さぽろぐ

日記・一般  |その他北海道

ログインヘルプ


鬼蜘蛛の網の片隅から › 生態系 › 絶滅はどうやって起きるのか?

2007年05月18日

絶滅はどうやって起きるのか?

絶滅はどうやって起きるのか?
 先週の土曜日は、様似町で開催された「第5回かたくりサミット」に行ってきました。「かたくりサミット」というのは、「かたくりの美しさ、大切さを通して自然環境を考え、人間どうしの交流を促進する」ことを目的として、2003年から開催されているものです。北海道でははじめての開催です。5月初旬から中旬といえば、様似町ではちょうどピンクのカタクリと白いオオバナノエンレイソウの花が咲き競っている季節なのです。

 今日は、このサミットで最も印象に残った「絶滅」についての話題です。

 北海道には各地にカタクリの群生地がありますが、様似町の群落もなかなか見事でした。北海道には小さな群生地はたくさんあります。あちこちに生育しているのだから簡単には絶滅などしないと思ってしまうかもしれません。でも、昔は今よりはるかにたくさんの生育地があったに違いありません。昔はカタクリの根から「片栗粉」を採ったくらいなのですから。だから、今残っている群生地は点々と取り残され細々と生き残っているものなのです。

 このように群生地が開発などによって小さな集団に分断されていくとどうなるのか、ということが問題なのです。カタクリはマルハナバチやヒメギフチョウによって花粉が運ばれ、種子をつけることができます。その種子にはエライオソームとよばれるアリの好物がついていて、アリが種子を運ぶのです。あのちっちゃなアリが運ぶのですから、分布を広げるのにもとても時間がかかるのです。

 ふだんはあまり気がつきませんが、多くの植物は昆虫と密接な関係を持っています。生育地が分散されて小さな集団になってしまうと、花粉を運ぶ昆虫があまり訪れなくなり、群落の遺伝的な多様性が失われてしまうことになります。実が結ばれなければ、子孫を残すことができなくなってしまうのです。

 知らない人は驚くかもしれませんが、林床に生育するカタクリやオオバナノエンレイソウなどは芽生えてから花をつけるまでに数年から十数年もかかるのです! 今、たくさん花が咲いていても、その近くに子孫が育っていなければ10年後には群落がなくなっているかもしれません。「絶滅は 知らないうちに訪れる」なんてことに・・・

 北海道にはかつてはザリガニがたくさん棲んでいました。でも、今は生息地が分断されています。小さな沢に取り残されたザリガニは、他の地域のザリガニと遺伝的な交流ができない状態ですから、環境が悪化すれば絶滅してしまうかもしれません。

 「ここはたくさんいるから大丈夫」なんてのんきなことをいっていたら、何年か後にはいなくなっているということもあり得るのです。生態系というのは、人間が考えている以上にデリケートなのかもしれませんね。これからは、ただ「守る」だけではなく、生息地の拡大を目指さなくてはいけないのかもしれません。


あなたにおススメの記事

同じカテゴリー(生態系)の記事画像
オニグルミの不作とエゾリス
然別湖周辺の風倒被害
オニグルミを食べる動物たち
知床の七不思議
同じカテゴリー(生態系)の記事
 生物多様性の消失と人類の未来 (2024-07-26 13:35)
 減っていくクモや昆虫 (2020-08-30 11:20)
 オニグルミの不作とエゾリス (2015-11-10 22:32)
 然別湖周辺の風倒被害 (2015-11-02 22:30)
 オニグルミを食べる動物たち (2012-10-12 15:52)
 生態系がサービスをするのか? (2009-02-02 11:35)

Posted by 松田まゆみ at 16:41│Comments(8)生態系
この記事へのコメント
「鬼蜘蛛おばさん」 様 こんにちは

同感です。私は一昨年 東京都小金井市から北海道伊達市へ
帰郷致しました。
伊達市の善光寺の敷地内にカタクリの群生地があります。
市は此処に、パークゴルフ場を、造ろうとしています。
市とお寺の考え、地域活性化を考えている地域住民が一致して、
推し進めるようです。
反対しているのは、「自然を守る会」(仮名)の方達が中心です。
でも何も、こんな所にパークゴルフ場を造らなくてもいいのでは
と思うのは私だけでしょうか。

話は変わりますが、自然環境が、人間の開発という名目で破壊
されつつ有ります。
私は「日本鳴く虫保存会」の会員です。
鳴く虫に於いても、「虫の声」の歌に出てくる、マツムシ、クツワムシ、
スズムシなどは北海道には寒さのせいで生息できないのですが
本州では、この開発の為、草地、河原などから、虫の生息に必要な
その環境が奪われ、マツムシ、クツワムシなどは「レッドデーターブ
ックとちぎ」を見ると、絶滅危惧種になっているのです。

このように此れは植物だけの問題ではないのです。
広い北海道でもいずれ此の問題が今以上に深刻になると推測
するものです。
東京近郊例えば日野市では、カタクリなど群生地を、買い取ってま
で、残そうとしています。
そうなる前の対策が必要でしょうね。
Posted by 邯鄲のゆめ at 2007年05月18日 17:33
邯鄲のゆめ さんへ

 コメントありがとうございました。人間の都合だけで、植物の生育地も、虫たちの生息地もどんどんなくなっていくのですよね。誰かが声をあげないと、人間の都合の方が優先されてしまいます。でも、そこに棲んでいた動植物は二度と戻ってこないことを、行政も市民もよく考えて欲しいですね。

 ところで、私は以前、日野市に住んでいたのですよ。もう30年くらい前のことになりますが、日野市のカタクリの生育地にも行ったことがあります。今も変わっていないのでしょうか・・・

 あの頃は、住宅地の近くの空き地などでもクツワムシが鳴いたり、マツムシの声も聴かれましたが、もうだいぶ少なくなってしまったのでしょうね。レッドリストの動植物がどんどん増えてしまわないことを祈るばかりです。
Posted by 鬼蜘蛛おばさん at 2007年05月18日 20:54
始めまして。お邪魔します。

ブログ、拝見させていただきました。
タイトルも内容も画像もすごく素敵だなと感じました。

自然についても絶滅についても、私自身もっと知りたいと思いますし、沢山の人にもっと知ってもらって一緒に考えたり語り合えたりできたらいいなって思っています。

私も自然・環境について興味があり勉強中ですが、実際に見たり感じたりして学ぶことでより沢山のことを吸収したいと思っています。

ところが、動物や植物は好きですか昆虫類はどうも苦手です。でも相手の特徴や生き方を知ることで少しは好きになれるのではないかな?と思っています。クモについてもたまに書いてくださるとうれしいなと思っています。

また、遊びに来たいと思います。
更新、楽しみにしています。
Posted by greencat at 2007年05月18日 22:01
「鬼蜘蛛おばさん」 様 こんばんは

私は一昨年、東京都小金井市から北海道の伊達市に帰郷。
日野市の「緑と清流課」と「日野市の自然を守る会?」のように
行政と民間のボランティアが一体となってやってるので共感を
覚え、催しがあるたびに参加していました。

マツムシは、「日本鳴く虫保存会」の方達が放虫し、僅かに落
川の辺りに生息していると認識しています。
クツワムシに関しては、今や殆ど絶滅に瀕したのではないかと
思います。

「虫の声」の歌に出てくる、マツムシ、クツワムシはあの辺りでは
遠い昔のことになりつつあります。
「日本鳴く虫保存会」は、こういった虫たちを飼育し、条件の
整った地域に放虫し、なくなりつつある鳴く虫を保存しようとして
活動していますよ。

私は、この、マツムシ、クツワムシを飼育しています。
が、北海道は、冬の寒さのため屋外では、マツムシ、クツワ
ムシたちは生息できないのです。家の中で、飼育し、本物の
この鳴く虫の声を、多くの人に知ってもらえればと思っています。
Posted by 邯鄲のゆめ at 2007年05月19日 00:45
 greencatさん、訪問ありがとうございました。

 虫も蜘蛛も嫌いな人が多く、中には「恐怖症」の方もいますが、多くの人は「慣れ」ていないだけなのではないでしょうか。私も子供のころは、蜘蛛はそれほど好きではなかったのですよ。アシダカグモという大きな蜘蛛を見たときには「ひゃー!」と思ったくらい。でも、面白いなって思って見てみるとだんだん平気になり、そのあとは好きになっちゃうんですよね。だから、ちょっと離れたところから観察してみてくださいね。
Posted by 松田まゆみ at 2007年05月19日 08:11
 邯鄲のゆめさんへ

 邯鄲のゆめさんは小金井市にお住まいだったのですか。私はかつて「日野の自然を守る会」にも入っていたのですよ。偶然ですね。

 どんどん減っていく「鳴く虫」を保存していくことは、とても素敵な活動ですね。でも、ひとつだけ心配なことがあります。「鳴く虫」を飼育して増やし、いなくなってしまったところに戻すときは、その地域に生息している虫を飼育して増やすようにして欲しいのです。

 虫も植物も、地域ごとに遺伝子構成が少しずつ違うのです。違う地域にいた虫を放すと、その地域固有の遺伝子集団が失われてしまいます。また、もともとその虫が生息していないところに放したりすると生態系に悪影響を与えることが予想されます。

 そんなことにも気をつけて、保存する活動をしていただけたらと思います。
Posted by 鬼蜘蛛おばさん at 2007年05月19日 08:25
「鬼蜘蛛おばさん」様 こんいちは

「日本鳴く虫保存会」の方達は、発足から40年間活動を続けており
ます。
私がマツムシに興味を持ち、2001年8月日野市の緑と清流課」と
「日野市の自然を守る会」主催の自然観察会「夜の鳴く虫を楽しむ」
に参加したのが 鳴く虫を飼育するきっかけになりました。
このときの講師は東大の神保一義先生で、息子さんも同じ東大で
活躍されてると後で知りました。

此の先生の御専門が確か蜘蛛だったと思います。

奇遇ですね。多分、「鬼蜘蛛おばさん」様も「日野の自然を守る会」
の此のような催しで此の先生にお会いしてたのではないでしょうか。

このときは高幡不動駅から歩いて浅川の浅川堤に秋の鳴く虫を探索
に行き、数年前まではマツムシがいたのですが、河川敷の草を下から
きってしまう為、マツムシの産卵が出来ない。20センチ位残してくれる
よう行政に頼んでいるのですがと 残念そうに云われていた記憶が
蘇えってきました。(此のため、此の浅川の処からマツムシが絶滅
してしまったようです。)
Posted by 邯鄲のゆめ at 2007年05月19日 18:15
邯鄲のゆめさんへ

 私が「日野の自然を守る会」に入ったのは確か高校生くらいのころで、発足当時からの会員でした。その頃は、多摩動物公園の矢島稔先生によるホタルや鳴く虫の観察会をやっていました。なつかしいですね。
 
 北海道に来てからは、「日野の自然を守る会」がどのような活動をしているのかは全くわからず、神保先生のこともよく知りません。多分、お会いしていないのではないかと思います。浅川のマツムシも絶滅してしまったのでしょうか。残念です。
Posted by 鬼蜘蛛おばさん at 2007年05月20日 07:54
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
絶滅はどうやって起きるのか?
    コメント(8)