さぽろぐ

  日記・一般  |  その他北海道

ログインヘルプ


鬼蜘蛛おばさんの疑問箱 › 森林問題 › まやかしの国有林保護地域の拡大案

2010年06月27日

まやかしの国有林保護地域の拡大案

 先日、知人から十勝毎日新聞に国有林の保護地域を今までの2.5倍に拡大するというニュースが載っていたことを教えてもらいました。以下です。

大雪・日高の国有林保護地域、2.5倍の24万ヘクタールに拡大

 今回の案は、大雪山系と日高山脈に設けられている、原則として人手を加えない「保護林」と「緑の回廊」部分を今までの2.5倍に拡大するというもの。林野庁も、ようやく自分たちが破壊してきた森林生態系の保護に取り組み始めたのかと思ったのですが、この記事に掲載されていた地図をよくよく見て、なんだか国民を馬鹿にしているのではいかと気分が悪くなってきました。

 今回、拡大するという保護地域というのは、既存の保護地域をとりまく部分など、標高の高いところばかりです。ということは、針葉樹林帯上部のダケカンバを中心とした森林です。つまり、これまでもほとんど施業などしてきていない地域なのです。してきていない、というより急峻で施業が困難であったり、木材として適した樹がなく木材生産に適さないところといったほうが適切でしょう。さすが、林野庁の考える案です。

 林野庁が本気で森林の保護を考えるのであれば、これまで木材生産のためにさんざん痛めつけてボロボロにしてしまった針葉樹林帯こそ、保護林としなければなりません。大雪山系でいえば、もう原生林といえるような針葉樹林などほとんどないのですから。

 先日、札幌で行われた日本森林生態系保護ネットワークのシンポジウムでも話しましたが、北方針葉樹林を生息地とするミユビゲラやキンメフクロウ、キタグニオニグモなどは、過度の伐採による針葉樹林の衰退とともに姿を消しつつあります。ところがそのような針葉樹林帯は今回の保護林拡大地域にほとんど含まれていません。大雪山国立公園を特徴づける北方針葉樹林を保護林とせず、高山帯やその周辺部ばかりを保護しても、生物多様性の保護とはいえないでしょう。これじゃあ見せかけだけの保護林拡大です。

 この保護林拡大案は、北海道森林管理局が設置した生物多様性検討委員会の提言がきっかけとのことで、今後開かれる検討委員会にも提示されるようです。委員の皆さんは適切な案になっているのか、保護すべき森林がきちんと含まれているのか、針葉樹林帯の実態はどうなっているのか、是非とも調べたうえで意見を言っていただきたいと思います。


あなたにおススメの記事


同じカテゴリー(森林問題)の記事画像
大雪山国立公園の石狩川源流部で驚くべき過剰伐採
石狩川源流部違法伐採合同調査での林野庁のおかしな説明
石狩川源流部盗伐調査(その2)消えた「無印良品」
石狩川源流部盗伐調査(その1)見つけた盗伐の証拠
林野庁は違法伐採を認めたけれど
奥日光の巨木の森
同じカテゴリー(森林問題)の記事
 石狩川源流部の国有林違法伐採プレスリリースの考察 (2011-10-17 11:35)
 大雪山国立公園の石狩川源流部で驚くべき過剰伐採 (2011-08-24 15:03)
 越境伐採を隠ぺいした北海道森林管理局 (2010-11-14 19:36)
 石狩川源流部違法伐採合同調査での林野庁のおかしな説明 (2010-10-18 21:38)
 名前ばかりの「受光伐」 (2010-09-26 19:53)
 森林生態系保護地域等設定委員会の意味不明の議事録 (2010-09-25 15:53)

Posted by 松田まゆみ at 15:44│Comments(5)森林問題
この記事へのコメント
大雪山国立公園のほぼ全域を保護林にするというなら、林野庁もようやくまともになったと評価したところですが、これまでもほとんど伐採の対象となっていないところを保護林にするという厚顔無恥振りにはあきれ果てます。
かつて森林生態系保護地域保存地区を設定する検討会なるものに出席したことがあります。林野庁は、天人峡の奥の蓄積量が200立方メートル/㌶ほどの高標高地を北方針葉樹林の典型的地域であるとして、森林生態系保護地域保存地区に設定したいと検討会に提案しました。
小生が北方針葉樹林は一般的に300~400立方メートルの蓄積があり、羊頭を掲げて狗肉を売ることはやめよ、と主張すると委員の半数以上が同調しました。
しかし、この時座長をしていた東三郎さんは委員の意向を黙殺して原案を通してしまいました。これが誤用学者というのだと実感させられたしだいです。今回の検討会の委員も誤用学者の烙印を押されないよう真面目に議論してもらいたいものです。
なお、東さんは、いま、小生が邪道と指弾する「カミネッコン」で有名になってしまいました。
Posted by キンメフクロウ at 2010年06月28日 15:52
キンメフクロウ様

大雪山のかつての北方針葉樹林は、蓄積量が400立方メートルくらいはあったのではないかと思います。それ以上のところもあったのかもしれません。林野庁は、そんな森林を甦らせるような保護計画を立ててほしいものです。

東三郎さんは、カミネッコンの発案者でしたね。林野庁の生物多様性検討委員会の座長は開発局から環境省にいたるまで、数々の委員をしてお役人から重宝されている辻井達一氏です。辻井氏の見識が問われることになるでしょう。
Posted by 松田まゆみ at 2010年06月28日 18:06
こんにちは。

この地図がよく分からなかったのですが
黄色の「森林生態系保護地域の区域案」
緑色の「検討対象国有林」
とありますが、高山帯やその周辺部ばかりと松田様が言われておられるのは黄色の部分でしょうか?もし緑色まで含まれたら、これは評価できる試みですか? 教えて下さい。
Posted by にのちか at 2010年06月29日 21:35
にのちか様

青の斜線部(黄色と重なっているので、緑色に見えます)がすでに保護林に指定されているところです。ここは高山帯やその周辺部にあたり、かなりの部分が国立公園(大雪山)や国定公園(日高)の特別保護地区として厳しく保護されているところです。ハイマツ帯であったり、砂礫地であったり、高山のお花畑であったり、ダケカンバ林であったりですので、材木となるような樹が生えているところではありません。

そして、保護林として今回拡大を予定している区域が黄色いところです。ここも、高山帯をとりまく部分で、これまでもほとんど伐採の対象になっていないようなところです。

つまり森林のない高山帯とか、それをとりまくダケカンバ林、あるいは急峻で伐採できないようなところばかりを保護林にしたいということです。
Posted by 松田まゆみ at 2010年06月29日 23:27
にのちか様

森林のこと、森づくりのことに関心を持たれているようですので、大雪山国立公園の国有林で森林を甦らせる活動をしている「十勝三股森づくり21」のホームページを紹介します。

http://www.moridukuri.org/

ご参考になれば、幸いです。
Posted by 松田まゆみ at 2010年07月02日 15:32
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
まやかしの国有林保護地域の拡大案
    コメント(5)