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鬼蜘蛛の網の片隅から › 森林問題 › 道民にツケを負わせる森林環境政策

2009年05月03日

道民にツケを負わせる森林環境政策

 北海道は「新たな森林環境政策」(素案)を提案し、4月1日から30日までの一ヶ月間、道民から意見募集をました。この素案の中身を読んでいささか呆れてしまいました。結局は昨年議論を呼んだあげく頓挫した「森林環境税」の再提案といえるものです。

 道民から森林環境税を徴収し、その大半を「公益的機能の再生に向けた森林づくり」のもとに、私有林や市町村林の間伐や植林事業に使うということです。私有林や市町村林の大半はカラマツなど木材生産を目的とした人工林です。こうした森林の多くが間伐などの手入れをされずに放置されているのは事実ですが、そもそもなぜ手入れがされないのでしょうか? そして、人工林の整備が本当に森林の公益的機能を重視した森林環境政策なのでしょうか?

 人工林の手入れがされないのは、整備にお金をかけてもそれに見合う収益にならないからにほかなりません。これは林業政策の失敗からきているのです。国有林や道有林では、過度の「択伐」によって天然林を乱伐して森林生態系を撹乱させ、風倒被害地などで拡大造林を行なってきました。天然林からタダの木を掠奪する林業と、安い外材の大量輸入によって木材価格は低迷し、人工林の手入れもなされなくなったのです。

 このような林業政策の失敗のツケを「環境政策」との名目で道民に負わせるというのが、「新たな森林環境政策」の中身です。個人が営利目的で所有している森林の整備に、道民がお金を払うということです。環境政策というのなら、まずはこれまでの林業の失策を反省したうえで検討されなければなりませんが、その基本的なところが欠落しています。

 「100年遅れた日本の林業」にも書きましたが、これからの林業は森林の公益的機能を維持しながら木材生産をしていく方向を目指すべきでしょう。すなわち、自然林に近い森林での適切な択伐による木材生産です。

 この問題については、十勝自然保護協会の提出した意見書を参照していただきたいと思います。


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Posted by 松田まゆみ at 13:49│Comments(0)森林問題
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