九州電力の“やらせメール”事件は日本では当たり前の光景
東京に行っている間に、九州電力玄海原発の再稼働をめぐる「やらせメール」事件が大きく報道された。この報道によって、電力会社が不正な手段を使ってでも原発を再稼働させたがっていることが浮き彫りになったが、こういうことが行われていること自体は驚くに当たらない。なぜなら、似たようなことはこの国では日常茶飯に行われているからだ。
たとえば、パブリックコメントなどだ。パブリックコメントに寄せられた意見はインターネットなどで公開されているが、事業計画に手放しで賛成する意見、具体的理由もかかず高く評価するだけの意見などがよく見受けられる。基本的に賛成ならあえて意見を言う必要はないだろう。異論があるから意見を述べるというのが自然だ。こういう「手放し賛同意見」は、おそらく事業を推進したい人たちが親類や知人・友人などに依頼して出してもらっている可能性が高い。
十勝川の河川整備計画の公聴会のときも、事業者の代弁をするかのような賛成意見を述べた人が何人かいたし、自分の意思というより依頼されて公述人になったのではないかと思われる人もいた。公共事業の推進にあたっては、「やらせ」などはごく当たり前に行われているのだろう。
原子力ムラとダムなどの大型公共事業の利権構造は基本的に同じだ。政治家、官僚、業者が自分たちの利益のために無理やり理由をつけて事業を造り出しているのであり、公共事業などというのは名目に過ぎない。「はじめに事業ありき」なのだ。
ダムによる治水などはダムの上流域の大雨にしか効果をもたらさないし、堆砂で埋まれば治水効果も減少する。二風谷ダムのようにダムが満水になって放流した場合は、下流域に被害を及ぼすことすらある。ダムによって土砂の流下を妨げることで、海岸の浸食も加速させる。ダムを100パーセント否定するつもりはないが、新規のダムで必要と思えるものはまずない。「百害あって一利なし」のダムが大半だろう。
このブログでも書いてきた美蔓貯水池という灌漑用貯水池についても同じことが言える。農家の受益者負担を町が肩代わりすることで農家から同意書をとりつけ、必要性のない事業を造り出しているのだ。昨今のダム事業は利権構造によって無理矢理進められてきたのであり、そのためには「やらせ」もいとわない。
だから、九州電力による「やらせメール」などは何の不思議もない。小出裕章さんもこのようなやらせが以前からあったことを指摘している。
7月7日「ヤラセメールは慣習だったしありふれた出来事だった」小出裕章(MBS)
7月14日上関原発の討論会での“やらせ”について等 小出裕章(MBS)
以前にも書いたと思うが、士幌高原道路の地元説明会では、私も同じような経験をした。推進派が町民を動員して会場を埋め尽くし、延々と賛成意見を述べさせたのだ。私ははじめから手を上げていたのにずっと無視され、最後のほうでやっと指名された。そして、会場を出る際には私に野次と怒号が浴びせられたのだ。まさに「やらせ説明会」だった。
しかし、世界最悪レベルの大事故を起こし、大規模な放射能汚染を続けている今の時期に、電力会社があのようなメールを送信してバレないと思っていたならかなり認識が甘い。身から出た錆だ。「やらせ」「世論操作」を許すべきではない。
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