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鬼蜘蛛の網の片隅から › 共同出版・自費出版 › 提訴第二弾と軌道修正の欺瞞

2007年11月22日

提訴第二弾と軌道修正の欺瞞

 「新風舎商法を考える会」の被害者二人が、21日に新風舎に対して2回目の提訴をしたとのこと。今回の争点は、増刷の約束の不履行と書店への陳列・営業に関する虚偽説明のようです。

 著者に印税を払う契約であれば、それは新風舎の出版事業の契約のはずです。それならば、新風舎が売れない本の在庫を断裁処分するのは当然です。新風舎は「在庫がなくなれば増刷する」「絶版にしない」と説明していたようですが、本当に売れ筋の本であれば在庫がなくなる前に増刷をかけますし、初版が500部などということはまずありません。また、何年もかけなければ初版を完売できないような本は、よほど注文がこないかぎり増刷などしないでしょう。

 在庫がなくなり重版の予定がない状態は「品切重版未定」であり、絶版ではありません。著者は新風舎が主体の出版事業の契約書に署名捺印しているのですから、売れない在庫を断裁されても仕方ないといえます。

 新風舎の不適切な説明と著者の勘違いが重なったというところでしょうか。契約部数を印刷していなかったのは、確かに問題ですが。

 そもそも詩集というのは売れないジャンルなのです。はじめから売れないことを承知のうえで、販売をうたい文句にして勧誘し、不透明な費用を請求することが問題なのです。もちろん、そうしたやり方は新風舎に限ったことではないのですが…。

 今回の提訴も相変わらず共同出版の本質的問題点を問うものにはなっておらず、「アホらしい」というのが率直な感想です。相次いで提訴してマスコミ発表をし、倒産を煽っているかのように感じられます。「新風舎商法を考える会」のサイトには「断末魔の様相」などと書かれていますが、これは同会が目的としている「業界の健全化」を求める姿勢とは程遠いのではないでしょうか。

 ところで、21日の東京新聞には、「シニアに人気の自費出版 トラブル急増」という記事が掲載されました。その記事にこんなことが書かれています。

 「出版社のなかには、銀行の信託口座に依頼者の資金を預け、出版後に出版費用を受け取るなどの依頼者を保護する制度を設けたところもあるが、『業界団体もなく、問題が起こるたびに軌道修正を試みている』(伊藤理事長)」(筆者注:伊藤理事長とは、NPO法人「自費出版ライブラリー」の伊藤晋理事長)

 これは文芸社の著作者保護制度のことを指しているのだと思いますが、ここには大きな落とし穴があります。文芸社の著作者保護制度では、著者から預かった出版費用を「出版委託金」としているのです。でも、文芸社の「流通出版(旧協力出版)」は出版委託契約ではありません。文芸社の出版事業に対し、著者が資金協力(出版費用の一部を負担)するというものです。

 ところがその協力金を「出版委託金」と表現することで、出版社の事業契約を委託契約だと錯誤させてしまうのです。文芸社は近年、協力出版という呼称をやめて自費出版というようになりましたが、それも同様に制作請負・販売委託契約だと錯誤させることになるのです。

 委託契約だと思わせることで、私の指摘している費用問題(水増し請求)を正当化しているといえます。こうした手法は新風舎となんら変わりません。

 「問題が起こるたびに軌道修正を試みている」とのことですが、どうみても「軌道修正」などという代物ではありません。私には、「騙しの巧妙化」としか思えないのです。そして「著作者保護制度」は、それを持たない新風舎を追い詰めることに一役買っているようです。

 さて、今回の原告の一人はこんなことを言っています。「新風舍は本を売って儲けている出版社ではなく、共同出版の制作費で儲けている。実は自費出版の会社である」(「新風舎商法を考える会」のホームページより)。

 そうです、このことこそ問題にしなければなりません。商業出版と同様の契約書を使用し、著者の協力金は出版費用の一部なのですから、本の売上金で儲けなければならないのに、実態は著者から利益を得ていると考えられるのです。もちろん新風舎だけの問題じゃありません!

 新聞や雑誌の原稿募集広告、書店の棚買いや売れ残り書籍の買い取り費用、「賞」の経費、無料出版に選ばれた人の出版費用、出版相談会の経費、会社の維持管理費…共同出版社のそういったもろもろの費用はどこから捻出されているのでしょうか?


これまでの関連記事
理解できない訴状
「木」を見て「森」を見ない末期的症状
卑劣な嫌がらせ
事実から見えてくるもの
危ない「危ない!共同出版」
「共同出版」でなければいいのか?
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Posted by 松田まゆみ at 17:46│Comments(15)共同出版・自費出版
この記事へのコメント
委託契約だとなぜ利益を含んだ費用を請求しては
いけないのですか。建設会社が電気工事を電気工事
会社に委託した場合、電気工事会社が請求する
費用には利益が含まれているのが当然だと思います。
Posted by お節介 at 2007年11月23日 07:17
お節介 様

おっしゃるとおり、制作請負・販売委託契約であれば、利益を加算した費用を請求しても問題ありませんし、当然です。自費出版というのは本来制作請負・販売委託契約なのですから、利益を入れた出版費用を請求するのが当然です。

でも、新風舎や文芸社の契約書は、制作請負・販売委託契約ではないのです。それは、いわゆる商業出版と同様の契約で、出版社に出版権(複製権・頒布権)や本の所有権があるのです。このことは文芸社自身が渡辺勝利さんを提訴した裁判の中で認めています。

つまり、出版社が自社の商品を製作・販売する際に、著者がその本の制作費(最近は出版費用の一部としています)を出資する、という契約です。文芸社も新風舎も最近は共同出版とか協力出版といわなくなりましたし、マスコミも自費出版と言っているのですが、このような契約形態を「自費出版」としてしまうことが、誤解をまねくことになります。

出版社の商品をつくるのであり出版社自身の出版事業ですから、その場合の制作費というのは、出版社が当該契約書籍の制作に実際に支出する費用ということになります(自費出版というのは著者が事業者の出版です)。

それとは関係のない、原稿募集の広告費やコンテストの費用などは、本の販売利益によって得なければならないはずです。文芸社は、1997年の高村明子さんの契約において、営業費・広告費・会社維持費(必要利益)・印税は制作費ではないとし、それらは会社負担としています。

お分かりになりましたでしょうか?
Posted by 松田まゆみ at 2007年11月23日 08:46
>出版社の商品をつくるのであり出版社自身の出版事業
>ですから、その場合の制作費というのは、出版社が
>当該契約書籍の制作に実際に支出する費用ということになります

これは法律や判例に基づいたご判断でしょうか。
電気会社が建設会社に請求する電気工事の料金には
利益や宣伝費が含まれてはいけない、というのは
常識には反すると思うのですが。
Posted by at 2007年11月23日 11:52
電気工事は請負契約ですから、その工事代金は役務に対する報酬であり、そこに電気会社の利益や宣伝費は含まれているのは当然です。ですから、あなた(お節介さん?)のおっしゃるとおりです。私は、それに異論は唱えていません。

共同出版は、著者との委託契約ではなく、出版社の書籍製造・販売事業に著者が資金協力する契約だと言っているのです。

共同出版社が著者に請求する費用が実費であるべき、という点については、私の知る限りでは裁判で争われていませんので、判例に基づいているというわけではありません。しかし、以下の例と同様であると考えています。

ある町で、町が管理運営する公共施設を建設するとします。その際に、土地代や建物の維持管理費、人件費は町が持つものの、建設費は国が補助金を出すとします。町は国に補助金を申請する際には建設業者に支払う金額を請求しますね。たとえばそれが3億円であれば、3億円を申請することになります。町の事業の建設費というのは、建設業者に支払う費用にほかなりませんから。もし5億円を申請して町が2億円の利益を得たら水増し請求です。このようなことは「補助金詐欺」といわれています。

同じことを、自費出版で考えてみましょう。

あなたが自分の本を印刷して、自分で販売するとします(あなたは出版の個人事業者です)。その時に、友人が印刷・製本費用を払ってあげると約束したとしましょう。あなたは、編集を編集プロダクションに依頼して30万円かけたとします。また、印刷・製本代金として80万円を印刷会社に支払ったとします。あなたは、友人に対して80万円を請求しますよね。もし、印刷・製本代は150万円だといって請求したら、それは水増し請求ですね。その結果、あなたは友人から利益を得、なんの費用負担もしなくて済みます。また、本の売上金もあなたのものです。

共同出版の請求方法は、これと同じだと考えられます。
共同出版の場合は、「あなた」が「出版社」に、「友人」が「著者」に置き換わっただけです。だから、私は水増し請求だと考えています。

なお、自費出版社というのは、あなたに代わって編集や印刷の手配を行ったり、ときには販売手続きを代行する会社のことです。この場合は、制作請負・販売委託契約ですから、あなたは自費出版社に対して利益を含んだ制作費用や販売手数料を支払うことになります。
Posted by 松田まゆみ at 2007年11月23日 14:08
共同出版の会社が印刷や製本にかかる費用を実際よりも高く請求することが本当に違法かどうか、検討されることをお奨めします。
Posted by at 2007年11月23日 15:48
違法にあたるかどうかを判断するのは、裁判所です。

私は、先のコメントに書いた理由により、利益を加算した請求が不当であり、違法の可能性があると考えているということです。出版社が「私の考えはおかしい」というのであれば、その理由を具体的に説明すべきですが、文芸社も新風舎もそれには答えていません。
Posted by 松田まゆみ at 2007年11月23日 16:44
 根拠(特に法的な)を示さな主張にまともに答える
必要はない、と考えているのかも知れませんよ。
Posted by お節介 at 2007年11月23日 17:09
お節介 様

法的根拠ですか?

文芸社も新風舎も出版費用を出版社と著者が分担すると明記しているのです。つまり共同出資ということです。でも、水増し請求によって出版社がなんら費用を負担していないのであれば、嘘を言って騙したことになります。水増し分は不当な請求です。

騙して意思表示させたら、民法の詐欺になります。また、騙して財産上の損害を与えたら刑法の詐欺です。

あえて、法的根拠を示して説明しなければならないほど難しいことではないと思いますが。
Posted by 松田まゆみ at 2007年11月23日 19:22
お金に色は付いていません。著者が支払ったお金を制作費と言いくるめたければ、編集費や企画費を高くすればいい。そうすれば出版社も出資していることになる。編集費や企画費は出版社が受け取るわけだからそれを広告費として使おうと利益にしようと自由。
Posted by お節介 at 2007年11月23日 20:02
著者と出版社が費用を出し合い、編集会社、装丁会社、印刷会社、流通会社などに仕事を依頼する、という形なら共同出資の形での明朗な会計が可能でしょう。しかし、現実には本作りのかなりの部分が出版社の内部で行われているものと思われます。そうすると、著者と出版社が対等の関係で出資するという形をとっていても実際には出版社が圧倒的に有利な立場にいます。ですから共同出資という見方を強調しても著者には有利には働かないと思います。
Posted by お節介 at 2007年11月23日 21:03
お節介 様

おっしゃる通り、本づくりも会計も出版社の内部で行われていますし、出版社は会計を明らかにしません。ですから、いくら利益を上乗せしていても著者はそれを特定できません。だからこそ、このような詐欺的商法がいつまでも続けられるのです。

でも、共同出資としながら著者しか出資していないのであれば、明らかに騙していることになります。また、出版社に一方的に有利で不公正な取引に誘引していることになります。ですから、このような不透明・不公正な商法のあり方として、まず費用問題を問い質す必要があります。そこを黙認してしまったら、この商法の問題点は解決されないでしょう。

私は「共同出版」などという曖昧なことはやめて、商業出版と自費出版の2通りにすべきだと思います。もし商業出版の際に、著者にも費用の一部を負担してほしいのであれば、それが何の費用であるかを契約書に明記し、トラブルになったらその金額の根拠を示すようにすべきでしょう。
Posted by 松田まゆみ at 2007年11月24日 07:48
出版社が費用を上乗せしていてそれを著者が特定できないということは、詐欺であることを立証できない、ということだと思います。
Posted by お節介 at 2007年11月24日 08:01
お節介 様

詐欺であることが立証できないから、仕方ない。だから野放しにしていいということですか?

著者側は、見積の根拠を出させるべきですし、出版社側は詐欺ではないというならそれを自ら明かにすべきです。疑われている以上、出版社にも立証責任があります。

新風舎も文芸社も利益を加えていても正当だと主張しているのですよ。それならなぜ正当なのか、説明責任があるのではありませんか?
Posted by 松田まゆみ at 2007年11月24日 08:51
共同出資と見なした場合の共同出版は詐欺だ、と主張するのであれば主張した側が立証責任を負います。立証できないのに詐欺だと公言すれば名誉毀損になる可能性があります。
Posted by お節介 at 2007年11月24日 09:28
お節介 様

私は詐欺だと断定も公言もしていません。あなたの方こそ、私に「詐欺」だといわせたがっているのではないでしょうか?

 私は自分の経験に基づいて水増し請求であり不当だと主張しているのです。また文芸社には騙されたと認識しています。それは、このブログのカテゴリー「共同出版・自費出版」をはじめから読んでいただけたらわかることです。

共同出版では、著者が出版社のお客さんになっている、つまり出版社が著者から利益を得ているということは広く流布され、また認識されています。あなたはその矛盾点を質す必要がないというのですか? それとも共同出資とは見なさないということですか? 議論をふっかけるなら、それにきちんと答えてください。

あなたが何を言いたいのかわかりません。 名誉毀損になるから、発言をやめろといいたいのですか? あなたの主張は、共同出版社側のものとしか思えませんが。

発言に責任を持っていただくためにも、名前を名乗っていただけたらと思います。
Posted by 松田まゆみ at 2007年11月24日 10:27
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