原発事故の不都合な真実を隠し続けていた政府

松田まゆみ

2011年03月19日 11:12

 地震と津波による災害、そして原発事故が重なる中、いろいろな情報が飛び交っている。インターネットよりマスコミ情報のほうが信頼できるとか、原発事故報道は大げさすぎるとか、騒いでもパニックを煽るだけとか、経済を活性化すべきだとか・・・。

 しかし、私はあえて原発のことについて言わずにいられない。決して煽ることを目的に言うのではない。国民は事実を知って、自分自身で判断し行動しなければならない時だからだ。事実を知らないかぎり、適切な判断も行動もできない。この国は過ちを続けることになる。

 この事故をまだ天災だなどと思っている人もいるようだが、とんでもない。原発事故を予測し問題点を訴えてきた広瀬隆さんの講演の動画を是非みてほしい。地震は天災であっても、地震で危機的な状態になることを承知でずさんな原発を造り稼働してきたのは人間だ。だから、原発事故は人災でしかない。天災などと思っている人は、頭を冷やして広瀬さんの話を聞いてほしい。



 私は、今回の大事故の責任は、原発推進の立場をとる政治家を選んだ国民にもあり、ここ数日は自分自身も含め(もちろん私自身は原発賛成の政治家に投票したことはないのだが)、責任にさいなまされていた。しかし、広瀬さんの話を聞いて少し考えが変わった。政府は原発事故の恐ろしさを知っていながら国民に隠しつづけていたのだ。そして現実に起こっていたいくつもの事故を隠蔽していたのだ。いかに国民が「安全神話」を信じ込まされていたのかに唖然とする。従順な国民はいとも簡単に騙されていたのだ。

 日本人は「和」とか「協調性」を大事にする国民だ。それは長所でもあり短所でもある。協調性を重視すると、個人の意見はかき消されてしまう。多数決の論理しか通らない。真実を知った人がいくら声を上げても、それは無視されるどころか、潰される。「村八分」という言葉があるが、それは少数意見を排除するだけではなく叩き潰すのだ。私たちは長年、このようなゆがんだ協調性を重視する社会に生きてきた。「空気を読んで」自分自身の考えを言わない、事実を知って自分で判断・行動するということをしない。

 だから、広瀬さんのような方がいくら声高に原発の怖さを主張しても、それに耳を傾けようとはしない。原発推進論者は反対する人たちの声をかき消すことに必死になる。

 福島原発の大事故を前に、私たちがまずしなければならないのは、原発の恐ろしさをきっちりと知ることだ。そして、直ちにいま稼働している原発を止める運動を展開することだろう。

 今回の事故で、多くの人が節電をしていると思う。湯水のように使いたいだけ電力を使うという発想は捨てなければならない。経済成長という思考を止め、限られたエネルギーを工夫して使うという方向に変えれば、原発などはなくてもなんとかなるはずだ。たとえば食器を洗うのにたらい一杯の水しかなければ、それだけの水で洗う工夫をする。かつての日本人はみな、そんな生活の知恵を持っていた。

 一昨年、東北新幹線を利用して仙台から盛岡に行ったのだが、土曜日というのにあまりの空席に驚いた。乗客もろくにいないのに、新幹線を延ばしているのだ。もちろんダムなどの大型公共事業も大量のエネルギーを消費している。こうした無駄を取り除けば、原発など必要ないはずだ。

 福島原発が大事故を起こした今、これ以上の惨事を防ぐには、国民が事実を知って原発を止めるしかない。これが日本国民の世界に対する責任だろう。政府と電力会社に騙され続けていてはならない。

  

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