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鬼蜘蛛の網の片隅から › 雑記帳 › 後悔のない人生のために

2012年12月31日

後悔のない人生のために

 今年ほど「生」や「死」について想いを巡らせた年もなかったかもしれない。

 3月に、転移がんを患っていた渡辺容子さんが亡くなった。彼女は私とほぼ同い年だ。自分と同じ、あるいは若い友人が亡くなるのはなんとも辛い。治らないがんであることを知った彼女は、抗がん剤による治療を選ばず、骨転移で痛みが出てきたときには放射線治療で対処した。痛みで歩くことが難しくなってきても、車椅子で小笠原にまで出かけて自然を楽しんでいた。すごいと思ったのは、晩年も自転車にのって出歩いていたことだ。

 入院したのは亡くなる前の数日。それまで自宅で過ごしていた。抗がん剤治療をしていたら、まず間違いなく旅行したり出歩くなどして人生の最後を自分の思い通りに過ごすことはできなかっただろう。自分の死を受け入れて生前から準備をし、信念を貫いて逝った。きっと後悔など微塵もない人生だったのだと思う。私が彼女のことを知ったのは数年前のことで、JANJANの記事がきっかけだった。彼女の記事に共感した私は、メールで連絡をとったのだ。短いお付き合いだったが、良き友に巡り合えたことを幸せに思う。

 弁護士の日隅一雄さんもがんで亡くなられた。彼も、がんが進行して体調がすぐれない中、東電の記者会見に通って、最後まで福島第一原発の事故について事実を知らせようと努力を惜しまなかった。彼も渡辺さん同様、入院をせず体が動く限り活動を続けた人だ。ほんとうに頭が下がる。

 5月には、幼い頃からクモにはまっていたI君の訃報を知った。彼は信じがたいほどのクモ好きで、なんと小学生の頃から日本蜘蛛学会の大会に参加していた。私がはじめて彼に会ったのは2006年の蜘蛛学会の大会で、彼はまだ小学校の高学年だったと思う。関西在住の彼は、わざわざ東京で開催された学会にやってきて、大人のクモ屋さんたちとクモについて会話をしていた。その博学なことに驚かされ、これはただのクモ好き少年ではないと確信した。

 大人のクモ研究者と対等に話しのできる彼は間違いなく立派なクモ学者になるに違いないと思っていたのだが、まだ高校生という若さで亡き人となってしまった。本当に残念でならない。

 もうお一人、忘れられないのが霧ヶ峰の「ころぼっくるひゅって」の手塚宗求(むねやす)さんだ。9月に81歳の生涯をとじた。手塚さんは1956年に24歳という若さで霧ケ峰の車山の肩に小さな山小屋「ころぼっくるひゅって」を建て、以来、山小屋の経営を続けてきた。山小屋を建てた当時はもちろんビーナスラインなどなく、強清水から背負子を担いで荷上げをする生活だった。昭和1959年の伊勢湾台風で小屋は全壊したが、そんな災難にもめげることなく、すぐに小屋を再建された。手塚さんは、霧ヶ峰にまつわる数々のエッセイを残している。

 かつて上諏訪に住んでいた私の両親にとって、霧ヶ峰は庭のような存在だった。小さなときから霧ケ峰に連れていってもらった私にとっても、霧ヶ峰は思い出深いところだ。霧ヶ峰の山小屋といえば車山肩の「ころぼっくるひゅって」、沢渡の「クルヌプヒュッテ」と「ヒュッテ ジャヴェル」だった。それぞれ個性を主張しつつ、まるで兄弟のように佇んでいる。ジャベルは1952年に故高橋達郎さんが建て、その向かいのクヌルプは1957年に松浦寿幸さんが建てた山小屋だ。私の両親は、時をほぼ同じくして建てられた3軒の山小屋の主と知り合いだった。彼らは、霧ヶ峰をこよなく愛した人々だ。

*霧ヶ峰については以下の父のエッセイもお読みいただけると嬉しい。

奥霧ヶ峰から男女倉へ
ヒュッテ霧ヶ峰
殿城山

 今年旅立っていった知人は、皆、お金や権力とは無縁で自分の信念を貫き通した人たちだとつくづく思う。だからきっと納得のいく生き方をし、最期も後悔をすることはなかったのだろうと私は思っている。そして、「後悔しない生き方」というのは、決して名声を得たり、贅沢な生活を送ることではないとも思う。

 最後に岡田直樹さんの以下のブログ記事を紹介したい。ここに「後悔しない生き方」のヒントがある。

人生における選択の方法論 その1 (Space of ishtarist)


   


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Posted by 松田まゆみ at 07:07│Comments(8)雑記帳
この記事へのコメント
松田さん、こんばんは♪

今日は、拙ブログに暖かいコメントを残してくださり、ありがとうございました♪
リコメでも書きましたが、突然のことでビックリしました。
まさか僕のことを覚えていてくださるとは思ってもいなかったので。

僕の生き方の軸がブレそうになる度にここへ来て記事を拝見し、気合と勇気と明日への希望を頂いておりました。
ほんとうに感謝しております♪

岡田直樹さんの「人生における選択…」も、実は朝から読んでいまして、”人生論”にありがちな臭みもなく、素直に腑に落ちる内容だったので、とても参考になりました。

いつも、弱い僕を支えてくださり、ありがとうございます♪
こんな時節柄、くれぐれもお体ご慈愛くださり、素敵な来る年をお迎えくださいね^^

木枯らし
Posted by 木枯らし at 2012年12月31日 17:06
木枯らしさん、こんばんは。

覚えていますとも!! 私はどちらかというと論理的なことを書いているようなブログを訪問することが多いのですが、木枯らしさんのブログはとても心に響くものがあって、密かに(笑)訪問させていただいていました。

木枯らしさんの優しさや誠実さが文章から、写真から、そして歌から伝わってくるからでしょうね。それに、皆さんとのコメントのやりとりも魅力です。

木枯らしさんも、どうぞお体大切にしてください。そして、来年も素敵な写真を見せてくださいね。楽しみにしています。
Posted by 松田まゆみ at 2012年12月31日 23:45
あけましておめでとうございます
ご挨拶頂きありがとうございます。
 僕の処は本筋釣りブログですが松田さんや
 こちらの知人、
 自然散策者さんのおかげで 普段釣り人が
 疑問に思っている事に澄み切った解明を持てる
 ようになりました 釣り人はマナーが無く問題を
 起こす人がいますが 自然を深く知ろう守ろうと
 いう人は結構いるんですよ。
 稚拙ながら道しるべとなる記事を書いて
 いかなきゃいけないななんて思っています
 本年宜しく お願い致します。<(_ _)>
Posted by こると at 2013年01月01日 17:27
松田さん♪

遅まきながら、新年、明けましておめでとうございます♪
不束者ですが、本年も宜しくお願い申し上げます。

昨年は、密かに(笑)ブログを拝見させて頂くなかで、松田さんの備えておられるブレない強さや文章に通底している弱きものたちへの優しさに触れることができ、ほんとうに大きな力を頂きました。

こんな誠実な方が、この”日本”に(笑)存在していることを知ることが出来ただけでも、僕にとっては驚愕であり、心励まされる出来事でした。

そんな松田さんから、直接優しいお言葉を頂き、これからの僕にとって、大きな自信に繋がりました。
ほんとうに、ありがとうございます♪

すみません。
リコメに書いた事情で、なかなかコメントできないかも知れませんが、ゆったりとした時間があり、かつ体調の良い時などには、一行でもコメントさせてください♪

松田さんご家族の、ご健康とご多幸をお祈りしています。

木枯らし
Posted by 木枯らし at 2013年01月01日 21:08
こるとさん、あけましておめでとうございます。

私は釣りの趣味はないのですが、釣りをする方たちはもちろん基本的に自然が好きなのだと思います(中にはマナーの悪い方がいるのは事実ですが)。だから、釣りをしながらいろいろな自然の変化、環境破壊に敏感に気づいているのでしょう。釣りを楽しみながら、釣り人の視点でいろいろ発信していただけたらと思います。

今年もよろしくお願いいたします。
Posted by 松田まゆみ at 2013年01月02日 11:13
木枯らしさん、私などはほんとうに何もできない“ただのおばさん”なんですよ。このブログも、はじめは自然についての疑問などをメインに書いていこうと思っていたのですが、だんだんずれてきました。

というのも、あまりに黙っていられないことが多いからなんですね。そして3.11のあとは、とりわけこの国が奈落の底に落ちていくように思えてなりません。ブログで自分の考えや想いを書いたからといって社会が変わるわけではありませんし、所詮自己満足なのかもしれません。が、やはり黙ってはいられない、言っておかねばならないという想いが強くあります。

コメントのことは、ほんとうに気になさらないでください。そして、どうか無理はなさらないでくださいね。
Posted by 松田まゆみ at 2013年01月02日 11:30
明けましておめでとうございます。
昨年は、長年の友人を夏に失いました。意見交換が火うような句、単に情報を交換し合うだけで、活動ができたほんとに数少ない友人でした。
その後は虚脱状態で、周辺の人たちや組織に迷惑をかけっぱなしでした。
絶対に涙を見せまいと読んだ弔辞でしたが、、結局はボロボロになってしまいました。
結局はこの世は人なのだと改めて思っています。
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2013年01月02日 22:33
獣医さん、あけましておめでとうございます。

歳とともに身近な人、大事な人の訃報に接することが多くなりますね。そして、惜しまれる方というのは、やはり人柄というか、どんな生き方をしていたか、ということでしょうか。

インターネットでどんな情報も手に入る時代になりましたが、その反面、生身の人と人とのつながりがどんどん薄れてきている気がします。
Posted by 松田まゆみ at 2013年01月03日 12:08
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