鬼蜘蛛の網の片隅から › 自然保護 › 過剰な登山道整備では?
2009年07月06日
過剰な登山道整備では?
4日に道東の西別岳、5日に標津岳に登ってきました。西別岳は登山口に立派な山小屋があり、登山道も整備されていました。登山道沿いのササ原は広く刈られ、道のところどころに排水のための溝が切ってあります。そして、途中から石を並べて階段状にしたところが何箇所も出てきます。おそらく登山道の浸食防止のために足場として並べたのでしょう。ところがその石はどう見てもこのあたりにある岩石ではありません。いったいこんな重い石を誰がどこから持ってきて整備したのか・・・。とても不思議な思いにかられながら歩いていました。
稜線の登山道脇には立ち入り防止のロープが取り付けられ、部分的に木道まであります。さらに驚いたのは、稜線に点在する裸地に刈り取ったササの茎や枯枝が敷かれている光景でした。この裸地は人が踏み入れてできた裸地ではなく、風食によって自然にできた裸地のようでした。これも浸食防止を目的としているのでしょうか? 風食の裸地はこの稜線が森林へ移行するのを妨げる要因になっている可能性があります。自然現象で裸地になっているところを人為で変えようというのは、自然の摂理に反します。
徹底した整備に驚きながら登山口にたどり着いて目に入ったのが、登山道の整備に使っていた岩塊の堆積場でした。発注者は環境省です。そういえば、ここは阿寒国立公園ですから、環境省が登山道整備に関わっているのです。環境省の名を見て、大雪山の愛山溪で行なっている登山道の石組みによる整備を思い出しました。愛山溪では沢地の登山道の浸食防止を目的に、登山者が石づたいに歩きやすいように、意図的に石を階段状に組んでいるのです。この手法はその場所にある石を利用しているのであり、他の場所から石を運んでいるわけではありません。
利用者の増加による登山道の浸食は場所によっては深刻な事態になっていますので、対策をすること自体に異議はありませんが、他の地域の石をもってくるようなやり方は問題でしょう。どうしても整備が必要なのであれば、従来の木材を使った整備の方が適切ではないでしょうか。また過剰ともいえる整備をすることで登山者を誘引するのもどうかと思います。その地域の自然を守るためには、過剰な整備を慎むべきでしょう。
稜線の登山道脇には立ち入り防止のロープが取り付けられ、部分的に木道まであります。さらに驚いたのは、稜線に点在する裸地に刈り取ったササの茎や枯枝が敷かれている光景でした。この裸地は人が踏み入れてできた裸地ではなく、風食によって自然にできた裸地のようでした。これも浸食防止を目的としているのでしょうか? 風食の裸地はこの稜線が森林へ移行するのを妨げる要因になっている可能性があります。自然現象で裸地になっているところを人為で変えようというのは、自然の摂理に反します。
徹底した整備に驚きながら登山口にたどり着いて目に入ったのが、登山道の整備に使っていた岩塊の堆積場でした。発注者は環境省です。そういえば、ここは阿寒国立公園ですから、環境省が登山道整備に関わっているのです。環境省の名を見て、大雪山の愛山溪で行なっている登山道の石組みによる整備を思い出しました。愛山溪では沢地の登山道の浸食防止を目的に、登山者が石づたいに歩きやすいように、意図的に石を階段状に組んでいるのです。この手法はその場所にある石を利用しているのであり、他の場所から石を運んでいるわけではありません。
利用者の増加による登山道の浸食は場所によっては深刻な事態になっていますので、対策をすること自体に異議はありませんが、他の地域の石をもってくるようなやり方は問題でしょう。どうしても整備が必要なのであれば、従来の木材を使った整備の方が適切ではないでしょうか。また過剰ともいえる整備をすることで登山者を誘引するのもどうかと思います。その地域の自然を守るためには、過剰な整備を慎むべきでしょう。
Posted by 松田まゆみ at 14:26│Comments(4)
│自然保護
この記事へのコメント
まず石の設置ですが、昨年10月に環境庁がやっています。地元の標茶山岳会は全く知らなかったとのことです。石の持って来方には問題があるかもしれませんが、かなりの人数が昇るので、登山道が侵食される被害が最近強くなっているようで気になっていたところです。
登山道を変えることも検討していたようですが、環境庁がヘリコプターで設置したとのことです。
それと、写真のところは盗掘跡です。30年経っても何も生えません。浸食が進行しているので笹を置いたのだと思います。ほかにも数多くの、30年以上前の盗掘跡が見られますが、遺跡のようにして置いていたのですが、浸食が毎年ひどい状況でした。これも一つの案かもしれません。
標茶山岳会はけこう頑張っています。雄阿寒岳に旧道の復活をやって、営林署とやりあっています。
登山道を変えることも検討していたようですが、環境庁がヘリコプターで設置したとのことです。
それと、写真のところは盗掘跡です。30年経っても何も生えません。浸食が進行しているので笹を置いたのだと思います。ほかにも数多くの、30年以上前の盗掘跡が見られますが、遺跡のようにして置いていたのですが、浸食が毎年ひどい状況でした。これも一つの案かもしれません。
標茶山岳会はけこう頑張っています。雄阿寒岳に旧道の復活をやって、営林署とやりあっています。
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2009年07月13日 08:05
獣医様
環境省がヘリで設置したのですか。浸食対策はわかりますが、本来そこにない石を用いるのはやはり問題があると思います。
稜線の裸地が盗掘跡とは、知りませんでした。風当たりの強い稜線では、一度こうなってしまうと植生回復は難しいでしょうね。
ところで、西別岳の斜面は広大なササ原になっていますが、どうしてこのようなササ原になっているのかご存知でしょうか? 以前は森林だったものが山火事など何らかの原因でササ原になったのか、それとも以前からササ原だったのか、とても不思議に思いました。ご存知でしたら教えてください。
環境省がヘリで設置したのですか。浸食対策はわかりますが、本来そこにない石を用いるのはやはり問題があると思います。
稜線の裸地が盗掘跡とは、知りませんでした。風当たりの強い稜線では、一度こうなってしまうと植生回復は難しいでしょうね。
ところで、西別岳の斜面は広大なササ原になっていますが、どうしてこのようなササ原になっているのかご存知でしょうか? 以前は森林だったものが山火事など何らかの原因でササ原になったのか、それとも以前からササ原だったのか、とても不思議に思いました。ご存知でしたら教えてください。
Posted by 松田まゆみ at 2009年07月13日 09:34
西別岳はとても不思議な山です。沢が全くないのです。大きな火山弾が微妙に組み合わされてできた山だと聞いています。
この山の、スポンジ効果が摩周湖の水面の高さを調整していると、研究者は推察しています。
摩周湖の湧水はほとんど、虹別の方に流れています。神の子池がよく知られていますが、それはごく一部です。西別川は5本の湧水点があってそれがほとんどが摩周の水と言われています。根室平野の川はすべて平地に始まる湧水河川と言われていますが、西別川だけは特殊なのです。
笹に覆われた若い山は、この地域に結構あります。モアン山や開陽台は溶岩の押し出したところで、笹しかありません。多分若いからだと思います。ミヤコザサだと思います。
昨日鬼蜘蛛さんの記事の確認のために、西別岳に行ってきました。その時の写真をブログにアップしました。一部に盗掘の痕も載せています。ご覧になってください。利助山に向かうところはひどくなって、エロージョンが起きています。
この山の、スポンジ効果が摩周湖の水面の高さを調整していると、研究者は推察しています。
摩周湖の湧水はほとんど、虹別の方に流れています。神の子池がよく知られていますが、それはごく一部です。西別川は5本の湧水点があってそれがほとんどが摩周の水と言われています。根室平野の川はすべて平地に始まる湧水河川と言われていますが、西別川だけは特殊なのです。
笹に覆われた若い山は、この地域に結構あります。モアン山や開陽台は溶岩の押し出したところで、笹しかありません。多分若いからだと思います。ミヤコザサだと思います。
昨日鬼蜘蛛さんの記事の確認のために、西別岳に行ってきました。その時の写真をブログにアップしました。一部に盗掘の痕も載せています。ご覧になってください。利助山に向かうところはひどくなって、エロージョンが起きています。
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2009年07月13日 17:50
獣医様
いろいろご教示ありがとうございました。
確かに沢は見当たりませんね。大雪山系にはササ原は多くないのですが、西別岳のササ原を見て、然別火山群の西ヌプカウシや東ヌプカウシの光景を思い出しました。スズランやチシマフウロ、ヨツバシオガマなど、植物も共通するところがあります。
フォトアルバムの写真、拝見させていただきました。確かに、高山植物の多い花の山ですね。
私の個人的な意見なのですが… 多くの人に山やお花を楽しんでもらいたいというのはよく分かるのですが、山の荒廃のことを考えるなら、整備を進めてどんどん入山させるという方向だけに傾くのではなく、場合によっては入山制限なども止むを得ないのではないかと思います。保護のためには、一時的にでも「入り込みを制限してそっとする」という期間を設けるのも一つの方法ではないでしょうか。
いろいろご教示ありがとうございました。
確かに沢は見当たりませんね。大雪山系にはササ原は多くないのですが、西別岳のササ原を見て、然別火山群の西ヌプカウシや東ヌプカウシの光景を思い出しました。スズランやチシマフウロ、ヨツバシオガマなど、植物も共通するところがあります。
フォトアルバムの写真、拝見させていただきました。確かに、高山植物の多い花の山ですね。
私の個人的な意見なのですが… 多くの人に山やお花を楽しんでもらいたいというのはよく分かるのですが、山の荒廃のことを考えるなら、整備を進めてどんどん入山させるという方向だけに傾くのではなく、場合によっては入山制限なども止むを得ないのではないかと思います。保護のためには、一時的にでも「入り込みを制限してそっとする」という期間を設けるのも一つの方法ではないでしょうか。
Posted by 松田まゆみ at 2009年07月14日 11:27
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。