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鬼蜘蛛おばさんの疑問箱 › メディア › 誰もが名誉毀損で訴えられかねないネット時代

2015年02月08日

誰もが名誉毀損で訴えられかねないネット時代

 かつては名誉毀損で訴えられるというのは、もっぱら雑誌や書籍などで事実無根の記事を書かれるなどというような場合だった。つまり、裁判の当事者はジャーナリストや出版社、著作者、著名人などであり、市井の人々が名誉毀損で訴えられるなどということは、ほとんど考えられなかった。

 ところがインターネットが普及し、ブログやツイッターなどで誰もが自由に発言できるようになった今、誰もが名誉毀損で訴えられてもおかしくない。

 例えば、ブログに書いたことが名誉毀損だとして、高額訴訟をふっかけられているご夫妻がいる。以下の天野ベラさんコグさんご夫妻で、本人訴訟で闘っている。賠償金目的の嫌がらせではないかと思うような裁判だ。

天野ベラのブログ
天野コグのブログ

 天野さんご夫妻の場合、驚くのが総額6000万円という損害賠償金の額だ。一般の市民のブログ記事に対してこれほどの高額の賠償金を求めるというのは尋常ではない。しかし、こんなとんでもない裁判が実際に起きているのは事実だ。

 また、反社会的行為としてきわめて問題なのがいわゆるスラップ訴訟。これはネットが普及する前からあり、例えばサラ金の武富士が武富士を批判した本を書いた著者らを訴えた事例がある。裁判所は、武富士の提訴自体が裁判制度の趣旨目的に照らして違法というべきものである、と武富士を断罪した。

著作者保護制度で思い出した名誉毀損裁判

 また同じく武富士から名誉毀損で訴えられたジャーナリストの三宅勝久さんも、武富士に対して損害賠償を求める反訴を提起して最高裁まで闘い勝訴した。もっとも、賠償金は裁判に費やした費用では足りなかったそうだ。

武富士事件にみる「名誉毀損ビジネス」言論弾圧に手を貸す弁護士(JANJAN NEWS)

 武富士の代理人弁護士は、辣腕として名の知れる弘中惇一郎弁護士であり、前述の天野ベラさんを提訴した原告の代理人でもある。この事例は、スラップに加担する弁護士ビジネスの存在を物語っている。

 この事件のように裁判所が明確にスラップを起こした原告を手厳しく断罪する判決はむしろ珍しい。ただし、この二例はネットでの記述に対するスラップ訴訟ではない。

 昨今では、日向製錬所の裁判のように、一般の人のブログ記事もスラップの対象にされるようになった。市民がブログという表現手段を獲得し誰もが世界に向けて自由に物を言えるようになったのは歓迎すべきことだと思う。その一方で、常に名誉毀損のリスクにさらされるようになったのだ。もちろんツイッターでも同じリスクがある。

 匿名だから他人を誹謗中傷しても大丈夫だろうなどと考えるのは甘い。誹謗中傷は不法行為で損害賠償の対象だし、度を越せば犯罪になる。被害者がプロバイダーに発信者情報の開示を求めて損害賠償の裁判を提起することもあるし、刑事事件になればもちろん捜査機関は発信者を突きとめる。それにも関わらず、匿名を利用したネットによる誹謗中傷、嫌がらせは後を絶たない。

 日向製錬所が黒木睦子さんを訴えた件では、黒木さんや支援者を誹謗中傷するツイッターアカウントが実にたくさん湧いてきた。問題は、そこでの発言の内容だ。単に感想を述べる程度ならまだしも、どう考えても名誉毀損としか思えない発言もある。

 例えば、三浦万尚さんが代表になっている日向製錬所産廃問題ネットワークの詐欺疑惑に関する発言だ。ネットワークはカンパを呼び掛け、沈殿池や井戸などの水質調査を行っている。検査機関に検査を依頼するには多額の費用がかかるからだ。

 そのカンパに関し、黒木さんや支援者を批判する人たちは、「詐欺に注意」などと呼び掛けている。このような発言は、ネットワークが詐欺組織であると言っているに等しい。しかし、詐欺をしていなければとんでもない名誉毀損だ。

 詐欺をしているという明確な証拠をつかんでいるなら公共の利益のために詐欺であると指摘するのはいいだろう。例えば通帳の入金記録と会計帳簿を入手し、実際には10万円のカンパがあったのに、会計帳簿には5万円の収入しか記載せず、差額の5万円の使途が不明なってしまっている、などという証拠をつかんでいるのなら、詐欺だというのも分かる。しかし、詐欺、詐欺と騒いでいる人たちがそのような証拠をつかんでいるとはとても思えない。

 また山に埋められたスラグから有害物質が溶出しているかどうかを調べるための調査は、2、3回で済むという性質のものではない。スラグを浸透した雨水がゆっくりと地下水や河川に流れ込むことを考えれば、何年にもわたって調査をすることが望ましい。そのためにカンパ金をプールしておくということもあるだろう。つまり、今の時点では、第三者が詐欺などとはとても言えないと私は理解している。

 だから、ネットワークに関わっている人が「詐欺」発言をしている人たちの発信者情報の開示を求めて発信者を特定できれば、名誉毀損で民事訴訟を起こすこともできる。また、悪質であれば刑事事件にもなり得るだろう。詐欺、詐欺と騒いでいる人たちは、事の重大さやリスクを分かってやっているのだろうか。以下の記事をよく読んでいただきたい。

Twitter匿名アカウントの個人特定可能に。悪口・誹謗中傷は名誉毀損で訴えられるかも。 (Web Marketing Diary)

 もちろん「詐欺」発言だけが名誉毀損ではない。事実無根の中傷で実名の人の評価を低下させたのであれば名誉毀損だ。黒木さんと彼女の支援者を批判している人たちは、あまりに軽率な発言が多いと言わざるを得ない。

 ところで、私は以前、インターネット新聞JANJANの市民記者として記事を投稿していた(大谷憲史氏も同じくJANJANの市民記者だったらしい)。私の書く記事は、悪質出版商法問題とか、環境問題など企業や行政批判などが大半だった。そして、自費出版(共同出版)問題を書いた連載記事に関し、文芸社がインターネット新聞社に対して名誉毀損を理由に削除を要請し、削除しなければ法的手段に訴えると恫喝した。

 なぜか、著者である私ではなく記事を掲載したメディアを恫喝してきたのだ。このために、私はインターネット新聞社に記事に書いたことが真実であることを示す証拠を送り、インターネット新聞社は削除要請に応じなかった。結局、文芸社もインターネット新聞社を訴えることはしなかった。個人や企業を名指しで批判する場合、事実に基づいて記事を書くのは当然だが、その事実を裏付ける証拠を保存しておくということは極めて重要だ。

 匿名性の高いネットを利用して、遊び感覚や嫌がらせ目的で実名の者を誹謗中傷するのは論外であるが、公共の利益を目的とした告発的言論にも恫喝訴訟がつきまとうことを頭に入れておかねばならないだろう。



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Posted by 松田まゆみ at 15:43│Comments(0)メディア
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