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2011年08月05日

ウチダザリガニを増やした機関庫川の河川改修

 去る7月25日、帯広市内を流れる機関庫川の河川改修事業について、河川管理者の帯広建設管理部(旧帯広土木現業所)による現地説明会が開催された。

 この日視察したのは帯広北高校から「まなび野公園」にかけての区間、および稲田4号橋付近だ。帯広北高校から「えがお橋」の上流までは昨年でほぼ整備が終わっている。

 長靴で渡れる小さな河川に、ずいぶん大掛かりな工事をするという印象だが、10年に1度の確率の規模の洪水を想定して断面を確保するのだという。十勝川の場合は150年に1度の確率の洪水に対応する河川整備をしているが、小中河川の場合は10年~30年に1度の確率の洪水に対応した整備をするとのこと。また、川の両側に管理道路(片方は舗装道路でもう片方は砂利道)をつけるという。

 実際に現地を見て、いくつかの疑問が浮かびあがった。まず、昨年河川改修をした「えがお橋」から帯広北高校にかけての区間で河床に玉石を敷いていること。この河川にはもともと玉石はないので、意図的に持ち込んだものだ。この玉石は特定外来生物であるウチダザリガニの格好の生息地となる。しかも、このあたりの河川敷は樹木がないために川に直射日光が当たり、藻類が付着している。これがウチダザリガニの餌にもなる。

ウチダザリガニを増やした機関庫川の河川改修


 下の写真は「えがお橋」の上流。ここにはかつてバイカモが生育していたが、今は見られない。ウチダザリガニが採食してしまったようだ。このあたりでは、地域住民の方が河川敷の草刈りをしているという。なんとも味気ない景観だ。

ウチダザリガニを増やした機関庫川の河川改修


 この河川改修は「ふるさとの川整備事業」として国交省から認定を受けている。では「ふるさとの川整備事業」とは何か? 以下に説明がある。

ふるさとの川整備事業(国土交通省)

 これによると目的は「河川本来の自然環境の保全・創出や周辺環境との調和を図りつつ、地域整備と一体となった河川改修を行い、良好な水辺空間の形成を図ること」なのだそうだ。しかし、「自然環境の創出」とはなんだろうか? 自然環境の保全や復元ならわかるが、創出というのは意味不明だ。神様じゃあるまいし、「創出」などとはおこがましい。こういう発想がいかがわしい「多自然型川づくり」につながっているのだろう。

 河川管理者は、洗掘を防ぐ目的で玉石を入れたと説明していたが、おそらく川の水深を均一化し、玉石を敷くことで子どもたちの水遊びの場をつくりたかったのだ。しかし、利用を中心とした不自然きわまりなりない発想によって、ウチダザリガニを増やしバイカモを消滅させることになってしまった。

 7月30日には十勝自然保護協会がこのあたりで「稲田のウチダザリガニを退治する会」を実施したが、何と684匹も捕獲された。

 もう一つ不可解なのは、河川の両側に管理用道路を整備するということだ。なぜ両側に整備しなければならないのだろう? 道路の整備は一部の樹木の伐採をすることにもなる。散策の道が欲しいのなら、遊歩道で十分だろう。両側の管理道は過剰な整備としか思えない。

 河川管理者によると、この川の隣接地に住宅が造成されたので、洪水被害を防ぐために河川改修が必要になったのだという。川の近くまで宅地開発をさせたことにも問題がある。また、洪水対策であればこれほど大掛かりな工事をしなくても、部分的な掘削と土盛りで対応可能なのではなかろうか。とにかく、工事のための整備という感が否めない。

 下の写真は豊成小学校建設地のあたりだ。奥の樹木が生い茂っているところが河畔林で、この中を蛇行して機関庫川が流れている。こういう景観が機関庫川の原風景だ。機関庫川は「キラッと帯広!景観百選」にも選定されているのだが、こうした原風景に近い河川に戻すことこそ「自然百景」にふさわしいのではなかろうか。

ウチダザリガニを増やした機関庫川の河川改修


 この豊成小学校の隣接地にある池にも玉石を入れて整備をするらしい。

豊成小学校移転準備検討委員会ニュース

 しかし、説明会では池の整備についての説明は一切なく「ここの部分は管理用道路をつけるだけで基本的に手をつけない」と言っていた。

 水辺の空間を散策などに利用するのはいいのだが、本来と異なる環境を創出するなら自然破壊でしかない。自然の池と人口の池の位置づけを履き違えたような整備も疑問だ。

【8月10日追記】
 豊成小学校の隣接地にある池は、自然のものではなく以前の地主が掘ったものであることが判明しました。お詫びして訂正します。


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Posted by 松田まゆみ at 11:44│Comments(4)河川・ダム
この記事へのコメント
お久し振りです、松田まゆみさん。(^^)
役人と名のつく人全員が命令系統にひれ伏し黙して語らず...な方ばかり
とは思えないのですが、現場で監督監修しているのか疑問です。
さらに生態系に配慮を尽くすと言う割には見かけ程度でお茶を濁すような
発注の仕方を繰り返し、片がついた思っている節がありますね。
出来上がった親水公園のようなものを作らないと国から税金が下りない
のでしょうか。完成したからと証拠写真を撮って後は知らぬ存ぜずを押し
通すのが真っ当な役人なのでしょうか。御用学者は原発でも自然遺産に
してもご都合主義的低レベルの人間が闊歩しているようですし、真っ当な
人いないのかしらんと嘆かわしくなります。
過去のデータと気象の変化、さらに地域住民に(古老の人に)意見を求め
何が最善なのかを判断してから細心の注意払って工事を着工する...。
また工事途中に不都合が出たら即対応し、迅速細心変わっていかねば
ならないと思うのですが...。それとも安給では割に合わんとでも言いたげ
なのかしらん。河川林の木を切らないで欲しいと私も思います。
Posted by 北の旅烏 at 2011年08月05日 12:31
北の旅烏様

河川管理者は、市街地の水辺というだけで、とにかく人工的に整備したがる傾向にあると感じます。まあ、もともと人工の公園の池などはそれでいいのでしょうけれど、河川は基本的にできる限り自然のままにしておいて欲しいものです。

水辺があり、河畔林がつくる木陰があり、草地があれば、それだけで昆虫や野鳥などの棲家になるのです。水辺という空間は生物の豊かな生息地です。それなのに木を伐り、草を刈ってしまったのでは何のための環境保全なのか?何のための整備なのかと思います。

多自然工法などというのは不自然でしかありません。
Posted by 松田まゆみ at 2011年08月05日 21:27
はじめまして。簡単に私の意見を言わせてください。あなたはウチダザリガニが増えた理由を改修工事のせいにしていますが、大きな間違いです。ウチダザリガニはどこにでも生息するもので、ただ、他の生物が弱いだけです。
また、河川林は今大きな問題になっていて、大雨時に流木となりそれが橋などに蓄積されて河道をふさいでしまい洪水の確立を大きくします。また、その流木が海まで流れ漁船の網に引っかかってしまう。これも大きな問題になっています。

話は変わりますが、もしあなたさまのお子様が木や雑草の生い茂った川で遊んでいて川に落ちて溺れて死亡したらどうしますか。きっとあなたは、河川の維持管理があまいと言うでしょう。自然を守ることは大切なことですが、人間が住む環境を造るもの大切なことなのです。あなたは家の前の道路が除雪されなくなったらどう生活しますか。3.11のような災害がおこってからでは遅いということを十分理解してほしいです。自分の近所に自然がほしいなら田舎に暮らすことをおすすめします。
Posted by となかい at 2011年12月10日 08:57
となかい様

あなたの「他の生物が弱いだけ」では、私が提示した玉石問題に対する反論になっていません。あなたは在来種を駆逐するような強い外来種をどうしたらいいと思っているのですか?

河畔林に関しては以前もこのブログで取り上げていますが、洪水の際に下流部の急激な増水を緩和したり、上流からの流木を捕捉する効果があります。また、近年はダムによる河床低下によって河岸が段丘化し、それが大雨の際に崩壊することによる流木の発生が増加しています。つまりダムに起因する流木の増加もあります。

なお、この機関庫の川は水量もさほど多くない小河川であり、洪水によって増水したとしても生長した河畔林が流されるような川ではありません。
Posted by 松田まゆみ at 2011年12月10日 11:22
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