ついに十勝三股に侵入したセイヨウオオマルハナバチ

松田まゆみ

2010年11月21日 16:30

 「とかち・市民『環境交流会』の発表を聞いて」という記事で、特定外来生物であるセイヨウオオマルハナバチが、大雪山国立公園の東南部の糠平に侵入したことについて触れました。環境省上士幌自然保護官事務所の職員が「博物館の職員の方が夏に糠平で確認した」と電話で問い合わせた私に説明したからです。

 後日、発見者の方に問い合わせると、不可解なことに環境省の自然保護官の説明とは違っていました。発見者の方によると、8月に十勝三股で女王蜂を確認し、9月には糠平で働き蜂を確認したというのです。十勝三股というのは糠平から20キロメートルほど北で、糠平よりさらに山奥になります。私が電話で問い合わせたときに環境省の職員はこの情報を知っていたはずですが、私には「糠平で飛んでいるのが確認された」としか言わなかったのです。そう言えば、私が「捕獲したのですか?」と聞いたら「1、2匹捕まえたとも聞いている・・・」ととてもあやふやなことを言っていて、なんだか変だなあと感じたのです。

 十勝三股といえばルピナスなどの外来種がはびこってマルハナバチの蜜源になっていましたので、私はかねてからここにセイヨウオオマルハナバチが侵入してしまうことを懸念していました。ここからは、ニペソツ山や石狩岳連峰、西クマネシリ岳などが望まれるのですが、三股でセイヨウオオマルハナバチが繁殖するようになれば、これらの山のお花畑へ侵入する足がかりになってしまうからです。十勝三股は、もともとはエゾマツやトドマツなどの針葉樹林が広がっていたところですから、外来植物の繁茂を放置しておくべきではありませんでした。ところが、環境省は平野部の士幌町で春に捕獲をやっているだけで、国立公園への侵入防止策は何もしなかったのです。怠慢というほかありません。

 今年の6月に札幌の環境省の事務所に十勝三股のカラマツの駆除の件で申入れに行ったときにもセイヨウオオマルハナバチのことを話題にしました(「環境省の外来種対策の意識」参照)が、侵入防止に取り組むような発言は何らありませんでした。9月に上士幌自然保護官事務所の自然保護官(電話をした方とは別の方)と話をする機会があり、その時にもこちらからセイヨウオオマルハナバチのことをちょっと話題にしたのですが、三股で確認されていたことはおくびにも出しませんでした。三股に侵入してしまったことを知っていたとしか思えないのですが・・・。

 環境省は、国立公園内で新たな分布が確認されたなら、すぐにでも広く知らせて駆除の対策をとるべきです。黒岳でセイヨウの女王蜂が確認された時などは、すぐに話題になりました。ところが十勝三股への侵入については明らかにするような様子はさっぱりなく、環境省自身がむしろ隠すかのような態度をとっていたことに腹が立ってきました。侵入防止対策も怠慢なら、侵入してからの対応も怠慢なのです。

 十勝三股で確認されたのは女王蜂とのことなので、すでにここで繁殖している可能性もあります。侵入してしまった以上、その事実を広く知らせ、蜜源となる外来植物とセイヨウオオマルハナバチの駆除をしていくべきでしょう。

 十勝三股へのセイヨウオオマルハナバチ侵入情報を受けて、十勝自然保護協会と北海道自然保護連合は、環境省に以下の質問書を出しました。セイヨウオオマルハナバチは他のマルハナバチより早く活動を開始します。環境省は、来春早々にも駆除活動を行うべきです。

十勝三股にセイヨウオオマルハナバチ侵入

 なお、セイヨウオオマルハナバチの問題については、以下のサイトなどが参考になります。

セイヨウ情報

セイヨウオオマルハナバチが映し出す人間社会

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