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鬼蜘蛛の網の片隅から › 自然保護 › 大詰めを迎えたサホロスキー場拡張問題

2011年11月18日

大詰めを迎えたサホロスキー場拡張問題

 加森観光がサホロ岳の北斜面にスキー場を拡張しようとしている件について何回か記事にしてきたが(前回の記事はこちら)、その許認可が大詰めを迎えている。北海道が特定開発行為の許可を出し、地主である林野庁が許可を出せば、この冬から予定地の伐採が始まることになる。

 しかし、これまでも指摘してきたように、このスキー場予定地にはナキウサギの生息地があるのだ。加森観光は森林環境リアライズというコンサルト会社に環境調査を委託しているのだが、森林環境リアライズは報告書に虚偽の記載をしてナキウサギの生息情報を隠蔽した。都合が悪いことを隠すために嘘をついたということになる。報告書には「生息および生息痕跡の確認はなかった」と記述されているが、平気で嘘をつく会社の報告書が信ぴょう性があると思う人はいないだろう。このスキーコース予定地周辺のナキウサギ生息地については、利害関係のない第三者がきちんと調査する必要があるだろう。

 希少動物の保護を巡って、自然保護団体が北海道と林野庁に何度も申入れをしているのだが、どちらも誠実な対応をする様子がない。北海道は地域住民が報告書の開示請求をしたら、黒塗りだらけのものを出したのだ。開示請求者が不服申し立てをして開示された資料によって、北海道自身がナキウサギの生息に関する情報を市民に隠蔽したことが分かった。とんでもない扱いだ。

 また、自然保護団体が北海道に希少動物の保護を訴えれば、地主である林野庁が許可しなければ道も許可できないと言い、森林管理署に保護を訴えれば希少生物に関する許認可の権限は北海道にあると言う。互いに責任を押し付けあっているのが現状だ。

 そこで、11月15日に再度、十勝自然保護協会のメンバーが十勝西部森林管理署東大雪支署を訪問し、話し合いをしてきた。署長の説明を要約すると以下のような話しになる。

 国有林の使用許可基準ではコースの幅、保護樹帯、コース間の樹林帯などについての基準などはあるが、動植物の個別の種についての基準はない。したがって、ナキウサギのことで林野庁が加森観光を指導することは難しい。ナキウサギに関しては道の条例アセスの中で判断することになるので、加森観光が道庁とナキウサギのことでやりとりしていると思う。道の許可が出たら加森はこちらに申請にくるはずだが、まだ来ていない。

 要は林野庁の許認可においては動植物の保護の基準がないから、申請されたら許可せざるを得ないという。典型的なお役人答弁だ。自分たちの管理する森林の生物多様性の保護のために努力するという積極性が全くなく、北海道まかせという態度だ。生物多様性国家戦略の方針に逆行することを平然と言うのだから呆れてしまう。

 一方、北海道は許認可にあたって道条例のアセスの際に出された知事の付帯意見をクリアしなければならない。その付帯意見とは、「エゾナキウサギについては、事業予定地域周辺にその供給源となる生息地のある可能性があるため、今後も調査を実施するとともに、その生息地に影響を与えることのないよう努力すること」というものだ。

 だから、ナキウサギの生息地一帯が保護されなければ許可できないことになる。コース予定地やその周辺にはナキウサギの生息地があるのだから、このままでは許可できないはずだ。

 それ以外にも、絶滅危惧種のシマフクロウが近くに生息しているという情報も地域住民からもたらされている。こちらは環境省も関わってくる問題だ。環境省はどう考えているのだろう。

 このような希少動物の生息情報がある以上、北海道は業者の環境調査に頼るのではなく、自らしっかりとした情報収集や調査が必要だろう。そのようなこともせずに北海道が許可を出したなら、希少動物の保護も、生物多様性保全も無視したことになる。

 スキー場やゴルフ場開発などという大規模な開発事業は大きな自然破壊を招く。日本の自然はこれらの開発で大きく痛めつけられてきた。そもそもバブルの崩壊以来、スキー場はどこも利用者が大幅に減っていて経営難だし、閉鎖されたところもある。サホロスキー場も同じで、利用者は減り続けている。こんな状況のなかで新たにコースを増設するのは非常に不可解であり、中国などの海外資本への転売も考えられるのだ。経営が破たんしたなら、この地域の自然はどうなるか分からない。許認可を出す北海道と林野庁の責任は重い。

 北海道は加森観光の経営するベア・マウンテンの開業に際して、実に杜撰な許可を出した経緯がある。フェンスの一部に、クマが容易に通り抜けられる大きな空隙があったのに許可してしまったのだ。フェンスに沿って歩いて周れば気がつかないほうがおかしい重大な欠陥を見落としていたことになる。まともな検査をしなかったのは明らかだ。オープン後に自然保護団体がこの空隙を見つけたのだから、あまりにお粗末だ。後年、この部分から野生のクマがフェンス内部(二重になったフェンスの間)に入りこむという事件が起きた。いかにいい加減な許認可がなされているのかわかるというものだ。

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Posted by 松田まゆみ at 15:20│Comments(0)自然保護
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