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2024年07月26日

生物多様性の消失と人類の未来

 このところ私のブログは昆虫の紹介ばかりになっている。散歩がてらに撮影した虫やクモをアップするのは単に私の趣味ということもあるが、身近なところに素晴らしい生物の世界があることを知ってもらいたいという想いもある。おそらく世の中の多くの人が虫嫌いではないかと思うのだが、さまざまな昆虫写真を紹介することで、少しでもその「嫌い」が取り除けるのなら嬉しいと思っている。

 私自身、子どもの頃から昆虫が好きだったけれど、虫採りの対象はチョウやトンボ、甲虫類が主だった。蛾は大嫌いというほどではないけれど、あまり興味は持てなかった。しかし、ここ数年、蛾の写真を撮るようになってから、蛾の世界に惹かれるようになった。夜行性のものが多く、地味で胴体が太くて何となく近寄りがたいというイメージはまさに思い込みでしかなかった。実際に蛾の写真を撮るようになり、非常に美しい色彩や斑紋を持ったもの、複雑で繊細な模様をしているものなど、決して地味な種ばかりではないことを知った。特に小蛾類は、金色や銀色の斑紋を持っているなど、小さいながら目を見張るような美しい蛾がいる。そして、蛾は実に種類が多い。その多様性にも惹かれる。もちろんそれは蛾に限ったことではなく、ハチやハエなどの小さな虫たちにも言える。

 ところが、私たち人類は生物の多様性を破壊しつづけている。私が学生の頃、登山のために大雪山の麓の愛山渓温泉に泊ったことがある。ここはチョウを採集する人たちには人気のスポットのようで、チョウの愛好家の学生が数人泊っており、夜に部屋に呼ばれて話し込んだことがある。彼ら曰く、ここでもチョウが減っていると言っていた。今から四十数年前のことだ。今はさらに減ってしまったに違いない。虫など何の興味もない人にとってはチョウが減っていることなど気づきもしないのだろうけれど、チョウに限らず多くの昆虫が知らず知らずのうちに減っている。もちろん、その減少には人が大きく関わっている。

【参考記事】
「昆虫は絶滅の危機に瀕している」ことがアマチュアグループの長期的調査のデータから明らかに

 虫などいなくなっても何の問題もない、などと思っている人もいるかもしれない。しかし、それはとんでもない間違いだ。生物は多様な種が複雑に関わり合いながら生態系をつくっている。もちろん、人類もその生態系の一員だ。自然破壊や環境汚染は生物が生きていく基盤を破壊することに他ならない。人が森林を伐採したり、湿原を埋め立てたり、海を汚染して自然を破壊してしまえば、生物の多様性は失われ、生態系のバランスが崩れることになる。農薬や化学物質などで激減した生物もいるだろう。いったい人類はどれほどの生物を激減させ絶滅に追い込んだのだろうかと思うと、背筋が寒くなる。

 生物多様性を損なうことを続けていれば、やがて人類の生存も脅かされることになるだろう。例えば、花粉を媒介する訪花性昆虫が減れば、野菜や果樹が実をつけなくなるかもしれない。農地の微生物は農薬や化学肥料の大量使用で減り、土壌が劣化している。レイチェル・カーソンが「沈黙の春」を著して農薬の使用に警鐘を鳴らしてから62年が経つが、彼女の警告が現実のものになりつつある。

 昆虫の減少の原因は自然破壊や農薬だけではない。近年は5Gの基地局の設置が日本全国で進められているが、5Gの電磁波も昆虫をはじめとした生物に悪影響を与えると言われている。LED照明も然り。もちろん人間の健康被害も懸念されている。

 一度絶滅してしまった生物は、蘇らせることはできない。そして、どんな生物種もあるべくしてこの世に存在している。今は分かっていなくても、私たちが生きていく上でなくてはならない生物もいるだろう。どれほどの時間をかけて進化したのか分からない尊い生き物たちを、人というたった一種の生物が次々と絶滅に追い込んでいるのだから、実に罪深い。多様な生物との共存を目指さなければ、人類の未来も危ういものになるだろうに。だからこそ、虫を見ただけで大騒ぎをし、殺虫剤を持って追いかけるようなことはやめてほしいと思う。

 農業も大規模化が進んだが、農薬と化学肥料に頼る農業は見直していかなければならないだろう。農薬も肥料も使わずに立派な野菜を育てている農家の人もいるのだから、国が本気でそのような農家を支援すれば、変えていくことは不可能ではない。人類は環境を破壊しすぎたし、汚染しすぎた。

 毎日のように小さな生き物の写真を撮りながら、こんなに多種多様な生物を生み出した地球の奇跡に驚嘆し、生物多様性の奥深さや重要さを噛みしめている。


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タグ :生物多様性

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Posted by 松田まゆみ at 13:35│Comments(0)生態系環境問題
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