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鬼蜘蛛の網の片隅から › 政治・社会 › 賠償金の踏み倒しは防げるのか

2017年11月16日

賠償金の踏み倒しは防げるのか

 「弁護士ドットコム」というサイトにこんな記事が掲載されている。

ひろゆき氏の方法はもう終わり? 賠償金「踏み倒し」撲滅へ、法制度見直し議論

 民事訴訟で賠償金の支払い命令が出た場合、判決に従って賠償金を支払うというのは自分の行いに責任をとるという意味で当然のことだ。裁判所の命令に従わないということは法に従わないということであり、無法者といっていいだろう。ところが、ときどき支払わずに踏み倒してしまう人がいる。代表的なのが元2ちゃんねる管理人の西村博之氏だろう。彼の場合、資産があるにも関わらず踏み倒していると言われているから悪質だ。

 なぜこんなことができるのかは記事で説明されているが、現在の法律では債権者にとって債務者の財産の強制執行がとても困難だという現状がある。しかも支払わなくても刑事罰がない。踏み倒して10年たてば時効になってしまう。西村氏の場合は海外の金融機関に口座を持っていると言われており強制執行も簡単にはできない。そしてすでに時効がきているので債務はゼロだと豪語している。

 彼が2ちゃんねるの管理人を辞めたのは、ずっと支払い拒否を続けていたら賠償金が膨れ上がってくる一方だしそのうち法改正があるかもしれないしなので、管理人を辞めることで区切りをつけ、溜まった賠償金を時効に持ち込んでチャラにするという思惑があったのではなかろうか。刑事罰がないとはいえ、債務者は裁判で決まった賠償金を支払う責務があるのだから、無法者であることは確かだ。

 不法行為で民事訴訟を起こす者の多くは弁護士を雇い、裁判に費用と時間を費やす。それにも関わらず西村氏のような無法者がのさばっていたら何のために法律があり裁判があるのかということになってしまう。

 そして懸念されるのは西村氏の話しが有名であるがゆえに、この手法を真似する人がいるのではないかということだ。単に「払いたくない」「判決が納得できないから払わない」などという自分勝手な理由で支払わない人もいるだろう。このような無法者が溢れるようになれば、損害賠償訴訟が無意味になりかねない。そんなこともあって、法の抜け穴を塞ぐための検討がようやく始められたということなのだと思う。

 ただし、中には支払い能力がない人がいるのも事実だし、損害賠償によって人生が暗転してしまう人がいるのも事実だ。例えばかつて文芸社商法の批判をした冊子を配布した渡辺勝利氏は文芸社から名誉毀損と業務妨害で訴えられた裁判に敗訴してしまった。この裁判に関してはスラップだと私は考えているが、たとえ理不尽な裁判であっても確定した判決に従うというのが裁判に負けた者の責務だ。納得がいかなければ控訴せねばならないが、彼は控訴を断念した。

 ところが彼は別の裁判でも敗訴して高額の賠償金を抱えてしまった。困った彼は文芸社に頭を下げて賠償金の免除を求めたらしい。その後、彼は文芸社を擁護する側に回り、文芸社を批判していた私まで攻撃するようになった。あの気骨ある渡辺氏が賠償金が払えないゆえに文芸社に屈服せねばならないとはなんと哀れで惨いことかと思ったものだ。債務者と言えど、最低限度の生活は保証されており強制執行で身ぐるみはがされるということにはならないのだが、責任感の強い彼は支払い不能を理由に切り抜けることを良しとしなかったのかもしれない。

 ただし、債務者の支払い不能を理由に債権者が賠償金の受け取りを諦めねばならないというのもおかしな話だ。記事では払わない人の対策として賠償金を国が立て替え、国が直接加害者への取り立てを行うというノルウェーの事例も紹介されているが、債権者が泣き寝入りしないで済む仕組みも検討していくべきだろう。もっともそのためにマイナンバーを利用するという話しなら、賛同はしかねるが。

 現代はネット上に誹謗中傷、名誉毀損が溢れている。被害者がお金と時間をかけて加害者を特定し、さらにお金と時間をかけて裁判を起こしても踏み倒されたらたまらない。ネット上では無責任人間がのさばり、すでに加害者天国のような感がある。西村氏はおよそ30億もの賠償金を踏み倒したあげく時効がきたと開き直っているが、今回の見直しは遅すぎた感がある。

 いわゆるザル法は損害賠償問題に限らずいろいろなところにある。法治国家である以上、ザルの穴を塞ぐことは当然だろう。


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Posted by 松田まゆみ at 10:30│Comments(0)政治・社会
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