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2016年01月23日

温暖化の脅威

 昨年(2015年)の世界の平均気温は過去最高を更新したそうだ。

2015年の世界平均気温 過去最高を大幅更新 (BBC)

世界の年平均気温の編差の経年変化(0891~2015:速報値) (気象庁)

 世界の平均気温は2000年ころから10年ほど横ばいだったため、温暖化は嘘だとか寒冷化が始まっていると主張する人もいたが、どう見ても温暖化は止まるどころか加速しているとしか思えない。

 昔と比べて暖かくなった、というのは私自身も実感している。

 私の生まれ故郷は長野県の上諏訪だが、上諏訪はとても寒いところだった。冬の朝、玄関前に配達された牛乳が凍って紙のふたを押し上げて盛り上がるほど冷えるのが日常だった。とはいっても私が住んでいたのは幼児期なので、寒さの記憶自体はほとんどない。暖房といえば炬燵があったことしか覚えていないが、今になって考えるとよくあの寒いところでストーブも使わず過ごしていたものだと思う。今はたぶんそこまで冷えないのだろう。

 母が子どもの頃、諏訪湖は毎年全面結氷してスケートをしたそうだが、近年では全面結氷の頻度が減り、氷の厚さも薄くなっているという。

 私が北海道に来た35年ほど前も、今と比べると冬はずいぶん寒かった。当時住んでいた住宅は、ストーブを焚いている昼間でも長時間水道を使わないと凍結してしまうこともあったくらいだ。半日ほど外出しただけで、家の中はたちまち氷点下になる。帰宅してもしばらく防寒着が脱げない。夜はストーブを消すが、寒いときは寝室がマイナス8度くらいまで下がったこともあった。

 寝る前はストーブの上で沸騰していた薬缶の湯が、朝には凍っている。水道はもちろん水抜きをするが、冷えた日は蛇口が凍って回らなくなってしまう。目覚めたらまずストーブのスイッチを入れて、部屋が暖まるまでまた布団に潜り込む。部屋が多少暖まってから起き出して着替え、薬缶の湯を蛇口にかけて回るようにしてから止水栓を開く。だから、ストーブには必ず水を入れた薬缶や湯沸かしを乗せておかねばならない。これが冬の日課だった。

 数日間家を開けて帰ってきたときには、何もかもが凍ってしまって大変だった。北海道の場合、冷蔵庫は、冬に食べ物を凍らせないという役目もあるのだが(冗談のようだけれどホントの話し)、もちろん冷蔵庫の中のものまで凍っている。花瓶の水が凍って花瓶が割れていたり、調味料まで凍ってビンが割れていたり・・・。

 真冬はマイナス20度以下になるのは当たり前で、25度以下になることもしばしばあった。最低気温がマイナス15度くらいだと「今日は暖かいね」という感じだった。狭い家なのに、厳冬期はストーブだけで一日10リットルほどの灯油を燃やした。

 今こそ断熱性・機密性のいい住宅なのでこんなことはあり得ないのだけれど、それにしても3、40年の間にずいぶん暖かくなった。最近ではマイナス25度以下になる日は滅多になく、20度以下になってようやく「今日は冷えたね」となる。冬暖かいのは暖房費の節約になるが、もちろん喜んでなどいられない。

 地球温暖化の危機が叫ばれるようになってから久しいが、これを止めるのは本当に厳しい状況になってきている。地球上の生物は戦争、放射能や化学物質による環境汚染、そして地球温暖化(含異常気象)と、いくつもの脅威にさらされているのに、この国を見渡してもなぜか危機感が感じられない。

 人間は「ゆでガエル」のように、自分の身に危機が降りかからないと気づかないのだろうか? その時はすでに遅しなのだけれど。
  
タグ :地球温暖化


Posted by 松田まゆみ at 22:16Comments(0)環境問題

2015年12月06日

フェロニッケルスラグ微粉末の有害性をめぐって(追記あり)

 (株)日向製錬所と(有)サンアイが黒木睦子さんを訴えた裁判では、黒木さんがフェロニッケルスラグ(グリーンサンド)を「有害なゴミ」と書いたことが真実であるか否かが大きな争点になっていた。

 有害性に関することで黒木さんがブログに書いていたのは2点。ひとつは、造成工事の際にフェロニッケルスラグの粉塵が黒木さんの実家まで飛んできて咳がでるようになったということ。これは粉じんを吸引したことによる健康被害という主張だ。もう一つは、造成地の斜面の最下部にある沈殿池の水から基準値を大幅に超える重金属が検出されたということ。黒木さんは、スラグからしみ出た水が重金属で汚染されており、その水が川に垂れ流しになっていること、さらにその水が水田にも使われていると主張していた。この発言から、黒木さんはスラグから有害物質が溶け出ていると考えていることがわかる。

 なお、沈殿池の水から有害物質が検出された件については、「黒木さんの水質検査で確認された有害物質は何に起因するのか?」および「黒木さんの水質検査で確認された有害物質は何に起因するのか? その2」を参照していただきたい。

 こうした流れから、有害性に関する争点は「粉じんによる咳」と「スラグから重金属が溶出するか否か」になる。ところが、この裁判がはじまってからツイッターで、フェロニッケルスラグに含まれるシリカ粉じんが発がん性物質であるから、それを主張すればスラグの有害性の立証になるという主張をする人が出てきた。この裁判の情報をチェックしている人ならすぐにピンとくると思うが、現在のツイッターアカウントでいうと、@honest_kuroki さんだ。さらに、黒木さんの裁判に関心をもってブログ記事を書いてきた香取ヒロシ@EG_Hiroshiさんも同じ主張をしている。お二人の主張は以下のようなものだ。

 フェロニッケルスラグ(グリーンサンド)の主成分はシリカ「SiO2」で、46~58%である。そして世界保健機関(WHO)の下部組織である国際がん研究機関(IARC)は石英結晶(シリカ)を「ヒトに対する発がん性が認められる」物質に指定している。また、多量のシリカ粉じんの吸引は珪肺の原因にもなる。黒木さんの裁判で裁判長は「有害であることを証明しなさい」と言っているのだから、裁判でこの主張をすれば有害性の立証になる。香取さんの主張は以下の記事に詳しい。

【追記あり】池の水は争点じゃない。衝撃の発がん性物質。
知っとこう・見据えとこう。尋問らしからぬ尋問。
司法にもとる裁量。そして今後のこと。

 ただし、私はこの件については重視していなかった。なぜなら黒木さんはそういう指摘をしていなかったし、シリカの危険物指定は労働者が長期間にわたって微粉末を吸いこんだときのはなしであり、造成は一時的な飛散だからだ。

 香取さんとツイッターでこのことに関する議論をしているとき、「だぶ」@fluor_doublet さんが、スラグに含まれるシリカは石英結晶ではないから、WHOが珪肺の危険性を指摘している結晶質二酸化ケイ素微粉末とは違い、有害性はそれほど高くないというツイートをしていたことを知った。「だぶ」さんにこれについてお聞きしたら、詳しい説明をしてくださった。以下が「だぶ」さんの説明。

労働安全衛生法においてシリカ微粉末が通知対象物質にかかっているのは、主に粉塵吸引の長期間曝露を念頭に置いてのことです。これは、主に鉱山の坑内の作業従事者が極めて微細な石英粉を長期間吸っていると、重篤な肺疾患(珪肺)が起こることによっています。このときのシリカは、石英です。

ちなみに、シリカというのはケイ素酸化物という意味ですが、これがまた多彩な構造をもつ物質で、結晶構造が数種あり、非晶質もかなり安定です。一番身の周りに多いのは低温石英(石英、αクオーツ)で、高温相もあります。トリディマイト、クリストバライトのような別の結晶構造もあります。

非晶質シリカも多いです。一回石英を溶融し、冷やすと石英ガラスになり、結晶構造は戻ってきません。水を多く含んだものはオパールであり、シリカゲルであります。これらのうち、珪肺を強く引き起こすのは石英、もしくはクリストバライトの非常に細かい粉です。

二酸化ケイ素(シリカ)は非常に安定な物質ですが、結晶構造をきちんと取るとさらに安定になり、微粉末を長期間吸いこんむと、そこに長い間留まり、肺に異物として認識され、悪さをし出すようですね。珪肺は復帰が難しく、鉱業では代表的な労働疾患です。アモルファスのシリカはそうでもありません。

んで、ではフェロニッケルのスラグはどうか、という話ですが、その前にひとつ、無機化学のおさらいをしておきましょうか。酸化物およびケイ酸塩の相は、通常の酸化数のものであれば、陽イオンのすべては酸素が陰イオンになっています。で

んで、そういった系の純物質もしくは化合物は、複雑な組成のものでも、純酸化物の組み合わせで表現することが多いです。例えば、頑火輝石という鉱物があります。これはMg2Si2O6という組成を持っていますが、しばしば 2MgO・2SiO2 という表現をします。

要するに、純酸化物で換算してどのくらい、という表現ですね。これは、実験上、分析上、あるいは考察上、非常にわかりやすい表現なのです。でも、 2MgO・2SiO2 の頑火輝石に、石英が入っているわけではないのです。単なる純シリカ換算なだけで

フェロニッケルのスラグもそんな感じで、複雑なケイ酸塩の結晶および非晶質(アモルファス、ガラス)の混じりで、その鉱物組成は原料や製法によってばらつきます。急激に冷やせばガラスになりますし、ゆっくり冷却すれば結晶化しやすいものから分化結晶化します。

ちなみにフェロニッケルのスラグは、二価の鉄、カルシウム、マグネシウムのケイ酸塩の組成です。ただし複雑な混じりの結晶もしくはガラスなので、構成鉱物種での表現は難しく、FeO ○○%, CaO ○○%, MgO ○○%, SiO2 ○○% といった表現をします。た

ただし、純シリカ分換算で SiO2 が ○○% 入ってる、という表現になってても、それが石英なわけではありません。そのほとんどはケイ酸マグネシウムやケイ酸カルシウムのケイ酸分です。ケイ酸の量が多ければ、スラグだとクリストバライトが結晶化することがありますが、ごく少量です。

なので、フェロニッケルのスラグの組成のコンテンツに SiO2 が ○○% 入ってる、という分析値が出ているからと言っても、それは石英であることはほとんどないのです。石英は融点が高く、それが多く入っているとスラグの流動性が下がりますしね。他の成分がみんな融かしてしまうのです。

ちなみに、フェロニッケルのスラグの組成だと、頑火輝石(エンスタタイト)がかなりメジャーな、安定相になってきます。ゆっくり冷やせばこれが結晶化してくるでしょう。あとはカンラン石かな。シリカ分は通常の岩石の組成から考えるとかなり少なめです。

なお、今はスラグの大部分は、融けてメルトになっている状態で水に放り込みます。こうすると体積収縮でバキバキに割れ、数ミリ大の粒になります。だから「グリーンサンド」というのですが。粒径分布を考えると、重量比率で一番大きいのは数ミリ大でしょうね。

そして一番大事なこと。地殻で一番多い元素は酸素、二番目はケイ素です。ですので、シリカ、具体的には石英は、ほとんどの岩石に含まれています。そこら辺にある砂を取って分析すれば、数割は石英ですし、海砂なんかは5割6割は当たり前、9割以上が石英なところもあります。

地球上のすべての生物はシリカ(正確には石英)の上に生きていると言っても過言ではありません。そのぐらい石英って多いのです。

以上のことから、フェロニッケルのスラグの組成に SiO2 が入ってる、石英は労働安全衛生法の通知対象物質に入ってる、だからフェロニッケルスラグは危ないんだ、という三段論法は、いろいろな点で間違いなのです

普通の窓ガラス(ソーダガラス)も、SiO2 ○○%, Na2O ○○%, CaO ○○%, B2O3 ○○% みたいな表現で書きますよ。でも、石英が入っているわけではないのです。

 ちなみに「だぶ」さんは、無機と有機金属化学の研究者でシリカの専門家とのこと。とても噛み砕いて説明してくださったので、鉱物や化学に疎い人でも理解できると思う。

 で、私も調べてみたが、以下のサイトでも「だぶ」さんと同じ説明がなされている。

5.SiO2の頂点に立つ水晶の構造(水晶と鉱物)

 フェロニッケルスラグの冷却条件によって、スラグの主成分の結晶がどのような変化を示すかを実験した論文があるのだが、急速に冷却した場合はSiO2はすべてガラス質、つまり非結晶になったという結果が得られている。

フェロニッケルスラグの冷却条件と組織に関する研究(資源・素材学会誌 105(1989)No.14)

*上記の論文について「だぶ」さんが図を引用して詳しく解説をしてくださった。詳しく知りたい方は、以下のツイートをお読みいだだきたい。
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673918886845153280
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673929874915004416
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673929931722633216
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673929964157190144
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930026706862080
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930103248707584
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930131308605440
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930163046887425
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930802439188480

 製錬の過程は住友金属鉱山のHPで説明されていて、日向製錬所では溶融したスラグを水砕している。つまり、融けた高温のスラグを水で急速に冷却しているといえるだろう。
http://www.smm.co.jp/business/refining/group_domestic/hyuga/kyoten.html

 珪肺について調べてみると、原因物質は「シリカ結晶」「結晶シリカ」「石英」などと書かれている。

珪肺(ウィキペディア)
塵肺の一種である珪肺(けいはい)の原因はシリカ粉塵の吸入!? (カラダノート)

 発がん性に関しても、IARCは「石英またはクリストバライトとして結晶質シリカが職業暴露により吸入された場合、ヒトに対して発がん性がある(ただし非晶質シリカはGroup3(発がん性が分類できない))」としている。以下、参照。

発がん物質暫定物質(2001)の提案理由(日本産業衛生学会)

 珪肺やがんの原因とされるシリカ微粉末というのは天然に存在する結晶石英もしくはクリストバライトであり、これを長期間吸引することによって引き起こされる。一方、スラグは粉砕した鉱石を電気炉で溶融しメタルを取り出したあとの鉱さいであり、鉱石に含まれる結晶石英は溶融後に固化しても結晶石英にはならない。とくに急速に冷却すると非結晶質分が多くなり、石英に相当するものはほとんどなくなってしまう。スラグ成分にSiO2と書かれているからといっても、それが結晶石英やクリストバライトを指すわけではないということだ。

 これらのことから、日向製錬所から排出されるフェロニッケルスラグには珪肺やがんを引き起こすと認められている結晶シリカはほとんど含まれておらず、含まれていたとしてもごく少量と言えそうだ。ならば、スラグの主成分がSiO2だからという理由でスラグ微粉末は発がん性があるとか珪肺の原因になるという主張は的外れであり、間違いといってもいいだろう。

 もちろん、粉じんの吸入は咳などの健康被害を引き起こすし、スラグ粉じんが無害だとは思わない。また、現時点では非結晶シリカが絶対にがんや珪肺の原因にならないとは断言できないだろう。しかし、結晶石英とそうではない非結晶シリカでは有害性に大きな違いがあるということはきちんと認識しなければならない。

 香取さんの主張は、まさにシリカSiO2という記述だけに着目し、シリカ(ケイ素酸化物)と結晶石英を混同した勘違いだ。専門知識がないことで間違いを犯すことがあるのは往々にしてあるが、間違いに気付いた時点ですみやかに訂正するべきだと思う。間違ったまま突っ走ってしまうと後戻りができなくなり、自分で自分の首をしめることになりかねないことを指摘しておきたい。

【12月6日追記】
香取さんから以下の2点についてツイッターで意見および要望があったので、記事にコメントしてほしいと返事をしたのだが、なぜかコメントはしないとのこと。そこで、追記としてここで返事をしておきたい。

香取さんからの意見・・・松田さん。ご紹介頂いた僕のブログ記事で、結晶ってことについて書いてますよ。 国交省の資料もあげてます。 シリカ(SiO2)などの主成分が「徐冷・急冷のいずれの場合にも」「安定した結晶構造」とのこと。

国交省の資料では、香取さんの指摘のように「フェロニッケルスラグはシリカ(Sio2)とマグネシア(MgO)を主成分とし、徐冷・急冷のいずれの場合にも主な鉱物組成は安定した結晶構造である」と記述されている。しかし、その記述の前に、「風冷スラグは水砕スラグに比べガラス量は低いが・・・」との記述があり、水砕スラグはガラス質が多いと理解できる。

この資料は学術論文ではなく、鉱物や化学の専門家が書いているとも認められない。「主な鉱物組成は安定した結晶構造である」という表現は具体的な結晶の名称が示されていないあいまいな記述であり、この記述のみを取り上げて、フェロニッケルスラグのシリカが結晶シリカであるという根拠にはならないと判断した。学術論文やシリカの専門家の説明の方が信ぴょう性が高いと考える。

なお、国交省の資料とは以下である。
http://www.mlit.go.jp/kowan/recycle/2/12.pdf

香取さんからの要望・・・シリカ(SiO2)は、労働安全衛生法で「有害物・危険物」に指定されている。 発信事項とブログ記事を紹介された者として、この強調している事が触れられず伝えられないのは困ります。 松田さんの記事に加えて下さい。

労働安全衛生法で「有害物・危険物」に指定されていることを香取さんが強調しているのは知っているが、黒木さんの裁判は労働裁判ではないので私は労働問題にまで話しを広げないほうがいいとの立場をとっている。また、労働安全衛生法に関する記事は、私が紹介した香取さんの記事からもリンクされていて知ることができる。したがって、それらの記事は取り上げなかった。必要性を感じていないので、要望を受けて加筆するつもりはない。

【12月7日追記2】
 昨日の追記の「香取さんからの要望」への返事に補足する。

 この記事の主旨は、急冷されたフェロニッケルスラグにはほとんど結晶石英やクリストバライトが含まれていないと判断できること、珪肺やがんの原因とされているシリカとは結晶石英やクリストバライトを指すこと、したがって、日向製錬所から排出されたフェロニッケルスラグには発がん性や珪肺の原因物質はほとんど含まれていないということの指摘である。

 さらに香取さんはご自分のブログでフェロニッケルスラグが珪肺の原因になったり発がん性があると主張されていたので、間違いであるとの指摘をした。香取さんが、日向製錬所から排出されるフェロニッケルスラグは発がん性物質であり珪肺の原因になると主張されるのであれば、フェロニッケルスラグには結晶石英やクリストバライトが含まれていることを科学的根拠に基づいて示すか、あるいは結晶石英やクリストバライト以外のケイ素酸化物も発がん性が認められるとか珪肺の原因になるという根拠を示すべきだろう。それらについて明確な根拠が示され、私のこの記事が間違いであることが明確になったなら、私はこの記事を訂正し、香取さんに謝罪したい。

 労働安全衛生法で「有害物・危険物」とされるシリカにはたしかに非結晶シリカも含まれているようだが、このことと結晶石英の発がん性や珪肺の問題は別である。本記事の主旨である発がん性、珪肺のことを棚に上げて労働安全衛生法を根拠に有害性を主張するのは論点を逸らすことになる。
 その後、香取さんは労働安全衛生法で「有害物・危険物」とされるシリカには非結晶シリカも含まれていると主張していた。「危険有害性の要約」の「310 シリカ」にはさまざまな構造のシリカが記載されているが、この中でGHSの対象となっているのは「結晶質-石英」だけであり、それ以外は対象となっていない。したがって、香取さんのこの主張も誤りである。

 なお、スラグ微粉末の吸引が健康被害を引き起こすことは当然考えられるし、私のこの記事でも「粉じんの吸入は咳などの健康被害を引き起こすし、スラグ粉じんが無害だとは思わない」と書いている。したがって、長期間にわたるスラグ粉じん吸引が健康被害を及ぼすことは否定していない。

【12月9日追記3】
 以下の3点について追加および修正をした。
・沈殿池の水質検査に関わる過去記事を追加。
・「フェロニッケルスラグの冷却条件と組織に関する研究」について、「だぶ」さんの解説を追加。
・「追記2」の一部に誤りがあったので修正。

【12月12日追記4】
 住友金属鉱山はホームページでは以前はグリーンサンド(フェロニッケルスラグの商品名)の成分をSiO2、Mgo、CaOと化学式で表記していたが、その後Si、Mg、Fe・・のように元素表記に書き変えた。このような成分表記が適切なのかどうか「だぶ」さんにお聞きしたところ、問題ないとのこと。住友金属鉱山は、二酸化ケイ素が「物質として」含まれていると誤解されないために、このような元素表記に変えたのではいかと思う。以下、「だぶ」さんからのお返事。
https://twitter.com/fluor_doublet/status/674783490559250432

 また、これに関連する「だぶ」さんの一連のツイートも紹介しておきたい。

うーん。フェロニッケルのスラグ、酸化物成分の値で書くと勘違いする人が出るので、各元素で表記してみますか。

元論文はこれです。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigentosozai1989/105/14/105_14_1067/_pdf スラグ二種類の挙動が書いてあるので、スラグAとスラグDについて、元素の重量百分率で示しますよ。

スラグDは SiO2 53.9%, MgO 27.8%, Fe (all) 6.5%, CaO 5.4%, Al2O3 2.4%, Ni (all) 0.26% の酸化物換算組成です。足らないところは鉄およびニッケルに結合した酸素でしょうから、それで 100% にします。

すると、Si 25.2%, Mg 16.8%, Fe 6.5%, Ca 3.9%, Al 1.3%, O 46.0% になります。スラグD は20℃/sec以上の冷却温度で冷却すると、そのままガラスになるので、ガラスの成分はこのままです。マグネシウムに富んだケイ酸塩ガラスですね。

これには、非晶質の二酸化ケイ素 (SiO2)、結晶質の二酸化ケイ素(石英、クリストバライト)の物質は一切含まれていません。単なるガラスです。

ちょっと厄介なスラグA,こっちはもっとマグネシウムに富み、50℃/sec の速度で冷却すると、重量%で 10% が苦土カンラン石になります。苦土カンラン石の組成は Mg2SiO4 です。

スラグAの組成は SiO2 52.4%, MgO 34.3%, Fe (all) 6.5%, CaO 0.35%, Al2O3 1.9%, Ni (all) 0.11% です。酸素で帳尻を合わせてやります。ここから、重量で 10% の Mg2SiO4 の結晶が落ちます。

その分を引いて規格化して、元素ごとに残りのガラスの重量百分率を出しますと、Si 25.0%, Mg 19.1%, Fe 7.2%, Ca 0.28%, Al 1.1%, O 47.1% になります。こういうガラスがスラグAから 90% の重量百分率でできます。

50℃/secの冷却速度で冷やしたスラグAは、10% の苦土カンラン石 Mg2SiO4 と、90% のガラスです。ガラスの部分は、非晶質の二酸化ケイ素 (SiO2)、結晶質の二酸化ケイ素(石英、クリストバライト)の物質は一切含まれていません。これもまた単なるガラスです。

先の論文には、そういうことが書いてあるのです。フェロニッケルのスラグを水砕しても、シリカガラスも、結晶質シリカもできませんよ、と。

だから、フェロニッケルスラグの中の物質の二酸化ケイ素について考えても、意味がないんです。入ってないんですから。

(承前)一番右はケイ酸ナトリウム(水ガラス)ですが、Naイオンをマグネシウムに置き換えて考えてみてください。フェロニッケルのスラグは一番右のようなものであって、左でも真ん中でもないのです。

なので、シリカを悪者にしても、このフェロニッケルのスラグの場合はホントに頓珍漢な話なのです。
  


Posted by 松田まゆみ at 11:47Comments(0)環境問題

2015年10月15日

黒木睦子さんの裁判の判決について思うこと

 昨日10月14日に、(株)日向製錬所と(有)サンアイが黒木睦子さんを訴えた裁判の判決が出た。いつものようにイワシさんと大谷さんがその報告をして下さっている。それらの報告をもとに、今回の裁判についての感想を書きとめておきたい。まず、お二人の報告は以下。

宮崎地方裁判所延岡支部10月14日判決言渡

平成26年(ワ)第86号、第89号損害賠償請求等事件 判決書概要

 この裁判は黒木睦子さんがブログやツイッターに書いた記述が名誉毀損に当たるかどうか、原告企業に対する抗議行動が業務妨害に当たるかどうかを問われた裁判である。そして結論から言うなら、名誉毀損を認め、被告にブログの文言の一部の削除と損害賠償(72万5千円)の支払いを命じるという判決であった。名誉毀損は認めらたが、業務妨害は認められていない。つまり、原告の全面勝訴とは言えない。

 名誉毀損に関しての最大の争点は、黒木さんが造成工事に用いられたフェロニッケルスラグは「有害なゴミ」と書いたことの真実性だと私は認識している。企業側は「無害な製品」と主張して「有害なゴミ」であることを否定していた。したがって、間接的には産廃問題であり環境問題でもあった。しかし、不可解なことに裁判所は有害性には着目したものの「ゴミ」、すなわち産業廃棄物と書いたことについては判断していないようだ。ということは、裁判所はゴミ(産廃)であることを認めたということなのだろうか? いずれにしても、造成に用いたフェロニッケルスラグが「有害である」とか「健康被害が生じた」ということをネットで書いたりその他の方法で流布してはなららない、というのが裁判所の結論である。

 さて、私がお二人の報告を読んで最も疑問に思ったのは、裁判所が黒木さんの提出した沈殿池の水質検査結果(計量証明書)について、「第3者の立会いがなく、場所を示す写真もない」「対象試料が沈殿池から採取した水であると認めるに足りない」という判断をしたことだ。それに対し、「県や市の公共機関が『公益財団法人・環境科学協会』に依頼した検査は、企画・試料採取時・検査時・結果の公表まで各検査の信用度が高い」「原告日向製錬所が東洋環境分析センターに依頼した検査は、公共機関による検査と同様の結果を示しており、正確性・信用性を担保するものといえる」としていることである。(引用はイワシさんの報告より)

 この判断はとても納得いかない。そもそも、このような検査では検査試料は採取した者が持ち込むのが普通だ。つまり自己申告である。ところが、裁判所のような判断をしてしまえば、採取時の写真がなく立会人がいない一市民からの持ち込み試料はすべて疑わしいということになりかねない。しかし、実際にはそのような持ち込み試料など多数存在するだろう。

 福島の原発事故により、日本は広範囲にわたって放射能に汚染された。その汚染を調べるために市民が土壌を採取して検査機関に送り、土壌汚染の一覧やマップなども公開された。裁判所の考えに従うのなら、市民が採取した土壌試料で採取時に写真や立会人がいない場合は検査結果が「信用ならない」ということになりかねない。市民による調査を否定することに繋がる。

 また県や市などの公共機関が実施した検査の方が信用度が高いというが、その根拠は何によるのだろう? たとえば、福島の原発事故では空間線量を計測するために公共機関が線量計を設置したが、その数値が実際より低くなるように設定されていたとか、モニタリングポストの周辺が除染されていたという情報がある。公共機関の実施する検査なら信用できるというわけではない。

 常識的に考えても、一市民があのように高濃度に汚染された水をどうやって入手できるのかという疑問がある。たとえば鉱山跡などでは重金属に汚染された水が出てくるが、そのような場所は普通立入禁止になっている。黒木さんの検査結果で検出されているセレンは極めて限られたところにしか存在しないとされる。判決では、そういう視点が全く欠けている。

 黒木さんの提出した計量証明書は、黒木さんが有害と信じた根拠として極めて重要な証拠だった。計量証明書が証拠採用されていれば、黒木さんが有害と信じるに足る根拠となり、名誉毀損が成立しないことにもなり得た。それを、このような理由で退けてしまったことは不当としか思えない。

 スラグ粉じんによる健康被害についても証明されなかったとしているが、粉じんの吸引で咳などの健康被害が生じることは一般に知られており、それを何ら考慮していないようだ。もっとも、これは黒木さんが積極的に立証すべきことではあった。

 ただ、今回の裁判では黒木さんが弁護士をつけなかったばかりか、名誉毀損裁判において立証責任が被告にあることを理解せず、逆に原告に説明責任があると勘違いしたまま自己流で裁判を進めてしまった。このために黒木さんは自らの立証を怠ってしまったのも確かだろう。こうした黒木さんの勘違いが判決に大きな影響を与えたことは否めない。もし、弁護士をつけていたなら、このような初歩的なミスを犯すことはあり得なかっただろう。また、ネット上には黒木さんに有利な情報を提供しているサイトが複数あった。黒木さんがこれらを活用しなかったのは本当に残念である。

 名誉毀損が認定された理由として「本件ブログ投稿及び本件ツイッター投稿が誰でも自由に閲覧することができ、かつ、拡散性の高いインターネットという媒体に1年6か月弱にわたり掲載され続けていること、断定的表現を用いて繰り返し投稿がされていることなど」としている(大谷さんの報告から引用)。つまり、疑惑や推測でしかないことに関して断定的な表現をすると名誉毀損になりかねないということが示された。これは、ネットで表現活動をしている人は気をつけねばならないことだろう。

 黒木さんにとってはかなり厳しい判決だし、納得していないに違いない。私も部分的には不当な判決ではないかと感じている。この判決を受けて、黒木さんが控訴するかどうかは分からないが、もし控訴するのであれば、彼女が1審で繰り広げた自己流の闘い方を全面的に改めなければならないと思う。

 また、黒木さんは弁護士をつけなかったが、弁護士を付けて勝訴したとしても相当額の弁護士費用が発生しただろう。今回は業務妨害についての訴えは退けられた。それを考慮して控訴しないというのもひとつの選択肢ではあると思う。
  


Posted by 松田まゆみ at 10:44Comments(8)環境問題

2015年09月02日

黒木さんの水質検査で確認された有害物質は何に起因するのか? その2

 この記事は、こちらの記事の続きである。

 京都に行っている間、Super-Kさんがブログを更新された。以下の記事だ。

日向製錬所跡地の汚染と日向市で黒木さんが検出した汚染物質

 この記事では、ある方が情報開示請求で入手した資料をもとに、日向製錬所の跡地における地下水汚染のことを取り上げている。ここに重要なことが書かれている。以下にその部分を引用する。

更に(株)日向製錬所は裁判の中で、黒木さんが提出した有害物質による汚染を示すデーターにはグリーンサンドに含まれない成分があると言っていますが、本当にそうでしょうか?

前に、ダストと言う言葉も気になっていると書きましたが、こちらの報告書には、ニッケル製錬所の金属炉のヒューム等を高温でニッケル酸化物にする時に発生するヒュームに、セレン、テルル、ヒ素、カドミウム、鉛が含まれるとあります。

ヒュームとは粉塵や煙、蒸気の事ですからダストともつながりそうで、他にもロータリーキルンから発生するロータリーキルンダストという物もあります。

もちろんこれらから有害物質を除去する作業も行われてはいるんでしょうけど
グリーンサンドを精製する環境にこれらの有害物質は存在していると言う事です。

また、フェロニッケルスラグを水砕する時に使用する水も工業用水として、構内で循環使用しているという事ですが、どこかで洗浄が必要な訳で

下の図は汚染土壌を洗浄し排水を循環使用する時の例ですが

恐らく似た様な設備は(株)日向製錬所にもあるのだろうと思われるのですが、以前このブログに頂いた「沈殿汚泥の不法投棄かもしれない」というコメントは、この辺りの事を言っている訳です。

ツイッターでも、このシックナーから出る汚泥(図で言う脱水ケーキ)の処理がどうなっているか?と言及されていて、既に開示請求が出されているかも知れませんね。

 この説明から分かるように、黒木さんの水質検査で検出されているセレン、ヒ素、カドミウム、鉛などの有害物質は、日向製錬所に存在していると言えるだろう。

 Wikipediaの「鉱山」の「鉱害」の項には、「採掘・選鉱・製錬などの工程で発生した排水には重金属などが含まれている事から、そのまま河川に放流することはできない。このため、沈殿池などを設置し、石灰などの薬品で浄化し、重金属や有害物質を除去して河川に排水する。」という記述があり、製錬の工程で発生した重金属や有害物質を含む排水処理の際に、石灰を使っている可能性がある。もし日向製錬所で石灰による有害物質の除去が行われているとしたら、この有害物質を含む石灰の化合物はどう処理されているのかという疑問が生じる。

 それからもう一つ、よしおかさんの記事を紹介したい。

グリーンサンドには含まれないと言うフッ素やセレン等はH製錬所で使っている石炭からか? 

 よしおかさんによると、フェロニッケルの製造工程で使われる石炭の石炭灰には、ヒ素、セレン、六価クロム、フッ素、ホウ素が含まれているとのことで、これらの物質も黒木さんの水質検査で確認されている。

 こうしたことから、黒木さんの水質検査によって確認された有害物質は日向製錬所に由来するのではないかと考えるのは極めて自然だ。製錬の際に発生する有害物質の処理はどうなっているのだろうか? 有害物質の不法投棄はなかったのだろうか?

 ところで、Sper-Kさんも取り上げているが、川の白濁に関して黒木さんは以下のようにツイートで説明している。

https://twitter.com/mutsukuroki/status/632712307185872896?ref_src=twsrc%5Etfw
@HyuugaNanasi 白く濁った川の写真は、つぎの通り証拠説明書で提出済みです。 →『雨の日も工事を行っており、ダンプの行き来で道路にこぼれ、まきちらされたゴミをサンアイ従業員が ほうきで掃いて清掃するが掃いたものを拾い上げて処理することはせず、側溝側に寄せていた。(続く

https://twitter.com/mutsukuroki/status/632714828365234176?ref_src=twsrc%5Etfw
@HyuugaNanasi  寄せていたゴミが雨にうたれ溶出され、そこから白く濁った色の水が流れだしており 下流域に続いていた。」という状況でした。ですから、あれが石灰なのかは知りません。言えることはサンアイ従業員が掃いて積んだグリーンサンドのゴミから流れ出していたという事です。

 つまり、造成工事の際に道路にこぼれ落ちたスラグが作業員によって道路わきに掃いて寄せられており、雨の日にはそのスラグから白く濁った水が流れ出ていたという状況のようだ。とすると、スラグに白濁の原因となる物質が含まれていたのではないかと推測できる。

 そこで気になるのが、日向製錬所の北側にあるスラグの山である。航空写真で見ると、日向製錬所の北側にスラグの堆積場があり、その山のちょうど稜線のあたりが、まるで雪をかぶったように白くなっている。


 これを拡大してみると、白い物質がスラグの山の上に積まれているのが見て取れる。そしてその一部は雪崩のように崩れ落ちているのが分かる。この白い物質は一体何なのだろう? 崩れ落ち方から見るなら、さらさらの粉状の物質というより、粘性のある物質が固まったもののように感じられる。そして、この白い物質の左端の部分を見ると、その白い物質はスラグと共にダンプで運ばれているように見える。


 もし強度を上げるためにスラグに石灰を混入しているのであれば、石灰がスラグに均一に混ざるようにするのではなかろうか? しかし、この写真では均一に混ぜ込んでいるようには思えない。有害物質の処理で発生した石灰化合物をスラグと一緒に造成地に運んでいるという可能性はないだろうか? もしそのようなものが造成地に持ち込まれたなら、沈殿池から高濃度の有害物質が検出されることもあり得るのではなかろうか。

 フェロニッケルスラグそのものからは容易に有害物質が溶出されないとしても、スラグに混じて有害物質が不法投棄されているとしたなら、将来的には地下水を汚染する可能性があり、それはそれで大問題である。

 裁判とは別に、黒木さんの確認した汚染の原因を解明しない限り、日向のスラグ問題は解決しないだろう。
  


Posted by 松田まゆみ at 17:10Comments(0)環境問題

2015年08月11日

言いがかりとしか思えないIWJへの削除要請

 日向製錬所とサンアイが黒木睦子さんを名誉毀損および業務妨害で提訴した件で、木星通信(主宰 上田まみ氏)と市民メディア宮崎CMM(主宰 大谷憲史氏)が、IWJの記事に関して削除を求めている。これについて私の意見を以下に述べたい。

 削除を求められているIWJの記事は以下。
宮崎県日向市在住の主婦をめぐる裁判はSLAPPなのか?! ~黒木無ル湖さんと日向製錬所を直接取材(前編)

宮崎県日向市在住の主婦をめぐる裁判はSLAPPなのか?! ~黒木無ル湖さんと日向製錬所を直接取材(後編)

【木星通信の申入書の事実誤認】
 以下は木星通信の申入書。

日向製錬所が提訴した黒木睦子さんへの記事について。IWJへの申入書

 木星通信はIWJの記事では二つの事実無根の主張がなされていると指摘している。その二つとは以下である(申入書より引用)。

①被告はIWJの取材に対して「原告企業が工事に使ったグリーンサンド」によって家族に健康被害が出たと企業や行政に訴え続けてきた。」として被告の家族の健康被害、および水質汚染被害を示し、IWJも記事化しました。

②また被告は工事現場から粉塵被害以外にも重大な環境汚染が発生してると主張してその汚染値を示し、IWJもそれを掲載しました。

 上田氏はこれらについて以下のように主張している。

①は被告の子供の診断書が出されましたが、咳の原因は「マイコプラズマ肺炎」でした。微生物(ばい菌)による感染症で人工由来の被害ではなかったのです。

②は裁判所に『宮崎環境科学協会』が計量した汚染値の計量証明書が出されましたが、それは当該被告が主張する工事現場から採取したものだとする証明はなされませんでした。

 しかし、上田氏のこれらの主張こそ事実誤認だ。その理由を以下に述べたい。

①について。
 黒木さんが子どものマイコプラズマ肺炎の診断書を提出したのは事実だ。しかし、それをもって、スラグ粉じんによる咳がなかったという証拠にはならない。この場合1スラグ粉じんによる咳とマイコプラズマ肺炎による咳の両方があった。2スラグ粉じんによる咳だけであり、マイコプラズマ肺炎は誤診であった。3スラグ粉じんによる咳はなく、マイコプラズマ肺炎で咳が出た。という三つの可能性が考えられる。しかし、上田氏はそのうちの一つをのみ取り上げて、健康被害はなかったからIWJの記事は事実誤認だと主張しているのだ。論理性のない主張である。

 黒木さんはIWJの取材に対し「私も含めて咳が止まらない。子どもは今でも具合が悪い。病院へ言っても『風邪』と診断されるだけです」と答えており、子どもだけが咳を出していたわけではないようだ。また、「風が強い時などは、ぱーっと降ってきて、白いものが舞い上がっているのが目で見て分かる。そういう時は咳が出て止まらなくなるので、日向製錬所に、住民説明会を求めました」と答えている。咳の原因が粉じんであると考えるのは自然だ。

 以下の記事にもあるように、鉄鋼スラグにおいては住民に粉塵・臭気による健康被害が生じたという事例があり、粉じんが咳などの健康被害を生じさせる可能性は十分にある。

鉄鋼スラグ問題とは何か

②について
 黒木さんは第一工区の沈殿池から水を採取して宮崎県環境科学協会に検査を依頼しており、計量証明書が裁判に提出されている。それに対して原告は、その水が第一工区の沈殿池から採取されたという証明がなされなかったと主張をしている。つまり、別の場所から採取した可能性があると言っているのだ。しかし、あのような汚染された水が採取できる場所を具体的に示しているわけではない。

 原告の言うように、黒木さんが第一工区の沈殿池から採取したということを証明する客観的な証拠はない。しかし、証明できないことをもって第一工区の沈殿池で採取した水ではないと結論づけることができないのは自明である。そして、黒木さんが検査機関に持ち込んだ水から環境基準を超える汚染が確認されたのは事実である。

 上田氏は「行政や支援者が当該地の汚染値を計っても汚染値は検出されませんでした。被告は今も重金属に汚染された水が垂れ流しだとTwitterで訴えていますが、日向JA 延岡JAに確認してみても公害被害は一切確認できませんでした」と主張している。

 黒木さんがツイッターで「今も重金属に汚染された水が垂れ流しになっている」と書いているのは事実だ。しかし、黒木さんはそれによって現在公害が発生しているなどとは言っていない。将来、発生するかもしれないので責任をとってほしいと主張しているのだ。

 黒木さんのツイッターでの「今も重金属に汚染された水が垂れ流しになっている」という主張が嘘であり風評被害を生むというのなら、それは黒木さんに伝えるべきことであり、IWJに対して言うことではないだろう。

 上田氏による削除の申入れは、上田氏の一方的な解釈に基づいたものであり、単に自分の意見を押しつけているだけだ。事実誤認はIWJの記事ではなく、上田氏の申入書の方だろう。

 なお黒木さんは水質検査の件に関しIWJの取材で「私たちがもらったというのは有害という報告だった。県はその報告書のコピーをもっていると思いますが、それでも何もしない。自分たちが無害だからといって、何で結果が違うのだろうかと考えてくれない」と言っている。黒木さんから検査結果を渡されたなら、県や市はすぐにでも現場に行って水を採取して検査すべきだし、有害となった原因について究明する努力をすべきだ。ところが、市が沈殿池の水を採取したのは2カ月以上も経ってからだ。これだけの間隔が開いてしまえば、汚染を隠すために対策を講じることも可能である。

 記者ならこのような点について追及してもらいたいものだ。

【市民メディアみやざきCMMの削除要請の不当性】
 大谷憲史氏の削除要請キャンペーンの方も言語道断である。大谷氏の削除要請の理由が釈然としないのだが、ひとつは「記事の一断片だけで記事を掲載することをやめてほしい」ということであり、もうひとつは名誉毀損および営業妨害にかかる損害賠償請求裁判なので「SLAPPなのか?!」という記事のタイトルが誤解を生むという主張のようである。

 つまり事実誤認を指摘しているわけでも権利侵害を指摘しているわけでもない。またIWJはスラップだと断定しているわけではなく、単に疑問を呈しているだけだ。裁判の当事者でもない者が、そんなことを理由に削除を求めるキャンペーンを行うというのは言いがかりとしか思えず、言論の自由の侵害である。

 なお、私は、この裁判がスラップである可能性が高いと思っている。もし埋立に用いたスラグが産廃であるなら、日向製錬所は嘘を言って黒木さんの記事を削除させようとしたということになり、紛れもなくスラップだろう。宮崎県は産廃であるか否かを判断した理由を黒塗りにしていることからも、産廃ではないかという疑惑を持たれても仕方ない状況である。

 上田氏にしても、大谷氏にしてもおよそジャーナリズムに関わる者の言動とは思えない。お二人には以下のフランスの哲学者ヴォルテールの名言を贈りたい。

私はあなたの意見には反対だ、たがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る

  


Posted by 松田まゆみ at 16:35Comments(0)環境問題

2015年08月02日

宮崎県によるグリーンサンドの廃棄物該当性の判断理由はなぜか黒塗り

 昨日(2015年8月1日)に、重要な情報が公開された。ある方が宮崎県に開示請求をしていた「グリーンサンド造成工事における廃棄物該当性の検討について」という文書である。つまり、平成25年3月29日の環境省の指針に基づいて、日向市の土地造成工事に資材として用いられたグリーンサンド(フェロニッケルスラグのリサイクル製品)が廃棄物であるかどうか宮崎県が検討した資料だ。以下のサイトに掲載されている。

住友金属鉱山子会社の日向製錬所から排出されるグリーンサンドの廃棄物の該当性について、廃棄物とには当たらない理由がまっ黒です。やっぱり廃棄物? (心は丸く 気は長くのブログ)


 公開された公文書では、運搬会社の社名や所在地、造成工事の流れ、グリーンサンドの売買代金など重要な項目がすべて黒塗りになっている。また、「本件造成工事に係るグリーンサンドの廃棄物該当性」の項目では肝心の判断理由がすべて黒塗りだ。そして、総合判断の項で「総合劇に判断して、現時点で、造成工事に使用されるグリーンサンドが廃棄物に該当するとはいえない」という結論の部分だけは黒塗りになっていない。

 この開示請求は平成27年5月20日付けで申請がなされ、本来は6月3日までに開示の決定がなされなければならないのだが、「開示請求に関わる公文書に第三者に関する情報が記載され、第13条第1項又は第2項の規定により第三者に対し意見書提出の機会を与える必要があるため」との理由で、7月2日まで開示決定が延長された。

 第三者とは誰なのだろう? 考えられるのは日向製錬所と運搬会社のサンアイだろう。実際、運搬会社の名前や住所などは黒塗りにされている。しかし、不思議なのは、造成工事の流れや売買代金の項目まで黒塗りにしていることだ。ここに第三者の情報があるのならその部分だけを黒塗りにすればいいのだが、すべて黒塗りなのだ。

 廃棄物該当性の判断理由も同様に、ここに書かれていることすべてが第三者の情報というわけではないだろう。しかしなぜかすべて黒塗りになっている。理由の部分がまったく開示されないというのは、不可解を通り越して不当としかいいようがない。廃棄物と判断すべきところを、無理矢理廃棄物ではないとこじつけたのではないかと疑われても仕方ないだろう。ここまで情報を隠蔽するなら、なんでも「廃棄物ではない」とすることができるのではないか。

 どうやら、黒塗り部分を明らかにして、宮崎県の判断が妥当なものかどうかを第三者が検討する必要がありそうだ。

 黒塗りが不当だと思う場合は、異議申立をすることができる。異議申立を行うと審査が行われ、開示が決定されることもある。決定まで時間がかかるが、開示請求をした方には、ぜひこの手続きをしてほしいと思う。

 ただし、異議申立をしても開示されないことは多く、それでも開示を求める場合は裁判をしなければならない。私の知人で本人訴訟で裁判を行い、開示を勝ち取った事例がある。つまり、情報公開には不当な非開示(黒塗り)があるというのが実態だ。

     


Posted by 松田まゆみ at 11:48Comments(0)環境問題

2015年07月25日

フェロニッケルスラグによる埋立造成は日向市の条例に抵触しないのか?

 日向市の西川内地区の里山で、フェロニッケルスラグを用いて谷を埋める造成工事が行われたが、この工事では「日向市の環境と自然を守る条例」に基づいて土地開発行為の届出がなされており、日向市長は付帯事項をつけたうえで届出を受理している。届出書および受理の通知はこちらこちらを参照していただきたい。

 この届出書には、「事業計画書、行為の平面図、断面図、給排水施設計画図、行為地付近の地形図及び天然色写真、植生の復元計画書、その他市長が必要と認める書類を添付するものとする」と書かれており、届出といっても審査がなされた上で受理するか否かが決定されると理解できる。たとえば住所変更届などのように届出がそのまま受理されるという訳ではなく、不備があったら受理されないこともあり得ると考えられる。また、第21条第1項、第27条第1項若しくは第34条第1項の規定による届出をしなかったり、虚偽の届出をした者は5万円以下の罰金に処するとなっている。罰則規定もある重要な手続きである。

 受理の通知の付帯事項には以下の条件が書かれている。

1.土地開発行為については、「日向市の環境と自然を守る条例」を遵守するとともに、土地開発行為に関わる工事期間及び工事完了後について、当該土地周辺の環境保全対策については適切に対応すること。

2.土地開発行為に関わる土砂や資材等の運搬経路の図面を提出するとともに、運搬経路の市道については、原因者において定期的な清掃を実施するなど、機能の維持に努めること。なお、開発行為以前の市道の損傷個所については、事業者で調査後、建設課と事前に協議することとし、開発行為により損傷した場合については事業者の責務において原形復旧を行うこと。また、開発行為地に隣接する里道の機能の維持に努めること。

3.工事期間中は、公道等への出入りを含め、地域への安全対策を十分配慮すること。

4.開発行為により盛土した法面等が災害等で崩れたとしても、災害復旧事業の対象とならないため、申請者の責任において原形復旧等の解決を図ること。

5.土地開発行為に伴う区域内からの排水及び土石については、下流域の影響を及ぼさないよう、排水構造物等の適切な維持管理を行うこととし、区域外流出におけるトラブルは、当事者間で解決すること。

6.周辺土地所有者との同意形成の努力を今後も続け、施工中、施工後のトラブルについては、当事者間で解決すること。

 では西川内地区の開発行為は果たして「日向市の環境と自然を守る条例」条例を遵守しているのだろうか?

 この条例では(工事施工者の責務)および(事業者の努力義務)(公害の防止)として以下の定めがある。

(工事施工者の責務)
第7条 土木工事、建築工事その他の工事を行う者は、その工事に際し、土砂、廃材、資材等が道路その他の公共の場所に飛散し、脱落し、流出し、又は堆積しないようこれらの物を適正に管理しなければならない。
(事業者の努力義務)
第8条 事業者は、法令及びこの条例に違反しない場合においても、良好な環境の侵害を防止するため、最大限の努力をするとともに、その事業活動による公害等に係る紛争が生じたときは、誠意をもってその解決にあたらなければならない。
(公害の防止)
第9条 何人も、法令及びこの条例に違反しない場合においても、悪臭、騒音その他の公害の発生により近隣の生活環境を妨げないよう努めなければならない。

 黒木さんは、スラグの粉じんによって咳が出たと主張している。つまり、事業者は工事にあたって粉じん公害の対策を十分に行っていなかった可能性が高い。条例を守るなら、事業者は工事施工者の責務に従って、粉じん飛散防止の措置をとらなければならない。

 また、黒木さんは第一工区の沈殿池の水質検査を行い、重金属などによる高濃度の汚染を確認している。そして沈殿池は排水パイプによって河川につながっている。したがって、事業者はこれらのことに関して黒木さんに誠意をもって対応しなければならないはずだ。しかし、そのような対応をしたという情報はない。事業者の対応は、条例違反になるのではなかろうか?

 条例には(公害対策の推進)として以下の定めがある。

(公害対策の推進)
第3条 市長は、公害の苦情、良好な環境の侵害に関する苦情及び公害に係る紛争が生じたときは、関係者と協力して迅速かつ適正な処理を図るとともにその公正な解決に努めるものとする。
(公害防止の指導及び援助)
第4条 市長は、公害が発生し、又は発生するおそれがあると認めるときは、公害を発生させ、又は発生させるおそれがある者に対し、公害の防止のため必要な措置を講ずるよう指導しなければならない。

 日向市は、黒木さんの水質検査結果を受けて沈殿池の水質検査を行った。しかし、それは黒木さんが水質検査を行った7月下旬から2カ月以上も経過した10月10日のことだ。沈殿池の水の採取なら黒木さんの苦情を受けた翌日にもできることだが、なぜ2カ月以上も放置したのだろう? とても迅速かつ適正な対応とは言えない。

 また、黒木さんの検査で有害と出たことが原因で紛争になったのだから、日向市は「関係者と協力して迅速かつ適正な処理を図るとともにその公正な解決に努め」なければならない。黒木さんの検査と日向市の検査は検査機関が同じなのだから、日向市は検査機関に問い合わせたり、専門家の意見を聞いて原因の究明に努める責務がある。

 しかし、日向市がそのような対応をした事実は見当たらない。果たして、これで事業者や日向市長は条例を遵守していると言えるのだろうか?

 なお、この条例には(処理困難な製品の回収義務)という項目もある。

(処理困難な製品の回収義務)
第15条 廃棄物となった際、適正な処理が困難な製品及び容器(以下「製品等」という。)を製造し、加工し、又は販売する事業者は、その製品等若しくは廃棄物を引取り、下取り等の方法によりその責任において回収しなければならない。

 つまり、造成につかったフェロニッケルスラグがもし廃棄物であるということが明確になれば、日向製錬所は埋めたスラグを回収しなければならないと解釈できる。宮崎県は造成に用いたものはグリーンサンドという製品であると判断しているようだが、製品であろうとなかろうと、埋立資材に廃棄物が含まれると判断された場合は、事業者は条例に基づいて撤去しなければならないのではなかろうか。黒木さんの「責任のとれないものは片づけてください」という主張は、実にまっとうなものだと思う。

 それと、もう一つ、「日向製錬所残渣による造成工事と訴訟の経緯。ご意見募集」という記事によると、西川内地区の造成工事に関しては、「騒音規制法及び振動規制法に規定する特定建設作業届出」、「建設リサイクル法に基づく届出」および「土壌汚染対策法第4条に基づく届出」も出されていないようだ。

 冒頭に示した「土地開発行為届出書」の備考欄の4(2)には「他の法令の規定による当該行為が行政庁の許可、認可その他の処分又は届出を必要とするものであるときは、その旨を記載すること」という記述がある。したがって、事業者は上記の届出について備考欄に記入する必要があるのだが、記入されていない。届出を出していないようなので記載がないのは当然といえば当然なのだが、日向市はこのような不備のある届出を受理しているのである。

 このように法令を遵守しない事業者の届出を受理した日向市にも、責任の一端があるのではなかろうか。

 いずれにしても、西川内地区の造成に関してはさまざまな法律違反があるように思われる。
  


Posted by 松田まゆみ at 17:26Comments(2)環境問題

2015年07月18日

黒木睦子さんの本人尋問で見えてきたこと

 (株)日向製錬所と(有)サンアイが黒木睦子さんを名誉毀損と業務妨害で訴えた裁判の証人尋問(本人尋問)が7月15日に行われた。いつものように、イワシさんと大谷さんが裁判の報告をアップしている。お二人の報告を合わせることで、傍聴していなくても尋問の様子が伝わってくる。

黒木睦子への『尋問』7月15日第6回審理 (鰯の独白)

【Kファイル】7月15日裁判レポート (日刊Yon-go!Hin-go!)

 お二人の報告を読んで率直な感想を言うなら、黒木さんの主張は裁判当初からずっと一貫しているということだ。すなわち「日向製錬所スラグ裁判 第5回口頭弁論を終えての感想」にも書いたように、彼女はこれまでのサンアイと日向製錬所とのスラグをめぐる紛争がそのまま裁判に持ち込まれたと錯誤しており、裁判の争点も誤解しているし、名誉毀損裁判の立証責任は原告ではなく被告にあるという事実も理解していない。そのことが本人尋問でより一層はっきりとした。

 名誉毀損裁判でなければ、紛争の原因をつくったのは原告であり、安全であることの説明責任は原告にあるという彼女の主張はもっともだ。たとえばこの紛争が調停に持ち込まれたのであれば、彼女の主張は何の問題もない。しかし、姑息(私はそう思う)なことに、原告らは名誉毀損に打って出た。こうなると、彼女の考えているような紛争の続きにはならない。名誉毀損での立証責任は被告にあるからだ。裁判で紛争の続きをしたければ、黒木さんが原告らを訴えなければならない。

 しかし、黒木さんは最後までこのような名誉毀損裁判の争点やルールを理解しようとせず、自分流のやり方を貫いた。この態度は気持ちいいくらい一貫している。それが彼女の考える裁判なのだ。これは当事者がどう闘うかという問題だから、そのこと自体を批判するつもりはない。この裁判を「不思議」とか「不可解」と感じている人もいるようだが、彼女が勘違いをしていると考えるなら、不思議でも不可解でもない。

 そして、彼女流のやり方で終盤を迎えた裁判で明確になったのは、彼女の勘違いによって裁判所が求める論理的あるいは科学的な立証はほとんどなされなかったということだ。

 名誉毀損裁判で被告に立証責任があることは理不尽ではある。しかし、そういう決まりがある以上、がんばって証拠をかき集めて立証を試みるしかない。ただし、真実であると証明できなくても、「真実であると信じる相当の理由」(真実相当性)があれば名誉毀損は免責される。

 今回の本人尋問で、彼女は有害だと思う根拠について「一筆書いてくださいと言っても書いてくれないのでは安全ではありません」、「(成分証明書の結果を見てグリーンサンドが有害だと)決定的に思いました」と証言している(大谷さんのレポートより)。

 原告が本当に「無害な製品だから、将来にわたって健康被害が生じるようなことはあり得ない」と断言できるなら、一筆書くことは何の問題もないだろう。しかし、決して一筆書こうとしなかった。原告は「安全、安心な製品」であることを保証できないと言っているに等しい。そういう意味で、彼女の発言は決して間違いではない。裁判所がこの発言や水質検査結果を、「有害なゴミと信じるに足る相当な理由」に当たると判断する可能性がないわけではない。ここにかすかな希望がある。

 ネット上では、この裁判は産廃問題などではなく、黒木さんが嘘を言ってサンアイや製錬所に激しい抗議行動をしたのだから、モンスタークレーマーによる業務妨害の裁判だ、と主張する人たちがいる。しかし、裁判所は業務妨害についてはあまり重視しておらず、むしろ抗議することになった原因の方に目を向けていると感じられる。

 なぜなら、裁判官による尋問では抗議行動について質問していない。また、裁判長が最後に裁判の目的について確認した際、原告弁護士が「会社に押し掛けないことも求めている」との趣旨の発言をしたが、裁判長は「それは考慮要素として考えましょう」と答えた。つまり、裁判所は抗議行動による業務妨害についてはあくまでも副次的なものであり、抗議の原因となったスラグの有害性の立証こそ重視していると推測できる。

 ところで、私は日向製錬所の代理人弁護士による質問について指摘しておきたいことがある。イワシさんの報告によると、弁護士は「日向製錬所には約600人の社員、それにその家族、さらに関係者がいます。その人たちに迷惑がかかるかもしれないと考えたことはなかったですか?」と質問した。

 日向製錬所の従業員やその家族にかかる迷惑とは何であり、その責任の所在はどこにあるのだろう?

 黒木さんが嘘を広めているから従業員が迷惑しているというのならば、従業員は「安全で無害な製品」だと信じているということになる。本当にそうだろうか?

 黒木さんの義父は日向製錬所のOBだとされている。そのような方ですらスラグの安全性に疑問を感じ、地権者への直訴状に名を連ねているのである。元従業員もスラグが安全・安心ではないと感じている証だろう。さらに、日向製錬所でスラグを扱う者は防塵マスクをしているという。ならば、会社も従業員もスラグ粉じんが無害だとは思っていないのではないか?

 つまり第三者の目からも、従業員が「安全な製品」だと確信しているとは思えないし、むしろ安全性に疑問を抱いているのではなかろうか?

 もし従業員が黒木さんの告発は嘘ではないけれど、告発によって会社の経営に影響が出るから迷惑だと考えているのであれば、それは自己保身にすぎない。

 黒木さんの告発は企業経営者のモラルの問題であり、決して従業員やその家族に向けられたものではない。告発によって従業員やその家族が迷惑を被るとしたなら、その責任は間違いなく告発者ではなく企業にある。弁護士のこの質問は、従業員を持ち出すことで企業の責任問題を告発者にすり替えているに等しいと思う。

 さて、この裁判は本人尋問をもって終結した。このあともう一度口頭弁論が開かれて結審になり、そのあとに判決というのが一般的な民事訴訟の流れなのだが、裁判所は今までの経緯から考えてこれ以上口頭弁論を開いても意味がないと判断したのか、10月14日が判決と決まった。

 名誉毀損裁判で不可欠な論理的立証をほとんどしなかった以上、黒木さんにとって厳しい判決が下る可能性は高い。しかし、裁判所が業務妨害を重視していないのであれば、たとえ黒木さんが負けたとしても損害賠償金額はさほどの額にならないかもしれないし、ブログでの発言も部分的な削除や訂正に留まる可能性はある。また、「真実相当性」の判断に関しては裁判長の裁量がかなり関係してくると思うので、裁判官による公平な判断に望みを託し一貫した態度で臨んだ黒木流が功を奏するとしたなら、免責される可能性も残されているとは思う。

 ただし、私は被告が争点や立証責任について勘違いをして自分流を貫いたまま結審した裁判の判決に大きな意味があるとは思わない。意味があるのは、彼女がツイッターを利用してこの裁判を広めたことで、彼女に代わって埋め立てに用いられたスラグが産廃であるという立証を試みた人がいるということだろう。

 裁判が始まってから何人かの人たちがあのスラグは産廃の可能性が高いということをブログなどで具体的に検証してきた。たとえば「これどうなってんの?」のSuper-Kさん、「がんばらない、でも諦めない」のよしおかさん、「Dust n’ Bones 偽計のスラグ」のボーンズ88さんなど。とりわけよしおかさんの「宮崎県環境森林部循環社会推進課と環境省産廃110番にメールしてみた (グリーンサンドは?) 」という記事はまさにスラグが産廃であることを証拠を示して立証する記事だ。原告らはこの記事に戦々恐々としているに違いない。

 原告らが提訴し、そのことを黒木さんが拡散したからこそこのような立証が試みられた。つまり、今回の裁判は、産廃であるにも関わらず、名誉毀損を利用して告発者の口封じをしようとしたスラップである可能性が極めて高いと考えられるし、提訴が結果として企業イメージの低下につながったのは間違いないと思う。

 さらに裁判が始まると同時に黒木さんと彼女を応援する人たちを批判するツイッターアカウントが湧いてきた。私は、彼らの一連の発言から、間違いなくそのアカウントの大半が情報操作を目的としていると考えている。彼らの出現は、原告企業のイメージをさらに低下させただろう。

 そういう意味では、この裁判は実際の判決はともかくとして、実質的には被告の勝ちだといっても過言ではないと思う。

 今回の裁判は、日向製錬所から大量に排出されるフェロニッケルスラグの処理問題を社会に知らしめる契機になった。このスラグ問題は、決してこの裁判で終わったわけではない。
  


Posted by 松田まゆみ at 22:53Comments(0)環境問題

2015年07月01日

黒木さんの水質検査で確認された有害物質は何に起因するのか?

 黒木睦子さんが平成24年7月30日に、日向市西川内地区の第一工区と称される造成地の沈殿池の水を採取し検査機関に分析を依頼したところ、高濃度の有害物質が確認された。この検査結果は裁判の証拠として原本が提出されており、有害という結果が出たのは間違いないだろう。検出された有害物質は以下(単位はmg/l)。

カドミウム   0.0096
総水銀    0.0073
セレン     0.030
鉛       2.1
六価クロム  0.02
ヒ素      0.52
シアン     0.1未満
フッ素     20
ホウ素    0.23

 この水の採取に関して「別の場所から採取したのでは?」という意見もあるが、何ら証拠はなく、黒木さんがそのようなことをする理由も考えられない。また、このような汚染された水を一般市民が入手するのも困難だろう。黒木さんは採取時の様子も説明しており、第一工区の沈殿池から採取したと考えるのが妥当だ。

 ならば、いったいこの高濃度の汚染はいったい何に起因するのだろう?

 私は6月26日にこの件に関して以下のツイートをした。

https://twitter.com/onigumoobasan/status/614545946949488640
1 黒木さんの水質検査で有害とでた理由として考えられること。①スラグ微粉末を含む水をろ過せず検査した。②酸性雨によって沈殿池に飛来した微粉末から有害物質が溶けだした。③造成地に有害物質が不法投棄された(石灰で対処し川が白濁)。④酸性雨が積まれたスラグを浸透し有害物質が溶けだした。

https://twitter.com/onigumoobasan/status/614546095755034624
2 黒木さんが主張しているのは④だが、他の検査では有害と出ていないので、この可能性は一番低いのではないかと思う。もっとも、検査データや検査機関の人の説明、現場の状況などから黒木さんが「スラグを浸透した水が汚染されている」と考えるのは不思議ではない。

 上記ツイートの「①スラグ微粉末を含む水をろ過せず検査した」という説に関しては以下の記事に書いたが、よしおかさんの仮説を元にしたものだ。私はこれまでこの説が妥当ではないかと考えていた。

フェロニッケルスラグは有害なのか無害なのか? 

 そのほかに、「②酸性雨によって沈殿池に飛来した微粉末から有害物質が溶けだした」という可能性も考えられる。つまり沈殿池には雨水が溜まっていただろうから、酸性の雨水によって沈殿池に降り注いだスラグから有害物質が溶出したという可能性もある。これについてはOwlmanさんの6月17日の連続ツイートで触れられている。

https://twitter.com/nightowlfly00/status/610963803056947200

@mutsukurokiこれは県立図書館の分厚い金属辞典か鉱業辞典に専門家が書いてたことだが、 硫黄は時間が経つといろいろなものに変化する。イオン化したり酸化したり。 変化したある物質(正確な名前失念)が水に溶けると硫酸になる。

@mutsukuroki従って、製錬所では鉱滓をしばらくの間、貯蔵所に貯めといて、硫黄が硫酸になり鉱滓を溶かすことがないか、様子を見る。これをエイジングと呼ぶ。 硫酸になると黄色い水になるため、これは黄濁水問題として鉱毒原因として世界中で有名

@mutsukurokiネット記述では、製錬所は鉱滓中のフッ素を抜くために、エイジングを行う場合もあるらしい。 2002年頃鉱滓のフッ素規定が厳しくなり、製錬所が鉱滓のリサイクル利用を減らしたという記述もあった。(三浦万尚氏の指摘は正しい)

@mutsukurokiここから先は個人的推測だが、 鉱滓は空気や水に触れる環境中では、鉱滓中の硫黄が酸化したりイオン化したりして、その一部が硫酸原因となる物質になり、それが水に溶けて硫酸になり、鉱滓から重金属を溶かし出してしまうのでは?。

@mutsukuroki山中にそのまま事実上の投棄を行えば、地下水に触れ、将来的に長期間経過するうちに、硫黄の硫酸化と重金属溶け出しが地下で起こる場合があり得るが、埋立てしまえば、何が起きているのかわからなくなる。確認のしようがなくなるのだ。

@mutsukuroki自分的には、被害者が見つけた高濃度重金属汚染水は、山中に埋立途中で大量の雨水がかかり、鉱滓中の硫黄が水と大気でイオン化や酸化などを起こし、その結果、一部分が硫酸原因物質に変化し。それが水に溶けて硫酸となり、重金属を溶か

@mutsukurokiし出したように思われる。 或いは、製錬所で電気炉から出て来たすぐの鉱滓を、エイジングもしないまま、山中に埋立たのかもしれない。 無論、その場合は黄濁水問題が発生する確率は高くなるだろう。 以上2つの要因が重なったのかも

 酸性雨にスラグが長期間浸かることよってスラグから有害物質が溶出するかどうかも酸性溶媒による溶出試験で確認する必要があると思う。もっとも検査機関では定められた方法での検査しかしないだろうから、こうした試験はそう簡単にできないかもしれない。

 上記二つの仮説は、有害物質がフェロニッケルスラグに由来するという考え方だ。私はこれまで有害物質はスラグに由来するだろうと思い込んでいた。しかし、この思い込みのタガを外せば、有害物質がスラグに由来することに拘る必然性は何もないということになる。すなわち「③造成地に有害物質が不法投棄された」という説もあり得る。

 以前、左巻健男さんとツイッターでやりとりした際、左巻さんが「スラグ溶出と思えない成分などもあった」とツイートをしているのを思い出し、そのツイートを探してみた。以下。

https://twitter.com/samakitakeo/status/552097537083994112
@onigumoobasan 第三者も一緒に採取していないと厳しいですね。スラグ溶出と思えない成分などもあった気がします。その検査結果のもと報告書のコピーも示されていませんよね?

 フェロニッケルスラグには含まれない有害物質が検出されているのなら、スラグ埋め立てとは別に不法投棄があったと考えるほうが辻褄が合う。

 黒木さんは「フェロニッケルスラグ沈殿池の水質検査」というブログ記事で、水の採取をした際の状況を「私たちが水を汲みに行ったときは、水は黒く濁っており、下の方の状態は黒くて見えませんでした。吐き気がくるような異様な臭いもしてました・・・」と説明している。黒く濁り悪臭がするような水が存在したのなら、スラグ微粉末の混じった水をろ過せず検査したためだけではなく、水そのものに有害物質が溶け出ていたのかもしれない。

 造成地の下を流れる西川内川が石灰で白濁していた時期があったが、有害物質の処理のために石灰が投入されたという可能性も否定できない。もしこれが事実だとしたなら、事業者は不法投棄を知って対処したことになる。

 上記①、②、③が重なっている可能性も否定できない。

 現時点では黒木さんの検査で有害物質が検出された原因は全く解明されていない。①ないし②であればスラグは有害ということになるが、もし③の不法投棄があったのであれば、それはそれで重大な違法行為だ。どれも可能性の話しなのだが、有害物質が検出されている以上、その原因を解明することが必要だと思う。

 大量のスラグが積み上げられた造成地の下部にある沈殿池(しかも第一工区の沈殿池はコンクリートブロックで固められていない)の水から有害物質が高濃度で検出されたという状況から、私もはじめはスラグを浸透した水が有害物質を溶出させたのではないかと思った。黒木さんが同じように考えるのは無理もないし、彼女がそう確信した「真実相当性」が認められれば、有害という主張に関しては名誉毀損が免責される可能性はある。

 なお、香取ヒロシさんは、黒木さんはグリーンサンドの主成分であるシリカの発がん性について裁判で主張すべきだと言っている。

【追記あり】池の水は争点じゃない。衝撃の発がん性物質。(Come on by! 英語ガレージ! ☆☆☆)

 原告が求めているのはフェロニッケルスラグが有害であるということについての立証だから、水質検査結果とは別に、スラグ微粉末自体の有害性を主張することも意味があると私は思う。

*検出された有害物質について追加した。
  


Posted by 松田まゆみ at 12:02Comments(2)環境問題

2015年06月12日

日向製錬所スラグ裁判 第5回口頭弁論を終えての感想

 本日、(株)日向製錬所と(有)サンアイが黒木睦子さんを訴えた裁判の第5回口頭弁論があった。いつものように市民メディアみやざきの大谷憲史氏と鰯氏による傍聴記がアップされている。

【Kファイル】6月12日傍聴レポート


裁判とはなにか 6/12 宮崎地方裁判所延岡支部 第5回審理

 民事訴訟の口頭弁論は、意見陳述や証人尋問を除き、出された書面の確認や次回の期日などの打合せをするのがメインなので、重要なのは原告と被告の双方から出されている書面の中身だ。今回の口頭弁論までに出された書面に関しては大谷憲史氏が報告している(ただし、以前にも指摘したように口頭弁論前に書面内容を公開してしまうのは非常識だと思う)。

【Kファイル】6月11日裁判言関係資料閲覧レポート

 前回の口頭弁論で黒木さんは地権者を証人として呼びたいと発言していたのだが、実際に出した書面で求めた証人は何と原告である(株)日向製錬所の社長と、同じく原告の(有)サンアイの社長だ。私は昨日この大谷氏の報告記事を読んで、正直なところ頭がくらくらしてきた。

 証人は自分に有利な証言をしてくれる人に依頼する。この裁判で被告である黒木さんが立証しなければならないのは、埋め立てに用いたフェロニッケルスラグ(原告はグリーンサンドと主張)が産業廃棄物であり有害であるということ。あるいは抗議行動が業務妨害には当たらないということなど。彼女は準備書面でそれを主張した上で、自分の主張を裏付ける証言をしてくれる人に証人を依頼する必要がある。

 たとえば、産廃問題に取り組んできた専門家とか、粉じんの吸引が咳の原因になることを証言してくれる専門家などだ。ところが黒木さんが求めた証人は、埋めたフェロニッケルスラグは産廃ではなく無害だと主張している原告そのものである。「産廃ではない」「無害である」と主張している原告が「産廃である」「有害である」という証言をするはずがない。いったいなぜ、原告を証人として選んだのだろう?

 尋問事項を見てその理由が分かった。黒木さんが日向製錬所の社長に対して求めているのは「被害が出たときの責任の所在」についての説明であり、訴訟を起こした理由である。一方、サンアイ社長に求めているのは、土地造成にあたっての土地の選定や経緯だ。

 日向製錬所の社長に対する尋問は、立証趣旨と食い違っているのだが、責任の所在というのは黒木さんがこの問題でずっと訴えてきたことだった。サンアイ社長に対する尋問も、おそらくこれまでのサンアイや地権者との紛争に関わることだろう。それを裁判の場で証言させたい、つまりはこれまでの両社との紛争の決着を裁判での証人尋問で行いたいというのが黒木さんの意向だったのだろう。

 しかし、この裁判はこれまでの紛争の続きではない。名誉毀損に関しては、黒木さんは自分がブログやツイッターに書いたことが事実であるという立証をしなければならない。業務妨害に関しても抗議行動が損害を与えていないということを主張しなければならない。どうも黒木さんにはこれまでの紛争の続きを裁判でできるものと勘違いをしているようだ。そう考えると、これまでの彼女の書面での主張も理解できる。

 結局、今日の口頭弁論で裁判長は黒木さんの証人に関する申立書を採用しないことを決定した。最終的に証人の採用の可否を決めるのは裁判所だから、この決定は致し方ない。原告を自分の証人として申請してしまったのだから、当然といえば当然だと思う。

 どう考えても黒木さんがやるべき立証をせず、勘違いをしたまま裁判が進んでいる。黒木さんは今回、原告から反論が出されなかったことも納得いかなかったようだが、裁判の争点と関係のない説明を相手に求めたのなら反論がなくても当然である。

 おそらく彼女は「紛争の続きを裁判で決着させる」という思い込みによって裁判を闘ってきたがゆえに、裁判長の判断に納得がいかないのだろう。黒木さんにとってはとても厳しい状況になってしまったが、自分の納得するやり方を貫くというのが彼女の強い信念なのだろうから、第三者はどうすることもできない。

 断っておくが、私は黒木さんがブログで書いてきたことが間違っているとは思っていない。彼女は嘘を書く理由などないし、おそらく事実をそのまま書いたのだろう(一部に勘違いをしているところがあるのではないかとは思うが)。ただ、名誉毀損が免責されるためには書いたことが事実であることを立証しなければならないのだが、黒木さんは勘違いをしているがゆえに自分に立証責任があると考えておらず、逆に原告に説明責任があると考えているようだ。

 裁判で立証できないということをもって、彼女が書いたことが嘘であるという証明にはならないから「裁判の判決=真実」と単純には決めつけられない。でも、立証できなければ裁判には勝てない。

 そして裁判の結果がどうであろうと、彼女のブログ記事は、フェロニッケルスラグのリサイクル偽装疑惑や、行政と事業者の癒着疑惑について重要な問題提起をしていることは間違いない。

 「日向ミナマタ水・土壌汚染・防災研究会」のブログ主は企業の違法行為を指摘しているが、それが事実なら刑事事件にも発展しかねない問題だ。もし造成に使われたフェロニッケルスラグが産廃であるということになれば、今までのようなスラグの埋め立てができなくなり、製錬所はその処理に膨大な費用が必要になるだろう。もちろん行政の責任も問われることになる。黒木さんのブログは、原告らにとって都合が悪いものでしかないだろう。

 裁判がはじまると同時に、ツイッターで彼女が嘘を言っているなどと騒ぎ、彼女を支持する人たちをよってたかって叩くアカウントが湧いてきたのもあまりに不自然であり、「いじめ」そのものである。少なくとも、黒木さんは裁判長から提出を求められた証拠書類はすべて出しており、それに関して嘘は言っていない。いったい何が嘘だというのだろう。

 そういう意味で、私は彼女を支持する立場であることに変わりはない。ただし彼女の信念(というか勘違い)は、他者が変えることはできない。
  


Posted by 松田まゆみ at 23:09Comments(0)環境問題