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鬼蜘蛛の網の片隅から › 政治・社会 › 愛媛県警と仙波敏郎氏の闘い

2009年05月12日

愛媛県警と仙波敏郎氏の闘い

 昨日の北海道テレビ(テレビ朝日系)の「ドキュメンタリ宣言」は、愛媛県警の裏金を実名告発した仙波敏郎氏の、告発から退職までの4年半を追った番組でした。

 元北海道警察の釧路方面本部長であった原田宏二氏は、2004年に北海道警察の裏金を実名告発したことで大きな波紋を呼びましたが、仙波氏は徹底的に裏金に手を染めることを拒否し続け、現職の警察官でありながら裏金について実名告発するというとてつもない勇敢な行動に出た警察官です。

 仙波氏は24歳の若さで巡査部長に昇進したものの、裏金づくりのためのニセ領収書を書くことを私文書偽造だとして拒否して以降、昇進の道を閉ざされました。そして、2年に1度という異常な転勤をさせられ、実名告発の後は報復人事によって「通信指令室」という閑職に追いやられました。番組でとても印象に残ったのは、彼がお昼休みに職場の食堂に行くと一斉にお喋りが止まったという話しでした。仙波氏と話をした者は文書で報告することになっていたので、誰も彼と話をしなかったというのです。組織を裏切った者に対する恐るべき報復の数々に、警察という組織の本質を垣間見る気がします。

 仙波氏は報復人事に対して裁判を起こして勝訴し現場復帰が認められるのですが、35年もの間、警察という巨大組織と対峙した彼の闘いは想像を絶するものだったでしょう。番組には彼の強い意志と誠実な人柄がにじみ出ていました。しかし、彼が退職した今このような番組を放送するのではなく、闘っている現職時代にこそ大きく取り上げるのがメディアの責務ではないでしょうか。警察の裏金問題を大きく取り上げてきたのは、全国規模の大メディアではなく、北海道や愛媛県などの地方メディアでした。

 さて、番組を作成したテレビ局は愛媛県警に質問書を出しました。「仙波氏の告発した裏金づくりは事実か」という質問に対しては、「そのような事実は確認されていない」という回答。「裁判で違法判決が出たのになぜ謝罪しないのか」という質問に対しては「判決で出た義務はすでに履行している」との回答でした。警察の裏金づくりは、警察がかたくなに否定しても誰も信じる人などいないほど明確ですが、まったく反省の色が見えていない回答には呆れます。

 仙波氏のことについては、原田宏二氏の「警察vs警察官」(講談社)に詳しく書かれています。この本ではテレビでは紹介されていない告発のいきさつや彼の真摯な姿勢が描かれているだけではなく、裏に隠された精神的苦悩にも言及しています。「警察組織の犯罪」という壮絶な闘いに挑んだ人々について知るためにも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。


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Posted by 松田まゆみ at 13:52│Comments(0)政治・社会
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