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2008年09月01日
美談にしてはいけない、えりも岬の緑化事業
昨日はえりも岬の北にある百人浜にイソコモリグモの調査に行ってきました。えりもは風が強いことで有名ですが、百人浜は強風が吹きすさび、飛んできた砂が顔にバチバチと当って歩くのも大変。イソコモリグモの調査であちこちの海岸に行きましたが、こんな風が強いところも初めてでした。
えりも岬といえば、国有林の緑化事業があちこちで紹介されています。この話を聞くたびに、「いいとこだけを紹介して美談にしているなあ・・・」とついつい思ってしまいます。下の写真が、緑化を行っている現場です。
百人浜にはこの緑化事業のための管理棟がありますが、そこには以下のように説明されていました。
えりもの海岸にはかつてカシワ、ミズナラ、ハルニレなどの広葉樹の原生林が広がっていたが、明治以降人口が増加し、燃料として森林を伐採した。これによって海岸一帯は砂漠化し、飛砂は沖合い10キロメートルにまで及ぶようになり海は黄色く濁って魚が減少。昆布も採れなくなり、強風によって家の中にまで砂が入り込むようになった。
そこで、浦河営林署(当時)や地元の人々が昭和28年から緑化を手がけてきた。はじめのうちは草本緑化を行い、その後クロマツの植栽と防風柵の設置により森林が蘇った。魚が戻り、昆布も採れるようになった。平成12年までに192ヘクタールを緑化し、13億8千万円を投じた。
この緑化事業により、百人浜からえりも岬につづく道道34号の沿線は、クロマツの森林に覆われています。しかし、えりもにはもともとクロマツは生育していなかったのです。外来種であるクロマツが延々と続く光景は、不自然そのものといえます。そして、今でもクロマツによる植林を広げているようです。
本州ではクロマツは海岸での砂防林に広く用いられてきました。海岸砂防林に適しているとの理由で、えりもの緑化にそのまま取り入れられたのですが、今から見るとそれは決して適切ではありませんでした。森林の復元を図るのであれば、外来種を用いるのではなくそこにもともと生育していた樹種を用いるべきだったのです。
生物多様性の観点からも単一の外来種による森づくりは不適切です。当時は自然復元とか生物多様性などといった考え方がありませんでしたから、クロマツを導入したのは仕方ない側面もありますが、安易なやり方だったといえるでしょう。
最近では本来の森林に近づけるべく、混みあったクロマツの一部を伐採してカシワを植えているところもありますが、なにもお金をかけてクロマツ林をつくってからカシワ林に転換していく必要などありません。はじめからそこに生育していた樹種による緑化を行えば二度手間をかける必要はありません。
また、えりもに限らず、厳しい環境条件のところで伐採をしたら、元の森林に戻すためには大変な時間と労力、お金がかかるのです。このようなところは安易に手をつけてはいけないということです。
ところが、えりもの緑化事業についての解説では、このような反省が欠落しているのです。こうした反省なしにえりもの緑化事業を語ったのなら、単なる美談にすぎません。どんな問題点があり、今後はどうすべきかをしっかり見つめなければ、同じことを繰り返すだけではないでしょうか。そして林野庁は同じような過ち、すなわち「手をつけてはいけない森の伐採」を今でもやっているのです。
あっ、イソコモリですか? いましたいました。えりもでは初記録です。
えりも岬といえば、国有林の緑化事業があちこちで紹介されています。この話を聞くたびに、「いいとこだけを紹介して美談にしているなあ・・・」とついつい思ってしまいます。下の写真が、緑化を行っている現場です。
百人浜にはこの緑化事業のための管理棟がありますが、そこには以下のように説明されていました。
えりもの海岸にはかつてカシワ、ミズナラ、ハルニレなどの広葉樹の原生林が広がっていたが、明治以降人口が増加し、燃料として森林を伐採した。これによって海岸一帯は砂漠化し、飛砂は沖合い10キロメートルにまで及ぶようになり海は黄色く濁って魚が減少。昆布も採れなくなり、強風によって家の中にまで砂が入り込むようになった。
そこで、浦河営林署(当時)や地元の人々が昭和28年から緑化を手がけてきた。はじめのうちは草本緑化を行い、その後クロマツの植栽と防風柵の設置により森林が蘇った。魚が戻り、昆布も採れるようになった。平成12年までに192ヘクタールを緑化し、13億8千万円を投じた。
この緑化事業により、百人浜からえりも岬につづく道道34号の沿線は、クロマツの森林に覆われています。しかし、えりもにはもともとクロマツは生育していなかったのです。外来種であるクロマツが延々と続く光景は、不自然そのものといえます。そして、今でもクロマツによる植林を広げているようです。
本州ではクロマツは海岸での砂防林に広く用いられてきました。海岸砂防林に適しているとの理由で、えりもの緑化にそのまま取り入れられたのですが、今から見るとそれは決して適切ではありませんでした。森林の復元を図るのであれば、外来種を用いるのではなくそこにもともと生育していた樹種を用いるべきだったのです。
生物多様性の観点からも単一の外来種による森づくりは不適切です。当時は自然復元とか生物多様性などといった考え方がありませんでしたから、クロマツを導入したのは仕方ない側面もありますが、安易なやり方だったといえるでしょう。
最近では本来の森林に近づけるべく、混みあったクロマツの一部を伐採してカシワを植えているところもありますが、なにもお金をかけてクロマツ林をつくってからカシワ林に転換していく必要などありません。はじめからそこに生育していた樹種による緑化を行えば二度手間をかける必要はありません。
また、えりもに限らず、厳しい環境条件のところで伐採をしたら、元の森林に戻すためには大変な時間と労力、お金がかかるのです。このようなところは安易に手をつけてはいけないということです。
ところが、えりもの緑化事業についての解説では、このような反省が欠落しているのです。こうした反省なしにえりもの緑化事業を語ったのなら、単なる美談にすぎません。どんな問題点があり、今後はどうすべきかをしっかり見つめなければ、同じことを繰り返すだけではないでしょうか。そして林野庁は同じような過ち、すなわち「手をつけてはいけない森の伐採」を今でもやっているのです。
あっ、イソコモリですか? いましたいました。えりもでは初記録です。
石狩川源流部の国有林違法伐採プレスリリースの考察
大雪山国立公園の石狩川源流部で驚くべき過剰伐採
越境伐採を隠ぺいした北海道森林管理局
石狩川源流部違法伐採合同調査での林野庁のおかしな説明
名前ばかりの「受光伐」
森林生態系保護地域等設定委員会の意味不明の議事録
大雪山国立公園の石狩川源流部で驚くべき過剰伐採
越境伐採を隠ぺいした北海道森林管理局
石狩川源流部違法伐採合同調査での林野庁のおかしな説明
名前ばかりの「受光伐」
森林生態系保護地域等設定委員会の意味不明の議事録
Posted by 松田まゆみ at 11:38│Comments(4)
│森林問題
この記事へのコメント
はじめまして 今まで
コメントを控えておりましたが wrcの件、襟裳の森裁判
先日の上士幌の森林伐採を林野庁が主導した件など
強い関心を持っていました.
千歳川放水路時代や二風谷ダムの土地収用 ~
の活動~
こちらは 大変わかりやすいblogと感じています.
血税運営機関である道政の自然破壊行為は
道民の 共有財産に対する 裏切り行為と感じています.
先ほど 右らんよりメッセージを送りましたが
届いているでしょうか.
さらなる 真実の発信 おまちしております.
失礼致します.
コメントを控えておりましたが wrcの件、襟裳の森裁判
先日の上士幌の森林伐採を林野庁が主導した件など
強い関心を持っていました.
千歳川放水路時代や二風谷ダムの土地収用 ~
の活動~
こちらは 大変わかりやすいblogと感じています.
血税運営機関である道政の自然破壊行為は
道民の 共有財産に対する 裏切り行為と感じています.
先ほど 右らんよりメッセージを送りましたが
届いているでしょうか.
さらなる 真実の発信 おまちしております.
失礼致します.
Posted by こるとれーんtone at 2008年09月01日 20:46
こるとれーんtone 様
コメントありがとうございました。
メールも拝受いたしました。
森と川、そして海はひとつづきのものです。森が壊されれば川や海まで影響が及びます。そんな視点で自然の問題について考えていけたらと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございました。
メールも拝受いたしました。
森と川、そして海はひとつづきのものです。森が壊されれば川や海まで影響が及びます。そんな視点で自然の問題について考えていけたらと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by 松田まゆみ at 2008年09月02日 09:17
根室台地はもっとひどですよ。カラマツの防風林など、もうすっかり定着した原風景の感すらあります。
「カラマツは長野から持ってきたのです」と言うと、たいがいの地元の人間はビックリします。
根室台地には、海岸線のアカエゾ以外は、針葉樹はなかったことから説明します。
外から来た人間は、広大な草地に「北海道らしさ」を感じます。森林を伐採して作られた「北海道らしさ」を長々と説明することにしています。
人が作った身勝手な風景は定着していましたが、それも今は破壊されようとしています。集約的な農業と、重機による開発によって・・・
(前文削除願いたい)
「カラマツは長野から持ってきたのです」と言うと、たいがいの地元の人間はビックリします。
根室台地には、海岸線のアカエゾ以外は、針葉樹はなかったことから説明します。
外から来た人間は、広大な草地に「北海道らしさ」を感じます。森林を伐採して作られた「北海道らしさ」を長々と説明することにしています。
人が作った身勝手な風景は定着していましたが、それも今は破壊されようとしています。集約的な農業と、重機による開発によって・・・
(前文削除願いたい)
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2008年09月02日 16:25
そりゃないよ獣医さん 様
そうですね。確かに根室もひどいですし、クロマツやカラマツによる砂防林は北海道のあちこちにあります。でも、カラマツを植えたところははずいぶん枯れていますね。
こうした緑化は、えりもがモデルにされたのでしょう。いい加減に考え直して欲しいです。
そうですね。確かに根室もひどいですし、クロマツやカラマツによる砂防林は北海道のあちこちにあります。でも、カラマツを植えたところははずいぶん枯れていますね。
こうした緑化は、えりもがモデルにされたのでしょう。いい加減に考え直して欲しいです。
Posted by 松田まゆみ at 2008年09月02日 17:18
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