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鬼蜘蛛の網の片隅から › 外来種 › ガビチョウの楽園になった住宅地

2010年07月24日

ガビチョウの楽園になった住宅地

 今年の5月に東京の実家に行ったときのことなのですが、住宅地を歩いていると庭樹と思われるところから聞いたことのない鳥の囀りが響いてきました。その鳴き声はどう考えても在来種ではありません。とても大きな声でいくぶんクロツグミに似たような囀りですが、クロツグミのほうが上品です。これはきっと籠ぬけ(飼い鳥が逃げ出したもの)に違いないと思ったのですが、姿は見られずじまいでした。

 さて、先週もまた東京に行ってきたのですが、今回も同じ鳥が住宅地のあちこちで囀っています。大方の野鳥は繁殖期を終えて静かに過ごしている時期なのに、この鳥だけはなんと朝から夕方まであちこちで鳴いているのです。そして、今回は2回ほどその姿を見ることができ、ようやく正体が判明しました。目の周りがケイマフリのように白く縁取られているガビチョウです。この暑いのに、昼のさ中にもよく鳴くこと! ヒヨドリの叫ぶような声とガビチョウのやかましい声が暑さをいっそう盛りたてるようで、いささかうんざりとしてきます。

 住宅地のあちこちで囀っているのですから、もうこのあたりにすっかり定着してしまったのでしょう。ガビチョウは北海道にはいないのでよく知らなかったのですが、すでに九州から南東北にまで分布しているそうです。特定外来生物にも指定され、問題になっているようです。それはそうでしょう。大型の鳥ですし、こんなたくましそうな鳥が野生化して増えてしまったなら、在来の野鳥にも影響があるに違いありません。

 実家のあるのは多摩丘陵を崩して造成した住宅地ですが、ここに越してきた40年ほど前には今より雑木林が広く残っていて、時おりサンコウチョウやサンショウクイの声が聞かれ、草藪ではあちこちでクツワムシがガチャガチャとけたたましく鳴いていたものです。その頃は島のように取り残された雑木林に、かろうじて里山の自然が息づいていました。そんな雑木林が次々に団地や宅地になり、今ではやかましいガビチョウの天国です。

 それに、数年前から近くの川(といっても、三面コンクリート張りの水路ですが)に外来種のウシガエルが棲みつくようになりました。夕刻に通るとブウォー、ブウォーと迫力いっぱいの鳴き声が響きわたってきます。何年か前にはカワセミの姿も見かけたのですが・・・。

 真夏になると街路樹や庭樹はアオマツムシの大合唱。住宅街はもはや野生化した外来生物に乗っ取られてしまったといっても過言ではありません。かつての里山のなごりを知っている者にとっては、在来種が姿を消し、外来種に置き換わってしまった光景に溜め息が出るばかりです。ほんの数十年の間にどれだけの雑木林が破壊され野鳥や昆虫たちの棲みかが失われたのでしょうか。そして、どれだけの在来種が外来種の侵略によって姿を消したのでしょうか。

 これほどまでに外来生物が定着して増えてしまったなら、駆除はほぼ不可能でしょう。特定外来生物に指定したところで、自由に飛び回る鳥をどうやって駆除するのでしょう。いったい、これからこの国の生態系はどうなっていくのでしょうか。外来種のたくましさを見るにつけ、暗澹たる気持ちになってきます。


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Posted by 松田まゆみ at 22:22│Comments(0)外来種
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