日本文学館がコンテスト商法で入賞者を捏造か?

松田まゆみ

2012年06月21日 11:52

 このところ文芸社の元社員「クンちゃん」のブログで、日本文学館のコンテスト商法にまつわる疑惑が取り沙汰されており、半信半疑で経過をウオッチしていた。

 この問題、簡潔に説明すると、文芸社の関連会社である日本文学館が行っているコンテストで架空の入賞者を公表し、賞金の支払いを免れていた、という疑惑である。詳細はクンちゃんブログのカテゴリー「日本文学館のコンテスト商法」をお読みいただきたい。

 真偽がはっきりするまで静観しようと思っていたが、日本文学館の社員であるハンドルネーム西瓜谷南瓜(すいかやかぼちゃ)氏が、日本文学館の賞罰委員会に審議を申し立てていることからも、ガセ情報ではなさそうだ。以下、参照。

日本文学館の嘘っぱちコンテスト、社内の賞罰委員会に審議申し立て! (クンちゃんのエディタールーム)

 これが事実であれば、とんでもない不正だ。日本文学館はあちこちでコンテストの作品を募集する広告を出している。インターネットでいろいろなサイトを見ていると、日本文学館の広告がしょっちゅう目に入ってくる。その広告に誘われてコンテストに応募する人もそれなりにいるだろう。

 で、日本文学館のホームページを見ると実にさまざまなコンテストが行われており、かつての新風舎のコンテスト商法を彷彿とさせる。こうした商法は「賞ビジネス」とも呼ばれて批判されていた。

 日本文学館の場合、「大賞」に選ばれると単行本として出版されるものもあるので、こういう賞の入賞者はさすがに架空ではないだろう。しかし、賞金だけの賞もあり、どうやらこれらの入賞者が捏造らしいのだ。

 新風舎は、応募者に「第○次審査に合格」などと知らせて応募者を舞い上がらせ、最終審査で「残念ながら選ばれなかった」と通知して共同出版(実質自費出版)に誘い込む手法をとっていたが、日本文学館は架空入賞者を並べることで応募者を惹きつける手法らしい。どちらも応募者に嘘をついていることに違いないが、架空の入賞者を公表する行為の方がより悪質ではなかろうか。

 架空入賞者と聞いて、警察の裏金づくりに用いられた架空の捜査協力者を思い出してしまった。警察の場合は裏金の捻出のために領収書を偽造していたのだが、日本文学館は応募者を騙すためだ。

 ところが、信じがたいことにこんな不正をしてもどうやら違法行為には当たらないらしい。日本文学館は、恐らくそれを分かってやっているのだろう。

 かつて尾崎浩一という自称ジャーナリストが、しきりに新風舎を批判していた。尾崎氏は「危ない!共同出版」という本で、賞ビジネスのことも取り上げて批判している。あれほど新風舎批判にご熱心だった尾崎氏だが、日本文学館のこの悪質な不正を追及する様子はない。それどころか尾崎氏の関わるリタイアメント情報センターの自費出版部会では、文芸社も日本文学館も「消費者保護のための自費出版営業・契約ガイドライン」の賛同事業者に入れているのだ。

 私は、あたかも新風舎を潰すことが目的であるかのように動いていた尾崎氏をかつてから批判していたが、この期に及んでも文芸社や日本文学館を批判しないのだから彼の化けの皮は完全に剥がれたといっても過言ではないだろう。

 それにしても自費出版社の賞に入選して無料での出版を果たした本で、ヒットしたものはどれ位あるのだろう? ほとんどないのではなかろうか。商業出版社なら「新人の書き手の発掘」を目的にコンテストを行うのは分からなくもないが、自費出版社の場合はお金をかけて新人発掘する必要性などないわけで、コンテストなど所詮「客寄せパンダ」でしかない。

 違法行為に当たらなければ嘘も平気でつくという会社には、倫理観のかけらも見いだせない。こういう会社の広告を平気で出しているメディアはどう思っているのだろうか? 本来ならマスコミこそがこういう不正を糾弾し広告掲載を断るべきだが、「違法行為でなければ問題にできない」と開き直るのだろうか。


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