冷却剤喪失事故発生の可能性を伝えない東電とマスコミ

松田まゆみ

2011年03月27日 12:40

 昨日の原子力資料情報室の19時からの会見では、田中三彦さんよりきわめて重大な説明があった。東京電力が公表した事故のデータを解析したところ、福島第一原発の1号機で配管が損傷するという冷却材喪失事故が発生していた可能性が高いという。これは原発の事故でもっとも恐れられている非常事態のなかの非常事態だという。

 東電の公表したデータによると、燃料の入っている圧力容器内の圧力が下がり、格納容器内の圧力が急上昇して、圧力容器の水位の低下が続いているという。このデータからは、地震発生後に冷却剤喪失事故が起きたとしか考えられないそうだ。格納容器内での配管の破損と思われ、修理は不能とのこと。これまでこのような事故は世界的にも発生したことがなく、最悪の事態だという。

 冷却のためにいくら格納容器に水を入れても、漏れてしまって燃料の露出が続いていると思われる。このまま燃料の溶融が続けば圧力容器の底に穴があきかねない。きわめて深刻な事態というしかない。しかも高濃度の放射性物質を含む水が外に漏れ出している。放射性物質の放出を抑える術がないのだ。これからは放射線量が上がって作業もどんどん大変になるに違いない。

 ところが、今日のマスコミ報道はこうしたきわめて深刻な事態をほとんど伝えていない。それどころか制御室に電気が通じたとか、原子炉に真水を注入しただとか、タービン建屋に溜まった水をポンプでくみ出しているなどと、相変わらず安心させるようなことばかりを報じている。しかし、重要な問題はそんなことではないのだ。4基もの原発がコントロール不能に陥り、これから長期にわたって放射性物質が放出されるであろうし、突発的な事故の可能性も否定できない。前代未聞の大惨事だ。

 もうひとつ気になるのは3号炉のMOX燃料だ。3号機でプルトニウムを含む再処理燃料を使っていることは、マスコミはほとんど報じていない。プルトニウムのことはまったく出てこないのだが、本当に格納容器の外に出ていないのだろうか?

 田中三彦氏によると、このデータを見たら現場の技術者は冷却剤喪失事故が起こったという予測はすぐについたはずだという。大変危険な状態であり、住民をすぐに避難させるべきだったと怒りをあらわにしていた。これほど重大な事態なのに、東電や保安院は冷却剤喪失事故の可能性についてずっと隠し続けている。昨夜の記者会見でも明らかにはしなかったらしい。

福島第一原発の深刻な状況を東電が明らかに~副社長会見では以前として指名されないが・・・

 東電の副社長は会見での質問に対し、のらりくらりと回答をはぐらかす名人だ。記者の怒りも心頭に発するというものだ。マスコミは、原子力資料情報室の会見をしっかりと報道すべきだろう。

 田中さんも後藤さんも今後の予測についてはあまり口にしなかったが、かなり抑えているのだろうという雰囲気が漂ってきた。暗澹たる気分だ。

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