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鬼蜘蛛の網の片隅から › 自然・文化 › 登山ツアーと百名山

2009年07月19日

登山ツアーと百名山

 大雪山系で10人もが遭難死するという惨事が起こってしまいました。背景には中高年を対象にした登山ツアーのブームがあります。

 私はそれほど頻繁に山に登るわけではありませんが、最近つくづく思うのは中高年のツアー登山の多さです。私が20代のころは登山といえば若い人が中心で、中高年の登山者の大半は若い頃から山に登っているベテラン。そもそも登山ツアーなどというものはありませんでした。グループで登るといっても、気心のしれた数人のパーティーが普通です。自分たちの体力に合った計画を立て、自分たちの責任で登るというのが登山の基本でしょう。

 それが今ではどうでしょうか。登山口には何十人もの団体が貸切バスで押しかけることも珍しくありません。山頂に立つことを目的に、ひたすら列をつくって登って降りる人達を見ていると、何のために山に登るのだろうかと思うことすらあります。避難小屋にツアー客が大人数で押しかけたら、一般の登山者も迷惑します。かつてはワンゲルなど大人数のパーティーはテント泊が常識でした。ハイキングならともかく、一般の人を募集してのツアー形態での登山は不適切だと思えてなりません。

 また信じがたいのは、雨が降っていても山に登ろうとする人の多さです。天候が悪ければ自然をゆっくりと楽しめないばかりか、危険が増すだけです。縦走中に荒天になってしまったなら、山小屋やテントで「沈殿」というのが当たり前でした。日程にゆとりのないツアーでは多少無理してでも行動したいという心理状態になるのかもしれませんが、縦走登山に予備日を設けないというのは理解できません。以前は山でラジオの天気予報を聞いて天気図を描いていた人も見かけましたが、グループのリーダーなどはそうやって万全を期したものです。

 「百名山」の踏破を目指し、かなり厳しい日程で山めぐりをしている道外登山者も少なくありません。これにはNHKのテレビ放送も影響しているのでしょう。それにしても、なぜ百名山の踏破にこだわるのかと首を傾げてしまいます。

 私が所属する自然保護団体でも山での自然観察会をやったことがありますが、一般参加者の中には「無料ガイド付き登山」と勘違いしているのではないかと思われる方もいます。中高年の登山者が増える中で、かつての山の常識も薄れてきたのでしょうか。今回の遭難事故から、危うい登山ツアーの実態が垣間見えたようです。


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Posted by 松田まゆみ at 13:11│Comments(4)自然・文化
この記事へのコメント
 大雪山系には3度行きました。トムラウシには2度登ったことがあります。北沼と南沼が最高に美しかったです。
 初めて行った時は19歳で、30キロの荷物を背負って(一人では立てない)、女3人で富良野岳から旭岳までを縦走しました。もちろん毎朝気象通報を聞いて、天気図を取っていました。天気予報は自分たちでするものだったのです。ヒグマと闘うことも覚悟で、クマよけの鈴はもちろんのこと、花火やカーバイドや大きなナイフまで持っての山行でした。同時期に山に入っていたのは私たちともう一つのパーティだけでした。お花畑が最高でした。今は人がたくさん入るので荒らされしまったことでしょう。
 今じゃガイド付きのツアーですか。すべてが安易に流れる世相を反映していますね。
 亡くなった方々は気の毒ですが、山というものはツアーで登るものではないと思います。自然は恐ろしいものなので、自分で自分の身を守らなければならないからです。私は一人で行くことが多いのですが、遭難しかけたことは何度もあり、結局生きて帰って来られたのは、学生時代に山とのつき合い方を教わっていたからだと思います。
 トムラウシに思い入れがあるので、つい夢中になってしまいました。
Posted by 渡辺容子 at 2009年07月19日 23:34
渡辺容子様

トムラウシに2度も登っていたのですか。しかも30キロも背負って富良野岳から縦走ですか!! 渡辺さんって、なかなかの山女だったんですね。あの頃の山は本当の山好きしか行かなかったので、静かで良かったですよね。ほんとうに大雪山はアイヌの方たちの「神々の遊ぶ庭」という表現がぴったりのところです。

ところが、私などは地元に住んでいながら、化雲岳より南には行ったことがないんですよ。トムラウシにはいつか行きたいと思いつつ、子育て期間は山も中断・・・。で今になると体力が心配で、結局登っていません。

今は、ガイド付きのツアーが巾を利かせていて、山の上は中高年のグループや団体ばかりです。やはりツアーだとどうしてもお金を払って連れて行ってもらうという感覚になってしまいます。これでは責任を持った登山にはなかなかならないのでしょうね。山に登る人達の雰囲気も昔とは変わりました。
Posted by 松田まゆみ at 2009年07月20日 18:04
このニュースを見てさもありなん・・・とまず最初に思いました。
時間に余裕ができた定年退職組とそれを商売にする業者がいます。
それ事体は悪くはないのですが、ところてん式に人数を確保して
予備日の無い強行スケジュールを組む。まるでハイキング感覚で
楽しさばかりをパンフレットに羅列しています。予備知識が無い
素人はガイドがついているからと安心しきって登ろうとしますね。
万が一天候が急変した時にこそガイドの指示が明暗を分ける事に
なります。でも悲しいかなガイドは次の日程に差し障りが出ない
よう気を配り天候と会社を天秤にかけたのではないでしょうか....。

他方、ツアー客側にもせっかく来たのだから、高いお金を払った
のだから(今回の惨事がこれに当たるかどうか分かりませんが...)
と予定通り行くことを主張することもありますね。業者にとって
商売有りきで現地を知らなさ過ぎることは無かったのでしょうか。
報道で隊列をなし黙々と山頂を目指すにわか登山者を見ていると
何か違和感を覚え、山登りが好きになりません・・・。
Posted by 北の旅烏 at 2009年07月21日 10:42
北の旅鳥様

予備日を設定せず、帰りの飛行機も予約してある登山ツアーであれば、山で雨が降っても予定通り歩くことが前提になります。でも、一日に8時間とか10時間も歩かなければならないコース設定で、しかも高山帯で、雨の中をずっと歩かなければならないというのは、やはり無謀です。もし、一日でも余裕があったなら、ヒサゴの小屋にもう一泊するという判断ができたのではないでしょうか。

新聞報道によると、夏山のツアーでは予備日まで設定していないのが一般的のようですが、ちょっと驚きです。亡くなった方たちは本当にお気の毒ですが、これでは起こるべくして起きた事故といわれても仕方ないかもしれません。

旅鳥さんのおっしゃるように、隊列をなしてもくもくと登る登山者には違和感がつきまといます。
Posted by 松田まゆみ at 2009年07月21日 15:49
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