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2010年12月26日

いつ崩壊してもおかしくない出版業界

 週刊金曜日(12月24日、829号)に「電子書籍バブル」との特集で、電子書籍と出版業界の現状についての記事が掲載されており、興味深く読みました。

 日本の出版業界が出版不況によって自転車操業に陥っていることは、10年以上も前から指摘されてきました。その後どうなっているのかがリポートされています。

 結論から先に言えば、まったく変わっていないようです。つまり、売上は下がり続けているのに、出版点数は相変わらず増え続けています。2000年には6万5000点だった新刊点数は2009年には7万8000点になっているそうですから、新刊ラッシュはまったく変わっていません。さらに返品率は40%にもなっています。一般の人は、本が売れず返品率が高いのになぜ新刊がそんなに出るのかと不思議に思うでしょう。そのからくりは以下です。

 一般に、出版社が取次に本を卸す際、卸した部数分の代金を取次から受け取るのですが、本が売れずに返品されてきたときに、その分の卸値を取次に返金しなければなりません。そこで、すぐに次の新刊を出せば、返金分を相殺できることになります。こうして大手出版社は次々と新刊を出し続けているのですが、売上が減っているのですから経営状態が良い訳はありません。出版社と取次は、もはや危うい綱渡り状態といえるでしょう。

 さらに、取次は莫大な不良債権を抱えています。つまり、書店からの未払い金のうち相当額が回収不能らしいのです。書店をつぶせない取次は、未払い金の回収を先送りしています。取次も火の車です。もちろん書店も。

 版元(出版社)、取次、書店というシステムが完全に悪循環にはまりこみ、どうしようもない状態になっているのが、現在の出版業界といえるでしょう。出版社、取次、書店の流れのどこかが立ち行かなくなれば、崩壊してしまいます。というより、現在まで持ちこたえているほうが不思議なのかもしれません。なんだか、莫大な借金を抱えたこの国の経済状況にも似ているのではないでしょうか。

 いつ崩壊してもおかしくないような日本の出版業界ですが、あらたに注目されているのが電子書籍です。もっとも私は今のところiPadやキンドルなどで本を読みたいとはまったく思いません。電子書籍は、紙の本に慣れている中高年の方にはなかなか普及しないのではないでしょうか。私にとって興味深かったのは、「エスプレッソ・ブック・マシーン」というオンデマンド出版の機械がすでに登場しているという話。

 本のデータを電子化し、読者が欲しい本のデータを取り出して、その場で印刷・製本するという機械です。なんと約10分でペーパーバックの本が出来上がるそうです。アメリカのオンデマンドブックス社がこの機械を開発しており、日本でも三省堂書店が今年中に神保町の本店に置く予定とのこと。もちろん、まだ日本語のコンテンツがほとんどないので、現時点では一般の人が欲しい本をこのような形式で入手できるわけではありません。しかし、将来書籍のデジタル化が進めば、今のような大型書店は次第に消えていくのかもしれません。そして、紙の本が欲しい人は、「エスプレッソ・ブック・マシーン」のような機械で入手するというように変化していく可能性もあります。

 でも、電子書籍やオンデマンド印刷・製本機が普及するようになれば、これまで出版社がこだわっていた本の装丁、デザインなどはほとんど意味がなくなってしまうでしょうね。編集などという作業はどうなるのでしょうか・・・。

 どちらかというとアナログ人間の私にとって、大切な本というのはやはり出版社が装丁やレイアウトなどにこだわりをもってつくった紙の本です。中身だけではなく、装丁や判型、紙質などを含めたものが「本」であるという意識は、多くの人が持っているのではないでしょうか。アナログがどんどんデジタルにとって替わる時代と言えど、紙の本と電子書籍では存在感がまったく違います。今後、こだわりをもった紙の本が消えていくのであれば、それはなんとも寂しいことです。

 「紙の本」の出版業界は今後どのような結末を迎えるのでしょうか。何年か後には、出版の世界もすっかり様変わりしているのかもしれません。


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