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鬼蜘蛛の網の片隅から › 野鳥 › シマアオジの激減が語るもの

2011年10月31日

シマアオジの激減が語るもの

 25日から27日の北海道新聞に「シマアオジはどこへ」という連載記事が掲載された。シマアオジは北海道の草原に夏鳥として渡ってくる野鳥で、雄は頭から背面にかけて栗色で腹部はきれいな黄色をしており、喉にも黄色の首輪があるコントラストがとても美しい鳥だ。本州の野鳥愛好家にとっては憧れの鳥のひとつだろう。

シマアオジ(Wikipedia)

 私がはじめてシマアオジを見たのは、学生時代に野鳥を見に北海道旅行をしたときだ。その旅行ではユースホステルと民宿を利用し、海岸に近い場所ばかりをうろついていた。サロベツ原野、浜頓別、浜小清水、落石岬等々・・・海岸の草原を歩きまわってはのびのびと囀る野鳥たちの声を満喫した。ノゴマやシマセンニュウ、オオジュリン、エゾセンニュウなどとともにシマアオジの姿を何回か目にし、可憐な声に耳を傾けた。

 そのシマアオジが激減しているという話は以前から聞いていた。中国人が渡りで移動する際に乱獲して食べているからだとか、越冬地の環境が悪化したのではないか、などと囁かれていた。考えてみれば私が北海道に移住してからシマアオジを見たという記憶がない。内陸部の山間部に住んでいると、草原の野鳥たちの動向はわからないものだ。ここ数年はイソコモリグモの調査で海岸部にずいぶん出かけたが、ホオアカやオオジュリンは目にしてもシマアオジは一度も見なかった。激減しているのは確かだ。

 北海道新聞の記事によると、74年から78年の国の調査では52の地域で生息が確認されていたが、97年から02年の調査では15地域でしか確認されなかったそうだ。環境省もようやく5年前に絶滅危惧種に指定した。記事でも減少の理由として中国人の食用による乱獲や越冬地の湿地の減少などが指摘されている。竹中万紀子さんは、北海道の草原が牧草地に置き換わってきたことも関係しているのではないかと指摘している。

 これほどまで激減した背景には、それらのことがすべて関係しているのではないかと私は思う。繁殖地でも越冬地でも好適な環境が減り、渡りの途中で捕獲されるのではシマアオジにとってはたまらないだろう。

 しかし、シマアオジがこれだけ減っているのなら、他の野鳥も同じように減っているのではなかろうか。かつては普通種としてどこにでも見られた野鳥が、知らないうちにいなくなっている、などというのはあちこちで起こっているのではないかと思う。

 そう言えば、私の居住地では以前は夏になるとコノハズクの鳴き声がよく聞かれたのだが、最近はすっかり声を聞かなくなった。コノハズクは森林の鳥だから、シマアオジの減少とは原因が異なるはずだ。

 野鳥のように比較的愛好者が多くて目立つ動物は減少も分かりやすいほうだろう。昆虫などでも激減している種があるに違いない。目立たない昆虫やクモなどということになると、知らないうちに激減しているものはかなり多いのかもしれない。その大半は人間による生息環境の悪化や破壊なのだろう。人間の身勝手な自然破壊が、どれほどの物言わぬ生物を脅かしているのだろうか。

 生物多様性が叫ばれるようになったといっても、その保全は遅々として進まない。というよりさらに悪化しているとしか思えない。気の遠くなるような長い進化の歴史のなかで生まれ、今の時代を生き続けている生物の生息環境を、たった一種のヒトという生物が短期間の間にズタズタにしているのだ。ヒトとは何と罪深い生物なのだろう。こんなことをしていたら、いつか取り返しのつかないことになるのだろう。


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Posted by 松田まゆみ at 17:07│Comments(6)野鳥
この記事へのコメント
御久し振りです。
 一年以上前でしょうか。 「地球温暖化論」に関わってコメントを差し上げたことが御座いました。 温暖化論を擁護・主張されておられる方とは、聊か肌が合わないのですが、こちらは、議論されるにあたってもルールに従って、礼儀を守られる方々がお集まりなので、憤怒の情に駆られてしまうことが無く、安心です。 
 それはそうと、私の住んでおります西日本、大阪でも、従来は、何処でも一般的に観られた「雀」が激減しました。 その他にも、不審なことが多くあります。 従来は、山野に居た筈の野鳥が市街地で見られたり(なんとトンビです)、鹿までが市街地近辺まで出て来るようになったのです(能勢で昨年に目撃しました。)。
 これは、山野の越冬が厳しいがための現象ではないか、と思っています。 つまり、昨今の冬期が厳しいので、山野に彼らが食する物が無くなるからなのだと観測しています。 
 1960年代から70年代は、寒冷な気候で、その後は、多少は温暖化したものの、これからは、厳しい冬が来ることになりそうなのです。 これは、米国と我が国の太陽観測結果からの結論ですが、私は、更に、太陽黒点と経済変動の関連を研究されておられる一部の科学者の研究成果を参考に、気候変動と社会変動の関連性が浮かびあがって来るような予感がして、特に、最近は、薄気味が悪いのです。 
 自分が、株式・債権等への投資をしていて、金融危機を身近に観ているから、余計に切迫した感じがするのかもしれません。 どちらにしても、温暖化や寒冷化より、原発が危険でしたね。
Posted by とら猫イーチ at 2011年11月07日 21:33
ご訪問ありがとうございます。

私の居住地でもスズメが激減し、今では絶滅危惧状態です。原因としては、スズメが餌をとりやすい開けた環境が減少した、営巣できる建物が減った、餌づけをしなくなった、感染症による死亡、などいくつかあると思います。

エゾシカなども30年前は姿を見ること自体が珍しかったのですが、今では民家の庭先にまで平気で出てきて近寄らなければ逃げません。知床のシカなどは手で触れることすらあります。本州の事情は知りませんが、北海道の場合は大雪があまり降らなくなり死亡率が低下(大雪が降ると餌をとれずに餓死する個体が増える)したり、餌条件がよくなった(道路法面の芝による緑化、森林伐採による下草の繁茂など)ことで個体数が増加したためではないかと思います。越冬が厳しくなったということではなく、むしろその逆です。

私の居住地では30年前と比べても冬はどんどん暖かくなっています。かつてはマイナス30度近くなることもしばしばありましたが、今でははるかに暖かくなっていて真冬に雨やみぞれが降ることすらあります。こんなことは以前は考えられなかったことです。昨今の冬が厳しいなどということは全くありません。
Posted by 松田まゆみ at 2011年11月07日 23:39
 成程。 北海道と本州とでは、気候の変異の様相が違うのでしょうか。
 本州の、それも西日本では、近年の冬期には、警察・消防等で今まで多くは不要であったような、道路路面の「凍結防止剤」が大量に必要になったりいたしまして、数年前には、私の勤務先では当年の準備では足りずに追加で注文したものの、業者では在庫が無い次第でした。 東北方面では在庫を確保するのに必死でしたので。
 今まで、大した降雪の無かった地方に大雪が降ったりで、その度に、警察・消防・道路管理者等が振りまわされております。 北海道は、本州とは違い、寒いなりに一定した気候なのでしょうか。 
 神戸、大阪の里山にも降雪があり、今まで近郊では見なかった鳥獣を観たりすることがあるのですが、種によりその原因も違うのでしょう。 例えば、神戸六甲で観られるイノシシは、市街地の河川敷に棲み、住民に餌を貰っている固体も居ますので。
 ちなみに、我が家の近辺では、朝鮮イタチを見かけますが、本州に居た筈の日本のイタチはどうなったのかと考えると寂しいです。
 
Posted by とら猫イーチ at 2011年11月08日 22:17
こんにちは。兵庫県在住です。確かに夏のゲリラ豪雨のように、最近は予想もつかない大雪が降ることが多かったように思います。京都の北山では、降雪のために大量の倒木があり、峠を越せなかったことがありました。

シカについては、原因はよくわかっていないものの、農業・林業被害が増大しているようです。都市近くの低山を歩くだけでふつうに見かけるようになりました。夜などは小群で移動していることもあり、車のヘッドライトにもあまりひるみません。クリンソウには毒があるので、シカは食べないそうなのですが、最近はこれをたべてしまうシカもいるらしいです。シカが増えたのか、生息地が狭められているのか、そのあたりは即断できないようですが……

スズメは三、四年ほど前からぱったりと庭にこなくなったのですが、昨年は目の前の電信柱で育雛していました。瓦屋根の方が巣を造りやすいようですね。博物館の学芸員さんの話によると、市街地からは減ったようだが、いる場所には大集団でいるらしいので、生活史が変わってきているのかもしれません。
Posted by フクちゃん at 2011年11月09日 07:30
とら猫イーチ 様

北海道は明らかに冬の寒さがやわらいでいます。本州の事情は詳しくはわかりませんが、私の郷里の長野県諏訪市なども、私が子どものころに比べ冬はずっと暖かくなっていると聞いています。私は化石燃料の大量消費による温暖化が関係しているのではないかと感じていますが、もちろん自然現象による気候変動もあるでしょうね。
Posted by 松田まゆみ at 2011年11月09日 17:14
フク様

本州の近年の大雪、夏の豪雨などがどのようなことに起因しているのかは分かりませんが、タイの洪水などを見ていてもやはり地球規模での異変が起きているように思います。

シカの増加や農林業への被害も北海道のみならず全国的のようですね。人間がこれだけ自然を破壊したり改変してきたのですから、野生動物に何らかの影響が出るのは当然ではないかと思います。

私の居住地の近くでは外来種(園芸植物)のルピナスが繁茂しているのですが、これも毒があってシカが食べません。ところが、最近では花の部分を食べるようになりました。たぶん花には毒が少ないのでしょう。それを学習したシカが食べるようになったのだと思います。

我が家の庭にもシカが来ていろいろ食べられるのですが、はじめの頃はチューリップやムスカリ、ヒヤシンスなど主にユリ科の植物が被害にあいました。ところが最近ではメニューが広がり、かなりいろいろな植物を食べるようになったのです。毒があるスズランも食べられました。ただし、クリンソウをはじめとしたサクラソウ科の植物は今のところ食べてはいません。
Posted by 松田まゆみ at 2011年11月09日 17:25
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