ムダな農業用ダムは中止を!

松田まゆみ

2009年11月21日 15:53

 20日の北海道新聞に「農業用ダム総点検」という記事が掲載されました。農水省が所管する全国約180の農業用ダムについて、年内を目途に検討するとのことです。赤松農水相は「莫大な費用をかけても役割を果たしていないダムが全国にある。財政面の制約があるが、どんな対策がふさわしいのか整理をする」とのこと。

 北海道では富良野市の東郷ダムがその典型です。旭川開発建設部が、かんがい目的で1977年に着工し93年に完成したこのダムは、試験湛水で水漏れが発覚。ダム本体の建設費は157億円とのことですが、止水のための補修工事などを含めこれまでに総額約380億円が投じられました。しかし改修にはさらに費用がかかるとされ、今でも使えない状況です。その間に受益農家も660戸から370戸に減少しています。そもそも本当にかんがいのためのダムが必要だったのかという疑問が生じます。

 水漏れダムとしては、ほかにも九州の大蘇ダムが問題になっています。こちらは2005年に完成。事業費も当初の130億円から593億円に増加していますから、東郷ダムと同じような経過をたどっています。それにしても、ダムを建設する際には地質の調査も行うはず。なぜできあがってから漏水が発覚するのでしょうか。不可解としかいいようがありません。

 東郷ダムなどは以前から水漏れの欠陥ダムとして問題視されていましたが、事業中止にはなりませんでした。ようやくこのような無駄な農業用ダムが見なおしの遡上に乗ったということです。ここまでくるのに、なんと時間のかかったことでしょうか。

 十勝地方で建設が進められている美蔓地区国営かんがい排水事業の問題点については「美蔓貯水池の欺瞞」として連載で書いていますが、これも水需要の減少によって当初の「ダム」が「ため池」に変更されました。現行計画では総事業費が330億円で、受益農家は215戸。農家一戸あたりの事業費は何と約1億5300万円にもなります。しかも、農家の受益者負担分は地元自治体が肩代わりすることになっています。収量を上げるために農家一戸あたりにこれだけの税金をかけるのですから、費用対効果などまったく考えていないといえるでしょう。さらに驚いたことに、受益面積の約半分は牧草地であり畑ではありません。これも中止すべき事業です。

以下の記事も参考まで
ムダ・ダムは国交省だけじゃない!農水省所管の農業用ダムの実態


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