04月30日

2017年04月30日

化学物質過敏症は炭鉱のカナリア

 わが家では、洗剤は基本的に無添加の固形せっけんと粉せっけん。あとは掃除や洗濯に重曹を使う。これらがあればほとんどの汚れに対応できる。髪を洗うときも固形せっけんを使うし、セーターもせっけんで洗う。

 もともとは環境問題のことがきっかけでせっけんを使いはじめたのだが、洗剤類に含まれる香料にどんどん過敏になってしまったこともあり、香料入りの固形せっけんも使わない。香料の匂いで気持ちが悪くなったり頭が痛くなったりするのだ。それだけではない。化粧品や整髪料、ワックス、塗料類、たばこなどの匂いに対しても同じような症状がでるようになった。どうやら化学物質過敏症のようだ。さらに、化学物質とは言えないニンニクの匂いもダメになってしまった。

 子どもの頃は、匂いに対して特別に敏感だったという記憶はない。化粧せっけんの匂いも、シャンプーの匂いもさほど気にはならなかった。

 私が強い匂いが苦手だと気づいたのは東京に住んでいた20代の前半のことだ。当時、日本フィルハーモニー協会合唱団に参加していた。日本フィルハーモニー交響楽団ではオーケストラ付合唱曲の演奏に合わせて一般の人たちから合唱団の団員を募集していた(今でも続いているらしい)。私は友人と出かけた演奏会で団員募集のチラシをもらい、団員に応募した。週1回の練習を重ねて本番の演奏会で解散となる合唱団なのだが、その演奏会のときに化粧品の匂いで気分が悪くなってしまったのだ。

 演奏会では合唱団員はオーケストラの後ろにぎっしりと詰めて並ぶのだが、舞台は人々の体温とライトの熱気、そして化粧品の匂いが充満する。この匂いがかなり強烈で次第に気分が悪くなり、途中で舞台の袖に引っ込んで休ませてもらったことがあった。他の人たちは平気なのに、なぜ私はこんなに気持ちが悪くなってしまうのだろうという疑問が頭の中で渦巻いた。そして、自分が化粧品の匂いに人一倍過敏であることに気がついた。

 私はほとんど化粧をしないのだが、それからというもの冠婚葬祭などでごくたまに化粧をして車に乗ったとき、自分の化粧品の匂いで気分が悪くなった。自家用車の狭い車内で匂いがこもるとひどく気分が悪くなる。同乗者がたばこを吸っても同じで、窓を開けないと耐えがたい。ところが他の人はそうでもないらしい。その時には化学物質過敏症であるということは知らなかったが、最近になって自分が過敏症であることを認識した。

 化学物質過敏症という以上は天然の匂いは大丈夫かといえば、必ずしもそうではない。北海道ではおなじみの山菜であるギョウシャニンニクを採って車に持ち込んだときも、吐き気に襲われるようになった。ギョウジャニンニクの匂いはニンニクよりさらに強烈だ。北海道では戸外でバーベキューと言えばジンギスカンが定番なのだが、これにしばしばギョウジャニンニクを入れる。はじめのうちは私も少しくらいは食べることができた。ところが、食べたあとがいけない。自分の吐く息の匂いで気持ちが悪くなるのだ。以降、ギョウジャニンニクは食べないようにしているのだが、家族が食べ、夜中に息の匂いで気持ちが悪くなって耐えられなくなり、布団をもって別の部屋に逃げだしたこともある。そんなこともあってニンニク臭も過剰反応するようになってしまった。

 ワックスがけなども同じで、ワックスをかけた後はしばらく窓を開け放していないと頭が痛くなってたまらない。そんなわけで、今では香料と無縁の生活をしている。料理にもニンニクは使わない。

 先日、北海道新聞に化学物質過敏症の記事が何回か掲載されたのだが、私と同じような人は一定程度いるらしい。なるほどと思った。発症のメカニズムはよくわかっていないらしいが、花粉アレルギーなどと同様に、一定の限界を超える化学物質を取り込んでしまうことが関係しているらしい。

 私は若い頃から化粧はほとんどしなかったので、なぜ化粧品の香料で過敏症になったのか分からない。職場ではタバコの匂いがかなり苦痛だったが、父がタバコを吸っていたことが関係しているのかもしれない。昨今は乗り物は原則として禁煙になったのでとても助かっているが、飛行機やバスなどで化粧品や整髪料の匂いが強い人が近くにいるとかなり辛い。

 ところで、私のような過敏症の人は生まれ持った体質が関係しているのではないかと思えて仕方ない。たとえば、ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)という気質の人が知られているが、この気質の特徴の一つに、強い匂いなどの刺激に対して敏感であることが挙げられている。特定の物質に対する感受性が高いのだ。HSPの人は人口の約15~20%に見られるとされており、5、6人に一人はHSPだ。私は自己診断テストでは明瞭なHSPというほどではないが、傾向は比較的強い。子どもの頃に診断テストをやっていたら、間違いなくHSPに該当したと思う。

 ときどき体感で地震の前兆をキャッチする人がいるが、彼らの多くもHSPなのではないかという気がしている。て電磁波過敏症なども同じだろう。低周波音で体調が悪くなる人もそうかもしれない。私は地震の体感者でも電磁波過敏症でも(多分)ないが、匂いに対してはどうもかなり過敏な体質のようだ。

 過敏症は化学物質や電磁波が溢れるようになった現代の病だ。自然界にはない化学物質が人間にとってマイナスに働くことはあっても、プラスに作用することは考えられない。化学物質過敏症は、ある意味「炭鉱のカナリア」なのだ。

 現代社会は化学物質まみれだし携帯電話やWiFiの普及で日常的に電磁波にさらされる。5、60年前には考えられなかった状況になっている。過敏症の人は増え続けるだろう。化学物質過敏症は人類に警告を発しているのだと思う。


  


Posted by 松田まゆみ at 10:58Comments(2)環境問題