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鬼蜘蛛の網の片隅から › クモ › 「雪迎え」と「雪虫」

2007年10月24日

「雪迎え」と「雪虫」

 ここ数日、強風が吹き荒れていましたが、今日は穏やかな快晴。庭の樹の枝からクモの糸が流れてキラキラと光っています。子グモが飛び立ったのでしょうか。

 クモにはバルーニングといって、空中飛行をする習性があります。バルーニングをするのは、普通は子グモです。風のない穏やかな日に植物の先端部などに登ったクモは、お尻を上に向けて糸を流すのです。その糸が上昇気流にのって漂っていくと、やがてクモはその張力に耐えられなくなり、脚を離して空中に舞い上がっていきます。クモの分散手段のひとつといえるでしょう。

 「雪迎え」をご存知でしょうか? 山形県の米沢盆地では、晩秋の今ごろの季節になるとふわふわとした白い糸のかたまりが空を漂ってくることが知られていました。ちょうど山に初雪が降る頃にその糸が見られるために「雪迎え」と言われています。

 昭和27年、まだ「雪迎え」の糸の正体がよく分かっていなかったときのこと、米沢盆地で、この空飛ぶ糸のことを調べた方がいました。学校の先生をしていた錦 三郎さん(故人)という方です。錦さんは、白竜湖という湖に通ってクモのバルーニングを観察し、「雪迎え」の正体は、クモが飛行するときに空中にたなびかせたクモの糸であることを突き止めました。

 細い細いクモの糸が、目に見えるかたまりとなって空を漂ってくるのですから、おびただしい数のクモが一斉に舞い上がるはずです。バルーニングする子グモはときどき見ますが、そのクモが出した糸が綿のようになって飛んでいるのは見たことがありません。一度そんな光景を見てみたいと思うのですが・・・。

 イギリスでは同じ現象を「ゴッサマー」と呼び、中国では「遊糸」と呼んでいます。日本では、米沢盆地の「雪迎え」がとりわけ有名です。とても風情のある呼び名ですね。

 米沢盆地の場合は、10月下旬から11月頃の風のない穏やかな日に、湖の周辺の草地からたくさんのクモが一斉に飛び立つとのことです。周辺に飛行を妨げる森林がなく、上昇気流がおきやすい地形などが関係しているのでしょう。

 いつも不思議に思うことがあります。北海道には海岸近くに多数の湿地があります。でも、「雪迎え」のような糸のかたまりが飛んできたという話は聞いたことがありません。北海道の湿原には非常に多くのクモが棲んでいるのですが、それらの湿原では米沢盆地のように一斉にクモがバルーニングすることはないのでしょうか? 上昇気流の起きる条件が悪いのでしょうか? それとも、「雪迎え」が人に見つかることがあまりないだけなのでしょうか?

 北海道では「雪虫」(トドノネオオワタムシ)が飛ぶともうじき雪が降るといわれていますが、私は「雪虫」を見ると、この「雪迎え」のことを思い浮かべるのです。そして、米沢盆地では今でも「雪迎え」が見られるのだろうか・・・と、見たことのない「雪迎え」に思いを馳せてしまうのです。


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Posted by 松田まゆみ at 15:16│Comments(9)クモ
この記事へのコメント
☆初めまして、先程はご訪問ありがとう。(^^)
蜘蛛の名前を教えていただき悩み(?)が解消いたしました。
最近でこそカメラを近づけて蜘蛛様のお顔を写すことが
できる様になりましたが、基本的には遠ざけたい虫の一つです。
でも近頃は家の中に出ることが少なくなりましたね。
蚊もハエもクモもナメクジも草むらに行かないと見れません。
いいことではあるのですが、昆虫の住みにくい自然界が本当に
いい事なのか・・・ちょっと?マークがつきそうです。(^^;)
Posted by 北の旅烏 at 2007年10月24日 16:27
北の旅鳥 様

 ご訪問ありがとうございます。

 森や湿原がだんだんなくなり、昆虫もクモも、いつのまにやらずいぶん減っしまいました。昔は、夏に森に入ったら、おびただしい蚊やブユに襲われたそうです。

 人間にとっては嫌な虫であっても、生態系の中で必要だからこそ存在しているのです。人間も自然の一員であることを考え、いろいろな生物と共存していかなければ、そのうち自然からのしっぺ返しがくるのでしょうね。
Posted by 松田まゆみ at 2007年10月24日 17:36
松田まゆみ さんへ
jijiiの蜘蛛への書き込みありがとう。

クモについてお詳しいのですね。
クモにはバルーニングと言う不思議な特技があるのですね。
そうやって何処へ飛んで行くのでしょう。
Posted by jijii at 2007年10月27日 11:34
jijii 様

ご訪問ありがとうございます。
私は、クモという不思議な動物が大好きなのです。

バルーニングというのは、糸を利用して生きているクモ独特の分散方法なのですが、行く先は風まかせ・・・ 新天地を目指して飛び立っても、草原に棲むクモが森に落ちてしまったり、あるいは海に落ちてしまうこともあるのでしょうね。

どうしてそんな無謀なことをするのかとも思いますが、飛ぶことのできない小さな動物が遠いところに移動する手段として意味があるのでしょう。
Posted by 松田まゆみ at 2007年10月27日 13:02
ハーイ、松田まゆみさんありがとう。

生き物それぞれに命の継承手段をあみ出しているんですね。
それは、タンポポの種が傘を開いて、風の吹くまま行く当てもなく
飛んで行くのと同じなのですね。よく分かりました。

なんだか、淋しい悲しい定めだとは思いますが・・・
人間だって余り違いはありませんですよね。
Posted by jijii at 2007年10月27日 15:44
初めまして・・。
雪迎えの検索で、このページにおじゃましました。
実は当方、H19年12月1日に、実際に雪迎えを実際に見ましたので、この
現象はいったいどういう事なのかを調べておりました。

光を浴びた蜘蛛の糸は、絹糸のようにきらきらと光り輝き、まるで絹糸の雨が
降っているような情景でした。

複数の糸が車に付着したのを見て、蜘蛛の糸と言うことが解りました。
先端には小さな蜘蛛が確認できました。

当方が見た情景からは、まるで絹糸の雨が降り注ぐような情景でしたので、
絹雨と言いたいような綺麗な現象でした。
Posted by JH7MSD at 2007年12月05日 15:09
JH7MSD 様

ご訪問ありがとうございます。
「絹糸の雨が降り注ぐ・・・」いい光景にめぐり合えましたね。

子グモが飛び立とうとしている光景はたまに見ることがありますが、沢山のクモの糸が降り注ぐのは見たことがありません。

東北地方では、まだそんな光景が見られるのだと知って、嬉しく思います。
いつまでも「雪迎え」を見られる環境が保たれてほしいものです。
Posted by 松田まゆみ at 2007年12月05日 16:13
9月下旬から11月初旬にかけて、中央アルプス・濁沢岳北の鞍部と、濁沢岳と檜尾岳の間の鞍部少し上に腰掛けて休んでいると
どうやって作るのか分りませんが 丸い輪に乗った蜘蛛が3000メートちかいアルプスをいくつも越えて飛んでいくのが見られます
肉眼でもはっきりと分るくらいの大きさですから、かなり大きな蜘蛛なんですが、これも「雪迎え」というものなのでしょうか?
Posted by su- at 2010年09月02日 16:02
su-様

3000メートル級の山脈をクモが飛び越えていくのですか。クモは風によってかなり分散することが知られていますが、山脈も越えていくことがあるのですね。

丸い輪に乗っているというのははじめて聞きました。一度見てみたいものです。

「雪迎え」というのは、クモがバルーニングをするときに出す糸がからまって、塊になって飛んでいく現象ですので、雪迎えというより空中飛行(バルーニング)というのがふさわしいのではないでしょうか。

興味深い情報をありがとうございました。
Posted by 松田まゆみ at 2010年09月02日 16:34
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