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2011年02月22日

基本高水の検討を依頼された日本学術会議の正体

 先日の「基本高水とは何か?ダム反対とはどういうことか?」という記事で、国交省が日本学術会議に利根川の基本高水流量の学術的評価を依頼していることを書いた。

 で、昨日のことだ。藤原信氏の著書「緑のダムの保続-日本の森林を憂う」(緑風出版)のことを思い出した。「緑のダム」に関わって利根川の治水のことが書かれていたと記憶していたからだ。

 「第2部“緑のダム”の保続」の頭から、日本学術会議の批判だった。日本学術会議は設立当初は科学者の自主的組織として独立性が尊重され、会員の選出が公選制であった。そして、かつては政府に対しても原子力政策批判、ベトナム戦争反対、天然林の保護を求めるなどといった活動をしていた。ところが、1984年に日本学術会議法の一部改正が行われ、会員の選出は推薦制となり、政府の監督権限が強まったという。かくして、昨今では政府の御用機関の傾向が強くなっているというのだ。

 そして、森林の水源涵養機能に関して、日本学術会議は2001年に政府、農林水産省、国土交通省の意に添う「答申」を出しているのだ。藤原氏によると、この答申を書いたメンバーは、政府、国土交通省、農林水産省、林野庁等の各種委員会の常連とのこと。つまり御用学者だ。この答申では森林の水源涵養機能について以下のように書かれているそうだ。

 洪水緩和機能は、森林が洪水流出ハイドログラフ(「時間」とともに変化する川の流量値と波形をグラフで表したもの)のピーク流量を減少させ、ピーク流量発生までの時間を遅らせ、さらには減水部を緩やかにする機能であり、おもに雨水(洪水波形)が森林土壌中に浸透し、地中流となって流出することによって発現する。すなわち、森林がない場合に比べ、山地斜面に降った雨が河川に流出するまでの時間を遅らせる作用である。しかしながら、大規模な洪水では、洪水がピークに達する前に流域が流出に関して飽和に近い状態になるので、このような場合、ピーク流量の低減効果は大きくは期待できない。
 なんとダム推進派におもねった答申だろうか。ダム推進派はこれを根拠に、大規模な洪水には緑のダムは役に立たないと主張したそうだ。

 これを読んで、国交省が日本学術会議に基本高水の再検討を依頼したことの意味がはっきりした。御用組織に「緑のダムは大洪水の緩和には役立ちませんよ」という結論を求めているのだ。

 しかし、藤原氏は「大洪水においては顕著な効果は期待できない」という答申には、何ら科学的根拠はないという。長野県林務部が2001年に取りまとめた「森林と水プロジェクト(第一次報告)」では、森林の保水力調査を行って流域の有効貯留量を推定している。そのモデルによって算出した河川の最大流量は、県土木部のモデルによる計算値の半分程度になったという。このことからも従来のモデルが森林の保水力を考慮していないことがわかるし、森林の保水力の大きさがわかる。ダムを推進する国や県が、森林の保水力を考慮していないモデルを使っていることはこの時点で分かっていたのだ。

 結局、森林の保水力をどのように評価するか、どのようなモデルを使うかで、高水流量はいくらでも変わるのだ。雨の降り方のパターンを変えることでも高水流量は変わる。「安全」を盾に流出量が大きくなるモデルを使いたいというのが国交省の本音だろう。そうすればおいしいダム工事ができるし、ダムができたあとはまた河川改修工事ができるのだ。

 高水流量の値は、考え方によって(使うモデルによって)違ってくる。基本高水の根拠を追求し嘘を暴くのは大事だが、根拠も示さず御用学者を利用する国と高水議論ばかりしていても前に進まない。多方面からの問題提起が必要だ。

 国は洪水にたいする「安全」を強調し、基本高水を持ち出してダムを推進するが、ならばダムの危険性だって問題にしなければならないはずだ。万一ダムが決壊したなら、堤防から水が溢れる場合とは比べものにならない大規模な被害が生じるのは間違いない。いずれ耐用年数に達したときの撤去のコストも、堆砂の問題も、造る前に考えておかねばならない。しかし、国は国民がそういったことに目を向けないようにしているのだ。

 最後に、藤原氏の以下の文章を紹介しておこう。この本の最後に書かれている言葉だ。

 森林の公益性の評価(第2部第1章)にあたり、国土交通省や建設業界の意向に添って、“緑のダム”の機能を低く評価した「答申」を出した日本学術会議には、“恥を知れ”といいたい。これは明らかに、国民の信頼を裏切る行為である。
 科学者の公選制による学術会議の復活を望みたい。


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