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鬼蜘蛛おばさんの疑問箱 › えりもの森裁判

2015年12月17日

「えりもの森裁判」差戻し審の争点

 12月15日、「えりもの森裁判」差戻し審の第4回口頭弁論が開かれた。

 5月15日に差戻し審の第1回口頭弁論が開かれて以降、原告は現地での調査と林班図を基に、過剰な伐採および伐区の外での伐採(越境伐採)があったことを主張してきた。

 今回は、原告のこれらの主張に対し、被告である北海道が反論書面を提出した。

 被告側の主張のポイントは、以下である。

1.過剰伐採について
 発注者においては、伐採木の増加は事業費の増加を伴うものであり、不必要な発注から得るものはなく、受注者においても受注した対象を超えて伐採を行うことは単なる業務増となり負の影響しか生じない。
 地ごしらえで伐採した立木は、枯損木、かん木、著しい腐朽木など一般的に利用価値のない立木(受光を確保するため伐採を必要とするものの伐採・搬出頭の事業費が市場価格を上回る負価材を含む。)のほか、植栽の障害(植栽・保育管理の障害や労働安全上の危険性を高めるもの)である不用木であり、植栽に必要な措置として伐採したものであったと推定するのが最も合理的である。
 本件受光伐及び本件地拵えの効果により森林の価値や機能が増進している(これに関しては伐採2年後である平成19年10月26日の写真と平成27年6月11日の写真を証拠として提出している)。

2.越境伐採について
 平成13年10月から11月頃までの間に、当時センター職員により行われた収穫調査において、43小班の区域に含まれている北側の天然林の部分の状況を現地において確認し、調査終了後、基本図の正確性を期すため、基本頭上の43小班の形状を現地に合うよう修正した。平成18年の10小班における植栽に伴い、10小班を44小班に名称変更したことの他は修正等は行っていない。
 現時点にあたっては、本件受光伐は本件地拵え等の実施に伴う現状の確認に伴い修正が必要となっているが、本件訴訟が確定するまでの間は基本図の修正を保留し、修正は一切行っていない。

 次回は被告の主張に対して、原告が反論をする。

 以下は被告の準備書面を受けての私の感想である。

 過剰伐採に関しては、過剰に伐採したものについてはすべて財産的価値がない木であるとの前提のもとに、不必要な伐採は事業費や業務費がマイナスになるという主張だ。しかし、ナンバーテープのつけられた販売木のほかに、木材として商品価値のあるナンバーテープのない木も伐採して販売したなら、マイナスにはならないだろう。販売木以外に、財産的価値のある木を伐ったか否かが重要なポイントだ。

 また、伐採後2年目の紅葉の時期の現場写真と、伐採後10年目の草本が茂る6月の現場写真を並べて、森林の価値や機能が増進していると主張しているが、このような比較はナンセンスとしか思えない。そもそも、うっそうと生い茂っていた天然林が皆伐と植栽によってトドマツ幼木の造林地になってしまったのだ。これによって、森林の価値も機能も大きく低下してしまった。もともとは針葉樹と広葉樹が混在する多様性の高い天然林であったことから目を逸らし、植栽後の様子を比べて森林の価値や機能が増進しているというのは目くらましというべきではなかろうか。

 被告は「受光伐においては、本件売買契約1により、受光の確保のために伐採を必要とする立木及び当該立木を伐採するために支障となる立木について、抜き伐りして売買し、本件請負契約1の地拵えにおいては、その他の植栽の障害となる不用木等を伐採し、寄せ幅に残地することとした」としている。そうであれば天然林で「抜き伐り」を行ったあと、植樹のために支障木や不用木を伐採したら皆伐になり、皆伐したところに苗木を植えて人工林を造ったことになる。このように天然林を人工林に変える施業は拡大造林という。拡大造林を「受光伐」と称すること自体が欺瞞である。

 越境伐採に関しては「現状に合わせて基本図を変える予定であるから越境ではない」という主張である。しかし、森林は基本図によって管理されているのであり、基本図に合わせて施業しなければならない。基本図と実態が合っていないという理由で、基本図の境界からはみ出して施業してもいいという論理は首をかしげるばかりである。被告の主張するように基本図と実態が合っていないのであれば、これまで基本図を無視した施業が行われてきたということになる。基本図無視という杜撰な実態を棚に上げ、実態に合わせて基本図を変えてしまうなどというのはあまりに無茶苦茶である。こんな話しは聞いたことがない。
  

Posted by 松田まゆみ at 20:52Comments(0)えりもの森裁判

2015年05月14日

地裁差し戻し審が始まった「えりもの森裁判」

えりもの森裁判の概要
 2005年の秋、日高管内えりも町の道有林が皆伐され、集材路をつくったことで近くのナキウサギ生息地も破壊されてしまった。そこで、道民3人が住民監査請求を経て提訴したのが「えりもの森裁判」だ。北海道の条例や生物多様性条約に違反する伐採によって森林の公益的機能が損なわれ、また過剰な伐採によって損害を与えたとして損害賠償を求めている。

 一審では賠償命令が却下され、それ以外の請求も棄却されてしまった。この一審判決は肝心の違法性について判断をしていない。あまりに不当な判決のために控訴したところ、高裁では原告敗訴の一審判決の一部を取り消し地裁に差し戻しをするという画期的判決が下った。高裁から地裁への差し戻し審は異例とのことだ。ところが被告の北海道はこれを不服として最高裁に上告をしたのだ。時間延ばしの上告と言わざるを得ない。

 そして、最高裁は昨年の11月に終局し、一審に差し戻されることが決定した。高裁も最高裁も一審判決を否定しやり直しを命じたということから、一審判決の不当性が浮き彫りになった。

差し戻し審第一回口頭弁論
 提訴から10年目という長丁場の裁判になっているが、5月12日に札幌地裁で差し戻し審の第一回口頭弁論が開かれた。

 高裁の判決が2012年10月だったので、ひさびさに裁判のために札幌に出かけた。大通り公園ではパンジーが咲き誇りライラックもちょうど花盛り。





 久しぶりに出かけた札幌地裁は、以前からやっている耐震工事がまだ終わっておらず、北側の出入り口からしか入れない。そして、入口には以前はなかったものものしいゲートが設置され係員が何人も並んでいる。空港の搭乗口にあるあのゲートとほぼ同じもので、ここで手荷物の検査を受ける。なんとも仰々しい。

 十勝から札幌地裁まで出かけると丸一日かかるのだが、第一回口頭弁論はあっけなく5分で終了した。これはいつものことだから、想定内。今回は大阪の弁護士さんがはるばる来てくださった。

 原告からは「準備書面(14)」として事実関係の概要と差し戻し部分についての双方の主張をまとめた書面が提出された。

 この裁判では、これまでに提出された書面および証拠書類を重ねると数十センチにもなる。この膨大な資料を裁判長は一通り目を通すのかと思ったのだが、どうやら当事者に概要をまとめてもらうということのようだ。差し戻し審でのポイントは、過剰伐採と越境伐採についての立証になりそうだ。

 次回期日は7月28日(火)13:15である。
  

Posted by 松田まゆみ at 21:46Comments(2)えりもの森裁判

2012年10月26日

「えりもの森裁判」高裁から地裁へ差し戻しの画期的判決

 昨日「えりもの森裁判」の高裁判決があった。判決は、原告敗訴の一審判決の一部を取り消し、地裁に差し戻しをするというもの。実質的に原告の勝訴である。高裁の橋本昌純裁判長は、一回目の口頭弁論で「いくらかでも損害があったら原判決を破棄せざるを得ない」と述べていたので、差し戻しの可能性が高いのではないかと思っていたのだが、その通りの判決だった。つまり橋本裁判長は損害があったと認めたということだ。

 判決文は入手していないのだが、北海道新聞の25日夕刊と26日朝刊の記事を参考に、概要をお知らせしたい。

 この裁判は、道有林の違法な伐採によって生物多様性に富む天然林やナキウサギ生息地が破壊されたことで森林の価値(公益的機能)が損なわれたこと、また指定した本数をはるかに上回る過剰な伐採が行われたことにより、北海道に300万円の損賠賠償を求めたもの。

 森林の持つ公益的機能の損害を特定するのは容易ではないのは分からないではない。しかし、立木そのものに財産的な価値があることは言うまでもない。橋本裁判長は、高裁でこの立木の財産的価値の損害の有無に焦点を当てた。

 伐採(販売)する立木は道職員が調査をしてナンバーやカラースプレーで印をつける。問題となっている区域では376本の立木を特定して業者に販売した。ところが業者は販売木以外に403本(そのうち直径6センチ以上の木が327本)も過剰に伐採したのである。ならば過剰に伐られたことで損害を被ったはずだ。この過剰伐採については被告の北海道も認めている(ただしそれらは価値がなかったと主張)。

 ところが、驚くべきことに石橋俊一裁判長による一審判決は過剰な伐採があったかどうかも判断せず、損害について認めていない。これに対し、高裁の橋本裁判長は「過剰伐採があったか否か判断せずに請求を棄却した原判決は失当だ」(夕刊)、「過剰伐採と違法性の有無、当時の日高支庁長らの責任、損害額を審理する必要がある」(朝刊)とし、原告側が求めていた300万円の賠償金のうち100万円分の審理を地裁に差し戻ししたのだ。

 民事訴訟で高裁から地裁への差し戻しが行われるのは極めて異例のことらしい。早い話、一審を否定してやり直しを命じたということだ。高裁で判断せずに地裁に差し戻した理由はよく分からないが、一審判決がそれまでの審理をあまりに無視し、判断しなければならないことについて判断を避けたいい加減なものだったからこそ、このような判決は看過できないとしてやり直しを命じたのではなかろうか。少なくとも私にはそう感じた。

 高裁の判決を受け、差し戻し審では少なくとも違法性、過剰伐採による損害、道職員の責任などを判断しなればならないだろう。

 北海道新聞の取材に対し、被告の北海道は「判決を精査し、道有林の森林整備・管理が適法だったことを主張したい」とコメントしている。

 北海道は2002年3月に森林づくり条例を制定し、木材生産のための伐採は止めて、森林の公益的機能を重視する森づくりへと施業の方針を大きく転換させた。鬱蒼と茂っていた天然林を皆伐して植林するような施業が「適法だった」とは、よく言えるものだ。

 えりもの森裁判が提起されたのは2005年の末。今年の末で丸7年になる。また地裁で審理をやり直すことになるので長丁場の裁判になりそうだ。

  


Posted by 松田まゆみ at 16:00Comments(2)えりもの森裁判

2012年08月10日

えりもの森裁判控訴審が結審

 7日は「えりもの森裁判」の口頭弁論があり、結審だった。

 控訴審がはじまってからの経緯については前回の記事に書いたが、原告らが現場の写真を証拠として提出し、価値のある木が多数伐られて現場に放置されていることを示したことに対し、北海道は「写真では場所が特定できない」という驚くべき主張をしはじめた。

 現場を熟知している森林管理者が、原告の提出した現場写真が本件現場であると認めないというのであれば、管理者としての資格がないだろう。「写真では場所が特定できない」などというのは言い逃れでしかないし、まるで私たちが嘘の証拠を出していると言わんばかりだ。

 北海道の代理人である藤田美津夫弁護士は、被告である道職員の説明にしたがって準備書面を書いているのだろうが、弁護士も現地に行っているのである。こういう言い逃れの主張を平然するというのはいかがなものか。いくら依頼人に不利なことでも、事実は事実として認めるべきだろう。

 このために、原告側は自然保護団体のメンバーら4人の陳述書を証拠として提出した。原告が証拠として提出した写真が本件現場のものであることを証言する陳述書だ。被告の言い逃れの主張のために、こんな当たり前のことでいちいち書面を出さねばならないのである。

 被告側はあと一回反論をしたいとのことだったので、最後にもう一度書面を出して高裁での審理が終了する。

 「受光伐」(幼樹・稚樹の育成のために上層木を抜き伐りする)として376本の立木を販売する契約を行ったのに、実際にはほぼ皆伐され403本もが「地ごしらえ」と称して過剰に伐られていたのである。また伐採跡地には一面トドマツの植林がなされていた。常識的に考えれば、おおよそ「受光伐」などと言える伐採ではなく、拡大造林そのものだ。これほどの過剰伐採をしておきながら北海道は証拠も示さずに「損害はなかった」と主張している。

 控訴審での1回目の口頭弁論で裁判長は「いくらかでも損害があったら原判決を破棄せざるを得ない」と述べた。ということは、控訴審では一審の判決を破棄するか否かを判断するというスタンスのように思われる。裁判長にはぜひ常識的な判断をしていただきたいと思う。

判決は10月25日、札幌高等裁判所で午後1時10分である。

  


Posted by 松田まゆみ at 11:20Comments(2)えりもの森裁判

2012年06月15日

高裁の橋本昌純裁判長の追及にたじたじの北海道側弁護士

 「えりもの森裁判」は昨年10月14日の不当判決を受けて控訴し、現在は高裁で審理が行われているのだが、これが意外な展開になってきている。

 高等裁判所の橋本昌純裁判長は、この裁判の主張の中でもっとも分かりやすい過剰伐採(「地ごしらえ」による伐採)における損害に焦点を当て、北海道に対して「損害がない」ことを立証せよと求めているのだ。

 北海道は受光伐(稚樹等の生育に必要な空間や光環境を確保するための上層木の伐採)として376本の立木を特定して販売した。また、それ以外に56本が伐採の際の支障木として販売された。ところが、これらの販売木以外に403本もの立木が伐採され、現場は「ほぼ皆伐状態」になってしまったのである。403本のうち材として価値が認められている直径6センチ以上の立木は327本あった。

 北海道はこの403本の伐採は植林をするための「地ごしらえ」により伐採したのであり、その結果として皆伐状態になったという不自然な主張をしている。

 伐採跡地は誰がどう見ても受光伐ではなくて皆伐だし、販売対象とはなっていなかった多数の木が「地ごしらえ」名目で伐られてしまったのは一目瞭然だろう。ところが、一審では不思議なことに、この過剰伐採による損害すら認められなかったのだ。いったいどういう思考をしたらそんな結論になるのか、頭を抱えてしまう判決だ。

 高裁の裁判長に「1本でも地ごしらえによる損害はなかったのか」と質された北海道は、破綻した釈明を始めた。財産的価値のある立木は受光伐と支障木処理の際に伐採され、その跡には財産的価値のない枯損木や著しく腐朽した木、かん木しか残っていなかった。これらを「地ごしらえ」によって伐採したので、財産的損害はない、というのだ。つまり327本はすべてが「枯損木、著しく腐朽した木、かん木」だったというあり得ない主張を始めたのだ。一審では一切主張していなかったことだ。

 そこで、控訴人らは、327本は北海道の主張するような「枯損木、著しい腐朽木、かん木」ではなく、財産的価値のある立木であることを現場で撮った写真で示したのだ。

 昨日14日の第三回の口頭弁論では、裁判長から「財産的価値ではなく後継樹としての価値がある木はゼロだったのか」、「植林した苗木は価値がないのか」と質され、道側の藤田美津夫弁護士が「植林した苗木は価値がある」と認めざるを得ない一幕もあった。また控訴人らが示した証拠写真については「場所が特定できない」など、たじたじとなっていた。

 北海道は「損害がなかった」とするために、矛盾した主張をせねばならなくなっている。控訴人らの主張をよく理解した橋本裁判長の鋭い指摘によって、化けの皮がどんどん剥がれてきたようだ。

 高裁の裁判長は、北海道が「損害がない」ことを立証できなければ、一審の判決を維持できないと考えているようだ。まっとうな判断を期待したい。

 次回期日は8月7日(火)13:10 札幌高等裁判所

  


Posted by 松田まゆみ at 16:34Comments(0)えりもの森裁判

2011年10月15日

「えりもの森裁判で」不当判決を下したのは石橋俊一裁判長


 このところ原発問題に重点を置いてきたこともあり、「えりもの森裁判」の報告がおろそかになっていたのだが、昨日は提訴以来6年近くにわたって争ってきたこの裁判の判決が札幌地裁であった。石橋俊一裁判所に代わってからの裁判の様子から、法と事実に則った適正な判決が出るとは思えなかったし、主文を言い渡してあっという間に終わることはわかりきっていたが、一日かけて出かけていった。

 「えりもの森裁判」の概要については以下を参照していただきたい。

えりもの森裁判(市川・今橋法律事務所)
えりもの森皆伐事件住民訴訟(NPJ弁護士の訟廷日誌)

 ごく簡単に説明すると、北海道は木材生産のための施業をしないと条例で定めていたのに、「受光伐」との名目で道有林の皆伐を行って生態系を破壊し森林の公益的機能が損なわれたこと、契約本数を大幅に上回る過剰な伐採をして損害を与えたこと、集材路の新設でナキウサギの生息地を破壊したことなどに対して損害賠償を求めた住民訴訟だ。

 判決の主文は以下だ。裁判長はこれを読みあげてさっさと退場した。

1 本件訴えのうち、相楽博志に対する賠償命令に関する部分をいずれも却下する。
2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。

 これほど酷い判決もそうそうない。あとで判決文を見てさらに驚き呆れた。

 判決文は当事者目録を除くと30ページなのだが、「事実および理由」に25ページが割かれ、肝心要の「当裁判所の判断」はたったの5ページ弱だ。さらに事務手続きに関わることがそのうちの約3ページを占め、「損害について」は2ページにも満たない。これまで6年近くにわたり膨大な書面と証拠書類を突き付けてきた裁判の判断は、あまりにもお粗末なものだった。

 以下に「損害について」の部分を引用しよう。堅苦しい文章が苦手な方は飛ばして読んでいただきたい。

 原告らは、本件売買契約1、本件請負契約1及び本件請負契約2並びに本件各行為によって、道有林の森林の公益的機能が損なわれ、また、伐採された立木の価額分の損害が北海道に生じた旨主張する。
 しかしながら、北海道が道有林の公益的機能についてその在世案的価値を試算しているからといって、その試算に従って北海道の財務会計上の資産として計上されるというような筋合いのものではなく、その試算を基礎として、森林の伐採により民法上又は地方自治法上の住民訴訟の対象となるような「損害」が発生するなどとは考えられない。また、ある森林の公益的機能が損なわれ、それによって地方公共団体に財産的損害が生じているかどうかは、当該森林のみならず、近傍隣地の状況等を総合的かつ長期的にみて判断されるべきものと考えられる上、その判断は多分に評価的なものであるから、伐採された箇所があれば直ちに面積に応じた割合において損害が生じるということはできない。そして、本件において、上記核契約及び本件各行為によって、森林の公益的機能が損なわれ、北海道に財産的損害が現に生じているとまで認めるに足る証拠はない。
 次に、立木自体の交換価値に着目しても、原告らは、売払いの対象となった立木の売払価格が不当であるとの主張をするわけでもなく、また、そのような事実を認めることもできない。また、本件地拵えにより伐採された樹木についても、売払いの対象とすべきであった立木の具体的存在や、その売払いをすべき価額等を的確に認めることもできない。北海道の財産である道有林についての事務の受任者たるセンター長が、その管理の一環として、道有林を伐採した上で集材路を作設することや、伐採した立木を売却することなどによって、直ちに北海道に伐採木の価額に相当する財産的損害が生じたということはできないし、他に本件において北海道に財産的損害が生じていると認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、本件売買契約1、本件請負契約1及び本件請負契約2並びに本件各行為によって、北海道に損害が生じたと認めることはできないから、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求は理由がない。


 この判決にはただただ唖然としてしまう。まず、前半部分は森林の公益的機能に対する損害を認めた中間判決を否定する内容だ。中間判決を前提として始められた裁判でありながら、それすら否定しているのだ。

 「本件地拵えにより伐採された樹木についても、売払いの対象とすべきであった立木の具体的存在や、その売払いをすべき価額等を的確に認めることもできない」という判断には驚愕してしまう。北海道は客観的事実として過剰伐採を認めているし、正規の販売では1本当たりの価格は出ているため、その本数に1本当たりの価格を掛けて損害額を算出していた。また、北海道は胸高直径6センチ以上の立木は財産的価値を認めているし、原告らは伐根をすべて写真にとって証拠資料として提出している。ところが過剰伐採の本数には一切触れずに、「立木の具体的存在がない」とか「売払いをすべき価額等を的確に認めることもできない」、とし「損害はない」と結論づける判断は意味不明というほかない。事実を見ようとする姿勢が全くない。また、越境伐採のことについても全く触れておらず判断を避けている。

 裁判では法と事実に基づいて判断されなければならない。事実に基づいて論理的に判断したなら、こんな結論が導かれることは到底考えられない。典型的な「はじめに結論ありき」の判決であり、その判決を引き出すために事実を無視して「当裁判所の判断」を書いたとしか思えない。

 今日の記事のタイトルに裁判長の名前まで入れたのは、こんな判決を平然と出す裁判長がいるということ、そして日本という国はこんな裁判がまかり通っているということを強調するためだ。このようにお上の方を向いた判決を出す裁判官のことをヒラメ裁判官という。事実と法に基づいて判断しない裁判がまかり通っているということは、司法の崩壊を意味している。何のために裁判があるのか分からない。

 全国で展開された原発裁判がことごとく敗訴しているのも、同じような構図があるからだ。原発裁判はこの国のヒラメ裁判官の多さを象徴している。今回のような判決を放置したなら、ほとんど死に体のこの国の司法はますます劣化するだけだ。ということで、即日控訴することを表明した。

 以下は昨日の記者会見で配布した原告らの見解だ。

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えりもの森裁判判決を受けて

原告 市川 守弘
原告 松田まゆみ
原告 市川 利美

1 北海道の道有林における大規模な伐採の違法性を認められなかったことは大変残念である。
 私たちは、北海道の黄長な生物多様性を保護するために、また道有林の森林管理を条例に基づいて適切に行うよう求めて、本件を提訴した。
 北海道には、えりものような自然に溢れた天然林は、非常に希少なものとなっている。しかし道有林を管理する北海道は、そこでの生物相の保護を全く考慮することなく、しかも天然林はその公益的機能を最優先とし、木材精算のための伐採は一切しないとの全国に先駆けての条例を制定しながら、本件では大規模な皆伐を行い、非常な安値で業者に立木を売却していた。これは裁判所の判断を別にして、許されることではない。
2 北海道は、本件提訴後、その森林管理を改め、日高地方では、ほとんど天然林を伐採しない計画に変更したことは評価できるし、この提訴の事実上の勝訴であると考えている。
 しかし、私たちは、さらに北海道の生物多様性を保全するために、森林に手を入れる際には環境アセスを行うこと、北海道が自ら定めた施業マニュアルに沿って、野生生物の保護を最優先課題として森林管理することを求め、いっそうの闘いを行っていくものである。
3 本判決は、裁判所が本件においてどこまで日本の将来を考えながら事実を判断し、法を適用したか、について多大の疑問が残る判決である。
 裁判所の判断は、裁判官自らが1人の国民であることを前提に、日本において自然の保護、生物多様性の保全が、どれほど重要なのかを理解した上で、法の解釈、事実の判断をしなければならない。このことは原発訴訟における過去の判決例と現実化した福島の事故を見て、裁判所自らが十二分に反省していることと理解していた。
 しかし、本件では、法(生物多様性条約や北海道森林づくる条例等)の解釈においても、多くの事実の認識においても、このような反省に+ことなく、司法の社会的、政治的責任を放棄したものとなっている。
 私たちは、このような裁判官の価値判断に対しても、今後は不断の批判、闘いを行っていく覚悟である。

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 この判決については今朝の北海道新聞にも掲載されたが、その記事と並んでいたのは「違法伐採が大幅増」という石狩川源流部の国有林違法伐採に関する記事。これも同じ市川弁護士らが関わる市民団体が追及し、林野庁が重い腰を挙げて自ら調査を行い違法伐採を認めた事件だ。これについては後日改めて記事にしたい。

 市民の調査・追及によって明らかにされてきた違法伐採が、ヒラメ裁判官の手にかかると違法ではなくなってしまう。なんと恐ろしい国なのだろうか。
  


Posted by 松田まゆみ at 17:19Comments(5)えりもの森裁判

2011年03月23日

「えりもの森裁判」でいよいよ証人尋問


 2005年12月に提訴した「えりもの森裁判」は、いよいよ大詰めの証人尋問を迎える。期日は以下のとおり。

とき:2011年4月22日 14時から
ところ:札幌地方裁判所802号法廷

 傍聴できる方はぜひ裁判所に足を運んでほしい。また、知人・友人などにも傍聴をよびかけていただきたい。
  


Posted by 松田まゆみ at 11:20Comments(0)えりもの森裁判

2010年10月23日

「えりもの森裁判」いよいよ大詰めに

 しばらく「えりもの森裁判」の報告をしていませんでしたが、昨日は久しぶりに口頭弁論が開かれました。といっても、この間もほぼ2カ月に一度のペースで非公開での論点整理が行われていました。というのは、4月に裁判長が変わったのです。その引き継ぎのために前の裁判長による論点整理に時間がかかったあと、新しい裁判長のもとでさらに法的な整理が行われていたのです。これらにおよそ一年間が費やされました。提訴してからこの年末で5年になりますが、なかなか長丁場の裁判です。裁判長が変わるのは2度目。

 この裁判では「受光伐」との名目で伐採をしたのに、実態は「皆伐」になっていたことや、ナキウサギの生息地が破壊されたことが問題にされています。現地を見れば、「受光伐」などという状態ではなくきれいに「皆伐」されていることとか、ナキウサギの生息地が破壊されたことなど一目瞭然です。新しい裁判長は現地を見ていないので是非とも見てほしかったのですが、残念ながらこの希望はかないませんでした。

 今回は、原告側が違法性についてこれまでの主張をまとめた準備書面を提出しました。次回は被告側がこれに対する反論の書面を出すことになっています。

 さて、今回、裁判所からは原告と被告の双方に対して、人証申請の準備をするようにとの指示がありました。ということで、年明けからいよいよ証拠調べ、つまり証人尋問に入ります。裁判の中でも証人尋問はクライマックスになります。来年は、是非、多くの方に傍聴にきていただきたいと思います。証人尋問の期日が決まりましたら、このブログでもお知らせいたします。
   


Posted by 松田まゆみ at 16:39Comments(0)えりもの森裁判

2009年11月27日

背景にある癒着構造

 25日は「えりもの森裁判」の2回目のラウンド法廷での論点整理でした。裁判官が原告と被告に質問をして主張を確認していくのです。裁判長としては主張がほぼ出揃った今の段階で、論点をきちんと整理しておくことが重要と考えているようです。裁判所は2回のラウンド法廷をもとに、原告と被告の主張の食い違いを整理してまとめるそうです。

 林業のことはただでさえ一般の方には分かりにくいのですが、この問題をいっそう分かりにくくしているのは、受光伐として森の木の一部を伐って苗を植えるという一連の契約と履行の中に、重なるようにしていくつもの違法行為があり、その背景に行政と業者の癒着疑惑が絡んでいるからなのです。一般の人が監視しているわけではない山の中で、森林管理者と業者が癒着して、非常にいい加減に道民の財産である木材の売買が行われていたということなのだと思います。これまでそのようなことにメスを入れる人がいなかったので、こうした構図が公の場で明らかにされていなかっただけのことなのです。それを明らかにして、このような伐採をやめさせることが裁判の目的です。

 そもそも「受光伐」の目的は木材生産でもないし皆伐地への植林でもありません。抜き伐りをすることによって日陰になっている下層木に光を当て、若木の生長を促進させて複層林化を図ることが目的なのです。376本の木を抜き伐りする契約でありながら、376本以外に400本以上もの木を伐って皆伐状態にしたのです。被告は、植林の邪魔になる細い木などを伐って「地ごしらえ」をしたところ、結果として皆伐になったと主張しているのですが、若い木を育てて大きくするのが受光伐ですから、若木を伐って一面を植林地にするという行為自体が矛盾しています。これは拡大造林にほかなりません。

 ほかにも森づくりセンターと業者による二重の収穫調査や、支障になっていない樹木を支障木と認定してタダ同然のような価格で売却したり、伐区の範囲を超えて伐採したり・・・とおかしなことが続々とわかってきたのですが、これらのことも癒着構造を考えると合点がいくことなのです。

 伐採するのは業者ですが、発注者である森づくりセンターには監督責任があります。森づくりセンターは跡地検査といって、伐採したあとで伐根の検査をしています。伐採契約の二倍以上もの本数を伐って皆伐になっていても、検査で適正な伐採だったとしているのですから驚くばかりです。癒着構造によって皆伐という不正行為を見逃し、植林をすることで業者の仕事づくりをし、委託する必要のない収穫調査まで業者に委託してお金を払い、支障になっていない木を支障木として認めて安く売却するなど、業者を優遇しているとしか考えられません。この裁判からは、癒着まみれの土木公共事業と変わらないような、すごい世界が垣間見えます。

 提訴したのは2005年の年末ですからかれこれ4年。1年以上を入口論に費やして2007年の2月に中間判決で原告の勝利。本論に入ったのは2007年の春からですので、次回の2月のラウンド法廷で中間判決から3年になります。思っていたより長い裁判になっていますが、提訴してから新たに不可解なことが次々と生じたという事情があります。さて、いよいよ来年は大詰めを迎えそうです。
  


Posted by 松田まゆみ at 17:04Comments(0)えりもの森裁判

2009年10月08日

北海道の矛盾した説明に唖然

 6日は「えりもの森裁判」でした。といっても、今回はラウンド法廷という円卓の法廷で非公開で行われました。この裁判を起こしたことで、問題としている皆伐に関連してつぎつぎと不可解なことがわかってきたのですが、それによって論点が解りにくくなってしまいました。裁判所も論点の整理をしたいということで、裁判官が原告と被告に疑問点を聞くことを目的に円卓での口頭弁論になったのです。論点の整理ですから、裁判官が原告と被告の主張に対して「こういう理解でいいのか」という具合に、具体的に確認の作業をしていくということです。

 えりもの森裁判で私たちが主張しているのは、「天然林受光伐」としながら実際には皆伐して植林をし、さらに集材路の造成でナキウサギの生息地を破壊したということです。受光伐とは、森林の一部を伐採することによって、森林の内部にまで光が当たるようにし、稚樹や若木など下層木の生長を促して森林を複層化する伐採方法のことです。すなわち、後継樹の成長を促すことを目的に、単木または群状の抜き伐りをすることです。天然林を皆伐して植林をするという行為は、とうてい受光伐などといえるものではなく、拡大造林そのものです。そして、売買契約をした376本よりはるかに多い木を伐っていました。この過剰な伐採について被告は、植林の邪魔になるので伐ったと主張していますが、植林の支障になっていない木も多数伐られています。この伐採においては、収穫調査から木材の販売、さらに伐採の区画をめぐってさまざまな疑問や疑惑が生じています。私たち原告は、こうした一連の行為が違法だといっているのです。

 さて、今回の話しの中で、内心、非常に憤慨したことがあります。というのは、被告である北海道の職員の「玉取り」についての説明です。

 収穫木を指定するための調査野帳には、収穫木の376本の木の樹種や胸高直径などのデータが記入されているのですが、376本の収穫木のうち、胸高直径36センチ以上の木の根株にはナンバーテープとピンクのスプレー、34センチ以下の木(これを「玉取り」としている)にはピンクのスプレーで印をつけたことになっています。つまり収穫木にはスプレーがなければならないことになります。しかし、伐採した直後に実際に現場の伐根を確認したところ、ナンバーテープもスプレーもない伐根が複数ありました。すなわち盗伐が疑われるのです。

 昨年の秋、裁判所と原告・被告が現地に検証に行きましたが、その際に原告らはナンバーテープもスプレーもないウダイカンバ(ウダイカンバの材は高額)の伐根を指し示しました。この木は植林の邪魔にはなっていません。ですから盗伐が疑われるのです。すると道職員は、「このあたりは直径が小さめな木が多かったので、区画を決めてその中の34センチ以下の木を玉取り扱いにした。だから区画内の木にはスプレーをつけていない」という説明をしたのです。たとえ「玉取り」する区画を決めたとしても、収穫木に印をつけながら調査しなければ、どの木を調査したのかもわからなくなるでしょう。とても不可解な説明です。

 ところが、6日の口頭弁論では、現地での説明と異なる説明をしました。つまり、「玉取り」とは胸高直径34センチ以下の収穫木を野帳へ記入する際の様式であり、業者はナンバーテープとスプレーで特定されている376本の収穫木を伐ったという主張です。ならば、スプレーのない伐根はどう説明するのでしょうか? 現場での説明と法廷での説明が明らかに食い違っており、現場での説明は言い逃れとしか思えません。

 これでは、いったい何のために現地に行ったのでしょうか。現場での道職員の説明は何だったのでしょうか? 裁判官に対し、こういう矛盾した説明を平然とする道職員には心底呆れるというか、怒りを覚えました。

 次回も、ラウンド法廷で論点の整理の続きをすることになっています。
  


Posted by 松田まゆみ at 16:00Comments(6)えりもの森裁判