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鬼蜘蛛の網の片隅から › 自然保護 › シマフクロウの営巣木にシラカバ?

2008年08月05日

シマフクロウの営巣木にシラカバ?

 昨日の北海道新聞に「フクロウすむ森に」と題する記事が掲載されました。

 記事の内容は、日本野鳥の会が「子どもレンジャーワークキャンプ」という行事で、シマフクロウのすめる森をつくるために、同会の「野鳥保護区ソウサンベツ」(根室市)でシラカバの植樹をしたというもの。22人の参加者が110本のシラカバの苗木を植えたそうです。

 新聞記事には「同会によると、植えたシラカバが、シマフクロウが巣を作る大きさになるには、百年以上の年月がかかるという」と書かれています。

 思わず「ええっ! ちょっと待って!」といいたくなりました。

 シラカバは成長が速い樹木で、寿命は80年程度です。大木になって樹洞をつくるような木ではありません。100年もしたら植えたシラカバは寿命が尽きているでしょう。

 シマフクロウは、営巣木となるような樹洞のできる広葉樹の大木が伐られてしまったこと、河川にダムや堰がつくられて餌となるサケなどの魚が遡上できなくなってしまったことなどで、北海道の森からどんどん姿を消していき、絶滅危惧種になってしまいました。今では120~130羽程度しか生息していないといわれています。

 環境省はシマフクロウを絶滅の危機から救おうと保護増殖事業を行っています。給餌を行ったり巣箱をかけて繁殖を手助けしているのです。近年ではその成果もあって、場所によっては個体数が増えてきているところもあるようです。

 ところが問題なのは、シマフクロウが棲めるような環境がないのです。いくら増殖事業を行っても、増えた個体が定着できる森がなければ意味がありません。巣立ったシマフクロウがいつまでも給餌場近くに棲んでいたら、兄弟同士の近親交配という問題も生じます。

 また、将来的には人による保護事業なしにシマフクロウが生きていける森づくり、川づくりを目指さなければならないでしょう。そのような意味で、シマフクロウの棲める森づくりをしていくことは意味があります。

 ならば、当然のことながらかつてシマフクロウの棲んでいた森を復元させるような取り組みがなされなければなりません。大木になって樹洞のできるようなミズナラなどを植樹するというならわかりますが、樹洞とは縁のない短命のシラカバとは・・・。

 ちょっと考えさせられるというか、唖然としてしまうような記事でした。


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Posted by 松田まゆみ at 13:52│Comments(5)自然保護
この記事へのコメント
良くらることですが、これは記者が無知なのです。白樺はいくら成長性手も洞は作れません。白樺は、陽相樹なので、何もないところにまず植えるのは意味がると思います。
さらに時代を経て、陰相樹が成長する環境が整ってきたら楢などを植えるのか、勝手に生えるのを待つかは後の問題だと思います。
ここはよく知っていますが、開けたところで白樺か柳ぐらいしか生えないでしょう。
この記事を書いた記者が無知なのです。それより、今日(5日)から書いている標津川の復元工事がなんと馬鹿な工事であるかを追い続けていた、内山記者の記事を読んでください。
開発局は金が余っているのです。
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2008年08月05日 22:40
そりゃないよ獣医さん 様

コメントありがとうございます。

場所から考えるともともと広葉樹が優占する森林があった所でしょうから、シラカバのような先駆樹種の森林にすることにこだわらず、はじめから大木になるような広葉樹を植えるほうが効率的です。ヤナギやカンバは種が飛んできて勝手に生えることはできても、ミズナラなどは動物によってドングリが運ばれてこなければ生えることができないのですから、そういう樹種を植えるべきでしょうね。

標津川の復元工事はひどいですね。開発局はこれまでさんざん川を直線化してきて、今度は蛇行化にお金を使うという・・・。まずは今までの「直線化して水を早く流す」というやり方が誤りだったことをきちんと認めて反省すべきでしょう。自然復元をするならできる限りお金をかけず、自然の力にまかせるようなやり方を考えるべきですし、大きな土木工事はかえって環境破壊を招きます。標津川の復元工事は、まさに工事のための工事のように思います。
Posted by 松田まゆみ at 2008年08月06日 09:20
はじめまして
私も標津川を検索していてここにたどり着きました。

確かにシマフクロウの森をつくるためにシラカバを植えるのはおかしいですよね。
また、記事を書いた方も自然に対する感覚が足りないと思います。
シマフクロウの生息域が拡大するような取り組みが本格的になされることを願っています。

ところで標津川については、やり方や地元理解への努力等には疑問をもちますが、私は開発局の工事をそう悪く思っていません。
私は、植物が好きで大学院までずっと環境の研究をしてきました。
そのため、開発行為については、唾棄すべきものという感覚があったのですが、
開発自体は止められなくても、自分の力で少しでも環境がましになればと土木の業界に飛び込みました。
だから、開発局の言い分も少し分かります。

標津川を歩くと、一見木が川を覆っているため、環境がいいように思えますが、真直ぐすぎて流速が早く、水深にも変化がなく単調だという印象を受けます。
魚の気持ちになると、これは結構きつい川だなと感じます。
こんな中で、すこしでも蛇行部や流れに変化があれば、深みには大型魚、浅瀬には小魚が住める環境ができるのではと思います。
なので、蛇行化には、魚の目からみても賛成です。

しかし、これは「復元」や「再生」ではなくて、あくまで「創出」「ちょっとマシ」程度だと思います。
「自然再生」「自然復元」は言いすぎで、もっと自然に謙虚であるべきと思います。

とりとめがなくて申し訳ございません。
Posted by オーバーワーク at 2008年08月09日 09:47
蛇行復元は耳にいことばで、これだけ聞いていれば、また復元する所だけを見ていればおっしゃることはわからなくもありません。
しかし、まずその上流で治水対策と称して北海道(土木現業所)が拡幅工事を行っています。これは、開発局(国)は係わり知らないことだそうです。砂利が堆積して、単なる環境破壊です。
また、流水域だったところを600㌶も草地にしてしまいました。結局は放棄することにしたのです。これは、国の事業で(農林省)、町に移管されています。今年放棄しました。これらのことは、開発局は係わり知らないことだそうです。
川は、流域の総合的な見地からの対策が必要でしょう。
おっしゃる通りに、直線化した標津川はひどく、瀬も渕もない砂利の川になっています。こうした川にしたことの反省も全くないままに、50億円もの巨費を投じるのです。
工事の言い分が、治水対策ですが1950年代の木造の橋が流れた当時の状況を引き合いに出すなど、とにかく工事をやらしてくれということだけです。
それより先に、やるべきことや反省点の整理が必要です。
土建屋救済の事業でしかない。
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2008年08月09日 14:24
オーバーワーク 様
そりゃないよ獣医さん 様

ご意見ありがとうございます。
標津川の蛇行復元問題についてはあらためて記事を書きました。
http://onigumo.kitaguni.tv/e616731.html
Posted by 松田まゆみ at 2008年08月10日 11:25
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