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2019年02月23日

財政危機に直面する日本で私たちはどんな社会を求めるのか

 昨年、水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」を読み、先日は明石順平著「データが語る日本財政の未来」を読んだ。水野さんは資本主義の歴史を元に、近年は利子率(利潤率)が低下して資本主義は限界に近付いており、将来的に定常経済に移行せざるを得ないとの主張を展開している。また、日本は早急に財政収支を均衡させないと財政破綻をすると警告する。

 一方で明石さんはさまざまなデータを分析し、もはや日本経済はすでに破綻寸前でありこのままでは財政崩壊は免れないと予測する。明石さんは資本主義・新自由主義に関しては一切言及していないのだが、「経済成長すれば何とかなる」という発想で対処しようとしてきたことがこの破綻寸前の危機的財政状況を招いたという考えだし、日本ではもはや経済成長は不可能だと言う。

 現在、日本の国債は1000兆円を超えている。つまり1000兆円以上の借金をしていることになるのだが、水野さんも明石さんもアベノミクスの嘘を指摘した上で、日本は財政破綻に向かっていると言っているのだ。この二冊を読めば、日本が危機的状態にあることは理解できるし、今後どのような道を選択すべきかを否が応でも考えさせられる。

 水野さんは財政破綻しないために日本はどうすればいいか、次のように提言している(193ページ)。

 その国債がゼロ金利であるということは、配当がないということです。配当はないけれども、日本のなかで豊かな生活とサービスを享受できる。その出資金が1000兆円なんだと発送を転換したほうがいい。
 そう考えたうえで、借り換えを続けて1000兆円で固定したままにしておくことが重要です。現在は歳出九〇兆円に対して、四〇~五〇兆円の税収しかありませんから、放っておけば、一〇〇〇兆円の借金が一一〇〇兆円、一二〇〇兆円とどんどん膨らんでいきます。そうなってしまったら、先ほど行ったように、日本だけでは国債を消化できず、外国人に買ってもらわなければならない。でも外国人にとって日本国債は会員権ではなく、金融資産にすぎませんから、ゼロ金利では承知してもらえず、金利は上がることになります。それでは財政破綻を免れることはできません。
 今は増え続けている預金も、先ほど述べたように、二〇一七年あたりを境に減少に転じることが予想されています。おそらく今後は、団塊世代が貯蓄を取り崩したり、相続した子供世代が貯蓄にお金を回さないことで、減少圧力は少しずつ強まっていきます。そう考えると、残された時間はあと三、四年しかありません。その間に、基礎的財政収支を均衡にさせることが日本の喫緊の課題なのです。


 水野さんがこの本を書いたのは2014年3月だから5年前のことだ。そして水野さんの言っていたように3、4年の間に国債を1000兆円に留め、基礎的財政収支を均衡にさせることができたかといえば、「ノ―」と言うしかない。安倍政権は財政収支の赤字を増やしてきた。水野さんの指摘が当たっているのなら、日本は財政破綻に向かっているということになる。

 一方で、明石さんは日銀による莫大な国債購入に関して、こう指摘する(159ページ)。

 国債市場においてこれほどのシェアを占めている日銀が国債を買うのを止めたらどうなるか、誰が見ても明らかだろう。こうやって無理やり国債を買い占めているから、金利が低く抑えつけられている。日銀がいなくなれば日本の国債価格が大暴落するのはほぼ確実だろう。そして金利は急上昇してしまう。日銀は今や物価目標すら取り下げてしまったが、相変わらず国債の爆買いは止めていない。もう止められないんだ。


 「止められない」が間違いないなら大変なことになる。日銀が債務超過になり円の信用が失われたら円安になり、円安になれば物価が上がってインフレが止められなくなる。極端なインフレになった場合、社会保障費が追いつかず医療も介護も年金支給も生活保護費も足りなくなる。つまり年金生活者や生活保護を受けているような社会的弱者は生死にかかわってくる。日本のように極端な少子高齢化が進んだ国での極端なインフレは人類にとって初めてのことだという。しかも極端なインフレになれば過去分の借金負担は軽くなるが、将来するであろう借金はどんどん膨らんでいくことになるという。これはどうしても避けたい。

 かといって経済成長は望めない。日本は少子高齢化で社会保障費は増大する一方だが、労働人口は減る一方。莫大な借金を背負った上に少ない現役世代が高齢者を支えるというものすごく大変な状況に突入する。経済成長などをあてにするのは間違いだ。

 とすると財政を立て直すには「増税と緊縮」しかない。増税は国民にとっては確かに大変だが、極端なインフレや預金封鎖、通過崩壊よりもまだましかもしれない。明石さんは国の財政が破たんしたなら「太平洋戦争よりも困難な事態になるのは明らかだ」と言う。

 明石さんはアベノミクスの失敗についても詳しく説明しているが、今年に入ってからアベノミクスの失敗を隠すための統計不正が明らかになってきた。アベノミクスの化けの皮が剥がれてきたのだが、アベノミクスの失敗によって日本は苦境に立たされている。

 健全な財政とは赤字を出さないということだ。しかし、歳出が税収を上回り、その差は大きくなっているのが現状だ。景気回復のために所得税や法人税の減税をしてきたことがその大きな要因だ。その減税の穴埋めのために消費税を導入したが、全然穴埋めにはならなかったのだ。これでは消費税分が社会保障に回るはずがない。少子高齢化で社会保障費が膨らんでいくことは分かっていたのだから、もっと早くから所得税や法人税を上げて借金を減らし財政収支を均衡させねばならなかったのだ。

 世の中は相変わらず成長神話に支配されている。今でも多くの人が「成長」「成長」と口にする。ツイッターで成長を否定するような発言をしようものなら、すぐに反論のリプがとんでくる。冷静に考えたなら、極端な少子高齢化が進む日本ではこれ以上成長が見込めないし、統計偽装でアベノミクス以降のGDPがかさ上げされた疑惑が濃厚になっており、もはや成長など期待できないことは分かると思う。それにも関わらず多くの人が今も成長神話にしがみついている。

 今や世界の1%の富裕層の資産が残りの99%人の資産より多いという異常な事態になっている。この恐るべき格差はまさしく行き過ぎた資本主義、新自由主義がもたらした現実だ。そして自民党政権がやってきたのも大企業や富裕層を優遇する規制緩和や税制であり、非正規雇用の拡大であり、それらによって日本も格差が一気に広がった。

 こんな状態はいつか破綻するだろう。水野氏が指摘するように、もはや資本主義は終焉を迎えているとしか思えない。永遠の経済成長などあり得ないのであり、経済成長至上主義から脱却しなければならない。そしてその後にくるのが定常状態ということになる。水野氏は、資本主義にできるだけブレーキをかけて暴走を抑えつつ、資本主義の後にくるシステムへとソフトランディングさせることが大事だと説くが、その通りだろう。

 さて、このような状況の日本で、私たちは一体どうするのがベストなのだろう。アベノミクスの失敗によって、日本が健全な財政を取り戻せる可能性はかなり低くなってしまった。このまま自公政権が続くなら、おそらくソフトランディングどころではなく一気に財政破綻に向かうのではなかろうか。

 仮に、政権交代が実現したとしてもアベノミクスの負の遺産はあまりにも大きく、新たな政権はその尻拭いのために極めて困難な道を歩むことになるだろう。財政破綻を阻止すべく最大限の努力ができる政党、政治家を選ぶしかない。新自由主義や経済成長至上主義が今の悲惨な現状を招いたのだから、新自由主義論者にはまったく期待できない。かといって国債によって増大する社会保障費を確保し財政出動で景気回復を図るという案もアベノミクスの二の舞になるとしか思えない。しかし野党の中にも経済成長至上主義の人がかなりいるし国債発行を続けても財政破綻はしないという考えの人がかなりいる。

 例えば自由党の山本太郎氏は消費税の5%への減税を提案し、今の安倍政権は緊縮財政だと批判している。

山本太郎「消費税は5%に減税へ。最終的には0%を目指したい」

 もちろん国民にとって消費税減税は有難いが、明石さんの本を読めば所得税や大企業への課税を強化したとしても消費税を減税する余裕など全くないことが分かる。減税というのはあまりに非現実的だ。安倍政権のやってきたことは借金を増やして財政を悪化させたのだから放漫財政であり、これからは緊縮財政にしなければ日本は持たない。それなのに山本氏は安倍政権を緊縮財政だといって金融緩和と財政出動が必要だと主張している。山本氏も成長神話に捉われている。

 この山本氏の主張は「薔薇マークキャンペーン」と重なる。薔薇マークキャンペーンは統一地方選と参院選に向けて「反緊縮の経済政策」を広める運動だ。以下が薔薇マークの提唱する政策(薔薇マーク認定基準)になる。

1.消費税の10%増税凍結(むしろ景気対策として5%に減税することが望ましい)
2.人々の生活健全化を第一に、社会保障・医療・介護・保育・教育・防災への大胆な財政出動を行い、それによって経済を底上げして、質の良い雇用を大量に創出する。(国政候補は「大量失業が続く不況時代には二度と戻さない」と掲げることが望ましい。)
3.最低賃金を引き上げ、労働基準を強化して長時間労働や賃金抑制を強制する企業を根絶し、人権侵害を引き起こしている外国人技能実習制度は廃止する。
4.大企業・富裕層の課税強化(所得税、法人税等)など、「力」の強弱に応じた「公正」な税制度を実現する。
5.(4.)の増税が実現するまでの間、(2.)の支出のために、国債を発行してなるべく低コストで資金調達することと矛盾する政策方針を掲げない。
6.公共インフラのいっそうの充実を図るとともに、公費による運営を堅持する。


 これを読んで賛同する人はそれなりにいると思う。私も社会保障や介護、教育などを充実させることや、賃金を引き上げて労働環境を改善すること、大企業や富裕層への増税強化は賛成だ。しかし、明石さんの本を読んでしまった今、5の国債発行による資金調達と6の公共インフラなどへの財政出動はどうしても賛同できない。結局、国債発行を続けることによって借金を膨らませ破綻に向かうことになるのではないか。成長など見込める状態ではないのに財政出動というのはあまりにも危険だ。水野さんも、日本はすでに経済が需要の飽和点に達しているので、財政出動しても経済成長は見込めないとの考えだ。

 個人的には賃金が上がらない状態での消費税増税はすべきではないと思うが、これから極端な少子高齢化で社会保障費が増大することが間違いないのだから、将来的には消費税増税をしなければとても財政は持たないと思う。

 私には不思議で仕方ないのだが、この国では未だに経済成長やら資本主義に拘り続けている人たちがとても多い。現実を直視するなら、もはや経済成長は限界に近付いているのであり、発想を転換して「成長神話」から抜け出さねばならないだろう。もちろん経済成長が限界に達したからといって、すぐに資本主義から別のシステムに移行できるわけではない。しかし、このまま経済成長を求めつづければ、日本はあまりに危険な道を進むことになるように思えてならない。

 ツイッターを見ていると、国債を発行しつづけても財政破綻はしないという楽観論を支持する人々と、このまま国債発行に頼りつづけたら財政破綻を招くという破綻論を支持する人々に大きく分かれているようだ。大雑把に言うならば、前者は国債発行と財政出動を提案し、後者は緊縮と増税を提案するといった感じだ。どちらを支持するかは、まずは明石さんの「データか語る日本財政の未来」を読んで考えてほしいと思う。

 明石さんは著書の最後にこんなことを書いている。

一つ確実の言えるのは、「先送り」をしてはいけないということだ。先送りではその場しのぎにしかならない。後で必ず痛い目に合う。今まで見てきたとおり、日本は高齢化が進んでお金が沢山必要な国になっている。そのお金は誰かが税金や社会保険料という形で負担しなければならない。いつまでも借金でごまかせるものではないんだ。そういう視点を持たなければ、また同じことを繰り返すことになる。


 野党各党が日本の財政の健全化のためにどのような政策を考えているのかが見えてこないが、国債という借金問題を先送りしてはならないと強く思う。ならば、これ以上金融緩和や財政出動で借金を増やし続けるような政策を唱える政治家を選ぶことが適切だとは思えない。この問題に関しては各自がじっくりと考えてほしい。単に「安倍政権を倒すのが第一」という発想では、財政破綻の歯止めにはならない。

 なお、金子勝氏も金融緩和には反対で増税と緊縮でプライマリーバランスの回復を目指すことで財政の持続可能性を高めるべきだという主張をしている。私もこれに賛同する。

戦後最長景気の先には日本経済破綻の「崖っぷち」が迫っている


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