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鬼蜘蛛の網の片隅から › 地学 › 御嶽山の噴火は予測不可で済ませるべきではない

2014年09月30日

御嶽山の噴火は予測不可で済ませるべきではない

 27日の御嶽山の噴火は、多くの登山者が亡くなるという惨事となった。火山噴火予知連の藤井会長は、今回のような水蒸気爆発は予知が困難だと言う。しかし、御嶽山が噴火する可能性が高いと指摘していた人がいた。

 「地震の目」「噴火の目」という独自理論を展開している木村政昭氏は、「富士山大噴火!」(宝島社)、や「東海地震も関東大地震も起きない!」(宝島社)で、東北地方太平洋沖地震のあとに噴火する可能性の高い火山について言及している。これらの本で木村氏は、本州で少なくとも3つの火山の噴火が予想されるとし、富士山(2011年±4年)、浅間山(2012年±4年)、御嶽山(2013年±4年)と予測している。

 木村氏の理論は具体的な発生年月を特定するようなものではないが、巨大地震と関連づけて噴火の可能性が高いことを指摘しているという意味では注目に値する。

 気象庁は「火山の状況に関する解説情報」を発表している。御嶽山の場合、噴火前の9月11日、12日、16日に火山性地震が増えており、「地震活動が活発になっていることから、火山活動の推移に注意してください」と注意喚起していた。しかし、この情報は気象庁のホームページに掲載されているだけだ。

火山の状況に関する解説情報の発表状況 御嶽山2014年(気象庁)

 読売新聞の以下の報道もある。

御嶽山での火山性地震に水蒸気爆発のシグナル(読売新聞)

 火山性の地震の増加が見られたが、気象庁は直ちに噴火につながるとは考えずに噴火警戒レベルを引き上げることはしなかった。地震が増えても噴火しない場合もあることを考えると、地震の回数だけで噴火警戒レベルを上げることにはならないというのは分からなくもない。しかし、噴火警戒レベルを上げるには至らないということと、登山者などに火山性地震が増えているという情報を知らせるかどうかは別問題だ。

 現代の科学では地震や噴火は予知できないという人は多い。たしかに具体的な日時まで予測することはできないだろう。しかし地震に関していうなら、地震の前に地震雲が出現したり、ラドン濃度や地下水位に変化が見られるということは認められている。動物の異常行動なども昔から知られている。日時の予測はできなくても、前兆といえるものがあるのは確かだと思う。

 火山の噴火においても、注意深く観察していれば、火口からの水蒸気の噴出量の変化や硫黄臭などの強さ、いつもと違う微振動などといった変化があることが多いのではなかろうか。特に、山頂近くに山小屋があり登山者も多い山では、そうした変化は把握しやすいと思われる。

 地震の増加だけでは噴火は予知できないとしても、木村氏の予測、地震の増加、その他の変化を重ね合わせることで、少なくとも警戒する状態だったと言えるのではなかろうか。「噴火は予測できない」と言って済ませてしまうのは、すんなりとは納得できない。

 確実な噴火予知はできないとしても、火山性地震の増加という事実を登山者に知らせることは難しくない。たとえば気象庁など地震情報を把握している機関と観光業者が連携し、ロープーウェイの駅や登山口に地震が増えていることを掲示するようなことは簡単にできる。昨今は山の上でも電話が使えるのだから、山小屋に同様の注意喚起する掲示を出してもらうこともできるだろう。私なら、火山性地震が増えていることを知っていたなら登らないと思う。登山者に情報提供して注意喚起することが無意味とは思えない。

 今回の噴火で、私は御嶽山の山小屋の多さを初めて知った。気象庁が火山性地震の増加だけで噴火警戒レベルを上げたり注意喚起に踏み切れない背景には、観光業者への配慮があるように思えてならない。とくに噴火警戒レベルを上げて立入規制したなら、ロープーウェイや山小屋への経済的影響は避けられない。しかし経済的損失に気をつかっているのであれば、防災の観点からすれば本末転倒だ。山小屋もロープーウェイも危険であることを知りながら営業していると考えるべきだ。

 木村政昭氏は御嶽山の他に、富士山と浅間山の噴火も予測しており、3つの火山のうち浅間山が一番大きなエネルギーを蓄積していると思われるとしている。また富士山に関しては5つの兆候を挙げて警告している。島村英紀氏も富士山は山体膨張が進んでいて2006年からは加速していると指摘しているほか、噴火前に前兆があるかどうかも分からないとしている。

「富士山噴火しない」はあり得ない 前兆なしに噴火するケースも (夕刊フジ)

 富士山も浅間山も噴火の可能性が高いという認識のもとに、十分な警戒と防災の準備が必要だと思う。

 もちろん、たとえ噴火の予知があるていど可能であるとしても、原発が巨大噴火に対処できるなどということはあり得ないだろう。降灰によって電源喪失することもあり得るだろうし、原発に保管されている核燃料を速やかに安全なところに搬出できるとも思えない。過去に巨大地震や巨大津波、巨大噴火に繰り返し襲われてきた日本において、巨大地震も巨大津波も巨大噴火も決して想定外のできごとではない。

 御嶽山の噴火は、原子力をコントロールできると思っている傲慢な人間への自然からの警告と受け止めるべきだ。

     


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Posted by 松田まゆみ at 15:38│Comments(0)地学
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