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2015年02月01日

暴力から生じるのは憎しみの連鎖でしかない

 ここ数日、朝目覚めるたびに後藤さん開放のニュースが流れることを願っていたが、今朝はその願いもむなしく悲報を知った。残念でならない。

 今回の湯川さんと後藤さんの人質事件については前回の記事でも触れたが、昨年秋に彼らを救うことは不可能ではなかった。湯川さんがイスラム国の裁判にかけられるということで、9月には常岡浩介さんと中田考さんが通訳のためにイスラム国の支配地に行っているが、空爆などで湯川さんに会うことができなかった。

 しかも、彼らは帰国してから北大生のことに絡んで警察から事情聴取を受け、イスラム国と連絡ができない状況になってしまった。この時期にイスラム国と連絡をとって対処していたなら、殺害の対象にはならなかっただろう。

 常岡さんと中田さんの身動きがとれない中、湯川さんの救出に向かったのが後藤さんだ。おそらく後藤さんはイスラム国の危険性を十分に知りながらも、自分たちが殺される可能性は低いと考えていたのだろう。日本は平和憲法があり、イスラム国を攻撃する敵国だという認識はなかったはずだ。

 しかし、安倍首相の中東訪問での宣戦布告ともいえる発言が彼らを硬直させ、方針を転換させることになったのは想像に難くない。あの発言によって、湯川さんと後藤さんは人質として殺害対象にされてしまったのだ。

 この危機的状況から二人を救いだす方法は皆無ではなかった。常岡さんも中田さんも自らイスラム国との交渉役を申し出たからだ。彼らに交渉を委ねていたなら、湯川さんと後藤さんは助かっていたかもしれない。しかし、日本政府はイスラム国との直接的な交渉手段を持たないにも関わらず、彼らの申し出を無視してしまった。これが、湯川さん殺害の引き金になった。本気で国民の救出に全力を尽くしたとはとても言えない。

 そして、身代金が取り下げられてヨルダンで拘束されている死刑囚の開放が後藤さん開放の条件になってしまった。日本政府は直接交渉の場すら奪われ、後藤さんの命はヨルダン政府の交渉に委ねられてしまった。

 こうやって見て行くと、失敗の積み重ねによって救出可能だった人が殺害されてしまったと言っても過言ではないだろう。

 相も変わらず自己責任を口にする人は多いが、国が国民の命を救うのは当然のことだ。自己責任で行う登山などでも、事故が起きてしまったなら懸命な救助をする。危険なところに行った自己責任はあるが、だからといって見殺しにしていいということにはならない。そこを履きちがえるのは責任転嫁でしかない。

 イスラム国が後藤さんを殺害したときのメッセージは以下だ。安倍首相はテロリストを完全に敵に回してしまった。

日本政府よ 邪悪な有志連合を構成する愚かな同盟諸国のように お前たちはまだ我々がアラーの加護により 権威と力を持ったカリフ国家であることを理解していない 軍すべてがお前たちの血に飢えている 安倍(首相)よ 勝ち目のない戦争に参加するという無謀な決断によって このナイフは健二だけを殺害するのではなく お前の国民はどこにいたとしても殺されることになる 日本にとっての悪夢を始めよう

 安倍首相は彼らの救出に失敗した自分の責任を棚に上げ、バカの一つ覚えのように「テロに屈しない」という言葉を繰り返した。そして後藤さんが殺害された今、「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携していく」と語った。この言葉は報復ととれるものであり、暴力に対して暴力で対処すると言っているようなものだ。まさに悪夢であり、最悪だ。

 暴力を暴力で封じ込めようとしたなら憎しみが連鎖して泥沼にはまり込むだけだ。罪のない二人を惨殺するというイスラム国の行為を容認できないのは当たり前だが、暴力での対処を宣言するのは火に油を注ぐことにしかならない。

 暴力の連鎖を絶つためには、安倍首相の暴走を食い止めて平和憲法を堅持し、集団的自衛権の行使を認めないことに尽きると思う。後藤さんの母親の石堂順子さんも悲しみの中で「憎悪の連鎖になってはならない」と言っている。安倍首相には石堂さんの言葉を胸に刻んでほしい。


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