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2007年10月10日

出版社の危機管理

 「創」11月号に掲載された、長岡義幸氏の「自費出版大手『新風舎』内部文書が語る実態」を興味深く読みました。

 とりわけ興味をそそられたのは、ライバル会社への対応策です。「競合を叩く!」などという内部文書があるというのですから、よほどライバルの存在を気にしていたのでしょう。もっともそれは文芸社にしても同じはずです。何しろ共同出版のトップの座を新風舎に奪われた経緯があるのですから。

 新風舎も文芸社も、やっていることは基本的にそれほど変わりありません。文芸社も過去に著者から提訴されています。それなのに、なぜ今回の提訴を契機に新風舎ばかりが叩かれるのでしょうか? その理由のひとつは、今回の提訴が集団訴訟の形をとり、記者会見を行ってマスコミにアピールしたからでしょう。もうひとつは、文芸社の方が過去の裁判の経験やネット上の批判を踏まえ危機管理を強めているのに対し、新風舎は脇が甘いということだと思います。取材に応じないという態度も、批判の対象になってしまいます。

 長岡氏も「『文芸社商法裁判』で業界内で話題になったり、文芸社関係者や著者らが本誌などを舞台に告発したこともあって、危機管理が進んでいるようでもある」と書いていますが、私もまさにその通りだと感じています。

 もっとも企業の危機管理というのは、批判に対して真摯に対応し、必要に応じて情報を公開し、不適切なところがあったら改めて信頼回復に努めることであるはずですが、文芸社の危機管理はそれとはちょっと意味が違うような・・・。

 長岡氏は、新風舎の9月18日付けの準備書面についても言及していますが、そこで新風舎は重要なことを述べています。その部分を引用すると「原告が支払った代金には印刷・製本代は含まれるが、宣伝・販売費用等は含まれないとし、〈書籍を出版物として継続的に流通過程に置く作業の一部を、被告が自己の費用負担を持って行うのである〉」としているのです。これは松崎社長がこれまで公言していたことと同じです。

 この説明からは、新風舎自身が宣伝や販売の費用を実際に負担していると受け止められますが、本当でしょうか? 本当なら、著者は長岡氏がいうような「お客」ではありません。もし嘘なら、著者は騙されたことになります。ところが、今回の裁判では、文芸社にも共通するその肝心な費用の分担については問題にしていないので、それは争点にはならないのです。なぜ裁判で争点にしないのか、とても不思議ですよね。だからこそ私はこの裁判の訴状が稚拙だと思うし、意図を感じてしまうのです( 「木」を見て「森」を見ない末期的症状 事実から見えてくるもの 危ない「危ない!共同出版」参照)。

 長岡氏が最後に述べている業界としての対応策は、とても大事なことだと思います。でも、業界はこの問題に対しては沈黙しているようです。なぜなのか? 多くの商業出版社が密かに著者に費用負担や買い取りの条件をつけた出版を行っているからではないでしょうか? それは新風舎や文芸社と同様の契約なのです。

 なお、長岡氏は消費者センターの「情報が少なく交渉に不利な立場にある消費者への助言を行っているが、個人事業主であっても、消費者としての契約とみて対応することはある」という見解を紹介しているので、これについて一言。

 共同出版が一般の人を対象にした悪質商法である以上は、私も、消費者センターなどの相談機関が対応すべき問題だと思います。ただし、契約書は販売を目的とした出版権の設定契約であり消費者契約ではありません。著作財産権の取引契約なのです。プロの著者とアマチュアの著者との線引きは現実的には不可能ですし、アマチュアだからイコール消費者契約だということにはなりません。アマチュアであっても稀にヒットしてそこそこの印税を得られることもあります。さらに同様の契約をして、きちんと共同出資している商業出版社もあるはずです。ですから、「著者を消費者と同様の弱者の立場」として捉え対応する必要はあるものの、「契約書は消費者契約ではない」という点は明確にすべきでしょう。


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この記事へのコメント
JANJANの記事、および、当ブログの「共同出版・自費出版」に関しての記事を、
可能な限り、拝読させていただきました。

実は先日、文芸社の「気軽にSite」というHPに、
意見を聞くために、投稿しましたトコロ、
文芸社より、出版に値するとの返答をいただきまして、
そこに、「出版委託金」という項目があった為、
文芸社に問い合わせをして、
見積もりを出してもらうことになりました。

電話をしたのが昨日のことでしたので、
まだ、見積書は届いていませんが、、、
その間に、知人より文芸社の問題等をネットで見たとの報告を受け、
自身もネットで色々検索したトコロ、
貴殿のサイトを拝読するに至りました。

私自身としましては、
知人からの話を聞いただけでは、
自分の原稿が本になるのなら、
多少の出費は致し方ないと思っていたのですが、
記事を読むにつれ、
どんどんと、不安が増大していきました。。。

まだ契約の段階までは行っていないので、
取り返しはつくと思うのですが、
投稿してしまった原稿に対する処遇(ネット投稿の為、原稿用紙での投稿ではありません)などはどうなるのかという不安もあります。

また、出版に対する、権利などの細かい制約に疎く、
出版権が文芸社にあるということが、
どれほどの不利益なのかも、
正直分からないところです。



ご多忙とは存じますが、
不勉強な私に、なにとぞご意見などいただけると幸いです。
Posted by リリコ at 2007年10月16日 22:43
リリコ 様

JANJANの記事やブログをお読みいただき、ありがとうございます。

まだ契約をされていないとのことですので、問題はないと思います。原稿をネットで投稿されたことが心配のようですが、他人の原稿を勝手に公表したら、著作権法違反になりますから、恐らくそのようなことはしないと思います。

ただし、ネット投稿の原稿の扱いがどうなるのかをきちんと確認されるといいでしょう。

出版権や本の所有権が出版社にあるということは、出版社の商品をつくるということであり、商業出版と同様、出版社が主体の出版です。ですから、本の売上金は出版社のものになります。また、売れずに在庫を抱えた場合も、断裁などの処理の権利は出版社にあります。著者が自分の本を必要になった場合も、出版社から買いとらなければなりません。

自費出版の場合は、著者に所有権のある本をつくるのですから、その本を売った場合は、売上金は著者のものです。販売を出版社に委託する場合は、出版社に本を預け、販売の手数料や在庫管理費などを払うことになります。あくまでも著者が主体(事業者)の出版です。

アマチュアの方の本は、たとえ内容がよくても、そう簡単に売れるものではありません。業界の方は、口をそろえて「ほとんど売れない」といいます。

「出版に値する」というのは「売れる」という意味ではありません。ごくわずかの「売れる可能性」に賭けて、「出版社の商品づくり(事業)」に大金を投じることが適切かどうか、慎重になるべきでしょう。

そのことをよくお考えになったうえで、販売するべきかどうかも含め、複数の出版社に相談されるのが良いと思います。良心的な出版社であれば、著者に安易に夢を抱かせないはずです。

また、契約をする際には、本の所有権が誰にあるのか、販売の方法や実績、編集の内容などといったことも確認しましょう。
Posted by 松田まゆみ at 2007年10月17日 10:14
貴重なご意見を、本当にありがとうございます。
とても参考になりました。

やはり、私は、まだまだ出版に対しての知識が不足していることを自覚しました。
甘い言葉に、つい心を動かされ、
貴殿のサイトに出会わなければ、
被害者の一人となっているところでした。

原稿に対しての確認は取ってみようと思います。

このたびは、誠にありがとうございました!!
Posted by リリコ at 2007年10月17日 13:55
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