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鬼蜘蛛の網の片隅から › 2018年09月07日

2018年09月07日

災害列島日本

 6日未明、携帯電話のけたたましい警報で目が覚めた。携帯電話は寝るときに電源を切るのだが、この日は忘れてそのままにしていたのだった。寝ているときにこれが鳴り響くと一瞬何が起きたのかと頭が混乱するのだが、大音響の警報が終わらないうちから家がカタカタと揺れはじめたので地震だと分かった。

 揺れは大きくないものの、けっこう長い。これは大きそうだと直感した。揺れの感じにすぐさま東日本大震災のことが頭をよぎった。枕元の電気スタンドをつけてベッド脇の非常持ち出し袋に手を突っ込み携帯ラジオを取り出した。震源地や地震の規模などの情報を聴いてから再び布団にもぐり込んだが、寝付かれない。その直後に停電になったようだった。

 震源地は胆振地方だから私のところからはけっこう離れている。停電もしばらくしたら復旧するだろうとたかをくくっていたが、朝になっても復旧していない。携帯電話も「圏外」と表示されて使えない。とりあえず携帯ラジオが唯一の情報源だ。そのラジオで、震源地近くの厚真町で大規模な土砂崩れが起きていることや、北海道全域が停電していることを知った。

 胆振地方の直下型大地震で、なぜ北海道全域が停電になってしまうのかと不思議だったのだが、ニュースの説明を何度か聞いて理解した。こちらの「みこし」に例えた説明が分かりやすいので、以下に引用しておきたい。

 北電や経済産業省などによると、地震発生当時の電力需要は約310万キロワットだった。道内の主な火力発電所6カ所のうち、苫東厚真の3基(発電能力165万キロワット)を含む4カ所の計6基が稼働していたが、地震の影響で苫東厚真の3基が緊急停止。
 供給量が一気に減り、「みこしを担いでいた人たちの半分が一斉に抜けたような状態」(北電東京支社の佐藤貞寿渉外・報道担当課長)になった。
 通常、発電量は需要と常に一致するよう自動調整されている。バランスが狂うと発電機の回転数が乱れ、発電機や工場の産業用機器などが故障するためだ。

地震などの災害で一部の発電所が緊急停止しても、普段は他の発電所の供給量を増やして対応できるが、今回は他の発電所でカバーできる量を超えていた。
 このため、地震の影響を直接受けなかった発電所も需給バランスの乱れによる故障を避けるため、自動的に次々と緊急停止した。みこしの下に残った人が押しつぶされそうになり、危険を感じて次々とみこしを放り出して抜け出したような状況だったと言える。


 全道停電の最大の原因は、苫東厚真発電所が北海道の電力供給の約半分を担っていたということにありそうだ。

 今回の震源地は石狩低地東縁断層帯の近くだ。この近くでは2017年にもマグニチュード5.1の地震が起きている。石狩低地東縁断層帯で大きな地震が起きることは想定されていた。ならば、苫東厚真発電所が地震で運転を停止することは十分に予測できたはずだし、全道停電のリスクを回避する対策も可能だったはずだ。東日本大震災での教訓が活かされていたとはとても思えない。

 泊原発は停止していたとはいえ、燃料プールの冷却のための電気が欠かせない状況だ。全道的な停電は、原発の外部電源喪失そのものであり、最も避けねばならないことだ。それがあっけなく崩れ去った。ディーゼル発電機が作動したとはいえ、もし原発が稼働していたらかなり恐ろしい状況だ。

 原発は5重の安全対策をしているから大丈夫という原発安全神話が東日本大震災で一瞬にして崩れ去ったが、現在の電力供給システムもたった一か所の発電所の停止で致命的になることがはっきりした。発電設備を一か所に集中させてしまう方式がこのような事態を招いたのだ。電気はできるかぎり地産地消にしていくのが望ましいのだろう。

 私のところは6日の夜には電気が復旧したが、まだ停電が続いている地域もあるようだ。もし電気需要が増える冬だったらと思うと、ぞっとする。北海道の場合、灯油ストーブによる暖房が一般的だが、送風のためのファンに電気を使うので、停電になってしまうと暖房が使えなくなるのだ。厳冬期ならば水道の凍結被害も出るだろう。現代人にとって長期の停電は命取りになりかねない。

 石狩低地東縁断層帯ではマグニチュード7規模の地震が起きてもおかしくないと言われているし、今回の地震に誘発されて大きな地震が起きる可能性もある。さらに、北海道では十勝沖や釧路沖などの海溝型の大地震も懸念されている。日本中、どこに住んでいても地震災害から逃れることはできないし、私たちは被害を最小限に食い止める努力をすることしかできない。

 さて、今回の停電で痛感したのは、やはり日頃の防災だ。まずは寝室の布団やベッドから手の届く範囲に懐中電灯や携帯ラジオを置いておくというのが大事であることを実感した。夜に停電になった場合、明かりがないと何もできない。情報収集のために携帯ラジオも欠かせない。要は非常持ち出し袋を準備しておくということ。地震の揺れで物が散乱したときのために、スリッパも必需品だ。

 それと水と食料の備蓄。私のところは無洗米と水を常備しカセットコンロもあるので数日の停電で食べるものがなくなるということはなく、食料に関してはまったく心配はなかった。何日も停電すると冷蔵庫や冷凍庫の食品が傷んでしまうが、これは諦めるしかない。

 さらに土砂崩れが起きそうな場所や津波に襲われる可能性がある場所に住んでいる人は、日頃からハザードマップや避難所を確認し、災害時には速やかに避難するしかない。

 今回の地震では厚真町で大規模な土砂崩れがあった。6日の夕刊と7日の朝刊でその画像を見て、愕然とした。震源地近くの山が一斉に地滑りを起こしたのだろう。山の表面を覆っていた軽石層が崩れたらしいが、これほど一斉に崩れた光景ははじめて見た。

 東日本大震災のあとに熊本地震、そして今回の北海道胆振東部地震と、日本では震度7を記録する大地震が続いている。間違いなく地震も火山噴火も活発化している。さらに、今年は西日本の集中豪雨や台風21号でも大きな被害があった。大規模な災害では支援物資などいつ届くかわからないし、首都圏などの人口密集地で大きな災害が起きれば支援物資や救助などほとんどあてにできない。

 この先、いつになるかは分からないにしても、海溝型地震や首都圏での大地震は間違いなく起きる。恐らく想像を絶する被害になるだろう。そんなことを考えても仕方ないなどと思っている人もいるかもしれないが、災害を生き延びるには、まずは自分で自分の身を守る努力をするしかないと痛感する。
  


Posted by 松田まゆみ at 17:11Comments(1)雑記帳