急性放射線障害の死亡事例は本当になかったのか?

松田まゆみ

2011年09月24日 22:52

 まずは2011年6月1日にアップされた以下の動画を見ていただきたい。

【意見映像】福島の小学生が急性放射線障害で死亡した?



 この動画を作成してアップしたaugustarmy38さんのコメントは以下だ。

坂本龍一氏のTweeterで福島の小学生が避難先で急性放射線障害の症状を呈して死亡したとの噂が流れました。事実は確認されていないようで噂の域を出ないようですが、うp主には気になる事がひとつあるんですよね。原発爆発による急性放射線障害で相当数の死者がいるんじゃないかという疑念が、どうしても消えない。この件は最大のタブーみたいですが、とりあえず映像を作ってみました。どう思われますか

 この動画の最初に出てくる静岡に避難した福島の小学生女児のことが書かれたブログは私も見ていたが、それを見たときは確かに驚いた。その記事がインターネット上で話題になったあとにブログ主が削除してしまったことが、さらに疑問を大きくさせた。なぜなら、ブログ主はメーリングリストに流れた情報を元に記事を書いたとしていて、単なる噂とか憶測で書いたということではなかったし、削除理由も「事実ではなかったから」ではなく「親族のプライバシー保護などのため」と説明していたからだ。私は、削除してしまったこと自体になにか陰の圧力のようなものを感じた。

 ところがその後、その記事はデマだという話しが出てきた。しかし元記事が削除されたからといってデマだと決めつけることにはならないはずだ。理由も説明せずにデマと決めつけてしまうのもおかしな話ではないか。私はデマと決めつける発言のほうがよほど不可解だと思った。

http://www.j-cast.com/2011/05/11095295.html?p=all

 この動画では大熊町で見つかった高濃度に被ばくした遺体のことにも言及しているが、この遺体については私も以下の記事に書いた。病死というだけで病名は特定されておらず非常に不可解だ。

福一から20キロ圏内の被ばく遺体に関するコメント

 動画に出てくる徳田たけし氏のブログ記事を探してみた。以下の記事だ。

避難区域の苦悩

 確かに「原発の周辺から病院へ逃れてきた人々の放射線量を調べたところ、十数人の人が10万cpmを超えガイガーカウンターが振り切れていたという」という記述があるが、これは上記の大熊町の遺体と変わらないような大変な被ばく量だ。急性放射線障害が出てもおかしくないだろう。

 動画でも少し触れられている双葉厚生病院の件については「院長さん」の以下の記事に詳しい。

もぬけの殻となっていた双葉厚生病院-その時なにが・・(100万アクセス)

 上記の記事で紹介されている森住卓さんと豊田直巳さんへのインタビュー記事でも、3月13日時点で双葉厚生病院は「何分もいちゃいけない」ほどの高い放射線量だったと話している。爆発後の福島第一原発周辺の放射線量は、急性放射線障害を生じてもおかしくないほどの凄まじいものであったことは間違いないと思う。

 もちろんこのことは東電も政府も分かっていたはずだ。だから双葉病院でも双葉厚生病院でも防護服を着た警察官がとんできて強制的に職員や患者を避難させたのだ。このままにしていたら放射線障害で亡くなる人も出かねないと分かっていたからではなかろうか。そして、augustarmy38さんも書いているように、この問題は最大のタブーなのだと私も思う。

 こういう記事を書くと、「急性障害で亡くなるなんてあり得ない」「いい加減な動画だ」などといったコメントが入るかもしれない。しかし、「急性障害で亡くなった」と断定はできないものの、「急性障害はあり得ない」とも断言できないはずだ。この動画の内容をどう判断するかは個人個人によって違うだろうが、よく調べて作成されており、決していい加減なものではないと私は思う。

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