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鬼蜘蛛の網の片隅から › 原子力発電 › 「原発ホワイトアウト」が描き出した利権構造

2013年11月24日

「原発ホワイトアウト」が描き出した利権構造

 先日、話題の「原発ホワイトアウト」を読んだ。原発をめぐっての電力業界と政治家、官僚の利権構造を描いた現役官僚による告発小説だ。

 私は自然保護に関わっているので、大型土木公共事業における政・官・業の癒着と利権構造に関しては身にしみて感じてきた。治水や利水の名の元につくられるダム、地域経済の発展の名目の元に建設される公共事業の大半は、建設すること自体が目的といってもいいくらい利権まみれの世界だ。そこにあるのは道理ではなくお金や出世の世界である。

 原発ホワイトアウトの著者が描こうとしたのも、日本の中枢部のそうした世界だ。国民がどんなに原発ゼロを望み、再稼働反対の声を上げても、金の亡者たちは「うるさい蠅」くらにししか思っていないのだろう。彼らにとっては、利権構造を守ることこそ大事なのだ。

 著者である若杉洌さんへのインタビュー動画を見れば、彼が本を書いた意図がよく分かる。この動画だけでも見る価値がある。


内部告発か?「原発ホワイトアウト」 覆面官僚を直撃 投稿者 tvpickup

 この小説の柱は電力モンスターシステムの告発である。電力モンスターシステムとは電力会社が取引先に仕事を発注する際に相場の2割増しくらいで発注し、業界団体その儲けを業界団体に預託する。そのお金を政治献金やマスコミ対策につかうため、都合の悪い情報がなかなか出ないというシステム。小説に出てくる関東電力ではその預託金額は年800億円くらいだという。

 以下はインタビューでの若杉さんの発言

電力会社・政権政党・霞が関がどのように無理矢理に再稼働しようとしているか1人でも多くの人に知ってもらいたい。

モンスターシステムは麻薬みたいなもの。一度断ち切らないといけないが、断ち切るためには国民がちゃんとこれは麻薬だと認識して取り上げないといけない。官邸前で再稼働反対と叫んでいるだけでは麻薬を取り上げられない。政治献金やパーティー券は一定額以上の公表が全額公表にするとか、電気料金は誰もが使うという意味で税金と同じなので、1円単位まで支出先を公開させるなどすれば「たまり金」が発生することも防止できる。こうしたことを再稼働する前に要求しないといけない。

できるだけ覆面のまま政権の中枢に残って、いろいろなことを耳をそばだてて見聞きして、国民のみなさまに還元しないといけない、真実をできるだけ息長く伝えたい。

だいたい魂を売り渡したような悪い奴は1割くらいしかいなくて、残りの9割は迷っている。自分の上司とか政治家がおかしなことを言っていると。自分も出世したいし飛ばされたくないからこの人たちのことを聞いていた方が安全だと思う一方で、でもおかしいよねと、その間で揺れ動いている人たちが9割。私としては9割の公務員の方に是非同志としてやろうじゃないかと、きちんと職場の中や外でも発信すれば必ず変わっていくと思う。


 国民の命などそっちのけで、電力モンスターシステムを守ることに必死になっているのがこの国の中枢の姿なのだ。だからこそ被ばくによる健康被害はできる限り隠して住民を汚染地域に戻そうとするし、被ばくした人たちに満足な補償もしない。汚染された農地で農業を、汚染された海で漁業をさせる。原発が地震で壊れたことは何としても認めないし、使用済み核燃料の保管についても先延ばしするだけ。おそらく金の亡者たちは自分自身や家族に大きな災いが降りかからない限り、原発事故の反省などする気はないのではないか。それどころか日本でまた原発が爆発したなら、海外に逃げようと思っているのかもしれない。

 どこの国にも利権構造はあるだろう。しかし、この国の利権構造の強固さは凄まじい。これほどにまでお金に拘る人たちが政治をつかさどっていると思うと情けないやら腹立たしいやら虚しいやら・・・。そしてこんな政治家を選んだのはほかならぬ私たち国民なのだから、絶望感に襲われる。

 しかし、利権に群がる人たちはどうしてそこまでお金に目がくらんでしまうのだろう。いくらお金があったところで大地震を止めることはできない。大地震に襲われたら原発は持たないだろうし、原発を稼働したならまたいつか大惨事に見舞われるに違いない。いくらお金があったところで原発が爆発して放射能がばら撒かれたなら、被ばくよる被害は消すことはできない。いくらお金があっても、あの世にまでお金を持っていくことはできない。それにも関わらずお金に拘りつづけ、原発の再稼働をしたがる人たちはもはや狂気というほかない。

 そしてさらに恐ろしいのが、原発の情報も良識ある人の告発も封じこめようとする特定秘密保護法だ。原発に関する情報も特定秘密に指定すれば隠すことができる。福島の原発事故の原因究明すら棚に上げて再稼働に突き進もうとする政府にとって、これほど都合のいいことはないだろう。国民の言論の自由は監視され制限される。個人のブロガーですら監視対象になる。公務員の口を塞ぎ、うるさい国民の口を塞ぎ、政府はやりたい放題になるだろう。限りなく恐ろしい国ではないか。


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Posted by 松田まゆみ at 15:40│Comments(0)原子力発電
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