労働審判に異議を唱えた文芸社

松田まゆみ

2013年08月30日 11:25

 文芸社(=日本文学館)の社員である小川秀朗さんは、東京地裁に労働審判(未払い賃金支払い請求等)を申し立てていたのだが、28日に小川さんの申し立てを全面的に認める審判が言い渡された。

労働審判申立事件『審理終結』 (東京管理職ユニオン・池袋文芸社支部)

 まあ、当然の判断だろう。

 ところが、文芸社はこれを不服として異議申立を行ったそうだ。

文芸社、異議を申し立てる(東京地裁労働審判) (クンちゃんのエディタールーム)

 労働審判は裁判所のホームページで以下のように説明されている。

 労働審判手続は,労働審判官(裁判官)1人と労働関係に関する専門的な知識と経験を有する労働審判員2人で組織された労働審判委員会が,個別労働紛争を,原則として3回以内の期日で審理し,適宜調停を試み,調停による解決に至らない場合には,事案の実情に即した柔軟な解決を図るための労働審判を行うという紛争解決手続です。労働審判に対して当事者から異議の申立てがあれば,労働審判はその効力を失い,労働審判事件は訴訟に移行します。


 つまり労働紛争の解決のための手続きなのだが、相手方から異議申立があればその判断は効力を失ってしまい、訴訟に移行するというのだ。

 せっかく裁判所の判断を求めながら、「なんだこりゃ??」と言いたくなるような制度だ。まともな会社なら労働審判の判断に従って対処するのだろうが、訴訟を厭わない会社なら「ダメ元」を承知のうえで意地でも異議申立をして訴訟に持ち込むこともあるだろう。そして、案の定、文芸社は異議申立をした。

 裁判と言うのは準備書面の作成や証拠集めなど時間的にも労力的にも大変だし、精神的にも疲弊する。弁護士に依頼すればもちろんお金がかかる。要するに、文芸社の異議申し立ては半ば社員に対する嫌がらせであり時間稼ぎなのだろう。裁判といっても社長はおそらく裁判所にも出向かず、弁護士任せに違いない。つくづく呆れる会社である。


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