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鬼蜘蛛の網の片隅から › 原子力発電 › 福島の昆虫の奇形について思うこと

2012年08月17日

福島の昆虫の奇形について思うこと

 つい先日、福島県などのヤマトシジミの羽や目に奇形が生じているという研究結果が発表された。

チョウの羽や目に異常-被ばくで遺伝子に傷か-琉球大(時事通信)

 これを巡ってネット上でさまざまな異論が出ているのだが、批判のためによく引用されているのが以下のサイトだ。

ヤマトシジミの奇形は原発の影響によるものなのか(むしブロ+)

 「むしブロ+」さんは、ヤマトシジミの場合、北限に近い生息地では奇形が多いことが以前から知られていること、サンプルサイズが小さいので統計データの信ぴょう性が低いこと、実験条件の一部が不明であること、昆虫は通常放射線に強いことなどを指摘して被ばくによる影響であるとすることに疑問を投げかけ、鵜呑みにすべきではないと言っているのである。よく読めば分かるが、被ばくによる影響を完全に否定しているわけではない。

 「むしブロ+」さんのような視点は確かに必要なことだし、批判的精神は大切だと思う。ところが、こうした意見が広まると、すぐにこのヤマトシジミの研究自体を否定したりデタラメだ、トンデモだと断言する人が出てくる。明らかに不適切な発言だ。このような短絡的な意見をいう方は、大方「安全サイド」思考の方のように思われる。以下のtogetterのコメント欄でも、「放射脳」などという揶揄表現が出てきて読むに堪えない。

ヤマトシジミの異常は原発事故の影響?

 一方、8月16日の北海道新聞に「福島のワタムシ 1割奇形」という記事が掲載された。福島第一原発から約32キロ離れた川俣町山木屋地区で採集したワタムシに、通常の10倍以上の比率で脚の壊死、触覚の欠損などの奇形が見られたとのこと。

福島のワタムシ 1割奇形 被ばく原因の可能性

 ヤマトシジミの研究例を否定する人たちは、ワタムシの事例についてはどう解釈するのだろうか。

 動植物の奇形はもちろん被ばくの影響だけで生じるわけではないが、被ばくが影響することも間違いない。こうした研究の積み重ねによって、今回の原発事故による野生生物への被ばくの影響が次第に明らかにされていくだろう。ヤマトシジミの事例も、今の段階で被ばくの影響ではないと断定してしまうのは早計だ。まして匿名のツイッターで野次るのはどうかと思う。

 福島原発事故による放射能汚染、被ばくのことに関してはネット上でさまざまな意見が飛び交っているが、安全サイドの意見の方と危険サイドの意見の方が相手を否定あるいは批判しあっている感が否めない。

 いろいろな意見があるのは当然だ。しかし、気になるのは断定できない不確定な事象について断定的な発言をし、異なる意見に対して罵倒するかのような批判をしている人をしばしば見かけることだ。

 福島の原発事故による被ばくに関しては、今後どのような影響が出るのか、あるいは出ないのか、誰にも分からないはずだ。同じ原発事故であっても、放出された核種やその量はチェルノブイリとは同じではないだろうし、もちろん原爆とも同じではない。被ばくによる健康被害は数年後に顕著になると言われており、今回の事故による環境への影響、健康被害は未知としかいいようがない(もちろん現時点でも被害が出てきているとは思うが)。

 それにも関わらず、「たいしたことはない」「心配するレベルではない」という人たちはいったい何を根拠にそんなことを言えるのだろう。もちろん、危険サイドの発言をしている人でも「健康な人はいなくなる」などという断定的な発言は控え、理由を示したうえで「可能性がある」「可能性が高い」という表現に留めるべきだ。また、やむを得ず汚染地域に住んでいる人たちに対して「避難しないのはおかしい」などという言い方も慎むべきだと思う。

 それからツイッターやブログなどを読んでいて気になるのは、自分と異なる意見の方に対し誹謗中傷、あるいは罵倒するような発言をしばしば見かけることだ。匿名であるからこそ、安易にこうした書き方をする傾向があるのだろう。内容的には賛同できる記事を書いていても、あまりに誹謗中傷や罵倒のような表現が多いと辟易としてくる。そのような書き方をすることで注目されると思って意図的にそうしているのかもしれないが、私には逆効果に思える。

 不確定なことを断定する人、根拠も示さず感情的な主張をする人、他者を罵倒したり誹謗中傷発言をするような人こそ信頼に値しないと私は思う。



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Posted by 松田まゆみ at 15:09│Comments(2)原子力発電
この記事へのコメント
 茨城県北部に住む者です。茨城県から福島県にかけての生き物を調査しており、9月28日に昆虫調査のため福島県いわき市まで行ってきました。久ノ浜のコンビニで明かりに来る昆虫を調べたり、夜鳴く虫を調査しましたが、昆虫類の奇形は見たことがありません。また以前より虫が減ったという印象もありませんでした。
 何か変わった現象があっても、それがすぐ放射能と結びつくかどうかは、綿密に調査しないとわからないでしょう。
 昨年郡山市立図書館に行ってきましたが、原発関係の本のコーナーがあって、かなり充実していました。東海村立図書館も原発関係の書籍コーナーがあるのですが、それに匹敵するくらいでした。雁屋さんの例の「鼻血」問題に反論する本も少し読みました。彼の言いたいのは、事実は事実として公開することが大切で、それに対して科学的な調査がすすむことが重要です。最初から風評被害を助長するものはダメというのは、非科学的です。そのように受け止めました。
 これからも機会を見て、福島県の生き物を調べたいと思います。
Posted by ifcortho at 2015年09月02日 21:12
ifcorthoさん

被曝の影響が出ているかどうかは、継続的な調査が必要なのではないかと思います。また、生物の種によっても影響の出方が違うかもしれません。

いずれにしても、きちんと調査を行っていくことではっきりとしてくるでしょう。
Posted by 松田まゆみ松田まゆみ at 2015年09月02日 21:33
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