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2019年05月31日
新葉を噛み切る小蛾類の不思議(2)
前回の記事「新葉を噛み切る小蛾類の不思議(1)」では、イタヤカエデの新葉を噛み切って落下させるミドリモンヒメハマキについて書いた。イタヤカエデの葉の幼虫に気づいた後の2018年6月4日、今度はシラカバの新葉が何枚も道に落ちていることに気づいた。その葉は端の方からクルクルと巻かれている。葉の一部だけ巻かれているものと、全部巻いて筒状になっているものがあるのだが、巻かれた葉を開いてみるとやはり蛾の幼虫と思われる芋虫がいた。この虫も、新葉を噛み切って地面に落としてから葉を巻くらしい。一部だけ巻かれているものは、おそらく葉を巻き始めたばかりのものだろう。


そこでこのクルクル巻かれたシラカバの葉を持ち帰って飼育してみることにした。6月4日のほか、11日と18日にも同じ場所で巻かれた葉を拾って持ち帰った。
幼虫は筒状の葉の中に潜みながら巻いた葉を食べている。姿は見えないが飼育容器にフンが落ちているので葉を食べて過ごしていることが分かる。寄生蜂や寄生ハエに寄生されているものもあり、途中でハエらしき蛹が出てきたり、ハチが出てきたものもあった。
24日になって、シラカバの葉を巻いている幼虫には小型で白色のものと大型で茶色のものがいることに気が付いた。小型の方は幼虫が大きくなると体に黒い斑点が現れる。

下の写真は大型の幼虫。

幼虫は巻いた葉の中から出てこないのでいつ蛹化したのかわからないのだが、25日に一部の葉を開いてみたところ小型の方が2頭蛹化していた。繭は作らないようだ。

大型の方は巻いていた葉を食べつくしてしまうような状態だったので、新しいシラカバの葉を追加してみた。しかし、シラカバの葉を自分で巻くことはしない。大型の方は自分で新葉を噛み切って葉を巻いたのではなく、巻かれた葉に後から侵入したのではなかろうか。とすると、蛹化は土の中かもしれないと思い飼育容器に土を入れてみた。大型の幼虫は結局3頭混じっていた。
7月5日には小型の幼虫から5頭の蛾が羽化した。こちらも専門の方に送ってカンバシモフリキバガであると教えていただいた。この蛾は翅の色彩が淡色のものから濃色のものまで変異がある。ミドリモンヒメハマキ同様、幼虫が蛹化するまでの餌は噛み切った1枚で足りるようだ。



大型の方はやはり土の中にもぐって蛹化したようだが、結局成虫になったのは1頭だけだった。そしてこちらはハイイロヨトウとのこと。

イタヤカエデの葉を噛み切って落とすミドリモンヒメハマキにしても、シラカバの葉を噛み切って落とすカンバシモフリキバガにしても、新緑の季節にはとても沢山の葉が落ちている。それなのに今まで気づかなかったことにちょっと愕然とした。そして、両者ともにネットなどの記述を見ると食草は書いてあるのに、葉を噛み切って落下させるという習性まで書かれているものは見当たらない。なんだかとても不思議だ。(続く)
新葉を噛み切る小蛾類の不思議(3)
そこでこのクルクル巻かれたシラカバの葉を持ち帰って飼育してみることにした。6月4日のほか、11日と18日にも同じ場所で巻かれた葉を拾って持ち帰った。
幼虫は筒状の葉の中に潜みながら巻いた葉を食べている。姿は見えないが飼育容器にフンが落ちているので葉を食べて過ごしていることが分かる。寄生蜂や寄生ハエに寄生されているものもあり、途中でハエらしき蛹が出てきたり、ハチが出てきたものもあった。
24日になって、シラカバの葉を巻いている幼虫には小型で白色のものと大型で茶色のものがいることに気が付いた。小型の方は幼虫が大きくなると体に黒い斑点が現れる。
下の写真は大型の幼虫。
幼虫は巻いた葉の中から出てこないのでいつ蛹化したのかわからないのだが、25日に一部の葉を開いてみたところ小型の方が2頭蛹化していた。繭は作らないようだ。
大型の方は巻いていた葉を食べつくしてしまうような状態だったので、新しいシラカバの葉を追加してみた。しかし、シラカバの葉を自分で巻くことはしない。大型の方は自分で新葉を噛み切って葉を巻いたのではなく、巻かれた葉に後から侵入したのではなかろうか。とすると、蛹化は土の中かもしれないと思い飼育容器に土を入れてみた。大型の幼虫は結局3頭混じっていた。
7月5日には小型の幼虫から5頭の蛾が羽化した。こちらも専門の方に送ってカンバシモフリキバガであると教えていただいた。この蛾は翅の色彩が淡色のものから濃色のものまで変異がある。ミドリモンヒメハマキ同様、幼虫が蛹化するまでの餌は噛み切った1枚で足りるようだ。
大型の方はやはり土の中にもぐって蛹化したようだが、結局成虫になったのは1頭だけだった。そしてこちらはハイイロヨトウとのこと。
イタヤカエデの葉を噛み切って落とすミドリモンヒメハマキにしても、シラカバの葉を噛み切って落とすカンバシモフリキバガにしても、新緑の季節にはとても沢山の葉が落ちている。それなのに今まで気づかなかったことにちょっと愕然とした。そして、両者ともにネットなどの記述を見ると食草は書いてあるのに、葉を噛み切って落下させるという習性まで書かれているものは見当たらない。なんだかとても不思議だ。(続く)
新葉を噛み切る小蛾類の不思議(3)
Posted by 松田まゆみ at 21:23│Comments(2)
│昆虫
この記事へのコメント
シラカバの若葉を巻く不思議な虫について、問い合わせたら、このブログを教えていただきました。まさしくこの「カンバシモフリキバガ」でした。
おっしゃるように、「ハマキムシ」などで調べても、葉を切り落としてから巻くタイプの記述はありませんでした。樹上のまま巻くのと、地上で巻くのと、例えばどちらが安全なのだろうなどと考えますが、よくわかりません。
これは偶然かもしれませんが、多数落ちている巻きあがった葉が、散歩道に平行に葉巻の長手方向が揃って並んでいることが多いように感じました。昨年ですと、80%近くが揃っていました。並木道なので、風の方向が道に平行に揃えるのかとか、非常に転がりやすい形状なので、道に沿った凹凸に揃うのかなど、不思議は尽きません。
成虫になるまでに、柔らかいシラカバの葉一枚だけで暮らすなんて、なんてつましいんでしょう。
一度も飼育したことがないので、来年育ててみます。
おっしゃるように、「ハマキムシ」などで調べても、葉を切り落としてから巻くタイプの記述はありませんでした。樹上のまま巻くのと、地上で巻くのと、例えばどちらが安全なのだろうなどと考えますが、よくわかりません。
これは偶然かもしれませんが、多数落ちている巻きあがった葉が、散歩道に平行に葉巻の長手方向が揃って並んでいることが多いように感じました。昨年ですと、80%近くが揃っていました。並木道なので、風の方向が道に平行に揃えるのかとか、非常に転がりやすい形状なので、道に沿った凹凸に揃うのかなど、不思議は尽きません。
成虫になるまでに、柔らかいシラカバの葉一枚だけで暮らすなんて、なんてつましいんでしょう。
一度も飼育したことがないので、来年育ててみます。
Posted by まささん at 2022年09月15日 10:22
まささん、コメントありがとうございます。
樹上と地上ではどちらが安全なのか、何とも分かりませんね。ただ、野鳥はどちらかと言うと樹上で餌を探すことの方が多いように感じます。巻かれた葉の中に餌となる幼虫が入っていると学習したら、容易に食べられてしまうかもしれません。
巻かれた葉が同じ方向に向いているというのも興味深いですね。是非飼育してみてください。
樹上と地上ではどちらが安全なのか、何とも分かりませんね。ただ、野鳥はどちらかと言うと樹上で餌を探すことの方が多いように感じます。巻かれた葉の中に餌となる幼虫が入っていると学習したら、容易に食べられてしまうかもしれません。
巻かれた葉が同じ方向に向いているというのも興味深いですね。是非飼育してみてください。
Posted by 松田まゆみ
at 2022年09月15日 16:08

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