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鬼蜘蛛の網の片隅から › 原子力発電 › 菊池誠さんの野呂美加さん批判は科学的か?

2011年10月20日

菊池誠さんの野呂美加さん批判は科学的か?

 チェルノブイリの原発事故の被害者の子供たちの保養活動をしている「チェルノブイリへのかけはし」の野呂美加さんの名前でGoogle検索したら、なんと「かけはし」のホームページではなく菊池誠さんによる野呂さん批判のページがトップに出てきて仰天した。

野呂美加さんと放射能対策(kikulog)

 私もチェルノブイリの子供たちの保養活動にちょっとだけ関わったことがあり、野呂美加さんのことは以前から存じていた。彼女はご自身の活動を通じてチェルノブイリの事故による放射能の健康被害などについてはよくご存じの方だ。一方、菊池誠さんといえば、ニセ科学批判で有名な大阪大の教授で物理学者だ。私も「ニセ科学と陰謀論」という記事で取り上げたことがある。その菊池さんがなぜ野呂美加さんをここまで批判するのか?

 菊池さんは野呂さんの主張が「かなりめちゃくちゃで、科学的にはまったく信頼できないことがわかります。そして、その科学的に信頼できないかたが、さらに怪しい放射能対策を勧めているところが問題です。放射能の知識そのものがかなりダメなので、対策ももちろんダメで、そこにEM菌やらなんやらが顔を出すわけです」と手厳しく批判している。

 どうやらその根拠は野呂さんの支持しているクリス・バスビー氏や肥田舜太郎氏の主張が、信頼できないかららしい。ここで???となった。なぜなら「バズビー氏個人はかなりめちゃくちゃなことを言う」と言っていながら、その「めちゃくちゃ」だという主張について具体的に指摘していないし、バスビー氏のめちゃくちゃさを解説している論文などを紹介しているわけでもない。いったいバスビー氏の主張のどこがどうめちゃくちゃなのだろう?

 バズビー氏はバンダジェフスキー氏の研究に基づいて意見を述べているのだが、バンダジェフスキー氏はチェルノブイリ事故で亡くなった多数の患者を解剖し、臓器などに蓄積した放射性セシウムと病変の関係を研究し、また動物実験を行って論文として発表しているのだ。菊池氏はバンダジェフスキーの研究をも否定するのだろうか? ならばその理由を科学的に説明すべきだ。

 また、肥田氏の体験にもとづく話しには一定の敬意を払うといっていながら、鼻血や下痢が内部被ばくのせいだという主張には同意できないらしい。菊池氏は、今回の福島の原発事故のあとの鼻血や下痢などの症状は低線量被ばくによるものではないと断言する。しかし、その根拠として提示している理由は意味不明だ。

 口や食道、胃腸などの粘膜は皮膚よりも放射線の感受性が強く、がんの放射線治療などでは低線量でも炎症を起こすことが知られている。以下参照。

放射線治療による副作用とその対策(がんサポート情報センター)

『原子力が答えではない』要点翻訳(2)鼻血・下痢・発疹は被曝症状、スリーマイルでも隠蔽されたα線・β線核種、IAEAとWHOの癒着で世界はおかしくなった(中鬼と大鬼のふたりごと)

 福島の原発事故後に東北や関東などで鼻血やのどの痛み、下痢の症状が増えたという話しがあるが、それは何らおかしいことではない。何しろ、原発が爆発した3月には首都圏ですら大量の放射性物質が飛散し、場所によってはかなりの汚染を受けたのだ。首都圏の深刻な汚染は小出裕章氏らの調査でも報告されているし、市民の調査でも明らかになっている。しかし、菊池氏は鼻血や下痢の症状が出るのは桁違いに多く被曝した場合だとして、東京ではありえないと言っている。そもそもその認識が甘い。自分の甘い認識のもとに、野呂さんを批判するのであればとんでもない話だ。

 さらに菊池氏はEM菌による対策を紹介する野呂さんに対し、「・・・臨床的に確認されていません。もちろん、放射能には効果ありません」と断言する。EM菌の効果については以下のような記事があり、チェルノブイリで被曝した子供たちに服用してもらって実験を行っている。これが事実であるなら、EM菌の効果を安易に否定すべきではないだろう。

EM技術による放射能被曝対策(デジタルニューディール)

 また、味噌が効果的であるという話しはよく知られている。これは長崎に原爆が落とされたときに、聖フランシスコ病院の院長であった秋月辰一郎氏が職員に塩と味噌を積極的に摂るよう命じ、職員らには原爆症の症状が出なかったことによる。この話しはインターネットではあちこちで紹介されている。以下はその一例。

被曝に対する、天然塩と味噌の力。

 このようなことから、肥田舜太郎氏も味噌の摂取を勧めているようだ。また、放射線に対する味噌の効果についてはマウスを使った実験がある。その実験によれば確かに効果はあるようだ。

みそと放射能除去能力(医療ジャーナリスト蒲谷茂の日記)

 もちろんこれはマウスによる実験であり、人間についてその効果が明確に示されたわけではない。しかし味噌に効果がないとは断言できないし、発酵食品には何らかの効果が期待できる可能性がある。効果が科学的に立証されていないということと、デマとは違う。

 先日帯広で開かれた安藤御史医師による講演会においても、リンゴジュースの絞りかすから製造するビタペクトという錠剤が体内放射能を20-50%減少させる効果があるとの話しがあった。ビタペクトについては以下を参照いただきたいが、放射性物質に効果のあるものが存在するというべきだろう。

http://blogs.yahoo.co.jp/proneko5/20672521.html

 野呂美加さんの発言は、こうした情報を元にしたものだと思う。彼女の勧める対策のなかには非科学的なものや、あまり効果がないものなどが含まれているかもしれない。しかし、ひとからげにして「無意味な対策」と決めつけ批判する菊池氏の姿勢こそ、私には科学的とは思えない。

 菊池氏の野呂さん批判を読み、菊池氏のニセ科学批判も場合によってはかなり危ういのではないかと思えてきた。

 ちなみに「原発業界御用学者@ウィキ」に菊池誠氏が出ており、彼のツイッターでの発言などがまとめられている。これはなかなか興味深い。

http://www47.atwiki.jp/goyo-gakusha/pages/35.html

 菊池氏は「僕は、最初の水素爆発以降、政府発表の信頼度は劇的に上がったと考えています」と言っているそうだが、こういう認識をしていたのなら、正直いって驚くほかない。


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Posted by 松田まゆみ at 21:32│Comments(3)原子力発電
この記事へのコメント
60年前に、アメリカ、シャーウッド・ローレンス博士が、結核の治療中、血液中にある免疫伝達物質を発見、その後、初乳や鶏卵にも発見し、抽出に成功、市販化されて20年ほどになります。日本には、10年前に輸入。昭和55年、大阪大学の総長・山村雄三先生、北大・松本脩三先生など7人が研究論文を厚生省に提出。他、東北大学、千葉大学、和歌山大学、慶応大学、慈恵大学などでも研究されました。
ロシア・チェルノブイリ原発では、白血病、甲状腺ガンなどに働くと、ロシア・アカデミーは、公認しました。世界、50カ国で使用されています。欧米の学者の間では、アインシュタインに次ぐ価値のものであると、認められています。しかし、明治以来の日本は、漢方を葬り去ったように、認めない。哲学がないから、18世紀の欧米科学にどっぷりつかって、認めようとしない。
Posted by 大寺 一徳 at 2012年01月17日 13:23
シャーウッド・ローレンス博士の発見した物質は、『トランスファー・ファクター』と命名されています。
いまでは、ユタ州の4Life社が製法特許をもって、製造・販売し、世界50カ国で使用されています。
末期がん対策の、内藤康弘先生、佐藤潤先生など、詳しい医師がいます。内藤先生は、ロシア・アカデミーの先生でもあります。
Posted by 大寺 一徳 at 2012年01月17日 13:30
大寺一徳様

コメントありがとうございました。

世の中にはいわゆる根拠も曖昧な健康食品などが溢れています。菊池さんのようにそのような詐欺的商法を批判することについては私も異論はないのですが、根拠も示さずに「効果がない」と断定して否定してしまう姿勢は科学者としての責任が問われる問題だと思います。

少なくともいろいろな対処法が提唱されているのですから、それを頭から否定するのではなく、個人個人が自分で調べて利用するか否かは自分で判断すべきことだと思います。
Posted by 松田まゆみ at 2012年01月17日 16:33
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