最悪の事態に備えて情報収集、判断を

松田まゆみ

2011年03月20日 14:53

 福島原発3号機、4号機への放水など、マスコミは事態の改善を強調する報道を続けている。しかし、そんな楽観的な見方をするべきではない。昨日の原子力資料情報室のライブ放送で後藤政志さんは、スリーマイル島の事故では2年間も冷却をしていたと語っていた。たとえ福島第一原発で安定した冷却が可能になったとしても、この先、一年とか二年は冷却を続けなければならないのだ。その間に何が起こるかわからない。夏になれば台風もくるだろうし、津波も来ないとは限らない。あの無残な建屋で大丈夫なのだろうか? こんなことをどれだけの国民が知っていたのだろうか? われわれは停止した原発の危険性についてろくに知らされず、安全を謳う電力会社の騙しのコマーシャルばかりを見せられていたのだ。

 今朝まで国民を安心させるような報道が続いていたのに、その後3号機の圧力が高まっているので蒸気を抜くという報道があった。危機的状況にあることは変わりないし、また放射線物質が放出されるのだ。マスコミはどうしてこうも最悪の事態を想定した報道をしないのだろう。最悪の事態を想定してそれを食い止めるのが危機管理であり、安心情報ばかり流していたのでは最悪の事態になったときにパニックを起こしたり被害者を増やすだけだ。ホウレンソウと牛乳から放射性物質が検出されたというが、そんなことは当たり前で出荷停止をすればいいことだ。現在起こっていることの事実と放射能の恐ろしさこそきちんと知らせなければならない。

 こんなときに、信頼できる情報提供をしているのはやはり原子力資料情報室だろう。毎日の対応でさぞかしお疲れのことと思うが、スタッフの皆さんや説明をしてくださる後藤政志さんには、ほんとうに頭が下がる。マスコミや政府よりNPO法人の情報のほうがよほど頼りになる国などというのは、恥ずかしい限りだ。

 世の中には、何事も良い方に解釈したいという人が多い。性善説を信じているタイプだ。あるいは、震災や原発事故のニュースを見ると気が滅入るから見ないという人もいるかもしれない。しかし、それは危機管理がまったくできないことを意味する。物事には、のほほんとしていて良いときと悪いときがある。世界各国は日本のこの事故をきわめて深刻に受け止め危機感を抱いているのに、能天気な日本人には呆れてものが言えない。

 以下に原子力資料情報室からのメッセージ(2)を転載する。

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2011年3月18日
原子力資料情報室

1 私たちは、3月15日に「福島第一原発及び同第二原発の今回の事故は、原発の設計条件においては考えられていない想定外の過酷事故であり、極めて深刻な事態が続いています」と述べました。残念ながら、本日までこの状況は変わっていません。

2 現場の作業員の方々の努力なしには、この危険を回避することはできません。作業員の方々は、極めて高い被曝の危険があるにもかかわらず、破局的な事態を回避するために、日夜奮闘されています。私たちは、最大限の感謝を表明します。

3 ところで、事故以来、私たちには「何キロまで離れれば安全か」という問い合わせが殺到しております。

4 しかし、この質問に対して、具体的に「何キロ」と回答することは困難です。私たちには、現状の正確な情報が乏しく、また、今後の状況を予測することも困難なことが大きな理由です。また、避難するかどうかは、原発からの距離や放射線レベルだけでは決められません。家族構成、生活環境、周りの人々とのつながり、避難先および避難手段の確保など、条件はさまざまだからです。

5 放射能は、妊婦(胎児)・幼児・子供には影響が大きく現れます。これらの方々は、福島原発からできるだけ遠くへ避難した方が安心です。

6 遠くへ避難できない場合には、建物の中に入り外気に触れるのを避けること、雨には極力当たらないことが、被曝を避けるためには重要です。

7 現状では、放射能が大規模に放出されるような事態には、至っていません。しかし、今後、そのような最悪の事態が生ずる可能性は否定できません。その場合には、政府が設定している現在の避難範囲では、不十分なことは明らかです。

8 最悪の事態に至る可能性がある具体的な事象は、原子炉水位のさらなる低下による核燃料の溶融(メルトダウン)、大規模な爆発、使用済み燃料プールからの放射能大量放出などがあげられます。

9 政府および東京電力は、これらの事象につながる状況の変化について、迅速かつ正確な情報提供をするべきです。特に、放射線量の測定は、政府および東京電力だけではなく、各自治体や民間でも測定されています。政府は、これらのデータを収集して、誰もが容易にアクセスできるような体制を速やかに構築すべきです。

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