地球温暖化とバイオ燃料

松田まゆみ

2007年12月11日 17:04

 昨日のNHKの「クローズアップ現代」では、バイオディーゼルの燃料となるアブラヤシを栽培するために熱帯雨林の皆伐が進んでいること、またその皆伐によって泥炭に閉じ込められていた二酸化炭素やメタンが放出され、二酸化炭素の増加を加速させているという問題が取り上げられていました。また、9時からのニュースウオッチ9でも、熱帯林の違法伐採のことが取り上げられていました。

 地中に閉じ込められた二酸化炭素やメタンの放出は、熱帯雨林だけの問題ではありません。シベリアやアラスカに広がる永久凍土も大量の二酸化炭素やメタンを閉じ込めていますが、永久凍土の融解や火災や伐採による森林の消失がそれら温室効果ガスの放出に拍車をかけています。

 北極の海氷はどんどん融けており、すでに後戻りできる時期を過ぎてしまったとさえ言われています。地球温暖化はまさに喫緊の課題といえます。

 クローズアップ現代の中でも語られていましたが、こうした状況のなかでは、まず伐採を中止させることに最大限の努力を注ぐべきでしょう。

 それと同時に、バイオディーゼル・バイオエタノール一辺倒になりつつある思考回路を切り替える必要があります。

 今やマスコミはバイオ、バイオと連呼し、いかにもバイオ燃料が環境に優しいかのように報道していますが、アメリカがバイオ燃料を推進するのは、ひとつの戦略なのです。

 二酸化炭素の削減で非難されているアメリカは、温暖化対策を名目に、バイオ燃料の原料を生産している穀物メジャーの「アーチャー・ダニエル・ミドランド社」や「カーギル社」を優遇し、本来食料であった穀物を燃料とすることで世界の穀物価格を高騰させているのです。この高騰により、アメリカから穀物を輸入してきた国は、飢えに苦しむことになります。

 アブラヤシ栽培のための熱帯林の破壊も、そうしたバイオ燃料神話の延長線上にあります。アメリカの偽りの環境対策こそ、深刻な環境破壊と飢えの元凶になっているといえるでしょう。

 ところがそうしたアメリカの戦略を報道せず、アメリカの広報車のようにいかにも環境に優しい燃料であるかのような報道しかしないのが日本のマスコミです。

 NHKの番組は、伐採問題は海外の他国のことと受け取れるような内容でしたが、日本でも天然林は択伐と皆伐によってボロボロです。伐採現場には大量の端材や枝葉が放置され、大雨によって河川に流入し、流木となって邪魔者扱いされているのです。そして、間伐もされずに放置された人工林があちこちにあります。

 自国の森林破壊にも目を向け、国内にある不要な資源を利用したバイオ燃料こそ、見直していく必要があるのではないでしょうか。また、公共交通機関の利用を促進するなど、燃料の使用を減らす努力もすべきです。

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