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2011年11月23日
放射能汚染シミュレーションと早川由紀夫氏の指摘
11月15日に、福島第一原発から放出された放射性物質による土壌汚染についてのシミュレーションが公表された。このシミュレーションでは北海道もかなり汚染されていることを示している。しかし、私はこのシミュレーションが公表される前に、北海道が独自に行った土壌調査ではそれほど大きな汚染は確認されていないことを、道のホームページを見て知っていた。
だから、このシミュレーションを見たときに「この予測はどこまで実態に合っているのだろうか?」と疑問をもった。そんなときに目にしたのが群馬大の早川由紀夫氏のツイッター(http://twitter.com/#!/hayakawayukio)だ。早川氏の主張に賛同し、そのいくつかをリツイートした。早川さんの一連のツイートは以下に早川さんご自身がまとめている。
http://togetter.com/li/215492
そして、この問題について早川氏がブログで意見を書いている。とても的を射た主張だと思う。
PNAS安成ほか論文の社会的問題点
実際の測定値が自分たちの行ったシミュレーションの値よりずっと小さいことを知りながら、西日本や北海道の汚染が深刻であることを示すシミュレーションを公表したことに問題がある。この図を見て北海道も汚染されてしまったと信じてしまった人も多かったのではなかろうか。しかし、現時点では北海道による調査でも、市民による調査でも北海道ではそれほど高い汚染は確認されていない。とんだ風評被害を生みかねないシミュレーションだったのだ。
福島の原発事故では実害と風評被害がごちゃまぜになってしまった。先日の福島市大波地区のコメから暫定基準値を超えるセシウムが検出された件も、農家の自主検査によって分かったのだ。国は福島のコメの検査を終えて10月には安全宣言を出していた。自主検査がなければ流通してしまっただろう。食品のきめ細かい検査をして測定値を表示しないので、実害と風評被害が区別できないのだ。
そもそも放射能の拡散シミュレーションというのは事前に予測して危険を知らせることに意味がある。今回のような事実と異なるシミュレーションをマスコミがあたかも事実であるかのように報道することは、真の風評被害を生むことになりかねない。事故が起きて汚染されてしまった後なのだから、事実かどうかわからないシミュレーションよりも実際に土壌を採取して測定した方がよほど意味がある。
早川さんも「シミュレーションとは、いくつかの仮定を置いてつくった式のなかに観測データを入れて計算して結果を得る手法だ。得られた結果は事実ではない。過去の事実を再現して、それがどんな仕組みで生じたかを探ったり、未来の出来事がどうなるか予想するときにもちいる手法だ」と指摘している。すでに汚染されて何か月も経っている以上、実際に汚染を測定して公表するほうがよほど理にかなっている。なぜあのシミュレーションを公表したのか不可解だ。
しかも、このシミュレーションは不思議なことに3月20日から1カ月間のものだ。大量に放射性物質が放出された3月中旬のデータを入れていない。なぜそんな中途半端なデータを使ったのだろうか? 福島周辺の高濃度に汚染された地域と、福島からある程度離れた地域の汚染の差を小さく見せるためだったのだろうかと勘繰ってしまう。
もちろん私はシミュレーションを否定するつもりはない。SPEEDIによる福島原発周辺のシミュレーションの中にはかなり実態を反映していたものもあったと思う。しかし、シミュレーションはあくまでも机上の計算であり実際の汚染は測定しなければ分からない。もっともこれも事後に公表されたのだから避難にはまったく活かせなかった。巨額の税金を投入しておきながら何も活かせなかったし、使い方によっては風評被害を起こしかねない。
河川管理(洪水による水位の変化や水害のハザードマップなど)にもシミュレーションが用いられる。ちょっと数字をいじれば、河川管理者に都合のいい結果を導き出すこともできる。ダムなどさほど効果がないのに、ダムが必要だと結論づけることすらできる。国土交通省は実際にそうやってダムが必要だという根拠にしてきた。だから、根拠となる数値や計算式を示せといっても、決して出そうとしない。シミュレーションとはそういうものなのだ。シミュレーションは利害関係のない人が適切に扱う必要性がある。
だから、このシミュレーションを見たときに「この予測はどこまで実態に合っているのだろうか?」と疑問をもった。そんなときに目にしたのが群馬大の早川由紀夫氏のツイッター(http://twitter.com/#!/hayakawayukio)だ。早川氏の主張に賛同し、そのいくつかをリツイートした。早川さんの一連のツイートは以下に早川さんご自身がまとめている。
http://togetter.com/li/215492
そして、この問題について早川氏がブログで意見を書いている。とても的を射た主張だと思う。
PNAS安成ほか論文の社会的問題点
実際の測定値が自分たちの行ったシミュレーションの値よりずっと小さいことを知りながら、西日本や北海道の汚染が深刻であることを示すシミュレーションを公表したことに問題がある。この図を見て北海道も汚染されてしまったと信じてしまった人も多かったのではなかろうか。しかし、現時点では北海道による調査でも、市民による調査でも北海道ではそれほど高い汚染は確認されていない。とんだ風評被害を生みかねないシミュレーションだったのだ。
福島の原発事故では実害と風評被害がごちゃまぜになってしまった。先日の福島市大波地区のコメから暫定基準値を超えるセシウムが検出された件も、農家の自主検査によって分かったのだ。国は福島のコメの検査を終えて10月には安全宣言を出していた。自主検査がなければ流通してしまっただろう。食品のきめ細かい検査をして測定値を表示しないので、実害と風評被害が区別できないのだ。
そもそも放射能の拡散シミュレーションというのは事前に予測して危険を知らせることに意味がある。今回のような事実と異なるシミュレーションをマスコミがあたかも事実であるかのように報道することは、真の風評被害を生むことになりかねない。事故が起きて汚染されてしまった後なのだから、事実かどうかわからないシミュレーションよりも実際に土壌を採取して測定した方がよほど意味がある。
早川さんも「シミュレーションとは、いくつかの仮定を置いてつくった式のなかに観測データを入れて計算して結果を得る手法だ。得られた結果は事実ではない。過去の事実を再現して、それがどんな仕組みで生じたかを探ったり、未来の出来事がどうなるか予想するときにもちいる手法だ」と指摘している。すでに汚染されて何か月も経っている以上、実際に汚染を測定して公表するほうがよほど理にかなっている。なぜあのシミュレーションを公表したのか不可解だ。
しかも、このシミュレーションは不思議なことに3月20日から1カ月間のものだ。大量に放射性物質が放出された3月中旬のデータを入れていない。なぜそんな中途半端なデータを使ったのだろうか? 福島周辺の高濃度に汚染された地域と、福島からある程度離れた地域の汚染の差を小さく見せるためだったのだろうかと勘繰ってしまう。
もちろん私はシミュレーションを否定するつもりはない。SPEEDIによる福島原発周辺のシミュレーションの中にはかなり実態を反映していたものもあったと思う。しかし、シミュレーションはあくまでも机上の計算であり実際の汚染は測定しなければ分からない。もっともこれも事後に公表されたのだから避難にはまったく活かせなかった。巨額の税金を投入しておきながら何も活かせなかったし、使い方によっては風評被害を起こしかねない。
河川管理(洪水による水位の変化や水害のハザードマップなど)にもシミュレーションが用いられる。ちょっと数字をいじれば、河川管理者に都合のいい結果を導き出すこともできる。ダムなどさほど効果がないのに、ダムが必要だと結論づけることすらできる。国土交通省は実際にそうやってダムが必要だという根拠にしてきた。だから、根拠となる数値や計算式を示せといっても、決して出そうとしない。シミュレーションとはそういうものなのだ。シミュレーションは利害関係のない人が適切に扱う必要性がある。
Posted by 松田まゆみ at 15:22│Comments(0)
│原子力発電
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