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鬼蜘蛛の網の片隅から › 原子力発電 › 原発は今すぐ廃止の決断を

2013年05月10日

原発は今すぐ廃止の決断を

 北海道新聞では金曜日に「各自核論」というページがある。各方面の識者などが持論を語るコーナーだ。今日の「各自核論」では、慶応大学教授の金子勝氏が「原発は不良債権 国有化を」とのタイトルで原発の再稼働問題について語っていた。

 金子氏は、電力会社が再稼働をしたがる理由は経営問題だという。北電は「電気が足りなくなるから再稼働が必要」と説明していた。しかし、泊原発1~3号機のすべてが止まって1年たったが、電気が足りなくなることはなかった。すると、今度は火力発電の燃料費がかかるという理由で値上げを申請した。

 原発は稼働していなくても人件費や使用済み燃料の冷却のためにお金がかかる。さらに、火発の燃料費も余計にかかる。だから電力会社は一刻も早く再稼働させたい。泊原発の2011年度末の施設や燃料の簿価上の残存価格、廃炉にするために積み立てている引当金の不足を合計すると3790億円で、北電の純資産の2797億円を上回っており、3号機は減価償却もこれからなので廃炉にすると経営を揺るがすと金子氏は指摘する。再稼働は経営問題というのは、まさにその通りだろう。

 これを解決するために金子氏は、原発の国有化(原発の管理と廃炉は日本原電が行う)と発送電分離を提案する。ここまでは私も賛同する。しかし、金子氏は以下のように続ける。

50基すべてを廃炉にするには国民負担が大きすぎるので一部の原発はきちんと安全投資をした上で日本原電が運転し40年で廃炉にする。安全投資分が回収できない老朽原発はすぐに止めるべきです。


 金子氏の言いたいことは分かる。しかし、安全投資をしてまで原発を稼働させるべきなのだろうか。金子氏は以下のようにも述べている。

なぜ原発がもうかるかと言えば、これまで事故のリスクに見合うだけの安全確保を怠り、安全投資を少なく済ませてきたからです。でも、いったん事故が起きたときに制御できないようなものをほんとに動かしていいのか-。


 金子氏の論理なら、安全投資にお金をかけたら原発はもうからないことになる。それに、安全投資をすれば絶対に安全だという保証もない。いくら安全投資をしたとしても、たとえばマグニチュード9.5などという超巨大地震が近くで起きたなら、あるいは30メートルもの津波が原発を襲ったなら、原発が耐えられるとはとても思えない。

 しかも、福島第一原発の事故原因の究明は曖昧なままではないか。東電は津波による電源喪失が事故の原因であり1~4号機のすべてが水素爆発だとしている。しかし、田中三彦氏の1号機は地震そのもので壊れたという主張は置き去りにされている。4号機の爆発は3号機からの水素が流入したものだというが、この説にはさまざまな疑問が出されている。

一番危険な福島第一原発4号機「本当は自力で爆発していた!?」仏独共同の国営放送と事故直後の新聞記事(みんな楽しくHappyがいい)

 3号機の爆発については、東電や政府は水素爆発としているが、ガンダーセン氏は燃料プールの即発臨界爆発説を唱え、イアン・ゴッダード氏は格納容器内の水蒸気爆発説を唱えている。

イアン・ゴッダード氏(Ian Goddard)の“福島第一3号機:水蒸気爆発理論”全訳(farpostingのブログ)

 私にはゴッダード氏の説の方が説得力があると思える。いったい何が真実なのだろう?

 いずれにしても福島第一原発の事故は、地震や津波という自然現象に起因している。人為ミスと言われているチェルノブイリとは明らかに違う。ならば、事故原因の究明がしっかりなされなければ同じ事故を再び起こすことも否定できない。それをあやふやにしたままの再稼働などあってはならないと私は思う。

 地球は巨大地震と火山噴火の活動期に入ったと見ていいだろう。しかも、日本の原発はほぼ全てで直下あるいは近くに活断層があると言われている。原発の減価償却より、地震や津波、火山などによる過酷事故のリスクを重視するべきではなかろうか。しかも、運転すればするだけ、行き場のない核廃棄物を増やすことになる。安全のための投資こそ止めて、使用済み核燃料の早期の安全保管をめざすべきだ。

 たしかに50基の原発すべてを廃炉にするのは、国民の負担が大きい。しかし、何も今すぐ廃炉作業にとりかかる必要はない。原発の廃炉は大変な被ばくを伴う作業なのだから、早期の廃炉作業はリスクが大きい。未来にツケを残すことにはなるが、廃炉による被ばくを軽減させるためにはしばらくそのままにして放射線量を減らすほうがよいのではないか。また、将来のほうが廃炉技術も進んでいるだろう。

 金子氏の言うように、原発はまさに不良債権であり負の遺産だ。国策としてこれを進めて来てしまった以上、廃炉のための税金投入はやむを得ない。いくら電力会社が安全神話を振りまいて国民を騙したといえど、国民にまったく責任がないというわけではない。国は速やかに原発の国有化、発送電分離を検討し、電力会社は安全対策への資金投入を止めて廃炉を決断してほしい。

 チェルノブイリや福島第一原発の事故を見れば、ひとたび過酷事故を起こしたならその損失はあまりにも大きく、国をも揺るがすものであることははっきりしている。東電は被災者に対し満足な補償もできないのだ。これ以上、過酷事故のリスクを負うことは許されないと思う。



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Posted by 松田まゆみ at 13:27│Comments(0)原子力発電
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