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鬼蜘蛛の網の片隅から › 政治・社会 › 会話のない社会

2025年03月21日

会話のない社会

 先日、久しぶりにとあるホームセンターに行ったら、レジの大半がセルフレジになっていた。セルフレジは空いていたものの、私は迷わず店員のいるレジに並んでしまった。ときどき入るスーパーも、行くたびにセルフレジが増えている。そのうちスーパーのレジは皆セルフになってしまうのだろうか。

 スーパーなどなかった子どもの頃は、買い物といえば商店街に行って、店の人と会話しながら買い物をしたものだ。そもそも会話をしなければ買い物ができなかった。その後スーパーが普及してからは会話も減ったが、それでもレジで会話をすることはしばしばある。ところがセルフレジとなると店に入ってから出るまで、一切人と会話せずに終わってしまう。煩わしくなくていいという人もいるのだろうけれど、私はちょっと寒気がする。

 考えたら、空港などでの手続きもどんどん機械に置き換わっている。チェックインも自動チェックイン機。最近は東京に行くこともほとんどなくなったが、以前は実家があったのでときどき上京した。そして頻繁に駅の切符の自動販売機が変わっているのに驚いた。改札も自動改札機なので駅員の姿がほとんど見えない。駅はなんとも味気ない場所になってしまった。

 東京に住んでいた小学生のころ、私はときどき一人で電車に乗って出かけることがあった。引っ越して間もないある日、駅の改札口を出て駅前の光景を目の当たりにし、出口を間違えたことに気づいた。南口に出なければならないのに北口に出てしまったのだ。近くに踏み切りも見えない。仕方ないので改札口の駅員に事情を話したら、回収した切符から子供用の切符を取り出して、「これを反対側の改札口に出しなさい」と通してくれた。もし、今のように駅員も見当たらない自動改札の駅だったら途方に暮れていたかもしれない。

 金融機関に行ってもATMでおおむね用事は足りる。最近は大きな病院では会計も機械になっている。病院に行きつけていない高齢者などは戸惑うだろう。北海道の田舎でほとんど遠出もせずに暮らしていると、たまに街中に出たとき時代に取り残されたような気になってくる。

 それだけではない。昨今は北海道の地方の町でも、地域のコミュニティバスの自動運転化を目指したり、ドローンによる荷物の配達の実証実験をしたりしている。人手不足が背景にあるというが、こんな社会はどう考えても高齢者や障害者、子どもなどの弱者にやさしい社会とは言えない。そして、なによりも気になるのは人を機械に変えていくことで会話が消えていくこと。

 配偶者に先立たれて一人暮らしをしている高齢者は、交通機関を利用しても、買い物をしても誰とも会話しない社会で暮らさねばならない。自分から人との関わりを持たなければ、誰とも会話しない日もあるだろう。機械化社会は人と人との関わりをどんどん希薄にし、会話を奪っていく。

 人はコミュニティの中で生活している生き物だ。他者との関わりが人として健全な生活を支えている。挨拶、気遣い、助け合い、感謝の言葉・・・みな会話でつながっている。会話の消えた社会からは、喜びも幸福感も次第に消えていくのではなかろうか。



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Posted by 松田まゆみ at 14:06│Comments(0)政治・社会
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