出版契約の解約成功!

松田まゆみ

2007年06月14日 17:19

前回までの記事
共同出版って商業出版?それとも自費出版?
出版社と対決へ
出版社との協議は疑問の連続

 それにしても、出版社からの回答は納得できません。制作費の明細は印刷所との取引価格だから出せないといいますが、あの見積もりはそもそも契約するかどうか決まっていない段階のものです。本当に印刷会社から見積もりをとっていたのでしょうか? それに編集費はどうなのでしょう? これは編集者を雇っている出版社自身が算出したはずです。1円単位の端数までついている編集費はどうやって計算したのでしょう?

 書店リストだって、とりあえず現時点での提携書店リストを出したってよさそうです。

 協力出版の販売目標が5000部? でも、現実は5000部売れるのはごくわずかのようです。現実と乖離した目標ではありませんか! 「5000部がクリアできなければ担当者の責任」とまで言っておきながら、ずいぶんいい加減です。それに1回の小さな連合広告と300書店への1ヶ月の陳列程度で、どうやって5000部を販売するのでしょうか? 再配本はフェアのときくらいしかチャンスがないようです。

 100部は取次・書店の見本、新聞社などに送付するというのですが、提携書店方式だと取次は通さないんじゃないの? それにこの出版社の本が新聞の書評で取り上げられているのを見たことがありません。

 さて、出版社はあくまでもこのまま出版を進めるようです。そこで、なんとか解約できないか探るために弁護士に相談することにしました。ところが、弁護士というのはなかなかすぐに対応できないものなのですね。地元の弁護士事務所に電話すると、面識がない人はすぐには対応できないとのこと。そんな悠長なことはいっていられないので伝手を頼りに札幌まで行くことにしました。1泊2日で! 

 弁護士も契約書を見て、かなり悩んでいました。この本の所有権はどこにあるのかって。そして「出版権を出版社に設定するのだから、出版社だろうな・・・」と。でも解約は難しそうで粘り強く交渉するしかないようです。

 札幌からの帰りに時間があったので、書店に寄ってこの出版社の本を探してみました。棚をはじから見てもいっても見つかりません。ところが、ある棚のところでこの出版社のコーナーを発見したのです。どうやらこの書店は偶然にも「提携書店」だったようです。そこにあった本を見てびっくりしました。

 このコーナーにある本はすべて初版1刷で、発行日も同じようです。担当者は「増刷される書籍は多数ある」といいますが、本当でしょうか? ある薄手の本はまるで児童書のような大きな活字にして、ページ数をむりやり増やしているかのようです。またある厚い本は、小さな活字で2段組にして読みにくい体裁です。印刷会社もさまざま。表紙のデザインもなんだか安っぽく感じられるものが多いようです。パラパラとめくってみましたが、正直いって「本当に買う人がいるのか・・・」というような本ばかり(著者の方には失礼!)。これがみんな5000部販売目標の本として協力出版枠に選定した本だというのなら、絶句です。ガーン!

 さて、10日にきた回答に対して、疑問を突きつけなければなりません。16日からメール協議を再開しました。編集者と契約担当者の両者との協議をしていくのはなかなか大変ですが、このままではひどい手抜きの本になってしまいます。それだけは避けようと、二人の担当者にさまざまな疑問を投げかけました。

 そして、16日には初校ゲラ刷りが届きました。そのゲラ刷りは、予想通り編集作業がほとんどなされておらず、送った原稿をほぼそのまま入力したものでした。事前に編集の問題を指摘しておいたのに、そのまま組版に出したのです。編集者はメールで「時間をかけて拝見させていただき原稿整理をさせていただいておりました」と書いていましたが、とうていそうは思えず、あきれるというほかありません。私は編集費の大半の返金あるいは編集のやり直しを求めました。

 しかも、ゲラ刷りのページ数は1ページあたりの字数を予定より減らしているのに、予定の278ページより少ない258ページです。ページ数の見積もりもかなりいい加減だったわけです。

 さて、私の相次ぐ質問や要求に対し、理解を得られる対応ができなくなったのか、12月22日に契約担当者から最後の回答とともに、全額返金での契約の解除の用意もあるとのメールがありました。これ以上この出版社と関るのはゴメンです。出版社からの提案に応じて解約することにしました。結局、76万352円という編集費の見積もり根拠はわからずじまい・・・。そして説明によると、協力出版作品で5000部を達成できるのは平均で1割弱だとのこと。本当なんでしょうか?

 最後にこれ以上のトラブルを避けるために、解約にあたって弁護士に「合意解約書」を作成してもらいました。それを2部作成して私の方から出版社に送り、契約したときとは逆のやり方で一部を返送してもらいました。正月を前に解約でき、やれやれと安堵したものです。

 でもね、考えてみてください。もし見積もりの内訳をもらっていなかったら、そして協議を記録の残るメールでやっていなかったら、たぶん解約などできなかったでしょう。つまり、途中でおかしいと思ってもほとんどの人が解約できないということではありませんか!

 これで契約から解約までの経緯のお話しは終わりです。ところが、これでこの問題と完全に縁が切れるということにはならなかったのです。以降は、その後のことについて書いていきます。

関連記事